和製モンスター vs カリブの至宝
最強決定トーナメント WBSS準決勝

  • 2019/05/13

 3階級制覇を成し遂げている「和製モンスター」、WBA世界バンタム級王者の井上尚弥(26=日本)と、順調に成長を続けているカリブの至宝、IBF同級王者のエマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)が王座統一戦で拳を交える。この試合は階級最強を決めるトーナメント戦、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」のバンタム級準決勝として行われる。潜在能力が高く、さらなる飛躍が期待される26歳同士の注目カードだ。通常、こうした将来性のある全勝のチャンピオン同士の試合、しかも世界王座の統一戦は敬遠される傾向にあるが、今回はトーナメント戦のなかで実現することになった。そこにWBSSの存在意義があるといえよう。
 バンタム級転向後の2試合をいずれも圧倒的な1回KO(TKO)で片づけている17戦全勝(15KO)の井上。総合的に高い戦力を備えた19戦全勝(12KO)のロドリゲス。試合開始のゴングからピリピリした緊張感漂う試合になるものと思われる。ミスを犯した方が初の挫折を味わうことになりそうだ。

世界戦7連続KO中の井上 直近の2戦は計182秒

 井上はアマチュアで81戦(75勝6敗)を経験後、12年10月に19歳でプロデビュー。以後、記録ずくめの早い出世を果たしてきた。4戦目にのちの世界王者、田口良一(ワタナベ)に10回判定勝ちを収めて日本ライト・フライ級王座を獲得すると、次戦では東洋太平洋同級王座についた。そして6戦目にはWBC世界同級王座を奪取。これは当時の日本最速記録だった。この14年の晦日、井上は一気に2階級上のスーパー・フライ級に転向し、世界戦だけで30戦を経験していたWBO王者のオマール・ナルバエス(アルゼンチン)に挑戦。初回にガードの上から叩きつけた右ストレートでダウンを奪い、2回には左のボディブローでフィニッシュした。超ド級のパワーに屈したナルバエスの陣営が、試合直後に井上のグローブ・チェックを要求したほどの衝撃的なKOだった。
 ただし、これは序章にすぎなかった。拳の負傷で1年のブランクから復帰後、初防衛戦を圧巻の2回TKOで終わらせると、2度目の防衛戦こそ相手に判定まで粘られたがV3戦からV7戦まで4連続KO(TKO)勝ちを収めた。特に6度目の防衛戦ではアメリカのリングに上がり、相手に何もさせずに6回TKOで蹴散らしている。怪物が「モンスター」として世界認知された試合といってもいいかもしれない。
 昨年はさらに勢いを増し、5月にジェイミー・マクドネル(イギリス)を112秒で粉砕して現在の王座を獲得。初防衛戦とWBSS準々決勝を兼ねた10月のファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)戦では、芸術的なワンツーを決めて70秒で元王者をキャンバスに沈めた。スーパー・フライ級時代のV3戦から数え、これで世界戦7連続KO勝ちだ。
 井上はスピード、パワー、テクニック、インテリジェンスなど極めて高い次元の戦闘能力を備えた万能型の強打者で、海外での防衛戦を含め世界戦を12度(全勝11KO)こなすなど最近は経験値も上がっている。そのうえ、まだまだ伸びしろを感じさせるのだから末恐ろしい選手といえる。ただ、あまりの強さゆえこの1年で実質182秒しか戦っておらず、それがマイナスの影響を及ぼす可能性がないとはいいきれない。その点が数少ない不安要素といえようか。

1年前にイギリスで戴冠を果たしたロドリゲス

 IBF王者のロドリゲスも現時点で高い評価を受けているうえ、将来性も買われている。世界ユース選手権に出場するなどアマチュアで182戦171勝11敗の戦績を収めたロドリゲスは、井上よりも4ヵ月早い12年6月にプロデビューした。14年にWBO中南米王座、15年にWBAとWBCの中南米王座を獲得し、16年には世界挑戦経験者のアルベルト・ゲバラ(メキシコ)にも大差の10回判定勝ちを収めた。こちらも期待どおりの出世を果たしてきたといっていいだろう。
 昨年5月、空位のIBF王座を4代前の王者、ポール・バトラー(イギリス)と争い、敵地で大差の12回判定勝ちを収めて戴冠を果たした。前日計量時に体重オーバーで失格したバトラーから初回に2度のダウンを奪う好スタートだったが、詰めきれずにフルに戦ったすえの勝利だった。ただ、イギリスのリングを経験済みという点では多少のアドバンテージにはなるかもしれない。5ヵ月後、指名挑戦者のジェイソン・マロニー(オーストラリア)を相手にしての初防衛戦も前半は快調だったが、左拳を痛めたため中盤以降は失速。ボディを攻められて失点し、辛うじて2対1の判定勝ちを収めている。この試合をリングサイドで観戦した井上は、「拳を痛めた影響か期待したファイトではなかったが、前半のカウンターは切れていた」とライバルを分析している。
 井上同様、ロドリゲスもスピード、パワー、テクニックなど世界のトップで戦うために必要な戦闘力を高いレベルでバランスよく備えた右のボクサーファイター型だ。
イギリスのほかドミニカ共和国(2度)、アメリカ(2度)のリングに上がったこともある。世界戦は2度だが、経験値は決して低くはない。

オッズは5対1で井上有利 ボディブローで攻め落とす?

 ロドリゲスも高い戦闘能力を備えた穴のない選手だが、個々の戦力を単純比較した場合、井上を上回るものがあるとはいえない。また総合力でも井上の方が上を行っていると思われる。オッズは5対1で意外なほどの大差で井上有利と出ているが、さすがにそこまでの戦力差はなさそうだ。この数字は両者の直近の2戦が大きく影響しているものと考えるべきだろう。王者を112秒、元王者を70秒で屠った井上と、2試合連続で12回判定勝ち、しかも1試合はジャッジの見解が2対1に割れる辛勝だったロドリゲス。この差がオッズに反映されているようだ。
 ともに左ジャブから攻防パターンを組み立てると思われることから、まずはリードブローの差し合いに注目したい。場合によっては互いに左ジャブを省略してフェイントをかけ合う神経戦でスタートするかもしれない。戦う両者はもちろんだが、観戦する側も極度の緊張を強いられる試合になりそうだ。スリリングな攻防のなか、先に均衡を破るとしたら井上の左ボディブローだろうか。これが切り崩しの突破口になる可能性が高いとみる。

<資料1>WBSS バンタム級トーナメント



<資料2>TALE OF THE TAPE 両選手の体格比較

  • 名前

    井上

    ロドリゲス

  • 生年月日/年齢

    1993年4月10日/26歳

    1992年8月8日/26歳

  • 出身地

    神奈川県座間市

    マナティ(プエルトリコ)

  • アマチュア実績

    11年世界選手権出場(3回戦敗退)

    10年AIBAユース選手権準優勝

  • アマチュア戦績

    81戦75勝(48KO)6敗

    182戦171勝11敗

  • プロデビュー

    12年10月

    12年6月

  • 獲得王座

    WBC ライト・フライ級
    WBO スーパー・フライ級
    WBA バンタム級

    IBF バンタム級

  • プロ戦績

    17戦全勝(15KO)

    19戦全勝(12KO)

  • KO率

    88%

    63%

  • 世界戦の戦績

    12戦全勝(11KO)

    2戦2勝

  • 身長/リーチ

    165センチ/171センチ

    168センチ/169センチ

  • 戦闘タイプ

    右ボクサーファイター型

    右ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    「モンスター」

    「MANNY」

バンタム級トップ戦線の現状

WBA SC :ノニト・ドネア(フィリピン)
WBA   :井上尚弥(日本)
WBC   :ノルディン・ウーバーリ(フランス)
WBC 暫定:井上拓真(日本)
IBF   :エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)
WBO   :ゾラニ・テテ(南アフリカ共和国)
WBO 暫定:ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)

 4人の世界王者を含む8人がエントリーして昨年10月にスタートしたバンタム級の「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」。WBAレギュラー王者の井上尚弥(26=日本)、IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)、WBO王者のゾラニ・テテ(31=南アフリカ共和国)の3人が準々決勝で王座を守るなか、WBAスーパー王座の持ち主だけがライアン・バーネット(26=イギリス)からノニト・ドネア(36=フィリピン)に変わった。試合中にバーネットが腰を痛めたための棄権TKO決着だった。そのドネアは今年4月の準決勝でテテと戦う予定だったが、今度はテテが右肩を負傷。ドネアは代役のステファン・ヤング(30=アメリカ)を左フック一発で大の字にして初防衛を果たした(6回TKO)。厳しいブロックに配されたと思われたドネアだが、運にも恵まれてWBSS決勝に駒を進めている。
 こうした一方、もうひとつの準決勝戦、井上対ロドリゲスは事実上の決勝戦との見方もある。これは決してドネアの実績、実力を軽視しているからではなく、それほどまでに井上とロドリゲスの力量が秀でているという意味ととらえた方がいいだろう。将来性豊かな伸び盛りの26歳同士がここで潰し合うわけだが、そこにこそトーナメント方式のイベントの非情さと醍醐味がある。
 昨秋の時点ではWBC王座は空位だったが、正王座にノルディン・ウーバーリ(32=フランス)、暫定王座に井上拓真(23=日本)がついた。WBCは両陣営に団体内の統一戦を課しているが、まだ決定のニュースはない。ここでは返り咲きを目指す前王者で現1位のルイス・ネリ(24=メキシコ)が挑戦待機状態にある。

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