WBAスーパー世界ウェルター級タイトルマッチ マニー・パッキャオ対ヨルデニス・ウガス

  • 2021/08/13

スペンスの眼疾が判明 出場不可に
代役にスーパー王者のウガス

 本来ならばマニー・パッキャオ(42=フィリピン)はWBC、IBF王者のエロール・スペンス(31=アメリカ)と対戦するはずだったが、試合を管理するネバダ州アスレティック・コミッション(NSAC)の予備検診でスペンスの左目が網膜裂孔であることが判明。出場が不可能となった。そのため、セミファイナルに出場予定だったWBAスーパー王者のヨルデニス・ウガス(35=キューバ)がパッキャオと対戦することになった。ウガスも対戦相手のファビアン・マイダナ(アルゼンチン)が負傷のため出場を辞退していたため試合が宙に浮いていたところだった。結果としてWBA休養王者のパッキャオ、WBAスーパー王者のウガス、双方にとって有益なマッチメークとなったわけだ。ウガスは30歳を超えてから存在感を示してきた実力者だけに好勝負が期待できる。

リングの内外で活躍する42歳の「スーパーマン」

 コロナ禍のなか試合枯れ状態が続くパッキャオに対しWBAは今年1月、スーパー王者から休養王者へのスライドを通達。レギュラー王者だったウガスをスーパー王者に、暫定王者だったジャマル・ジェームス(アメリカ)をレギュラー王者にそれぞれ格上げした。形式上、パッキャオは格下げとなったわけだが、この男が圧倒的な存在感を持っていることに変わりはない。こうしたWBA王座を巡る流れがあったことを考えると、パッキャオとウガスには少なからず因縁めいたものがあるともいえる。
 いまさら多くの説明は必要ないかもしれないが、パッキャオは世界戦線に飛び出して以降、112ポンド(約50.8キロ)を体重上限とするフライ級から154ポンド(約69.8キロ)のスーパー・ウェルター級までの10階級にわたって戦い、そのうち6階級で主要4団体の世界王座を獲得してきた。ちなみに「リング誌」ではフェザー級とスーパー・ライト級でも戴冠を果たしたことになっており8階級制覇と認知されている。いずれにしても体重制が採られているなか19キロの壁を破ってきた事実は驚異といえる。加えて19歳でフライ級王座を獲得後、20代、30代、そして40代と20年以上も世界王者としてトップの座に君臨し続けているのだから、これも驚きだ。さらにリングを下りればフィリピンの上院議員という肩書も持っている。まさに「スーパーマン」といっていいだろう。
 ただ、そんなヒーローも12月には43歳になる。加えて2019年7月のキース・サーマン(アメリカ)戦以来、実に2年1ヵ月ぶりの実戦という点も気になる。これは2017年7月から2018年7月の約2倍に相当するキャリア最長のブランクである。16歳でプロデビューしてから26年、71戦(62勝39KO7敗2分)の蓄積疲労が抜けるというプラス効果が望めるのか、それとも勘の鈍りというマイナスに作用するのか、この点は不確定要素といえる。

