激闘のドローから14ヵ月ぶりのリマッチ
再び接戦か それともKO決着か

  • 2020/02/17

 43戦42勝(41KO)1分という驚異的なレコードを残しているデオンテイ・ワイルダー(34=アメリカ)と、同じく無敗(30戦29勝20KO1分)をキープしている元3団体王者のタイソン・フューリー(31=イギリス)が1年2ヵ月ぶりのリマッチに臨む。18年12月、両者は今回と同じ立場で拳を交え、「年間最高試合」の声が出るほどの熱戦を展開したすえ12回引き分けという結果に終わっている。終盤に2度のダウンを奪ったワイルダー、全般をとおして試合をコントロールしたフューリー、それぞれが持ち味を発揮した名勝負だった。その後、ふたりとも2試合をこなし、ワイルダーは2KO勝ち、フューリーはTKOと判定で勝利を収めている。14ヵ月の期間を置いて実現する注目の再戦は今度も接戦になるのか、それともKOで完全決着となるのか。初戦は11対8でワイルダー有利とみられていたが、今回は11対10のオッズ(2月10日時点)でフューリー有利と出ている。

右ストレートを主武器に5年間に10度防衛中のワイルダー

 ワイルダーが戴冠を果たした15年1月の時点で、この細身のスラッガーが5年超の長期政権を築き、下記のように二桁防衛を果たすと予想した関係者やファンは少なかったのではないだろうか。

戴冠 15年 1月 バーメイン・スティバーン 12回判定
V1 15年 6月 エリック・モリナ 9回KO
V2 15年 9月 ヨアン・デュオパ 11回TKO
V3 16年 1月 アルツール・ズピルカ 9回KO
V4 16年 7月 クリス・アレオーラ 8回終了TKO
V5 17年 2月 ジェラルド・ワシントン 5回TKO
V6 17年11月 バーメイン・スティバーン② 1回KO
V7 18年 3月 ルイス・オルティス 10回TKO
V8 18年12月 タイソン・フューリー 12回引き分け
V9 19年 5月 ドミニク・ブリージール 1回KO
V10 19年11月 ルイス・オルティス② 7回KO

 王座獲得以前はデビューから32連続KO勝ち、しかもすべて4ラウンド以内という即決型だったことを考えると、世界王者になったあともワイルダーが成長を続けてきたことが分かる。特に10度の防衛戦をこなしながら長丁場を戦い抜くスタミナと体力、相手のパンチに耐えるタフネスも十分にあることを証明してきたといえる。なかでもワイルダーにとって大きな試練となったのがフューリーとの初戦だ。
 この試合、ワイルダーが圧力をかける展開に持ち込んだもののパンチの精度を上げることはできず、フューリーの迎撃スタイルに苦戦を強いられた。ダメージを受けるほどの被弾があったわけではないが、空回りさせられた印象は拭えなかった。それでも9回にダウンを奪い、さらに最終12回には右ストレートから左フックをフォローして痛烈なダウンを追加。驚異的ともいえるフューリーの粘りにあって仕留めることはできなかったが、引き分け防衛という結果を引き出した。
 その後は五輪戦士のドミニク・ブリージール(アメリカ)を1回、元WBA暫定王者のルイス・オルティス(キューバ)を7回、ともに鮮やかな右ストレート一発で葬るなど近況は悪くない。ただ、リマッチとなったオルティス戦では、間合いをとって戦う技巧派サウスポーを相手に攻め手を封じられて後手に回ることになり、けりをつけるまではポイントでリードを許していた。あらためて右の脅威を印象づけた一方、左構えでも戦えるフューリーに攻略のヒントを与えることになったともいえる。

新トレーナーを迎えるなどフューリーに三つの変化

 14ヵ月前の初戦では引き分けで王座獲得を逃したフューリーだが、「勝っていた」という支持者の数ではワイルダーを上回った。ほとんどのパンチを見切ったという手応えも十分にあったものと思われる。それでも本人は2度のダウンを喫していることから「負けみたいな試合だった」と内容にも結果にも満足はしていない様子だ。
 こちらも28戦目にして初めて勝利を逃したわけだが、その後は2連勝を収めている。半年後の再出発試合では、WBO2位にランクされていた24戦全勝(16KO)のトム・シュワルツ(ドイツ)を圧倒して2回TKO勝ち。その3ヵ月後にはWBA4位、IBF12位に名を連ねていた21戦無敗のオット・ワリン(スウェーデン)に12回判定勝ちを収めている。ただ、このワリン戦ではパンチによって右目上を大きく切り裂かれ、あわやTKO負けかという綱渡りの戦いを強いられたものだ。勝ったものの試合後に47針も縫うことになった。
 18年12月以降、ワイルダーが不可なく順調に防衛回数を伸ばしているのとは対照的に、挫折こそないもののフューリーには三つの変化があった。ひとつはワイルダー戦後にトップランク社とプロモート契約を結んだことだ。そのために今回の再戦がスムーズに実現することになったともいえる。もうひとつはワリン戦で右目上に大きな傷を負ったことだ。完治したとはいえ不安材料になっていることは間違いない。
 最も大きな変化は17年から指導を受けてきたベン・デイビソン・トレーナーと袂を分かち、ワリン戦後に新たにジャバン・ヒル・トレーナーとコンビを組んだことだろう。ヒル・トレーナーは80年代に活躍した5階級制覇王者のトーマス・ハーンズ(アメリカ)らを指導した「クロンクジム」の総帥、故エマヌエル・スチュワード・トレーナーの甥で、90年代からおじの参謀としてコーチを務めてきた人物だ。アドニス・スティーブンソン(ハイチ/カナダ)やアンソニー・ディレル(アメリカ)、ルスラン・チャガエフ(ウズベキスタン)、コーネリアス・バンドレイジ(アメリカ)といった世界王者を指導した経験を持っている。この新コンビが打倒ワイルダーに向けてどんなトレーニングを積み、試合でどんな戦術を選択するのか要注目だ。

右を狙う王者、外して迎撃狙いの挑戦者 KO決着を期待

 1年以上前とはいえ正味36分間にわたって拳を交えた両者だけに、相手の長所と攻めどころは分かっているはずだ。初戦同様、ワイルダーは右ストレートを狙うことになるだろうし、フューリーは相手の一撃を外しながら迎え撃つ策をとるものと予想される。極端な言い方をすれば、これも初戦と同じように王者の右ストレートが当たるか当たらないか、それが勝負を分けることになるはずだ。先のブリージール戦やオルティス戦のようにワイルダーの右が急所を正確に射抜けば、今度こそフューリーも夢の国に送り込まれることになるだろう。オッズが示すように、その確率は50パーセントと見ていい。
 その一方、フューリーが単なる的ではないことも肝に銘じておきたい。構えを左右に変えることができる器用な大巨人も30試合のうち20のKO勝ちを収めているのだ。ワイルダーが平均以上の耐久力を備えているとはいえ、身長206センチ、体重115キロの挑戦者のパンチを直撃された場合、ダメージを被ることなく立っていられる保証はどこにもない。
 初戦のように長期戦になるのか、それとも前半でけりがつくのか。ヘビー級史に残る熱戦とKO決着を期待したい。

<資料1>TALE OF THE TAPE 両選手の体格比較

  • 名前

    ワイルダー

    フューリー

  • 生年月日/年齢

    1985年10月22日/34歳

    1988年8月12日/31歳

  • 出身地

    タスカルーサ(米国アラバマ州)

    マンチェスター(英国)

  • アマチュア実績

    08年北京五輪ヘビー級銅

    06年世界ジュニア選手権3位

  • アマチュア戦績

    35戦30勝5敗

    35戦31勝(26KO)4敗

  • プロデビュー

    08年11月

    08年12月

  • 獲得王座

    WBC世界ヘビー級王座
    (10度防衛中)

    WBA、IBF、WBO
    3団体統一世界ヘビー級王座

  • プロ戦績

    43戦42勝(41KO)1分

    30戦29勝(20KO)1分

  • KO率

    95%

    67%

  • 身長/リーチ

    201センチ/211センチ

    206センチ/216センチ

  • 体重(最新試合)

    99.33キロ

    115.44キロ

  • 戦闘タイプ

    右ボクサーファイター

    スイッチ・ヒッター

  • ニックネーム

    「ブロンズ・ボマー」

    ――

ヘビー級トップ戦線

WBA SC :アンソニー・ジョシュア(イギリス)
WBA    :マヌエル・チャー(レバノン/シリア)
WBA 暫定 :トレバー・ブライアン(アメリカ)
WBC    :デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)
WBC 暫定 :ディリアン・ホワイト(ジャマイカ/イギリス)
IBF    :アンソニー・ジョシュア(イギリス)
WBO    :アンソニー・ジョシュア(イギリス)

 三つのベルトを取り戻したアンソニー・ジョシュア(30=イギリス)、WBC王座を5年間に10度防衛中のデオンテイ・ワイルダー(34=アメリカ)、そして元3団体統一王者のタイソン・フューリー(31=イギリス)を「3強」と呼んでいいだろう。
 一度はアンディ・ルイス(30=アメリカ)に不覚をとったジョシュアが王座に返り咲いたことで、ヘビー級に主役が戻ってきた印象だ。今後はWBC王者との最終統一戦が注目されるようになるはずだが、その大舞台に立つ権利を得るのはワイルダーなのか、それともフューリーなのか。今回のWBCタイトルマッチは、その有資格者を決める戦いといえる。
 もっともジョシュアも6月にIBF1位のクブラト・プーレフ(38=ブルガリア)との防衛戦が計画されており、うかうかできない状態であることに変わりはない。ルイスとの初戦で打たれ脆さを暴露したことで相手に与える心理的プレッシャーが弱まり、今後は厳しい戦いを強いられる可能性がある。勢いを取り戻すためにもプーレフ戦では豪快なKO防衛を期待したい。
 クルーザー級の4団体王座を放棄してヘビー級に参入してきたオレクサンダー・ウシク(33=ウクライナ)は昨年10月に転向初戦を行い、ベテランのチャズ・ウィザスプーン(38=アメリカ)に7回終了TKO勝ち。それ以前からWBO1位にランクされており、今後は同団体の王座挑戦を目指す予定だ。ジョシュアが王座を返上した場合は最優先で決定戦のチャンスが回ってきそうだ。
 こうした選手たちに次ぐ実力者としては元WBA暫定王者のルイス・オルティス(40=キューバ)、元WBA王者のアレキサンダー・ポベトキン(40=ロシア)、WBC暫定王者のディリアン・ホワイト(31=ジャマイカ/イギリス)がいる。さらにトップ戦線の新しいメンバーとしてアダム・コウナツキ(30=ポーランド)が入ってきた。3月に元世界ランカーのロバート・ヘレニウス(36=スウェーデン/フィンランド)との一戦が組まれているが、これも突破すれば近い将来の挑戦者候補としてクローズアップされそうだ。
 世界への先陣争いとして4月に行われるダニエル・デュボア(22=イギリス)対ジョー・ジョイス(34=イギリス)にも注目したい。昨年12月に藤本京太郎(33=角海老宝石)を2回KOで下した試合を含めて14戦全勝(13KO)のデュボアと、16年リオデジャネイロ五輪銀メダリストでプロ転向後は10戦全勝(9KO)のジョイス。世界戦並みの注目カードといえる。
 もうひとり、12戦全勝(10KO)のWBC18位、エフェ・アジャバ(25=ナイジェリア)の名前も覚えておきたい。身長198センチ、リーチ216センチ、体重108キロ前後と体格にも恵まれており、成長株のひとりとして脚光を浴びつつある。デュボアとの出世争いが楽しみだ。

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2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの