WBO世界ウェルター級タイトルマッチ テレンス・クロフォード対ダビド・アバネシャン

  • 2023/01/06

スイッチヒッター vs スイッチヒッター
総合力で大きく勝る王者がKOでV6か

 テレンス・クロフォード(35=アメリカ)は同じ階級の3団体王者、エロール・スペンス(32=アメリカ)と11月19日に統一戦を行う計画が進行していたが、交渉の最終段階で決裂し、大一番は先送りとなった。これを受け地元での凱旋防衛戦が浮上し、元WBA王者のダビド・アバネシャン(34=ロシア)の名前が候補として挙がった。
 もともとアバネシャンも11月19日に試合を予定していたためコンディション調整に問題はなく、クロフォード側と合意して試合が成立した経緯がある。4団体の王座統一戦は2023年春以降に延びたが、頂上決戦を前にクロフォードがどんなパフォーマンスを披露するのか注目したい。

PFP上位常連のクロフォード 今回の報酬は1000万ドル

 クロフォードは70戦58勝12敗の戦績を残したアマチュア時代は国内の2番手、3番手に甘んじることが多かったが、2008年3月に20歳でプロ転向を果たしてからは輝かしい実績を残している。2014年3月にWBO世界ライト級王座を奪取して2度の防衛を果たすとスーパー・ライト級に上げ、転級初戦でWBO王座を獲得、あっさりと2階級制覇を成し遂げた。その後、WBC王座を吸収し、2017年8月には4団体の王座を統一した。
 スーパー・ライト級で無敵状態になるとウェルター級に転向し、またも初戦でWBO王座を獲得(2018年6月)。以後、ホセ・ベナビデス(アメリカ)、アミール・カーン(イギリス)、ケル・ブルック(イギリス)、ショーン・ポーター(アメリカ)ら世界王者経験者を相手に5連続KO防衛中だ。ライト級時代から数えて世界戦は16試合、もちろんすべてで勝利を収め、そのうち13試合をKOで片づけている。スーパー・ライト級時代からの連続KOは9まで伸びている。通算戦績は38戦全勝(29KO)。パウンド・フォー・パウンド(PFP)の上位常連で、アメリカのスポーツ専門局ESPNでは1位、「Ring Magazine」でもヘビー級のオレクサンダー・ウシク(ウクライナ)、バンタム級の井上尚弥(大橋)に次いで3位にランクされている。
 クロフォードのボクシングの特徴のひとつとして左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターであることが挙げられる。そのうえでスピードがありパンチ力がありスキルにも長けているのだから相手はたまったものではない。1000万ドル(約13億5000万円)の報酬が保証された今回の試合、またも元王者が相手だがオッズは12対1と大差がついている。

王座獲得 ⇒ 失冠 ⇒ 15傑外 ⇒ 6連続KO勝ちでランク入りのアバネシャン

 アバネシャンはロシアのエカテリンブルクの南西300キロほどのタビンスコエという町の出身だが、現在はイギリスのノッティンガムに住んでいる。2009年にプロデビューし、2015年11月にWBA暫定世界ウェルター級王座を獲得。しかし、当時はスーパー王者としてフロイド・メイウェザー(アメリカ)が存在し、レギュラー王者にはキース・サーマン(アメリカ)が君臨していたためアバネシャンの認知度は低いものだった。初防衛戦で元世界3階級制覇王者のシェーン・モズリー(アメリカ)を退けたあと正王者に昇格したが、2度目の防衛戦で元王者のレイモント・ピーターソン(アメリカ)に判定で敗れ失冠。1年後にはエギディウス・カバラウスカス(リトアニア)にも6回TKO負けを喫し、「ダビド・アバネシャン」の名前は世界15傑から消えた。
 しかし、アバネシャンはそこから巻き返す。再起戦でWBC2位、WBA、IBF、WBOで5位にランクされていたケルマン・レハラガ(スペイン)に9回TKO勝ちを収めてEBU欧州王座を獲得。この王座は元五輪戦士のジョッシュ・ケリー(イギリス)を6回TKOで退けるなど5度の防衛を重ねている。カバラウスカス戦後は6連続KO勝ちだ。
 クロフォード同様、アバネシャンも構えを左右に変える好戦的なスイッチヒッターだが、王者のような動きの滑らかさはない。

王者がスピードとスキルで翻弄か

 12対1のオッズが出ているように個々の戦力に加え地の利もあるクロフォードが圧倒的に有利であることは間違いない。それぞれが左右どちらの構えで戦うにしろクロフォードが主導権を握り、スピードとスキルで翻弄したうえで中盤あたりで仕留めてしまう可能性が高い。アバネシャンとしては中間距離で振り抜く左右フックを当てて大番狂わせを起こしたいところだが、それが極めて難しい仕事であることは間違いない。近い将来に実現が期待されるスペンスとの頂上決戦に向け、クロフォードがどんなパフォーマンスを披露するのか注目したい。

