25戦全勝の正規王者 vs 18戦全勝の暫定王者
スピードのマグダレノ パワーのドグボエ
16年11月にノニト・ドネア(35=フィリピン/アメリカ)から王座を奪ったジェシー・マグダレノ(26=アメリカ)が、負傷で戦線離脱している間に暫定王者になったアイザック・ドグボエ(23=ガーナ)と団体内の統一戦に臨む。25戦全勝(18KO)のマグダレノ、18戦全勝(12KO)のドグボエ。全勝対決のオッズは12対5でサウスポーの正規王者有利と出ている。この階級のIBF王座には岩佐亮佑(28=セレス)が君臨していることもあり、仮想対決をイメージしながら観戦するのも一興といえよう。
マグダレノは09年全米選手権優勝、全米ゴールデングローブ大会優勝、さらに同じ年の世界選手権に出場(バンタム級2回戦敗退)するなどアマチュアで136戦120勝16敗のレコードを残し、トップランク社と契約を交わしてプロに転向した。10年11月のことである。生まれ育ったラスベガスを拠点にして戦い、一度も挫折を知らずに白星を重ねてきた。その裏にはトップランク社の庇護があったことも見逃せないが、確実にランキングを上げてドネアへの挑戦にこぎ着けた。5階級制覇王者との試合は不利の予想が大勢を占めていたが、マグダレノは巧みに距離をコントロールし、スピードを生かして出入りしてジャッジの印象点を稼ぎ116対112(二者)、118対110の3-0で判定勝ちを収めた。5ヵ月後の初防衛戦では力量差のある挑戦者を2回KOで一蹴、ドネア戦でみせた老獪さだけではなくパンチ力のあるところも印象づけた。このまま一気にスターダムにのし上がるかと期待されたが、昨年秋に予定されたセサール・フアレス(26=メキシコ)との指名防衛戦を前に負傷、戦線離脱してしまった。
マグダレノが実戦から遠ざかっている間、フアレスを自国ガーナに招いて暫定王座決定戦を行い、左フックでダウンを奪い5回TKO勝ちを収めて対抗王者になったのがドグボエだ。ガーナのボクシング史上8人目の世界王者としてカウントされるドグボエはアマチュア時代、12年ロンドン五輪に出場した実績を持っている。このときは56キロ以下のバンタム級1回戦で清水聡(32=大橋)と対戦、10対9の1ポイント差で敗れた。五輪から1年後の13年8月にスイスでプロデビューし、2戦目はイギリス、そして3戦目から7戦目まではアメリカで戦い、以後はガーナを拠点に活動している。「ライジング・スターズ・アフリカ」というプロモート会社の代表を務める父親のポール氏がトレーナーも兼ねている。そのあたりが由来になっているのか、ドグボエには「BRAVE SON(勇敢な息子)」というニックネームがある。
若くて勢いのある全勝の王者同士のカードだが、戦闘スタイルは大きく異なる。サウスポーのマグダレノが相手と適度な距離をとりながら出入りのボクシングをするのに対し、ドグボエは157センチの小柄で頑丈な体を利して前進、中近距離に入って左右フックを叩きつける好戦的な戦い方をする。約72パーセントのKO率が示すようにマグダレノもパンチ力がないわけではないが、正面からの打撃戦は避けたいところだ。足をつかいながら距離を保ち、巧みに出入りできるかどうか、そのあたりがカギといえる。ドグボエは相手の動きを止めるためにもボディブローを多用したい。序盤からテンポの速い攻防がみられそうだ。
スーパー・バンタム級トップ戦線の現状
WBA :ダニエル・ローマン(アメリカ)WBA 暫定:モイセス・フローレス(メキシコ)
WBC :レイ・バルガス(メキシコ)
IBF :岩佐亮佑(セレス)
WBO :ジェシー・マグダレノ(アメリカ)
WBO 暫定:アイザック・ドグボエ(ガーナ)
WBA王者のダニエル・ローマン(アメリカ)とIBF王者の岩佐亮佑(セレス)が28歳、WBC王者のレイ・バルガス(メキシコ)が27歳、WBO王者のジェシー・マグダレノ(アメリカ)は26歳、さらにWBO暫定王者のアイザック・ドグボエ(ガーナ)が23歳と、この階級は若くて勢いのある選手が王座に君臨している。
ただ、現時点では核となるスター選手は見当たらない。WBC王者のバルガスは期待度が高かったものの、世界戦ではリスクを排除した安全運転が目につき、WBO王者のマグダレノは負傷で実戦から遠ざかるなどしてブレークするまでには至っていない。むしろ、今回のWBO内の王座統一戦でマグダレノと対戦するドグボエに大きな可能性を感じる。万人受けする好戦的なスタイルと無敗のレコード、自信に満ちたコメントなど見る者を刺激する要素を数多く持っているからだ。もしも今回の全勝対決でマグダレノを豪快に屠るようならばセンセーションを巻き起こす可能性もある。
王者たちを脅かす一番手は、WBO1位のディエゴ・デラ・ホーヤ(23=メキシコ)か。21戦全勝(10KO)の快進撃を続ける元世界6階級制覇王者、オスカー・デラ・ホーヤ氏(アメリカ)の甥は、今年か来年には勝負に出そうだ。WBAの指名挑戦権を持つエマヌエル・ナバレッテ(23=メキシコ)は26戦25勝(22KO)1敗と高いKO率を誇る。このほか岩佐に挑戦する予定のサウスポー、19戦全勝(14KO)のテレンス・ドヘニー(31=アイルランド/オーストラリア)もいる。
さらに、亀田和毅(26=協栄)、久我勇作(27=ワタナベ)、大竹秀典(36=金子)、7月に久我と対戦する和氣慎吾(30=FLARE山上)ら日本勢も挑戦の機会をうかがっている。
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