WBA、IBF世界バンタム級タイトルマッチ 井上尚弥対マイケル・ダスマリナス

  • 2021/06/11

「モンスター」に死角なし?
長身サウスポーの指名挑戦者を圧倒か

 いまや向かうところ敵なしといった状態の「モンスター」井上尚弥(28=大橋)が、保持しているバンタム級WBAスーパー王座とIBF王座の防衛戦に臨む。昨年10月に続きアメリカのネバダ州ラスベガスのリングに迎えるのはIBFが1位に推す指名挑戦者、マイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)。33戦30勝(20KO)2敗1分のレコードを残している長身サウスポーである。足かけ10年のプロキャリア、15度の世界戦を含め20戦全勝(17KO)を収めている充実の3階級制覇王者に死角は見当たらないが、もちろん油断はできない。

バンタム級で5勝 充実期の井上

 バンタム級に転向してから3年。井上の強さ、スキルにはさらに磨きがかかってきた印象だ。ジェイミー・マクドネル(イギリス)を初回で強引になぎ倒して獲得したWBA王座は、階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」準々決勝でファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を芸術的な70秒KOで屠って初防衛。一昨年5月にはイギリスでIBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)と対戦し3度のダウンを奪って2回KO勝ち、WBSS決勝に駒を進めた。その決勝戦では5階級制覇の実績を持つWBAスーパー王者のノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)と濃密な12ラウンドを戦い、勝負どころでダウンを奪って12回判定勝ち、価値ある勲章を手にした。
 その後、コロナ禍の影響で約1年の空白をつくることになったが、昨年10月にはラスベガスで行われた無観客試合でWBO1位のジェイソン・マロニー(オーストラリア)に7回KO勝ちを収め、あらためてバンタム級の主役であることを証明している。以前は未知とされた耐久力や危機対応力に関しても直近の5試合でテストされることになったが、問題なくクリアしてきたといえる。いまは積み上げてきた経験とさらなる可能性や伸びしろが理想的なバランスを保っている時期といってもいいだろう。

不規則な動きからパンチを繰り出す長身サウスポー

 挑戦者のダスマリナスはアマチュアを経て2012年1月にプロデビュー。3ヵ月後に2回KO負けを喫した以外は白星を重ね、2014年7月には来日して元WBO暫定アジアパシフィック王者の木村隼人(ワタナベ)に8回判定勝ちを収めている。このあと南アフリカ遠征でマイナー団体IBOのスーパー・フライ級王座に挑んだが、地元選手に惜敗(12回判定負け)している。その後、WBCユース王座やフィリピンの国内王座(PBF)を獲得するなどして世界15傑入り。2018年以降は強豪との対戦が続いている。WBC6位、IBF13位のカリム・グエルフィ(フランス)に4回KO勝ち。2008年北京五輪出場者で現WBA2位のマニョ・プランゲ(ガーナ)と10回引き分け。2019年3月にはIBF挑戦者決定戦と銘打たれた試合で同胞のケニー・デメシリョ(フィリピン)に12回判定勝ち――なかなかタフなマッチメークといえるが、ダスマリナスは2勝1分で乗り切ってきた。直近の試合は2019年10月まで遡るが、元タイの国内王者に5回TKO勝ちを収めている。
 こうした公式試合とは別に、山中慎介(帝拳)や井上拓真(大橋)のスパーリング・パートナーとして来日した経験がある。井上は弟(拓真)と手合わせした様子を間近で見たはずだが、「拓真ばかり見ていたので(ダスマリナスの)印象がない」という。
 それでも、あらためて映像で確認した印象として「もっとゴリゴリと出てくるのかと思ったが、意外に足をつかったりして動く選手。右フックを大きく振ってくるサウスポー」と話している。
 ダスマリナスは身長170センチとバンタム級にしては長身の部類に入る。相手の正面に立たないよう強く意識しているのか、足をつかいつつ不規則な前後左右の動きから踏み込んで右フックや左ストレート、アッパーを打ち込んでくる。強打者という印象は薄いが、グエルフィを左一発で倒しているように意表を突いたパンチには注意が必要だろう。

挑戦者の可動範囲を狭めたうえで仕留めるか

 アマチュア時代からサウスポーとの対戦には慣れている井上だが、2012年10月にプロ転向してからは左構えの選手とは2度しか戦っていない。2回KOでWBO世界スーパー・フライ級王座を奪ったオマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦と、70秒で相手を失神させたパヤノ戦である。2試合を合わせても正味431秒と短い。この間に合わせて4度のダウンを奪っているのだから、少なくともデータでみる限りはサウルポーは得意といっても良さそうだ。井上自身は「ナルバエスもパヤノも(身長が)小さかったけれど、ダスマリナスは長身なので、その点が楽しみ」と話す。新たなテストにも自信満々といった様子だ。
 挑戦者が真正面から井上と力比べをすることは考えにくい。足をつかいながら距離とタイミングを計り、的を絞らせないような戦い方をしてくるものと思われる。それも井上は想定しているようだ。「捕まえにくい? でも、来るときは来るので、そういうときにはカウンターが生きると思う」と話している。
 井上がじわじわとプレッシャーをかけ、相手の行く手を阻むようにして徐々にダスマリナスの可動範囲を狭めていくのではないだろうか。そのまま相手が出てこなければ自ら踏み込んで右ストレート、左フック、左ボディブローを狙うものと思われる。
 ダスマリナスが出てくればカウンターが機能するはずだ。特に挑戦者にとっては井上の左ボディブローは脅威といえよう。
 よほどの体調不良や前半で顔面をカットするなど偶発的なアクシデントが井上に起きないかぎり、王者の勝利は不動とみていいだろう。

<TALE OF THE TAPE 井上尚弥&ダスマリナス データ比較表>

  • 名前

    井上

    ダスマリナス

  • 生年月日/年齢

    1993年4月10日/28歳

    1992年8月20日/28歳

  • 出身地

    神奈川県座間市

    フィリピン

  • アマチュア実績

    11年プレジデント杯優勝
    11年世界選手権出場

  • アマチュア戦績

    81戦75勝(48KO)6敗

  • プロデビュー

    12年10月

    12年1月

  • 獲得世界王座

    WBC世界Lフライ級王座
    WBO世界Sフライ級王座
    WBA、IBF世界バンタム級王座

  • 身長/リーチ

    165センチ/171センチ

    170センチ/ ?

  • プロ戦績

    20戦全勝(17KO)

    33戦30勝(20KO)2敗1分

  • KO率

    85%

    61%

  • 世界戦の戦績

    15戦全勝(13KO)

  • 直近の試合

    20年10月(7回KO勝ち)

    19年10月(5回TKO勝ち)

  • 戦闘スタイル

    右ボクサーファイター型

    左ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    「モンスター」

    「ホット&スパイシー」

<バンタム級トップ戦線の現状>

WBA S
:井上尚弥(大橋)
:ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)
WBC
:ノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)
暫定:
レイマート・ガバリョ(フィリピン)
IBF
:井上尚弥(大橋)
WBO
:ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)

 2018年~2019年にかけて行われた階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)で優勝した井上尚弥(28=大橋)が絶対的な主役であることは間違いない。今回のマイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)戦は、その先に計画されるであろう統一路線に向けたデモンストレーションの意味を持つ可能性が高い。
 そうしたなか、去る5月29日にノニト・ドネア(38=フィリピン/アメリカ)がノルディーヌ・ウバーリ(34=フランス)を3度倒して4回KO、WBC王座を奪ったことで、にわかに慌ただしさを増してきた感がある。ドネアはWBSS決勝で井上と激闘を展開したが、ダウンを喫して12回判定で敗れている。井上とは決着済みと考えられていたはずだが、ウバーリ戦の勝利が衝撃的だったため近未来の対戦候補に再浮上してきたのだ。4団体の王座統一を目指す井上にとってもWBC王座を持つドネアとの再戦は意味を持つものになってきた。
 ただ、すんなりと再戦が実現するかというと、そこはビジネスの世界。どんな流れになるかは不透明といえる。ドネアも4団体統一を目標に掲げており、8月14日(日本時間15日)に行われるWBO王者ジョンリエル・カシメロ(32=フィリピン)対WBAレギュラー王者ギジェルモ・リゴンドー(40=キューバ)の勝者との対戦を優先させる可能性もある。特にリゴンドーがWBO王者になった場合、ドネアにとっては8年前の借り(12回判定負け)を返すという意味も出てくるわけで、因縁の再戦として話題性も十分だ。同じPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)系列ということもあり、ビジネス上の壁も少ない。
 19日(日本時間20日)の井上対ダスマリナス、8月14日(日本時間15日)のカシメロ対リゴンドー。この2試合の行方と、それを見たドネア陣営がどんな動きをするのか。はたまたWBC暫定王者のレイマート・ガバリョ(24=フィリピン)とWBA1位にランクされるゲイリー・アントニオ・ラッセル(28=アメリカ)がどのタイミングでどこに割って入るのか――しばらくバンタム級から目が離せない状況が続きそうだ。

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