「村田に勝った男」の凱旋初防衛戦
挑戦者は17戦全勝の21歳

  • 2019/03/22

 昨年10月、米国ネバダ州ラスベガスで村田諒太(33=帝拳)の持つWBA世界ミドル級王座に挑み、下馬評を覆して大差の12回判定勝ち、戴冠を果たしたロブ・ブラント(28=アメリカ)の初防衛戦。試合会場はブラントの出身地、ミネソタ州セントポールから北に130キロほどのヒンクリーということもあり、新王者にとっては凱旋試合といっていいだろう。17戦全勝(7KO)の21歳、カサン・バイサングロフ(ロシア)を相手にどんな戦いをするのか要注目だ。
 ブラントはアマチュア時代、09年に全米選手権ライト・ヘビー級で優勝し、翌10年に全米ゴールデングローブ(GG)大会を制覇している。特に10年のGG大会では、のちに12年ロンドン五輪代表になるマーカス・ブラウン(28=アメリカ 現WBA暫定世界ライト・ヘビー級王者)を準決勝で破っているほどだ。124戦102勝22敗のアマ戦績を残して12年6月にプロデビュー。以後も歩みは順調で、強豪との対戦こそ少なかったもののミドル級のWBC米大陸王座とNABA北米王座を獲得し、WBA2位までランクアップした。その後、17年10月に賞金トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」に参戦するため一時的にスーパー・ミドル級に転向。しかし、初戦で元世界ライト・ヘビー級王者のユルゲン・ブレーマー(40=ドイツ)に大差の12回判定負けを喫した。左構えの元王者のスキルと強打を警戒し過ぎたのか、あるいは初の国外試合ということで調整が不十分だったのか、ジャッジのひとりが10ポイント差をつけるほどの完敗だった。
 この1敗でブラントの評価は急落、村田に挑戦する際は9対2、または4対1というオッズが出ていたほどだ。もちろん村田有利の数字である。ところが、この試合でブラントは元世界ライト・ヘビー級王者のエディ・ムスタファ・ムハマド(エディ・グレゴリー=アメリカ)トレーナーと綿密な戦略を練り、リング上で遂行してみせた。その結果、ミドル級では異例といえる1262発ものパンチを放ち、28パーセント超の356発を命中させた。村田も774発のパンチを打って180発を当てたが及ばなかった。ちなみにブラントが放った1262発は、Compu-Boxがデータを取り始めた1985年以降のミドル級世界戦では最多のパンチ数である。村田に勝って戦績を25戦24勝(16KO)に伸ばしたブラントは、戴冠後にトップランク社と共同プロモート契約を結び、今回の凱旋防衛戦に臨むことになった。
 興味深いのは、ブラント陣営が選んだ初防衛戦の相手が村田と戦闘スタイルが似た選手である点だ。バイサングロフはロシアのチェチェン共和国サマシュキ出身で、現在は隣国ウクライナの首都キエフに住んでいる。13年9月のプロデビュー戦をはじめ、17試合のうち14試合をウクライナで行ってきた。世界的な強豪との対戦は少なく、WBAインターコンチネンタル王座決定戦で元世界ランカーのギド・ニコラス・ピット(31=アルゼンチン)に12回判定勝ちを収めたぐらいだ。バイサングロフは187センチの長身で、ガードを高めにした構えから機をみて圧力をかけ、ワンツー、左ボディブローなどを狙う右のボクサーファイター型といえる。村田ほどの体力、パワー、前進力、耐久力は感じられないが、潜在的な能力は高そうだ。ブラントに勝てば一気に才能が開花する可能性もある。
 ただ、現時点での能力を比べると、ほとんどの面でブラントが上回っている。地元の声援を背に28歳の王者がスピードのある左ジャブで主導権を握り、巧みに立ち位置を変えながら挑戦者をコントロール。そのうえで機をみて細かいパンチをまとめて打ち込んでいく可能性が高い。ブラントが中盤から終盤にかけて差を広げたすえのストップ勝ち、が順当な線といえよう。アメリカのリングが初めてとなるバイサングロフは早い段階でペースを握り、ブラントを焦らせる展開に持ち込みたいところだが、6対1のオッズ(ブラント有利)が示すように、それは簡単な作業ではなさそうだ。

ミドル級トップ戦線の現状

WBA SC :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBA   :ロブ・ブラント(アメリカ)
WBC   :サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
WBC 暫定:ジャーマル・チャーロ(アメリカ)
IBF   :ダニエル・ジェイコブス(アメリカ)
WBO   :デメトリアス・アンドレイド(アメリカ)

 大物が揃うなか、ベルトを持つ5人全員が昨年4月以降に戴冠を果たしていることでも分かるように、現在のミドル級は風雲急を告げる状況といえる。WBAスーパー王座とWBC王座を持つサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)は昨年9月、V20王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)を僅少差の判定で破って戴冠。その3ヵ月後にはWBAのスーパー・ミドル級王座も獲得して3階級制覇を成し遂げた。WBAレギュラー王者のロブ・ブラント(28=アメリカ)は昨年10月、村田諒太(33=帝拳)から王座を奪い取っている。5人のなかで最も在位の長いのがWBC暫定王者のジャーマル・チャーロ(28=アメリカ)だが、それでも戴冠は18年4月だ。IBF王者のダニエル・ジェイコブス(32=アメリカ)とWBO王者のデメトリアス・アンドレイド(31=アメリカ)は、ともに昨年10月、決定戦を制して現在の肩書を手にしている。
 こうしたなか5月にはアルバレスとジェイコブスが統一戦を行うことが決定。ブラントはカサン・バイサングロフ(21=ロシア)を迎えて初防衛戦に臨むことになっている。相手は未定だが、アンドレイドは6月に2度目の初防衛戦を予定しており、ゴロフキンも6月に再起戦を計画中と伝えられる。捲土重来を期する村田も再起戦の時期を探っているところだ。一方、半年前にドーピング違反のため自らWBO王座を返上したビリー・ジョー・サンダース(29=イギリス)はスーパー・ミドル級への転向が伝えられる。
 このほか、元IBF王者で現WBA1位のデビッド・レミュー(30=カナダ)と、王座決定戦でジェイコブスに惜敗したセルゲイ・デレビヤンチェンコ(33=ウクライナ)も王者級の力を持っている。これだけ実績も知名度も高いタレントが揃っているだけに、さらなる好カードの実現を期待したいところだ。

イギリスの元世界王者同士の対決
オッズは11対10でユーバンク・ジュニア有利

 スーパー・ミドル級でIBF王座を2度獲得した実績を持つジェームス・デゲイル(33=イギリス)と、ミドル級時代の15年2月にWBA暫定王座を手にしたことがあるクリス・ユーバンク・ジュニア(29=イギリス)。実績も知名度もあるイギリスのトップ選手同士によるサバイバルマッチだ。
 デゲイルはアマチュア時代に08年北京五輪ミドル級で金メダルを獲得し、翌年2月にプロデビュー。以後、7年間で28戦25勝(15KO)2敗1分の戦績を残している。15年5月に獲得したIBF世界スーパー・ミドル級王座は17年12月のV4戦でケイレブ・トゥルーアックス(35=アメリカ)に明け渡したが、4ヵ月で奪回。その後、暫定王者との指名戦を拒否するかたちで王座を返上した。ベースは左構えだが、機をみて右にチェンジすることもあるスイッチ・ヒッターで、パワーよりもテクニックに重点を置いたボクシングをするタイプだ。
 ユーバンク・ジュニアはアマチュアで26戦(24勝2敗)をこなしたあと、90年代にミドル級とスーパー・ミドル級で世界王者になった父親の指導を受けながらプロに転向した。4年前にWBA暫定世界ミドル級暫定王座を獲得したが、これは8ヵ月後に返上。17年にスーパー・ミドル級に転向し、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」にも参戦して初戦を突破したが、準決勝でWBAスーパー王者のジョージ・グローブス(イギリス)に判定で敗れた。戦績は29戦27勝(21KO)2敗。巧みな防御と好機に一気に詰め切る鋭い攻撃が持ち味だが、グローブス戦では相手の迎撃策に持ち味を封じられてしまった。
 11対10のオッズでユーバンク有利と出ているように、両者の戦力は拮抗している。攻撃力で勝るユーバンク・ジュニアが圧力をかけ、技巧派のデゲイルが迎え撃つ展開になりそうだが、優劣の見極めが難しいラウンドが続く可能性がある。

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