<「リング誌」のパウンドフォーパウンド ランキング> ※2022年12月

1 オレクサンダー・ウシク(ウクライナ) ヘビー級
2 井上尚弥(大橋) バンタム級
3 テレンス・クロフォード(アメリカ) ウェルター級
4 エロール・スペンス(アメリカ) ウェルター級
5 サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ) S・ミドル級
6 ドミトリー・ビボル(キルギス/ロシア) L・ヘビー級
7 ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ) ライト級
8 ジョシュ・テイラー(イギリス) S・ライト級
9 ジャーメル・チャーロ(アメリカ) S・ウェルター級
10 ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ) S・フライ級

<テレンス・クロフォード 世界戦全戦績>

■2014年

3月 1日
リッキー・バーンズ 〇12回判定
(WBO世界ライト級王座獲得)
6月28日
ユリオルキス・ガンボア 〇 9回TKO 防衛①
11月29日
レイムンド・ベルトラン 〇12回判定 防衛②

■2015年

4月18日
トーマス・デュロルメ 〇 6回TKO
(WBO世界スーパー・ライト級王座獲得=王座決定戦)
10月24日
ディエリー・ジャン 〇10回TKO 防衛①

■2016年

2月27日
ヘンリー・ランディ 〇 5回TKO 防衛②
7月23日
ビクトル・ポストル 〇12回判定 防衛③
(WBC王座獲得)
12月10日
ジョン・モリナ 〇 8回TKO 防衛④

■2017年

5月20日
フェリックス・ディアス 〇10回終了TKO 防衛⑤
8月19日
ジュリウス・インドンゴ 〇 3回KO 防衛⑥
(WBA、IBF王座獲得=4団体統一 ※のちに王座返上)

■2018年

6月 9日
ジェフ・ホーン 〇 9回TKO
(WBO世界ウェルター級王座獲得)
10月13日
ホセ・ベナビデス 〇12回TKO 防衛①

■2019年

4月20日
アミール・カーン 〇 6回TKO 防衛②
12月14日
エギディユス・カバラウスカス 〇 9回TKO 防衛③

■2020年

11月14日
ケル・ブルック 〇 4回TKO 防衛④

■2021年

11月20日
ショーン・ポーター 〇10回TKO 防衛⑤

<クロフォードの世界戦のオッズ> ※ by オンラインカジノ Oddschecker.com

2014年 3月
リッキー・バーンズ戦 9対4でクロフォード有利
2014年 6月
ユリオルキス・ガンボア戦 5対3でクロフォード有利
2014年11月
レイムンド・ベルトラン戦 6対1でクロフォード有利
2015年 4月
トーマス・デュロルメ戦 9対1でクロフォード有利
2015年10月
ディエリー・ジャン戦 12対1でクロフォード有利
2016年 2月
ヘンリー・ランディ戦 16対1でクロフォード有利
2016年 7月
ビクトル・ポストル戦 13対3でクロフォード有利
2016年12月
ジョン・モリナ戦 33対1でクロフォード有利
2017年 5月
フェリックス・ディアス戦 16対1でクロフォード有利
2017年 8月
ジュリウス・インドンゴ戦 12対1でクロフォード有利
2018年 6月
ジェフ・ホーン戦 4対1でクロフォード有利
2018年10月
ホセ・ベナビデス戦 20対1でクロフォード有利
2019年 4月
アミール・カーン戦 8対1でクロフォード有利
2019年12月
エギディウス・バラウスカス戦 12対1でクロフォード有利
2020年11月
ケル・ブルック戦 12対1でクロフォード有利
2021年11月
ショーン・ポーター戦 6対1でクロフォード有利
2022年11月
ダビド・アバネシャン戦 12対1でクロフォード有利

<ウェルター級トップ戦線の現状>

WBA S
:エロール・スペンス(アメリカ)
:エイマンタス・スタニオニス(リトアニア)
WBC
:エロール・スペンス(アメリカ)
IBF
:エロール・スペンス(アメリカ)
暫定
:ジャロン・エニス(アメリカ) vs カレン・チュカジャン(ウクライナ) 1/7
WBO
:テレンス・クロフォード(アメリカ)

 3本のベルトを持っているエロール・スペンス(32=アメリカ)とWBO王者のテレンス・クロフォード(35=アメリカ)が双璧だが、そこにジャロン・エニス(25=アメリカ)が割って入りそうだ。1月7日(日本時間8日)、カレン・チュカジャン(26=ウクライナ)とIBFの暫定王座決定戦を行うことになっているが、戦力には大差がありエニスのKO勝ちが予想される。
 WBAのレギュラー王座はエイマンタス・スタニオニス(28=リトアニア)が持っているが、次戦で19戦全KO勝ちのバージル・オルティス(24=アメリカ)と防衛戦を行うことになりそうだ。新王者誕生の可能性が高く、そうなるとオルティスが“第4の男”として浮上してくる。なかなか直接対決が実現しないスペンスとクロフォードにとっては若くて勢いのあるライバル登場ということになりそうだ。
 このほかWBAからスペンスへの挑戦を勧められている元王者のキース・サーマン(34=アメリカ)、スペンスにWBAスーパー王座を明け渡したヨルデニス・ウガス(36=キューバ)、古豪を連破して経験値を上げてきているイギリスのホープ、コナー・ベン(26)と知名度の高い選手が続いている。
 以前からトップ15に入っていながら試合間隔が空いてしまった24戦全勝(15KO)のラシディ・エリス(29=アメリカ)にも注目したい。1月7日(日本時間8日)に26戦25勝(24KO)1敗のIBF10位、ロイマン・ビリャ(29=ベネズエラ/コロンビア)との試合が決まっており、勝者が上位進出を果たしそうだ。




■ヘビー級10回戦
バホディル・ジャロロフ対カーティス・ハーパー

 バホディル・ジャロロフ(28=ウズベキスタン)は身長201センチ、リーチ206センチ、体重112キロのサウスポーで、アマチュアでは2015年世界選手権3位、2016年リオデジャネイロ五輪8強、2017年世界選手権8強、2019年の世界選手権では優勝を飾っている。2018年5月にプロに転向して8連続KO勝ち後、2021年東京五輪に出場してスーパー・ヘビー級で金メダルを獲得。その3ヵ月後、再びプロに戻り3連続KO勝ちを収めている。五輪を挟んでのプロ戦績は11戦全KO勝ちだ。
 相手のカーティス・ハーパー(34=アメリカ)は22戦14勝(9KO)8敗の中堅どころだが、「史上最短決着」の主役として知られている。2018年8月、エフェ・アジャグバ(ナイジェリア)との試合で開始直後にロープを潜って退場し、「1秒失格負け」を宣告されているのだ。報酬を巡るトラブルが原因とされるが、その後は3年間、試合から遠ざかり2021年9月に戦線復帰した。
 ややスピードには欠けるジャロロフだが、ヘビー級では希少な大型サウスポーという利点を生かして序盤からハーパーを圧倒しそうだ。

■EBU欧州スーパー・ウェルター級王座決定戦
ミラン・プラット対ステファン・ダニヨ

 2019年10月のプロデビューから18戦無敗(17勝14KO1無効試合)をキープしているミラン・プラット(23=フランス)が、元世界ランカーのステファン・ダニヨ(33=オランダ)と空位のEBU欧州スーパー・ウェルター級王座をかけて戦う。
 プラットはフランス国内王座、IBFユース王座、EBU欧州連合王座を獲得した実績を持ち、現在はWBC31位にランクされている。長身のパンチャー型で、顔面とボディに打ち分ける左フックが主武器だ。
 10年のキャリアを持つダニヨはWBO欧州王座を獲得した2017年5月から1年間、WBO15位内にランクされていた実績を持つ33歳のベテランで、「THE CHOSEN ONE(選ばれし者)」のニックネームを持つ。しかし、2021年以降は5戦3勝2敗と停滞気味で、かつての勢いはなさそうだ。戦績は28戦20勝(7KO)5敗3分。
 勢いのあるプラットがダニヨを粉砕しそうだ。

■ライト級8回戦
レイモンド・ムラタラ対ミゲール・コントレラス

 WBO世界ライト級15位にランクされるホープ、15戦全勝(12KO)のレイモンド・ムラタラ(25=アメリカ)が、14戦12勝(6KO)1敗1分の戦績を残しているミゲール・コントレラス(24=アメリカ)と対戦する。
 ムラタラは2016年9月にプロデビューし、6戦目から9連続KO勝ちを収めて注目を集めるようになった。プロモーターのトップランク社も売り出しに力を入れており、テレンス・クロフォード(アメリカ)やホセ・ラミレス(アメリカ)、シャクール・スティーブンソン(アメリカ)らの前座に起用されることが多かった。構えを左右に変える器用さを備えており、上下に散らすコンビネーションも非凡さを感じさせる。まだ8回戦しか経験しておらず試されていない面も少なくないが、将来性のある逸材といえよう。
 コントレラスは2016年3月のプロデビューから11連勝(6KO)を収めたが、2021年7月に長身サウスポーのスターリング・カスティージョ(ドミニカ共和国)の左一発でKO負け。再起戦でも8回引き分けという結果に終わっている。次戦で8回判定勝ちを収めており、ムラタラ戦が再起第2戦となる。左ジャブから左右フックに繋げる攻撃パターンを持つが、意外性を感じさせるほどのものはない。
 スピードをはじめ個々の戦力で勝るムラタラが序盤から主導権を握り、中盤あたりでストップしそうだ。

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2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの