「プリンス」ナジーム・ハメド特集!

  • 2020/05/22

 かつてのスーパースター特集、6月最初の今回は1990年代から2000年代初頭にかけて席捲したイギリスの異端ボクサー、元世界フェザー級チャンピオンのナジーム・ハメド(イギリス)が登場する。「プリンス」のニックネームを持つハメドは37戦36勝(31KO)1敗の戦績を残したハードパンチャーだが、ボクシングの教科書から大きく外れた変則サウスポーだった。

2度の統一戦を含め史上4位の10連続KO防衛

 中東イエメンにルーツを持つハメドは7歳のときに父親のもとでボクシングを始め、のちにブレンダン・イングル・トレーナーの指導を受けることになる。アマチュアで67戦62勝5敗の戦績を残したハメドは1992年4月、18歳でプロデビュー。2年後にはEBU欧州バンタム級タイトルを獲得し、その4ヵ月後にはスーパー・バンタム級のWBCインターナショナル・タイトルも手中に収めた。
 世界タイトル獲得は1995年9月のこと。WBOフェザー級タイトルを7度防衛中のスティーブ・ロビンソン(イギリス)を8回TKOで屠ったのだ。初防衛戦ではサイド・ラワル(ナイジェリア)をわずか35秒で退け、V2戦では初回にダウンを喫したものの次の回に2倍返しでけりをつけた。元王者のマヌエル・メディア(メキシコ)には手こずったものの11回TKOで退けた。1988年に発足したWBOが新興団体だったこともあり実力には常に懐疑的な見方がつきまとったが、イギリスだけでなく徐々に世界的な認知度と評価を上げていった。
 1997年2月にはIBFタイトルを11度防衛中のトム・ジョンソン(アメリカ)との統一戦で8回TKO勝ち。その年の瀬には初めてアメリカのリングに上がり、元WBC王者のケビン・ケリー(アメリカ)と歴史に残る激闘を展開した(4回KO勝ち)。次戦では試合間近になってWBA王座を剥奪された元3階級制覇王者のウィルフレド・バスケス(プエルトリコ)に7回TKO勝ちを収め、あらためて階級最強を証明してみせた。特筆すべきはハメドが極めて早いペースで試合をこなした点である。1996年は4度、1997年は5度も世界戦のリングに上がっている。また、これに1998年4月のバスケス戦を含めた10度の防衛はすべてKO(TKO)で終わらせている点にも注目したい。10連続KO防衛は史上4位タイ記録でもある。
 元王者のウェイン・マッカラー(イギリス)に連続KOは拒まれたが、その後もハメドは防衛を重ね、1999年10月にはWBC王者のセサール・ソト(メキシコ)にも勝利をおさめ、同じ階級で3団体の王座を獲得した。これにブヤニ・ブング(南アフリカ共和国)戦、オーギー・サンチェス(アメリカ)戦を加え、防衛回数は15まで伸ばした。同じ階級のエウセビオ・ペドロサ(パナマ)の19度防衛、クリス・ジョン(インドネシア)の18度防衛には及ばないものの、他団体王者との統一戦2試合を含むハメドのV15も立派な記録といえる。

入場からリングイン そしてスリリングな試合

 ハメドの試合は常にスリリングだったが、それ以前の入場シーンやリングインにも注目したい。もちろん見る者を最も楽しませてくれたのはリング上でのパフォーマンスである。身長164センチ、リーチ163センチとフェザー級(約57.1キロ以下)では体格的に大きくはなかったが、スタンスを広めにとったノーガードの構えで対戦者を挑発。相手が打ってくると上体を反らせた極端なスウェーで外し、同時にジャンプしながらパンチを繰り出す。あるいは思いがけない角度、タイミングでパンチを打ち込む。その一発一発に破壊力があるのだから見応えは十分だ。自身がキャンバスを這うこともあったが、その紙一重のスリルが観戦者の興奮を掻き立てたともいえよう。そこがハメドの魅力でもあった。
 ボクシングの教科書から著しく逸脱したスタイルを貫いたため、識者のなかにはハメドが世界王者になっても評価しない人がいたのは事実だが、派手な勝利を重ねることで徐々に認めさせていったといえる。世界中にハメドのスタイルを真似るボクサーが出たことでも、この異端児が与えたインパクトの大きさが分かるだろう。

 番組では、視聴者アンケートの結果に沿ってハメドの名勝負を紹介していく。ダウン応酬の激闘となったケビン・ケリー戦、戦慄のKO劇として知られるオーギー・サンチェス戦、ブヤニ・ブング戦などは必見だ。

ナジーム・ハメド 世界戦 全戦績

1995年 9月 スティーブ・ロビンソン ○8回TKO
(WBO世界フェザー級タイトル獲得)
1996年 3月 サイド・ラワル ○1回KO 防衛1
1996年 6月 ダニエル・アリシア ○2回TKO 防衛2
1996年 8月 マヌエル・メディナ ○11回TKO 防衛3
1996年11月 レミヒオ・モリナ ○2回TKO 防衛4
1997年 2月 トム・ジョンソン ○8回TKO 防衛5
(IBF世界フェザー級タイトル獲得)
1997年 5月 ビリー・ハーディ ○1回TKO 防衛6
1997年 7月 ファン・カブレラ ○2回TKO 防衛7
1997年10月 ホセ・バディージョ ○7回TKO 防衛8
1997年12月 ケビン・ケリー ○4回TKO 防衛9
1998年 4月 ウィルフレド・バスケス ○7回TKO 防衛10
1998年10月 ウェイン・マッカラー ○12回判定 防衛11
1999年 4月 ポール・イングル ○11回TKO 防衛12
1999年10月 セサール・ソト ○12回判定 防衛13
(WBC世界フェザー級タイトル獲得)
2000年 3月 ブヤニ・ブング ○4回KO 防衛14
2000年 8月 オーギー・サンチェス ○4回TKO 防衛15
※世界戦の戦績は16戦全勝(14KO)

世界王座の連続KO防衛記録

【1】17 ウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ) 1977年~1983年 SB級
ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン) 2010年~2016年 M級
【3】14 ダリウス・ミハエルゾウスキー(ポーランド) 1997年~2003年 LH級
【4】10 ロベルト・デュラン(パナマ) 1973年~1977年 L級
ナジーム・ハメド(イギリス) 1996年~1998年 Fe級

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