大番狂わせから半年で迎える直接再戦
オッズは9対4でジョシュア有利だが…

  • 2019/11/29

 WBAスーパー王座とIBF王座、WBO王座の三つのベルトを保持する世界ヘビー級王者、アンディ・ルイス(30=アメリカ)と、前王者で現WBA3位、IBF5位、WBO3位(いずれも11月25日時点)のアンソニー・ジョシュア(30=イギリス)が7日(日本時間8日)、サウジアラビアの首都リヤド近郊ディルイーヤで拳を交える。半年前、両者はアメリカのニューヨークで今回とは逆の立場で対峙し、ルイスが7回TKO勝ちを収めて3団体の王座を奪い取っている。舞台を中東に移して行われるダイレクト・リマッチ。ルイスが返り討ちにして初防衛を果たすのか、それともジョシュアがリベンジして王座を奪回するのか。

初戦で16対1のオッズをもひっくり返したルイス

 今年もいくつかの番狂わせが起こったが、最も衝撃的だったのがルイス対ジョシュアの初戦だ。戦前のオッズは16対1。22戦全勝(21KO)のロンドン五輪金メダリストが問題なく通算7度目の防衛を果たすとみられていたのである。試合1ヵ月前になって当初予定されていた挑戦者(ジャレル・ミラー)がドーピング違反のため出場不可になるというハプニングはあったが、41日前に試合をしたばかりのルイスが代理挑戦者に選ばれた時点でも何かが起こる気配は感じられなかった。むしろミラーよりもルイスの方がさらに安全パイと見るファンや関係者の方が多かったのではないだろうか。
 はたして試合が始まっても優勢だったのはジョシュアだった。身長198センチ、リーチ208センチ、体重112キロという恵まれた体を生かして左ジャブを突き、積極的にアタックしてくる挑戦者を捌いていた。3回には鮮やかな左フックを命中させてダウンを奪う。ルイスのダメージは深くはなかったが、ジョシュアは自ら距離を詰めて仕留めにかかった。勝負を急ぎ過ぎ、状況判断を誤ったといえるだろう。相手を軽視していたといわれても仕方あるまい。ここで挑戦者も打ち返し、左フックでダウンを奪い返す。このダメージが尾を引く王者に対しルイスは連打で襲い掛かり、2度目のダウンを奪って完全に形勢をひっくり返した。その後のラウンドでジョシュアが再び左ジャブで態勢の立て直しを図ったが、7回にルイスの連打に捕まり2度ダウン。最後はコーナーに立ったまま戦意を示さずレフェリーにストップされた。

両選手の心身のコンディションに注目

 今回の試合は初戦の際の契約に則って行われるものだが、当初はジョシュアのホームであるイギリス開催が有力視された。そうしたなかサウジアラビアの投資家グループが1億ドル(約109億円)のオファーを出してイベント開催権を得たと伝えられる。
 半年という短いスパンで迎える直接再戦だが、最大の注目ポイントはジョシュアのメンタル、フィジカル両面のコンディションだといってもいいだろう。もともとジョシュアが打たれ強くないことは知られていたが、17年4月のウラディミール・クリチコ(ウクライナ)戦ではダウンから立ち直って11回逆転TKO勝ちを収めている。そのときは回復力に加え戦術面でも高いレベルにあることを示したものだ。しかし、ルイス戦では判断を誤ったうえダメージからの回復も遅れ、最後は戦意を喪失したようなかたちで敗れている。フィジカル面のダメージと疲弊だけでなくメンタル面のスタミナ切れも見てとれた。この6ヵ月で心身のダメージがどれだけ回復しているのか、気になるところだ。
 似たようなことはルイスにもいえる。身長、リーチとも188センチのルイスは体重が120キロ超で、いわゆる力士体型の選手だ。それでいて意外に踏み込みが速く、相手の懐に入ってから振り抜く左右フック、体重を乗せて打ち込む右クロスなどはスピードと回転力がある。ユーモラスな風貌とのギャップがこの選手の特徴といえる。
 ジョシュアを破ったことで評価、注目度が格段にアップしたルイスだが、そのことが必ずしもプラス効果をもたらすとは限らない。アンダードッグとみられたボクサーが戴冠を果たしたことによる達成感や満足感から心身のバランスを崩したケースが数多くあるからだ。その典型例が、42対1のオッズをひっくり返してマイク・タイソン(アメリカ)から王座を奪ったジェームス・ダグラス(アメリカ)、20対1で不利とみられながら右一発でレノックス・ルイス(イギリス)をKOしたハシム・ラクマン(アメリカ)であろう。ふたりとも次戦では十分なコンディションをつくることができず、痛烈なKO負けを喫している。もともとの力量が違うといえばそれまでだが、番狂わせを起こした側に驕りが生じるケースは少なくないといえる。そういった意味ではルイスの総合的な力量が試される試合といってもいいだろう。

接近戦に持ち込みたいルイス 距離を保ちたいジョシュア

 体格やスピード、テクニックなど多くの面で勝るジョシュアは左ジャブを突いて距離をキープし、機を見て右ストレートに繋げることになるだろう。ルイスが踏み込んでくる際にはサイドに動くかバックステップでいなす策をとるものと思われる。カウンターも有効だが、初戦の失敗を考えるとハイリスクといえる。
 前王者にいくつかの選択肢があるのに対し、ルイスの方は得意とする戦い方を徹底して貫くことになるだろう。両グローブを高めにして構え、上体を揺すりながらプレッシャーをかけて接近戦に持ち込みたいところだ。そのためにも左ジャブを効果的に使いたい。このパンチは意外にスピードがあり、ジョシュアとの初戦では差し勝つ場面もあったほどだ。今回のリマッチでもカギを握るパンチのひとつに挙げられよう。
 ジョシュアが徹底して長い左ジャブを突いてロングレンジを保つ戦いをすることができれば、多くのラウンドを支配することは可能だろう。オーバーペースにならなければ中盤あたりでKOチャンスをつかむかもしれない。その一方、過剰に警戒して腰が引けるようだとルイスを呼び込むことになりかねない。総合力に加え潜在能力で勝るジョシュアが9対4のオッズ(11月25日時点)で有利とみられているが、初戦のようなシーンの再現の可能性も低くはないとみる。

<資料1>TALE OF THE TAPE 両選手の体格比較

  • 名前

    ルイス

    ジョシュア

  • 生年月日/年齢

    1989年9月11日/30歳

    1989年10月15日/30歳

  • 出身地

    インペリアル(米国カリフォルニア州)

    ワトフォード(イギリス)

  • アマチュア実績

    07年世界選手権出場

    11年世界選手権準優勝
    12年ロンドン五輪Sヘビー級金

  • アマチュア戦績

    110戦105勝5敗

    43戦40勝(18KO)3敗

  • プロデビュー

    09年3月

    13年10月

  • 獲得王座

    WBAヘビー級王座
    IBFヘビー級王座
    WBOヘビー級王座

    WBAヘビー級王座
    IBFヘビー級王座
    WBOヘビー級王座

  • プロ戦績

    34戦33勝(22KO)1敗

    23戦22勝(21KO)1敗

  • KO率

    65%

    91%

  • 世界戦の戦績

    2戦1勝(1KO)1敗

    8戦7勝(6KO)1敗

  • 身長/リーチ

    188センチ/188センチ

    198センチ/208センチ

  • 戦闘タイプ

    右ボクサーファイター型

    右ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    「デストロイヤー」

    「AJ」

  • トレーナー

    マニー・ロブレス

    ロバート・マクラッケン

ヘビー級トップ戦線の現状

WBA SC :アンディ・ルイス(アメリカ)
WBA    :マヌエル・チャー(レバノン/シリア)
WBA 暫定 :トレバー・ブライアン(アメリカ)
WBC    :デオンテイ・ワイルダー(アメリカ)
IBF    :アンディ・ルイス(アメリカ)
WBO    :アンディ・ルイス(アメリカ)

 3団体のベルトを持つアンディ・ルイス(30=アメリカ)とWBC王者のデオンテイ・ワイルダー(34=アメリカ)、前3団体王者のアンソニー・ジョシュア(30=イギリス)、さらにワイルダーと引き分けている元3団体王者のタイソン・フューリー(31=イギリス)、そしてワイルダーには2敗しているものの2度ともあと一歩というところまで追い詰めたルイス・オルティス(40=キューバ)、この5人をトップグループといっていいだろう。実力、実績からみてワイルダーとフューリーのふたりが先頭で、これをジョシュアとルイスが追い、オルティスが4人に食らいついているという構図か。ルイスとオルティスは脇役の印象が強いが、しっかりと存在感を示している。
 第2グループにはディリアン・ホワイト(31=ジャマイカ/イギリス)や元WBA王者のアレクサンデル・ポベトキン(40=ロシア)、クブラト・プーレフ(38=ブルガリア)、アダム・コウナツキ(30=ポーランド)らがいる。ポベトキンと戦う予定のマイケル・ハンター(31=アメリカ)も有望株だ。
 クルーザー級から転向してきたオレクサンダー・ウシク(32=ウクライナ)は二線級を相手にしてのテストマッチで勝っただけでWBO1位、WBA2位、WBC4位にランクされたが、多分に期待度も含まれているといえよう。小柄なルイスとは相性が良さそうだが、身長2メートル級のワイルダーやフューリー、ジョシュアとどこまでやれるか。
 このほか藤本京太郎(33=角海老宝石)と拳を交える13戦全勝(12KO)のダニエル・ドゥボア(22=イギリス)、11戦全勝(9KO)のエファ・アジャバ(25=ナイジェリア)、10戦全勝(9KO)のジョー・ジョイス(34=イギリス)、16年リオデジャネイロ五輪決勝でジョイスに競り勝った7戦全勝(6KO)のトニー・ヨカ(27=フランス)にも要注目だ。

ニューヨークで戴冠を果たすのは?
サウスポーの元王者対決

 17年9月から18年8月までの11ヵ月間、IBF世界スーパー・バンタム級王座に君臨した「イーグル・アイ」、岩佐亮佑(29=セレス)が、1年3ヵ月ぶりの返り咲きを狙って元WBO世界バンタム級王者のマーロン・タパレス(27=フィリピン)と対戦する。
 もともとIBF王座で返り咲きを目指していた岩佐は、今年2月の挑戦者決定戦でセサール・フアレス(28=メキシコ)に10回負傷判定勝ちを収め、最優先挑戦権をゲット。しかし、王者のTJドヘニー(33=アイルランド/オーストラリア)がWBA王者のダニエル・ローマン(29=アメリカ)と統一戦を行うことになったため、いったん待機状態となった。4月に行われた統一戦ではローマンが2団体王者になったが、その後、ローマンは9月にWBA1位のムロジョン・アフマダリエフ(25=ウズベキスタン)と指名試合をこなすことに。ところがローマンは左肩を痛めたため試合の10日前にこれを延期することになった。こうしたなか指名戦がさらに先送りになることに痺れを切らしたIBFが暫定王座の設置を決めたという事情がある。
 岩佐はサウスポーのボクサーファイター型だが、ややボクサー型寄りの選手といえる。間合いを計りながら繰り出す左ストレートのほか顔面、ボディへの打ち分けを得意とするタイプで、10ラウンド以上をフルに戦いきったことも7度ある。アメリカで行ったフアレス戦のほか、敗れはしたもののイギリスで世界戦のリングにも上がっており、経験値は高い。気になることがあるとすれば、過去の3敗がいずれもサウスポーに喫したものであるという点か。
 タパレスは13年と14年に金沢で試合をしたあと、15年12月には京都で大森将平(ウォズ)に2回TKO勝ちを収めてWBO世界バンタム級挑戦権を獲得。それを受け7ヵ月後のタイ遠征でプンルアン・ソー・シンユー(タイ)に11回逆転KO勝ち、世界一の座についた。16年12月には井上拓真(23=大橋)との初防衛戦がセットされたが、これは井上の負傷で流れている。そのあと17年4月に大阪で行うはずだった初防衛戦では体重オーバーのため前日計量で失格、戦う前に王座を失った(試合では大森に11回TKO勝ち)。1年5ヵ月のブランク後に戦線復帰し、フェザー級やスーパー・バンタム級の体重で3連続KO勝ちを収めている。こちらもサウスポーのボクサーファイター型だが、ややファイター型に近いタイプといえる。
 29戦26勝(16KO)3敗の岩佐と35戦33勝(16KO)2敗のタパレス。KO率では岩佐が勝るが、それを根拠にして打撃戦を仕掛けるのは得策ではないだろう。タパレスが得意とする左ストレートや右フックを機能させないためにも岩佐は足をつかいながら自分の間合いをキープしたいところだ。そのうえで相手のボディを叩くことができれば後半にKOチャンスが膨らむものと思われる。

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