連敗後の2年のブランクを経て再生したウガス

 肩書上は「スーパー王座」を持つウガスはパッキャオの上位に位置づけられるが、主役がパッキャオであることは誰もが認めるところだ。ただ、試合後の両者の立ち位置は分からない。もしかしたらウガスに眩しいほどのスポットが当たっている可能性もあるからだ。
 ウガスは6歳でボクシングを始め、2004年には世界ジュニア選手権に出場したが、このときは2回戦でアミール・カーン(英国)に敗れている。翌2005年から2009年までの5年間、選手層の厚いキューバでナショナル王者になり、2005年の世界選手権ではライト級で優勝している。2008年の北京五輪にも出場したが、ライト級で銅メダルに甘んじた。アマチュア戦績は不明だが、テレンス・クロフォード(アメリカ)にも勝ったことがあるという。
 キューバから亡命してプロ転向を果たしたのは2010年7月のことだった。キャリア前半にはノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)やファン・マヌエル・ロペス(プエルトリコ)などトップランク社の看板選手の前座に出場することがあったが、一向に注目度は上がらなかった。技術に頼り過ぎる傾向が強いためかアピール不足だったのだ。2014年にはスーパー・ライト級で2度の判定負けを喫して出世の芽は潰えたかと思われた。事実、2年間、ウガスはリングを離れている。
 その後、同じキューバ出身のイスマエル・サラス・トレーナーと出会い戦線復帰。ウェルター級で再出発したウガスはジャマル・ジャームス(アメリカ=現WBAウェルター級王者)、世界挑戦経験者のトーマス・デュロルメ(フランス領グアドループ/プエルトリコ)、世界ランカーのレイ・ロビンソン(アメリカ)とセサール・バリオヌエボ(アルゼンチン)を連破。その勢いのまま2019年3月にはショーン・ポーター(アメリカ)の持つWBC王座に挑戦したが、2対1に割れる判定を落として戴冠を逃した。しかし、再起2連勝を挟んで昨年9月、アベル・ラモス(アメリカ)を下してWBA王座についた。
 戦績は30戦26勝(12KO)4敗。40パーセントというKO率が示すとおり、ウガスはパンチ力を売りにするハードパンチャーではない。全体的な動きも大きくはなく、攻防ともに中間距離でやり合うことが多い。相手のパンチは小さなヘッドスリップやブロックで防ぎ、同時に左右のフックやアッパーで攻め返すパターンが目立つ。直近の5戦のうち4試合は12ラウンドをフルに戦いきっており、スタミナは十分といえそうだ。

パッキャオの速攻が奏功か ウガスが巧みに迎え撃つか

 2009年11月のコット戦以降、パッキャオは17試合をウェルター級の体重で戦ってきており、この階級に馴染んでいることは事実だが、それでも両者の体格差については触れておく必要があるだろう。身長/リーチはパッキャオの166センチ/170センチに対し、ウガスが175センチ/175センチと上回っている。ウガスは体の大きさを生かして戦うタイプではないものの、やはり体格面ではウガスにアドバンテージがあることは否めない。
 パッキャオが大きく勝っているのは攻撃力と経験値だ。数字には表れないが、カリスマ性という点でもウガスを寄せつけないものがある。これが相手に必要以上の警戒心を植えつける可能性もあるから無視はできない。
 攻撃力のあるサウスポーのパッキャオが動きながら揺さぶりをかけて飛び込むチャンスをうかがい、ウガスがガードを高めに置いて迎え撃つ展開になりそうだ。縦横無尽で変則的なパッキャオの動きにウガスが戸惑いをみせるようだと序盤は休養王者に主導権が渡るかもしれない。パンチの軌道やタイミングを読めないままウガスがパッキャオの左ストレートを直撃された場合、その時点で試合が終わったとしても不思議ではない。逆にパッキャオにブランクと年齢からくる錆があるようだとウガスの連打に飲み込まれてしまう可能性もある。

<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>

  • 名前

    パッキャオ

    ウガス

  • 生年月日/年齢

    1978年12月17日/42歳

    1986年7月14日/35歳

  • 出身地

    キバウェ(フィリピン)

    サンティアゴデクーバ(キューバ)

  • アマチュア実績

    2005年世界選手権ライト級優勝
    2008年北京五輪ライト級銅

  • アマチュア戦績

    64戦60勝4敗

  • プロデビュー

    95年1月

    10年7月

  • 獲得世界王座

    フライ級
    Sバンタム級
    Sフェザー級
    ライト級
    ウェルター級
    Sウェルター級

    ウェルター級

  • プロ戦績

    71戦62勝(39KO)
    7敗2分

    30戦26勝(12KO)4敗

  • KO率

    55%

    40%

  • 世界戦の戦績

    25戦19勝(9KO)
    4敗2分

    2戦1勝1敗

  • 直近の試合

    19年7月(12回判定勝ち)

    20年9月(12回判定勝ち)

  • 身長/リーチ

    166センチ/170センチ

    175センチ/175センチ

  • 戦闘スタイル

    左ファイター型

    右ボクサーファイター型

  • トレーナー

    ブボイ・フェルナンデス
    フレディ・ローチ

    ホルヘ・カペティージョ

  • ニックネーム

    「パックマン」「デストロイヤー」

    「54 Milagros」

<パッキャオの戴冠履歴>

1998年12月
WBC世界フライ級王座獲得(19歳11ヵ月)
2001年6月
IBF世界スーパー・バンタム級王座獲得(22歳)
2008年3月
WBC世界スーパー・フェザー級王座獲得(29歳)
2008年6月
WBC世界ライト級王座獲得(29歳)
2009年11月
WBO世界ウェルター級タイトル獲得(30歳)
2010年11月
WBC世界スーパー・ウェルター級タイトル獲得(31歳)
2014年4月
WBO世界ウェルター級王座獲得(35歳)
2016年11月
WBO世界ウェルター級王座獲得(37歳)
2018年7月
WBA世界ウェルター級王座獲得(39歳)~

