思い出の地 キシミーでV2戦に臨む伊藤
挑戦者は長身サウスポーの五輪戦士

  • 2019/05/17

 昨年7月、アメリカのフロリダ州キシミーで行われたWBO世界スーパー・フェザー級王座決定戦でクリストファー・ディアス(24=プエルトリコ)に大差の判定勝ち、戴冠を果たした伊藤の2度目の防衛戦。会場こそ10ヵ月前のキシミー・シビック・センターとは異なるオセオラ・ヘリテージ・パークだが、王座を獲得した験のいい地でベルトを守ることができるか。挑戦者のジャメル・へリング(33=アメリカ)はアマチュア時代に12年ロンドン五輪に出場した実績を持つ長身サウスポーで、好機には回転の速い連打を叩き込んでくる危険な相手だ。伊藤にとっては真価が問われる試合といえる。

10ヵ月前 世界戦の大舞台で殻を破った伊藤

 伊藤はアマチュア経験がないまま09年5月にプロデビューした。今回の試合日(日本時間26日)初陣からちょうど10年の節目となる。2戦目を前に交通事故に遭いブランクをつくったが、12年に全日本新人王に輝いたあと東洋太平洋王座(15年)とWBOアジアパシフィック王座(16年)を獲得し、10ヵ月前に世界の階段を頂点まで駆け上がった。戦績は27戦25勝(13KO)1敗1分。KO率は48パーセントだが、右ストレートの破壊力はその数字以上のインパクトがある。唯一の黒星は15年2月、サウスポーの技巧派、当時の日本スーパー・フェザー級王者、内藤律樹(E&Jカシアス)に競り負けた(10回判定負け)ものだが、以後は9連勝(6KO)と好調を維持している。
 特に世界王座を獲得したディアス戦では序盤から積極的に飛ばし、4回には右を連発してダウンも奪っている。ルーキー時代から卓越した運動神経と勘の良さには定評があったが、自分から試合をつくりにいくことが少なく勝ち味が遅いと言われていたが、大舞台でひと皮むけた印象を与えたものだ。昨年12月の初防衛戦では指名挑戦者のエフゲニー・チュプラコフ(ロシア)を相手に7回TKO勝ちを収め、鬼門を突破した。序盤は接近してくる挑戦者を持て余すシーンもあったが、中盤に入ってからは一方的に打ちまくるという快勝に近い内容だった。今回の試合に向け伊藤は4月10日に日本を発ち、ロサンゼルスでスパーリング中心のトレーニングを続けている。

オーソドックス相手には負けていないヘリング

 挑戦者のヘリングは2001年、15歳のときにボクシングを始めた。初めての敗北はダニエル・ジェイコブス(アメリカ=前IBF世界ミドル級王者)に喫したものと伝えられる。アマチュアボクサーを続けながら海兵隊に所属したヘリングはイラクに2度派遣されたことがあるという。海兵隊の標語でもある「Semper Fi(センパー・ファーイ=常に忠誠を)」というニックネームは、そこから付けられたもののようだ。
アマチュア戦績は92戦78勝14敗で、ハイライトは12年ロンドン五輪に出場したことであろう(ライト・ウェルター級1回戦敗退)。そのほか全米選手権では12年に優勝、09年と11年はベスト8入りしている。
 五輪から4ヵ月後の12年12月にプロ転向を果たし、4年間に15連勝(8KO)をマークしたが、16年7月には世界挑戦経験者のデニス・シャフィコフ(ロシア)に初黒星を喫した。2回にダウンを喫したうえポイントでも大量リードを許す苦しい展開のすえ10回にセコンドが棄権を申し入れるという完敗だった。試合後、へリングは2回に右手、4回に左手を痛めたと明かしている。その13ヵ月後、ヘリングはラダリウス・ミラー(アメリカ)に10回判定負けを喫した。ちなみにシャフィコフ、ミラーはともにサウスポーだ。つまりへリングは右構えの相手にはプロでは負けていないことになる。もうひとつ加えるならロンドン五輪の初戦で敗れたダニヤル・エレウシノフ(カザフスタン=16年リオデジャネイロ五輪金)もサウスポーだ。左同士の戦いは不得手だが、右構えの選手相手には絶対の自信があるタイプなのかもしれない。
 ヘリングは178センチの長身サウスポーで、ワンツーを繰り出したあと距離を詰めて腕を折り畳んで左アッパー、右フックで追撃してくることが多い。チャンス時には連打の回転が上がるので、伊藤は十分な注意が必要だ。昨年、トップランク社と契約を交わしてからは3連勝(1KO)と好調なのもプラス材料といえよう。戦績は21戦19勝(10KO)2敗。KO率は伊藤と同じ48パーセントだ。
 余談だが、5人の子供の父親でもあるヘリングは、第3子だった娘アリヤナちゃんを生後2ヵ月でSIDS(乳幼児突然死症候群)のため亡くしている。奇しくも試合の日はその亡き娘の10回目の誕生日でもある。挑戦者は「私にとって5月25日は特別な日なんだ」と話している。

序盤から激しい主導権争いか

 伊藤は10回戦に上がってからサウスポーとは5戦して4勝(4KO)1敗という戦績を残している。敗れた内藤戦でも互角に近い内容だったことを考えるとサウスポーが苦手というわけではなさそうだ。ただ、相手がオリンピックに出場した実績を持つ長身サウスポーとなると、過去の対戦相手とは別の次元で考えなくてはなるまい。
伊藤の対応力があらためて試される試合といえる。
 まず気になるのは、ヘリング相手にも有効な左ジャブを差し込んで伊藤が先手を取れるかどうかという点だ。仮に左ジャブが機能しなかったとしても右ストレートをリードブロー代わりにして攻めるパターンを見つけることができれば主導権を手繰り寄せることはできよう。逆にヘリングの動きに戸惑いを見せ、攻撃を躊躇して後手にまわる展開になると伊藤は厳しい戦いを強いられる可能性がある。
 早い段階でペースを握って引き離していきたいという思いは両者に共通したものであろう。特に「海外で結果を出すことがスターへの第一歩。世界にアピールしたい」と意気込む伊藤が初回から飛ばすことは十分に考えられる。「5月25日は特別な日」と位置づけるヘリングもハイペースで入る可能性がある。序盤から激しい先手争いが展開されそうだ。

<資料1>TALE OF THE TAPE データ比較

  • 名前

    伊藤

    へリング

  • 生年月日/年齢

    1991年1月19日/28歳

    1985年10月30日/33歳

  • 出身地

    東京都

    コラム(米国ニューヨーク州)

  • アマチュア実績

    なし

    12年ロンドン五輪出場

  • アマチュア戦績

    なし

    92戦78勝14敗

  • プロデビュー

    09年5月

    12年12月

  • 獲得王座

    WBO スーパー・フェザー級

  • プロ戦績

    27戦25勝(13KO)1敗1分

    21戦19勝(10KO)2敗

  • KO率

    48%

    48%

  • 世界戦の戦績

    2戦2勝(1KO)

  • 身長/リーチ

    174センチ/179センチ

    178センチ/178センチ

  • 戦闘タイプ

    右ボクサーファイター型

    左ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    「Semper Fi」

スーパー・フェザー級トップ戦線の現状

WBA SC :ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)
WBA   :アンドリュー・カンシオ(アメリカ)
WBC   :ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)
IBF   :テビン・ファーマー(アメリカ)
WBO   :伊藤雅雪(日本)

 21戦全勝(20KO)のレコードを誇るWBAスーパー王者のジャーボンテイ・デービス(24=アメリカ)がトップ戦線の軸といえる。デービスは小柄なサウスポーだが攻撃能力が高く、近い将来、「パウンド・フォー・パウンド」現役最強といわれるワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)を脅かす存在になりそうだ。リング外でのトラブルが多いが、自分を律することができればスターダムに駆け上がっていく可能性を秘めている。WBC王者のミゲール・ベルチェルト(27=メキシコ)も36戦35勝(31KO)1敗と高いKO率を残している。前王者のフランシスコ・バルガス(34=メキシコ)との再戦でどんな戦いを見せるか気になるところだ(ベルチェルト対バルガスは6月24日のエキサイトマッチで放送予定)。
 IBF王者のテビン・ファーマー(28=アメリカ)は前出の2王者とはタイプの異なるサウスポーの技巧派で、昨年8月の戴冠後、7ヵ月で3度の防衛をこなした。デービスに統一戦を呼びかけているが、なかなか距離は縮まらないようだ。WBO王者の伊藤雅雪(28=日本)は、今回のジャメル・ヘリング(33=アメリカ)とのV2戦が大きな山になりそうだ。これを難なく突破するようだと本人が希望するビッグマッチが現実的なものになっていくはずだ。
 このクラスにはゴールデンボーイ・プロモーションズが擁する生きのいいホープが控えている。WBC2位のエドゥアルド・エルナンデス(21=メキシコ)だ。28戦全勝(25KO)の快進撃を続けており、目下22連続KOと試合ごとに勢いを増している。今後は強豪との対戦が増えそうだが、経験を積みながら順調に成長していってほしいものだ。なお、3月までWBOスーパー・フェザー級1位につけていたライアン・ガルシア(20=アメリカ)は、各団体の最新のランキングではライト級に移っている。 IBF5位の尾川堅一、WBO3位の末吉大(ともに帝拳)も挑戦の機会を狙っている。

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