ボクシング史上最高傑作 「ハイテク」 ワシル・ロマチェンコ特集

  • 2020/06/12

 この数年、サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)やテレンス・クロフォード(アメリカ)、井上尚弥(大橋)らと「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」のトップの座を争っているワシル・ロマチェンコ(32=ウクライナ)。「ハイテク(高性能)」というニックネームを持つサウスポーはアマチュア時代に五輪2大会で金メダルを獲得しており、プロでは3戦目で世界王座獲得、12戦目で3階級制覇を成し遂げている。67パーセントのKO率を誇るが、パンチを強く打ち込むことにこだわりはみせておらず、タイミングと巧打で相手を沈めることが多い。今回のエキサイトマッチは、この記録にも記憶にも残る天才を特集する。

3戦目、7戦目、12戦目――スピード出世記録を次々に更新

 まずは記録である。ロマチェンコはウクライナのナショナルチームのコーチを務めることになる父親アナトリーの影響で幼少時からボクシングに親しみ、アマチュアでは397戦396勝1敗という驚異的な戦績を残した。「複数の敗北があるはず」という説もあるようだが、実際に隙のないテンポの速い戦い方を見せられると、99.7パーセントの勝率を信じないわけにはいかなくなる。事実、2008年北京五輪ではフェザー級で5勝して金メダルを獲得。フェザー級が実施されなかった4年後の2012年ロンドン五輪ではライト級に出場し、4勝して再び表彰台の中央に上がった。このほか2009年と2011年の世界選手権でも優勝を果たしている。19歳で出場した2007年の世界選手権では決勝でアルベルト・セリモフ(ロシア)にポイント負けを喫して準優勝に終わったが、のちにセリモフには2勝して力関係をはっきりさせている。五輪3連覇のテォフィオ・ステベンソン、フェリックス・サボン、連覇のギジェルモ・リゴンドーらキューバ勢と並び、ロマチェンコはアマチュアボクシング史のなかでも特別な存在といっていいようだ。
 トップランク社と契約を交わしてプロ転向を果たしたわけだが、その際、「デビュー戦で世界挑戦させてほしい」とリクエストしたと伝えられる。15傑入りが世界挑戦の条件となるため初陣での大一番は見送りとなったが、代わりにトップランク社は世界ランクに入っているWBOインターナショナル王者との10回戦をセット。この試合をロマチェンコは4回KO勝ちでクリアしてプロ生活をスタートさせた。2戦目で世界挑戦が組まれたが、このときは相手のオルランド・サリド(メキシコ)が体重超過のため計量で失格。試合当日は約6キロの体重差があったこともマイナスに作用し、ロマチェンコは判定で敗れた。その3ヵ月半後、現WBC世界フェザー級王者のゲイリー・ラッセル(アメリカ)を下してWBO世界フェザー級王座を獲得した。3戦目での戴冠はセンサク・ムアンスリン(タイ)と並ぶ史上最速記録だ。
 ロマチェンコは2016年6月にWBO世界スーパー・フェザー級王座を獲得したが、7戦目での2階級制覇は井上尚弥の8戦目を更新するスピード出世である。また2018年5月にはホルヘ・リナレス(帝拳)を10回TKOで破って12戦目で3階級制覇を達成したが、これまた史上最速レコードだ(のちに田中恒成が並ぶ)。

相手の虚をつく多彩なパンチ 8連続KOをマークしたことも

 細かく立ち位置を変えながら瞬間的に角度とタイミングをつかんで打ち込むバラエティに富んだパンチは、相手の虚をつくため効果は絶大だ。そういう意味では究極の巧打者といっていいだろう。キャリア初期こそ慎重な戦いぶりが目立ったロマチェンコだが、徐々に大胆なパフォーマンスを披露するようになり、3階級にまたがって一時は8連続KO(TKO)勝ちを収めたこともある。目を引くのは相手のパンチをことごとく外してカウンターを叩き込み、力量差を見せつける試合が多いという点だ。ニコラス・ウォータース(ジャマイカ)、ジェイソン・ソーサ(アメリカ)、リゴンドーといった王者経験者たちはストレスを溜めた末すえ中盤で戦意を喪失し、戦闘を放棄せざるをえなかった。対戦者の戦闘意欲を喪失させてギブアップさせる――見方によっては相手に最も屈辱的な敗北を与えてきたといえる。
 そうかと思えば絶妙のタイミングで繰り出した左ボディブローでリナレスを沈めたり、元王者のアンソニー・クロラ(イギリス)を右フックでダイブさせたりと最近は一撃の破壊力も増してきている。これらの試合は十分に記憶に残るものでもある。

ロマチェンコのアマチュア&プロでの主な記録

アマチュア時代 ★オリンピック2大会連続金メダル獲得
 08年北京五輪フェザー級金
 12年ロンドン五輪ライト級金
★世界選手権2度優勝
 09年&11年 フェザー級優勝(07年はフェザー級準優勝)
★アマ戦績は397戦396勝1敗(勝率は99.7%)
プロ ★3戦目で世界タイトル獲得(最短タイ記録)
★7戦目で世界2階級制覇(井上尚弥の8戦を抜いて最短記録)
★12戦目で世界3階級制覇(最短記録。のちに田中恒成がロマチェンコに並ぶ)

各メディアのパウンド・フォー・パウンド ランキング ※2020年6月

★リング誌 ★ESPN ★ボクシングシーン
(1) カネロ・アルバレス
(メキシコ)
ロマチェンコ 井上尚弥
(2) ワシル・ロマチェンコ
(ウクライナ)
クロフォード アルバレス
(3) 井上尚弥
(大橋)
アルバレス ロマチェンコ
(4) テレンス・クロフォード
(アメリカ)
井上尚弥 クロフォード
(5) オレクサンダー・ウシク
(ウクライナ)
エロール・スペンス
(アメリカ)
ウシク

ライト級トップ戦線

WBA SC ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ) 32歳 15戦14勝(10KO)1敗
ジャーボンテイ・デービス(アメリカ) 25歳 23戦全勝(22KO)
WBC FC ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
デビン・ヘイニー(アメリカ) 21歳 24戦全勝(15KO)
IBF テオフィモ・ロペス(アメリカ) 22歳 15戦全勝(12KO)
WBO ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
ホルヘ・リナレス(帝拳) 34歳 52戦47勝(29KO)5敗
ライアン・ガルシア(アメリカ) 21歳 21戦全勝(17KO)

<バーチャル>ロマチェンコのプロ戦績

2013年
10月12日 ホセ・ラミレス 〇 4回KO
(WBOインターナショナル フェザー級タイトル獲得)
2014年
3月1日 オルランド・サリド ● 12回判定
(WBO世界フェザー級タイトル挑戦)
6月21日 ゲイリー・ラッセル 〇 12回判定
(WBO世界フェザー級タイトル獲得 ※決定戦)
11月23日 チョンラタン・ピリャピニョ 〇 12回判定 防衛1
2015年
5月2日 ガマリエル・ロドリゲス 〇 9回KO 防衛2
11月7日 ロムロ・コアシチャ 〇 10回KO 防衛3
2016年
6月11日 ローマン・マルチネス 〇 5回KO
(WBO世界スーパー・フェザー級タイトル獲得)
11月26日 ニコラス・ウォータース 〇 7回終了TKO 防衛1
2017年
4月8日 ジェイソン・ソーサ 〇 9回終了TKO 防衛2
8月5日 ミゲール・マリアガ 〇 7回終了TKO 防衛3
12月9日 ギジェルモ・リゴンドー 〇 6回終了TKO 防衛4
2018年
5月12日 ホルヘ・リナレス 〇 10回TKO
(WBA世界ライト級タイトル獲得)
12月8日 ホセ・ペドラサ 〇 12回判定 防衛1
(WBO世界ライト級タイトル獲得)
2019年
4月12日 アンソニー・クロラ 〇 4回KO 防衛2
8月31日 ルーク・キャンベル 〇 12回判定 防衛3
(WBC世界ライト級タイトル獲得 ※決定戦)
――15戦14勝(10KO)1敗――

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オンデマンドでの同時配信対象外
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの