最強決定トーナメント「WBSS」準決勝
5階級制覇王者 vs 世界戦最短11秒KO王者

  • 2019/04/19

 この試合はバンタム級のWBAスーパー王者、ノニト・ドネア(36=フィリピン)とWBO王者、ゾラニ・テテ(31=南アフリカ共和国)の王座統一戦だが、同時に階級最強を決めるトーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の準決勝でもある。18年のプロキャリアで44戦39勝(25KO)5敗の戦績を残している5階級制覇王者のドネア、世界戦史上最短の11秒KO勝ちを記録している2階級制覇の長身サウスポー、テテ(31戦28勝21KO3敗)。2つのベルトを持ってWBSS決勝に駒を進めるのは――。

20度の世界戦を経験している「フィリピンの閃光」ドネア

 フィリピン生まれのドネアは少年時代に家族とともにアメリカに移住し、兄のグレン・ドネアに続いて11歳でボクシングを始めた。アマチュア戦績は86戦78勝(8KO)8敗。KOが少ないのは「パンチを当てたら動くというボクシングに徹していたから」(ドネア)という。2000年には17歳で全米選手権を制したが、のちにプロで2階級制覇を果たすブライアン・ビロリア(アメリカ)に五輪出場は阻まれた。
 プロ転向は01年2月。2戦目で5回判定負けを喫した以外は順調に白星を重ね、07年には当時28戦全勝(22KO)だったビック・ダルチニャン(アルメニア/オーストラリア)を衝撃的な5回TKOで破ってIBF世界フライ級王座を獲得した。このあとは手のつけられないほどの強さを見せつけ、09年にWBA暫定世界スーパー・フライ級王座、11年にはフェルナンド・モンティエル(メキシコ)を芸術的な左フックで倒してWBC、WBO世界バンタム級王座についた。翌12年にはスーパー・バンタム級のWBO王座とIBF王座をゲット、4階級制覇を成し遂げた。このころには全階級を通じた総合評価ともいえる「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」の上位にランクされたほどで、「フィリピーノ・フラッシュ(フィリピンの閃光)」の異名どおりの活躍といえた。
 しかし、30歳を過ぎたころから年齢と体重の壁にぶつかる。スーパー・バンタム級のWBA王者、ギジェルモ・リゴンドー(38=キューバ)に12回判定で敗れ、WBA世界フェザー級のスーパー王者になってからはニコラス・ウォータース(ジャマイカ)に6回TKO負けを喫した。その後、スーパー・バンタム級で返り咲きを果たしたもののV2戦でジェシー・マグダレノ(27=アメリカ)に競り負けて王座から陥落。昨年4月にはフェザー級でWBO暫定王座決定戦に出場したが、カール・フランプトン(32=イギリス)に12回判定負けを喫した。こうしたなか再びバンタム級まで体重を落としてWBSSに参戦。初戦でWBAスーパー王者だったライアン・バーネット(26=イギリス)に4回終了TKO勝ちを収め、ベルトを携えて今回のテテ戦に臨むことになった。「ピークは過ぎた」という見方が多いのは事実だが、世界戦だけで20戦(16勝10KO4敗)を収めており、その経験値と頭脳、技術、パンチ力は侮れない。

13度の1回KO勝ちを収めているWBO王者テテ

 WBO王者のテテもプロに転じる前はアマチュアの経験がある。テテによると「アマチュアで400試合以上戦い、敗れたのは3度だけ。そのうちのひとつは兄に負けたもの」という。06年に1回TKO勝ちでデビューし、3戦目には試合開始から10秒でTKO勝ちをマークしている。世界戦史上最短KO記録となる17年11月のシボニソ・ゴニャ(南アフリカ共和国)戦を含めテテは13年間に13度の1回KO勝ちを収めているが、瞬間的に相手の隙を見つけて突く才能は若いときから備わっていたのかもしれない。
 ただ、キャリアの前半は必ずしも順風満帆というわけではなかった。最も大きな挫折は10年9月のモルティ・ムザラネ(36=南アフリカ共和国)戦であろう。テテはIBF世界フライ級王者の圧力に抗いきれずに後退を強いられ、疲弊したすえ5回に左フックを浴びてダウン。立ち上がったものの連打を浴びてレフェリーにストップされた。ひ弱さを打たれ脆さを露呈した試合といえる。ちなみに、ムザラネはその2年前にドネアと対戦して6回TKOで敗れている。このあとテテは11年にメキシコ、12年にアルゼンチン遠征で僅少差の判定負けを喫しているが、これらは敵地での試合であることを考慮する必要があるだろう。
 テテの世界初戴冠は14年7月のことで、来日して神戸で帝里木下(33=千里馬神戸)に大差をつけて判定勝ち、空位のIBFスーパー・フライ級王座を獲得している。初防衛戦では左アッパーで戦慄的な8回TKO勝ちを収めたが、ビジネス上の摩擦から王座を返上してバンタム級に転向。2年前、アーサー・ビラヌエバ(30=フィリピン)に勝ってIBF暫定世界バンタム級王座を獲得し、直後に正王者に昇格した。初防衛戦を右フック一発、11秒KOで片づけると、2度目の防衛戦では元2階級制覇のオマール・ナルバエス(43=アルゼンチン)を完封(12回判定勝ち)。WBSS準々決勝のミーシャ・アロイアン(30=ロシア)戦では初回にダウンを奪って判定で勝利を収めた。

長身サウスポーのテテにアドバンテージ 圧力をかけたいドネア

 酸いも甘いも噛み分けた、能力の高いベテラン同士のカードだけに展開予想は難しい。ドネアは左フック、右ストレートに一撃KOの破壊力を持つ強打者だが、技術力も高いうえ左右どちらの構えでも戦える器用さも持っている。一方、175センチの長身サウスポーのテテは11秒KOの印象が先行している感があるが、足と右ジャブで距離を保ったアウトボクシングをベースにした技巧派としての一面もある。これらを踏まえたうえで両者がどんなスタイルを選択し、チームがどんな策をアドバイスするのか、それによって展開は大きく違ってくるはずだ。
 こうしたなか最も確率的に高そうなのは、体格で劣るドネアが距離を潰すためにプレッシャーをかけ、テテが迎え撃つパターンだ。ドネアは揺さぶりをかけながら得意とする右ストレートと左フックを狙うものと思われる。これらが当たればKO勝ちが現実のものになるだろう。テテは相手の射程外から右ジャブを当ててアウトボクシングに徹するか、あるいはリスクを承知でドネアの入り際に左ストレート、右フック、左アッパーのカウンターを合わせるか、ふたつの選択肢を持っている。5対1というオッズはWBO王者にサービスし過ぎだとしても、その分だけテテにアドバンテージがあるといえよう。初回開始から目の離せないスリリングな攻防が期待される。瞬きは厳禁だ。
 なお、WBSSバンタム級のもうひとつの準決勝は5月18日(日本時間19日)、イギリスのグラスゴーで行われる。WBA王者の井上尚弥(26=大橋)対IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)の勝者が決勝に進むことになる。こちらも5対1のオッズで井上が有利とみられている。
 はたして頂上決戦の組み合わせは井上対テテになるのか、井上対ドネアになるのか、それともテテ対ロドリゲスなのか、はたまたドネア対ロドリゲスになるのか。

<資料1>WBSS バンタム級トーナメント



<資料2>TALE OF THE TAPE データ比較

  • 名前

    ドネア

    テテ

  • 生年月日/年齢

    1982年11月16日/36歳

    1988年3月8日/31歳

  • 出身地

    タリボン(フィリピン)

    ムダントサネ(南アフリカ共和国)

  • アマチュア実績

    00年全米選手権優勝

  • アマチュア戦績

    86戦78(8KO)8敗

    400戦以上(3敗)