<4階級制覇(以上)の世界チャンピオン>

6階級:
オスカー・デラ・ホーヤ(米)  約13キロ増
マニー・パッキャオ(比)    約19キロ増
5階級:
トーマス・ハーンズ(米)    約13キロ増
シュガー・レイ・レナード(米) 約13キロ増
フロイド・メイウェザー(米)  約10キロ増
ホルヘ・アルセ(メキシコ)   約6キロ増
ノニト・ドネア(比)      約6キロ増
4階級:
ロベルト・デュラン(パナマ)    約11キロ増
パーネル・ウイテカ(米)      約9キロ増
レオ・ガメス(ベネズエラ)     約5キロ増
ロイ・ジョーンズ(米)       約15キロ増
エリック・モラレス(メキシコ)   約8キロ増
ファン・M・マルケス(メキシコ)   約6キロ増
ロバート・ゲレロ(米)       約9.5キロ増
エイドリアン・ブローナー(米)   約8キロ増
ミゲール・コット(プエルトリコ)  約9キロ増
ローマン・ゴンサレス(ニカラグア) 約4.5キロ増
マイキー・ガルシア(米)      約6.4キロ増
ドニー・ニエテス(比)       約4.5キロ増
井岡一翔(志成)          約4.5キロ増
カネロ・アルバレス(メキシコ)   約10キロ増
レオ・サンタ・クルス(メキシコ)  約5.4キロ増

<ウェルター級トップ戦線の現状>

WBA S
:ヨルデニス・ウガス(キューバ)
:ジャマル・ジェームス(アメリカ)
休養
:マニー・パッキャオ(フィリピン)
WBC
:エロール・スペンス(アメリカ)
IBF
:エロール・スペンス(アメリカ)
WBO
:テレンス・クロフォード(アメリカ)

 一時期はネームバリュー抜群のマニー・パッキャオ(42=フィリピン)とWBC、IBF王者のエロール・スペンス(31=アメリカ)、3階級制覇のWBO王者、テレンス・クロフォード(33=アメリカ)を「3強」としていたが、いまは2年以上も活動実績のないパッキャオを除外してスペンスとクロフォードの「2強時代」といってもいいかもしれない。ただし、今回のパッキャオ対ヨルデニス・ウガス(35=キューバ)で後者が勝つようならばウガスの存在が俄然クローズアップされてくるはずだ。
 27戦全勝(21KO)のスペンスは網膜裂孔のため一時的に戦線離脱ということになるが、近い将来、37戦全勝(28KO)のクロフォードとの旬の王者同士の試合を期待しているファンは多い。今回の試合でパッキャオが勝った場合は、あらためてスペンスとの試合、そしてクロフォードとの試合が興味深いものになるはずだ。
 元王者のショーン・ポーター(33=アメリカ)とダニー・ガルシア(33=アメリカ)、元世界4階級制覇王者のマイキー・ガルシア(33=アメリカ)らは、いまも王者と伍する実力を備えていると思われるが、年齢的に多くを望むことはできないかもしれない。
 代わりに、17戦全KO勝ちのWBO1位、バージル・オルティス(23=アメリカ ※戦績は8月8日時点)、28戦27勝(25KO)1無効試合のジャロン・エニス(24=アメリカ)というスター候補が順調に成長してきている。このほか親子王者を目指している18戦全勝(12KO)のコナー・ベン(24=英国)、23戦全勝(14KO)のラシディ・エリス(28=アメリカ)らにも注目していきたい。
 また、スーパー・ライト級の4団体王者、ジョシュ・テイラー(30=英国)も近い将来のウェルター級転向を視野に入れていると伝えられるだけに、しばらくはこのクラスから目が離せない状況だ。

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オンデマンドでの同時配信対象外
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの