WBC、IBF世界ウェルター級タイトルマッチ
エロール・スペンス対ダニー・ガルシア

  • 2020/11/27

万能型サウスポー vs 必倒の左フッカー
オッズは10対3で王者有利だが…

 6階級制覇の実績を持つマニー・パッキャオ(41=フィリピン)がWBAスーパー王座に君臨し、パウンド・フォー・パウンド(PFP)上位常連のテレンス・クロフォード(33=アメリカ)がWBO王座を保持しているウェルター級。この147ポンド(約66.6キロ)が体重上限の階級でWBCとIBFのベルトを持ち、ふたりと肩を並べているのが「THE TRUTH(本物)」エロール・スペンス(30=アメリカ)だ。26戦全勝(21KO)のサウスポーは“3強”のなかでは最も若く、最も多くの可能性を感じさせる逸材だ。今回は2017年5月に獲得したIBF王座と昨年9月に吸収したWBC王座の防衛戦となる。挑戦者のダニー・ガルシア(32=アメリカ)はスーパー・ライト級とウェルター級の2階級制覇を成し遂げている実力者で、変則的なタイミングと軌道で振り抜く左フックを切り札としている。オッズは10対3でスペンス有利と出ているが、王者は昨年10月に自動車事故を起こしており、ボクシングに微妙な狂いが生じるのではないかと危惧する向きもある。

高次元で戦力の揃ったスペンス 不安はひとつだけ

 父親の勧めで15歳のときにボクシングを始めたスペンスは、2012年ロンドン五輪ウェルター級でベスト8入りを果たすなどアマチュアで147戦135勝12敗の戦績を残してプロに転向した。2015年から2016年にかけて元世界王者のクリス・アルジェリ(アメリカ)ら強豪を連破してトップ戦線に浮上。このころ、フロイド・メイウェザー(アメリカ)とスパーリングで手合わせした際、5階級制覇王者から「この男が俺の後継者だ」と太鼓判を押してもらったというエピソードがある。
 2017年5月にはIBFの指名挑戦者としてイギリスに乗り込み、ケル・ブルック(イギリス)を11回KOで下して27歳で戴冠を果たした。初防衛戦で2階級制覇王者のレイモント・ピーターソン(アメリカ)を7回終了TKO、V2戦では22戦全勝のカルロス・オカンポ(メキシコ)を180秒でKOと圧倒的な強さを見せつけた。このあと5階級制覇を狙ったマイキー・ガルシア(アメリカ)を大差の判定で退け、さらにWBC王者のショーン・ポーター(アメリカ)にも競り勝って2団体の王座を統一。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、ポーター戦から2週間後にテキサス州ダラスで交通事故を起こし、救急車で集中治療室に運び込まれるというアクシデントに遭遇。ゴロンゴロンと回転する車から外に放り出されながら奇跡的に軽傷で済んだと報じられたが、実際のダメージはリングに上がってみないと分からない。もともとガルシア戦は今年1月25日に計画されていたが、交渉の詰めに入る前にスペンスが事故を起こしたため先送りになった経緯がある。
 80パーセントを超すKO率が示すようにスペンスが強打者であることは誰もが認めるところだが、同時に攻撃技術、戦術、スタミナなどでも秀でたものを備えている。不安があるとすれば、やはり事故の影響、後遺症の有無であろう。

左フックの強打に定評があるガルシア

 両親がプエルトリコ出身のガルシアはアマチュアで120戦107勝13敗の戦績を残した。全米U-19選手権と全米選手権で優勝したが、目指した2008年北京五輪には出場できなかった。2007年11月にプロデビューし、5年後の2012年3月に体重超過のエリック・モラレス(メキシコ)を破ってWBC世界スーパー・ライト級王座を獲得した。この王座はWBA王者のアミール・カーン(イギリス)、モラレス、元王者のザブ・ジュダー(アメリカ)、のちに2階級制覇王者になるルーカス・マティセ(アルゼンチン)、のちに暫定王者になるマウリシオ・エレラ(アメリカ)を相手に5度防衛して返上。ウェルター級に転向してからも2016年1月にWBC王座を獲得したが、これはWBA王者のキース・サーマン(アメリカ)に惜敗して失った。2年前にはWBC王座の決定戦に出場したが、ポーターに小差の判定で敗れている。以後は2連勝で、通算戦績は38戦36勝(21KO)2敗。KO率は55パーセントと驚くほど高いわけではないが、唐突感のある左フックは破壊力十分だ。

スペンスが前進しガルシアが迎え撃つ展開か

 序盤は互いに手の内を探り合う展開が予想される。昨年9月以来のリングとなるサウスポーのスペンスが自分の動きや勘を確かめながらじわじわとプレッシャーをかけ、ガルシアがタイミングをずらしながら迎え撃つ機会をうかがうことになるものと思われる。ガルシアは前哨戦でイバン・レドカッチ(ウクライナ)に大差をつけて勝っているが、力量で劣る左構えの相手を最後まで崩し切れなかった。同じサウスポーでもレドカッチとは比較にならないほど厳しい圧力をかけてくる大柄なスペンスに、はたしてガルシアがどこまで抗えるのか疑問と不安は消えない。早い段階でスペンスにダメージを与えるなり左フックを警戒させるなりしないと、王者の前進を止めることができなくなりそうだ。その場合、中盤当たりに大きなヤマがやってくるかもしれない。もっとも、アドバンテージがあると思われるスペンスにしても事故の後遺症がまったくないという条件がつくのだが。

TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表

  • 名前

    エロール・スペンス

    ダニー・ガルシア

  • 生年月日/年齢

    1990年1月13日/30歳

    1988年3月20日/32歳

  • 出身地

    米国ニューヨーク州ロングアイランド

    米国ペンシルベニア州フィラデルフィア

  • アマチュア実績

    12年ロンドン五輪ウェルター級8強

    06年全米選手権ライト級優勝

  • アマチュア戦績

    147戦135勝12敗

    120戦107勝13敗

  • プロデビュー

    12年11月

    07年11月

  • 獲得世界王座

    WBC、IBFウェルター級

    WBA、WBC Sライト級
    WBCウェルター級

  • 世界戦の戦績

    5戦全勝(3KO)

    9戦7勝(2KO)2敗

  • 通算戦績

    26戦全勝(21KO)

    38戦36勝(21KO)2敗

  • KO率

    81%

    55%

  • 身長/リーチ

    177センチ/183センチ

    173センチ/174センチ

  • 戦闘タイプ

    左ボクサーファイター型

    右ボクサーファイター型

  • トレーナー

    デリック・ジェームス

    アンヘル・ガルシア(父親)

  • ニックネーム

    ザ・トゥルース(本物)

    スウィフト(俊敏な男)

ウェルター級トップ戦線の現状

WBA S
:マニー・パッキャオ(フィリピン)
WBA
:ヨルデニス・ウガス(キューバ)
WBA 暫定
:ジャマル・ジェームス(アメリカ)
WBC
:エロール・スペンス(アメリカ)
IBF
:エロール・スペンス(アメリカ)
WBO
:テレンス・クロフォード(アメリカ)

 6階級制覇の実績を持つWBAスーパー王者のマニー・パッキャオ(41=フィリピン)、WBCとIBF王座を持つエロール・スペンス(30=アメリカ)、WBO王者のテレンス・クロフォード(33=アメリカ)が、この階級の“3強”であると断定してもいいだろう。巴戦を期待されているが、プロモーターの違いなどビジネス路線の問題で実現しないまま現在に至る。12月17日に42歳になるパッキャオはともかく、26戦全勝(21KO)のスペンスと37戦全勝(28KO)のクロフォード、はたしてどちらが強いのかという素朴な疑問は多くのファンが抱いているはずだ。参考までに「パウンド・フォー・パウンド」ランキングでは、リング誌でクロフォード=3位、スペンス=5位、ESPNではクロフォード=1位、スペンス=4位となっている。わずかにクロフォードの評価が勝っているようだ。そのクロフォードは11月、かつてスペンスが仕留めるのに11ラウンドを要したケル・ブルック(34=イギリス)を4回TKOで一蹴しており、気分よくライバルの戦いをチェックすることだろう。
 3人を追うのがショーン・ポーター(33=アメリカ)、スペンスに挑むダニー・ガルシア(32=アメリカ)、5階級制覇に意欲をみせるマイキー・ガルシア(32=アメリカ)、ここ数年は休養が多いキース・サーマン(31=アメリカ)といった王者経験者たちだ。
いずれ劣らぬ実力者だが、クロフォードとスペンスとの差は小さくない。
 WBA王者のヨルデニス・ウガス(34=キューバ)は現状維持が精一杯だろうか。来年は魅力たっぷりのふたりのホープ、16戦全KO勝ちの22歳、バージル・オルティス(アメリカ)と、26戦全勝(24KO)のジャロン・エニス(23=アメリカ)がタイトルに絡んできそうだ。

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