  • プロデビュー

    01年2月

    06年5月

  • 獲得王座

    IBFフライ級
    WBA Sフライ級(暫定)
    WBA、WBC、WBOバンタム級
    IBF、WBO Sバンタム級
    WBAフェザー級

    IBF Sフライ級
    WBOバンタム級

  • プロ戦績

    44戦39勝(25KO)5敗

    31戦28勝(21KO)3敗

  • KO率

    57%

    68%

  • 世界戦の戦績

    20戦16勝(10KO)4敗

    7戦6勝(2KO)1敗

  • 身長/リーチ

    171センチ/173センチ

    175センチ/183センチ

  • 戦闘タイプ

    右ボクサーファイター型

    左ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    「フィリピーノ・フラッシュ」

    「LAST BORN」

バンタム級トップ戦線の現状

WBA SC :ノニト・ドネア(フィリピン)
WBA   :井上尚弥(大橋)
WBC   :ノルディン・ウーバーリ(フランス)
WBC 暫定:井上拓真(大橋)
IBF   :エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)
WBO   :ゾラニ・テテ(南アフリカ共和国)

 最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」が開催されているうえ、3階級制覇の井上尚弥(26=大橋)、WBC暫定王座を持つ弟の井上拓真(23=大橋)をはじめ、5階級制覇のノニト・ドネア(36=フィリピン)、世界戦史上最短の11秒KO記録を持つゾラニ・テテ(31=南アフリカ共和国)ら実力も話題性もある王者が揃っており、注目度の高いクラスといえる。主役は井上尚弥だ。以前はキャリアの少なさを指摘する声もあったが、デビューから6年半、12度の世界戦を含め17戦全勝(15KO)と非の打ちどころのない戦績を残している。国外防衛戦もこなしており、着実に経験値もアップ。WBSSでもぶっちぎりの本命に推されている。
 その井上を上回る経験値を持つのがWBAスーパー王者のドネアだが、階級を上下しているうちに年齢的にもピークを過ぎた印象がある。バンタム級に戻して2戦目、今回のテテ戦で圧勝するようならば井上を脅かす存在として再びクローズアップされることになるだろう。長身サウスポーのテテは離れて戦うこともできるパンチャー型で、戦うことになれば井上にとっては初めてのタイプといえる。そのテテに勝るとも劣らない評価を受けているのがIBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)だ。スピード、パワー、テクニックなどバランスのとれた戦力を持つ右のボクサーファイター型で、19戦全勝(12KO)と綻びをみせていない。井上との試合は緊迫した見応えのあるものになりそうだ。
 井上拓真はWBC王者のノルディン・ウーバーリ(32=フランス)との団体内統一戦が義務づけられている。戦績は井上が13戦全勝(3KO)、ウーバーリが15戦全勝(11KO)。こちらも興味深いカードだ。
 このWBCでは1位に元王者のルイス・ネリ(24=メキシコ)がランクされている。ネリは2度の来日でドーピング違反、体重オーバーとミソをつけ日本から事実上の追放処分を科されているが、29戦全勝(23KO)の戦績が示すとおり実力は王者と同等だ。今後はアメリカを中心に活動していくものと思われる。
 注目株としては12年ロンドン五輪に出場したWBC10位、WBO7位、22戦全勝(18KO)のデューク・ミカー(27=ガーナ)がいる。ことあるごとに井上尚弥への挑戦をぶち上げているが、ガーナからイギリス、そしてアメリカに主戦場を移したあとは試合でのアピールが不足気味だ。

もっと見る

閉じる

My番組登録とは?

My番組登録で見逃し防止!

見たい番組、気になる番組をあらかじめ登録。
放送時間前のリマインドメールで番組をうっかり見逃すことがありません。

利用するには?

WEB会員IDをご登録のうえ、ログインしてご利用ください。

WEB会員IDをお持ちでない方
WEB会員IDを登録する
WEB会員IDをお持ちの方
ログインする
閉じる

番組で使用されているアイコンについて

初回放送
新番組
最終回
生放送
5.1chサラウンド放送
二カ国語版放送
吹替版放送
字幕版放送
字幕放送
ノンスクランブル(無料放送)
オンデマンドでの同時配信
オンデマンドでの同時配信対象外
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの