WBC世界ライト級挑戦者決定戦 シャクール・スティーブンソン対吉野修一郎

  • 2023/03/31

敵地で大一番に臨む吉野
厳しい下馬評のなか強打に期待

 16戦全勝(12KO)の戦績を残しているWBC世界ライト級4位の吉野修一郎(31=三迫)が、2階級制覇を成し遂げているシャクール・スティーブンソン(25=アメリカ)と対戦する。試合はWBC同級王座への挑戦者決定戦として挙行される。19戦全勝(9KO)のスティーブンソンは遠い距離から自在に出入りするサウスポーの技巧派で、特にスピードとディフェンス技術に長けている。相手の地元での試合ということもあり吉野にとっては厳しい戦いが予想される。

3階級制覇に照準 防御の天才スティーブンソン

 挑戦者決定戦を組むにあたりスティーブンソン陣営は数人のランカーに声をかけたが、ことごとく断られたという。すでに試合が決まっていたり先の計画が進行中というケースもあっただろうが、仮にそうでなくてもスティーブンソンとの対戦を敬遠したい選手は少なくないはずだ。強く打つことを目的としていないためパンチ力こそ平均の域内だが、群を抜くスピードを誇る。相手の攻撃を避ける技術においてもスティーブンソンは天才的なものがある。打っても打ってもパンチを外されたうえ的確な迎撃に遭って失点を重ね、消化不良のまま敗れる……戦う前から相手と観戦者にそんなイメージを与えるのだ。
 実際、プロで拳を交えてきた19人がそうやって敗れてきた。2021年6月以降、世界戦で対戦した4人――ジェレミア・ナカティラ(ナミビア)、ジャメル・ヘリング(アメリカ)、オスカル・バルデス(メキシコ)、ロブソン・コンセイサン(ブラジル)――でさえ圧倒的なポイント差をつけられて敗れ去っているのである(ヘリングは10回TKO負け)。体が大きくなったことで体重調整の失敗(コンセイサン戦で体重超過のため王座剥奪)はあったが、25歳の現在でも伸びしろを残している選手といえる。今回の試合は3階級制覇を目指す際のステップという位置づけになる。

伊藤雅雪、中谷正義を連破して上位進出果たした吉野

 限界を見せていないという点は吉野も同じだ。リオデジャネイロ五輪銀メダリストのスティーブンソンには及ばないが、吉野もアマチュアで124戦(104勝55KO20敗)をこなしており、その経験が現在の礎になっている。2015年12月にプロ転向後は日本王座、東洋太平洋、WBOアジアパシフィック王座を獲得。それ以上に評価されるのは直近の2試合で元世界王者の伊藤雅雪(伴流/横浜光)、元世界ランカーの中谷正義(井岡/帝拳)を連破している点だ。特にWBC10位だった中谷を破った一戦は価値が高い。この勝利により11位だった吉野は同月に6位に上昇し、その後、スティーブンソン側から声をかけられることになったわけだ。
 吉野は左右のグローブを比較的高めに置いた構えから左ジャブで切り込んだり、そうかと思えばいきなり右クロスをかぶせていったりと、基本を踏まえたうえで臨機応変で型にはまらないところがある。チャンスをつかんだときの細かい連打、守りのなかで繰り出す左フックのカウンターもある。
 ただ、今回の試合を迎えるにあたって不安要素もある。そのひとつが初の海外試合である点だ。アマチュア時代にはセルビアや台湾など国外遠征も経験しているが、今回は相手の地元に乗り込んでの試合ということで完全アウェーとなる。そのなかで持ち味を存分に発揮できるかどうか。もうひとつ、プロでは初のサウスポーとの対戦である点だ。しかもスピードとスキルに抜きん出たスティーブンソンが相手とあっては楽観的な予想は立てられない。それは吉野自身も十分に承知しているはずだ。スパーリングでは好感触を得ているようだが、スティーブンソン相手の試合で実行できるかどうか。

積極的に仕掛けて慌てさせることができるか

 スティーブンソンは前に出てくるタイプではないため、吉野が積極的に仕掛けていく必要があるだろう。単純なスピードやテクニックで競い合っては分が悪いだろうから、相手の進路を塞ぎながら左フックや右ストレートなどで脅かす戦い方が選択肢のひとつとして挙がる。距離を潰してパンチの交換ができる状況に持ち込むことが重要だ。被弾も覚悟の戦いとなるため吉野のリスクは高くなるが、勝機を広げるためにはスティーブンソンを慌てさせなければならない。乱戦に近い状態をつくることができれば吉野の持ち味が発揮できそうだ。
 オッズは12対1。25歳の若さで2階級制覇を成し遂げているサウスポーのスター候補の壁は、それほどに厚く高い。その分、吉野が勝った場合のリターンも大きいものがあるはずだ。

<ライト級トップ戦線の現状>

WBA S
:デビン・ヘイニー(アメリカ)
:ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)
WBC
:デビン・ヘイニー(アメリカ)
IBF
:デビン・ヘイニー(アメリカ)
WBO
:デビン・ヘイニー(アメリカ)

 肩書上は4団体統一王者のデビン・ヘイニー(24=アメリカ)がトップだが、WBAレギュラー王者のジャーボンテイ・デービス(28=アメリカ)、3階級制覇の実績を持つワシル・ロマチェンコ(35=ウクライナ)、さらに下の階級から上げてきたシャクール・スティーブンソン(25=アメリカ)を加えた4人が実力面では横並びといっていいだろう。
 ヘイニーは5月にロマチェンコとの対戦が有力と伝えられる。若く勢いのあるヘイニーにとっても、35歳になったロマチェンコにとっても極めて重要な試合となる。まだ試合の正式発表はないが、オッズは9対4でヘイニー有利と出ている。
 デービスは4月22日(日本時間23日)にライアン・ガルシア(24=アメリカ)との136ポンド(約61.6キロ)契約12回戦が決まっている。28戦全勝(26KO)のデービス、23戦全勝(19KO)のガルシア。両者の戦績を見ただけでも楽しみになってくるカードだ。現時点のオッズは5対2でデービス有利となっている。
 ヘイニーとともに時間がたっぷりあるのがスティーブンソンだ。ふたりとも技巧派だが、スティーブンソンは懐深いサウスポーという特徴が加わる。転級初戦となる吉野修一郎(31=三迫)戦でどんなパフォーマンスを見せるのか注目される。ここで吉野がスティーブンソンを破るようなことがあるとライト級トップ戦線に割り込むことになる。
 WBC2位、IBF4位、WBO5位、WBA6位にランクされるイサック・クルス(24=メキシコ)はデービスに挑んで惜敗(12回判定負け)した小柄なファイターで、再起後は元世界王者を相手に2連続KO(TKO)勝ちを収めている。スター選手同士の直接対決が一段落したあとで再挑戦を狙いたいところだ。
 若手では東京五輪銀メダル獲得を挟んでプロで7戦全勝(5KO)を収めているキーション・デービス(24=アメリカ)に注目したい。 すでにWBO10位、IBF14位、WBC16位とランキングを駆け上がってきており、来年には世界戦に絡んできそうだ。

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