WBC世界ヘビー級タイトルマッチ タイソン・フューリー対デオンテイ・ワイルダー

  • 2021/10/01

王者の感染で2ヵ月半の延期
決着戦は11対4でフューリー有利

 WBC世界ヘビー級王者、タイソン・フューリー(32=イギリス)が、前WBC王者で現1位のデオンテイ・ワイルダー(35=アメリカ)を相手に初防衛戦に臨む。両者は2018年12月に初めて対戦し、ワイルダーが最終回に2度のダウンを奪って12回引き分けに持ち込みWBC王座の8度目の防衛に成功。昨年2月の再戦では逆にフューリーが2度のダウンを奪って7回TKOで快勝、ワイルダーのV11を阻止するとともにWBC王座を奪い取った。2試合とも最重量級らしい迫力ある攻防だった。
 フューリーの1勝1分で迎えるラバマッチは当初、7月24日に行われるはずだったが、王者の新型コロナウィルス感染を受けて2ヵ月半延期された。11対4でフューリー有利のオッズが出ているが、93パーセントのKO率を誇るワイルダーの右ストレートが炸裂する可能性も十分にある。

波乱万丈の超大型スイッチヒッター フューリー

 もともと、フューリーは3団体王者のアンソニー・ジョシュア(イギリス)との4団体統一戦を目指していた。現に「8月に対戦が内定。詳細が決まりしだい発表へ」と報道されたほどだった。ところが、なかなか詰めに至らず、そうこうしているうちに昨年のワイルダー戦の際に両陣営が交わしていた再戦(実際は3度目の対決)条項が優先されるかたちとなり、急転直下でフューリー対ワイルダーⅢが決定。しかし、その後、フューリー自身とチームのメンバーが新型コロナウィルスに感染したため延期になった経緯がある。
 フューリーは身長206センチ、リーチ216センチ、体重112キロ~122キロの超大型選手で、左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターとしても知られる。自己発信力に長けているため、2008年12月のプロデビューからしばらくは話題先行の印象が強かった。しかし、ディレック・チゾラ(ジンバブウェ/イギリス)、クリスチャン・ハマー(ルーマニア)らを下したあと2015年11月にはウラディミール・クリチコ(ウクライナ)に12回判定勝ちを収めてWBA、IBF、WBO3団体統一王座を獲得。この一戦で実力を証明し、評価を急上昇させた。
 ところが、最高位についた満足感からか、はたまた重圧からか、精神バランスを崩したうえアルコールやドラッグにも手を出して戦線離脱。こうして20代後半の充実期に2年7ヵ月を無駄に過ごすことになったが、2018年6月に復帰。その半年後にはワイルダーに挑んで12回引き分けと健闘。9回に加え最終12回にはKOに匹敵するような痛烈なダウンを喫したが、それがなければ文句なしの判定勝ちという内容だった。
 このあとでトップランク社と契約を交わし、昨年2月にワイルダーを7回TKOで下してWBC王座を獲得した。戦績は31戦30勝(21KO)1分。

32連続KO勝ち V10の実績を持つ前王者ワイルダー

 ワイルダーは若くして授かった難病の娘の治療費を稼ぐためにボクシングを始め、アマチュアで35戦(30勝5敗)を経験した。22歳で出場した2008年北京五輪では90キロ以下のヘビー級で銅メダルを獲得している。その年の11月にプロ転向を果たし、しばらくは“温室育成”が続いた。201センチの身長に対して体重が94キロ~100キロと軽めだったため、リスクを小さく抑えたマッチメークがなさられたのだ。そうしたこともありワイルダーは対戦相手をバタバタと倒しまくり、6年間に32連続KO勝ちをマーク。これはデビューからの連続KO勝ちとしては史上最長記録でもある。
 この連続KO勝ちは2015年1月のバーメイン・スティバーン(ハイチ/アメリカ)戦で止まった(12回判定勝ち)が、代わりにWBC世界ヘビー級王座を手に入れた。以後、昨年2月にフューリーに敗れるまで以下のとおり10度の防衛を果たした。

V1 15年 6月 エリック・モリナ        9回KO
V2 15年 9月 ヨアン・デュオパ       11回TKO
V3 16年 1月 アルツール・ズピルカ      9回KO
V4 16年 7月 クリス・アレオーラ       8回終了TKO
V5 17年 2月 ジェラルド・ワシントン     5回TKO
V6 17年11月 バーメイン・スティバーン②   1回KO
V7 18年 3月 ルイス・オルティス      10回TKO
V8 18年12月 タイソン・フューリー     12回引き分け
V9 19年 5月 ドミニク・ブリージール     1回KO
V10 19年11月 ルイス・オルティス②      7回KO

 ワイルダーは左ジャブで相手を煽り、距離とタイミングを合わせて右ストレートを打ち込むスタイルを確立している。そのパターンにはまったときの強さは際立つものがあるが、反面、的が絞れないと手間取ることもある。スピードとスキルのあるルイス・オルティス(キューバ)との初戦と再戦、フューリーとの初戦、再戦が典型だ。
 戦績は44戦42勝(41KO)1敗1分。

圧力をかけて距離を潰したいフューリー ワイルダーは右頼み

 ふたりは2試合で合計19ラウンドも手合わせしており、相手の手の内は熟知しているものと思われる。こうしたなか興味を引くのは、フューリーが第2戦を前に指導者をシュガー・ヒル・トレーナーに変えて最良の結果を出している点だ。新チームは初戦よりも7キロ以上重い体重でリマッチに臨み、体格を生かして前に出ることでワイルダーに距離とタイミングを与えなかった。
 それに倣ったわけではあるまいが、今度はワイルダーが新たにマリク・スコット・トレーナーと組んで雪辱戦に臨む。スコット氏は2014年3月にワイルダーと対戦して1回KO負けを喫しているが、ふたりはそれ以前からの友人でもある。再戦時、ワイルダーもキャリア最重量でリングに上がったものの動きに精彩を欠き、見せ場なく敗れた。フューリーとの初戦はデビュー戦に次ぐ軽量だっただけに、今度はどの程度の体重で試合に臨むのか注目される。
 もうひとつワイルダー陣営の変化を挙げるならば、試合の発表会見時から寡黙を貫いている点だ。過去の2試合ではフューリーの挑発に応じるかたちで罵り合いをしてきたが、今回は相手のペースに合わせることなく、6月の会見時にはヘッドホンで“雑音”をシャットアウトしていたほどだ。また、再戦では18キロもある奇抜な衣装を着て登場したが、その負担も小さくはなかったと伝えられる。今回は飾りを捨てて素のワイルダーを前面に出して戦う方針なのかもしれない。というわけで、試合数日前に行われる会見と前日計量、そしてリングウォークにも要注目だ。
 こうした不確定要素はあるものの、11対4のオッズが出ているようにフューリー有利は不動といえる。成功した再戦と同じように前に出ることでワイルダーに圧力をかけ、同時に距離を潰してしまう策を採るのではないだろうか。ワイルダーはバックステックを最小限にとどめ、できれば左ジャブを機能させたうえで右ストレートに繋げたい。動く標的を射抜くのは容易ではないが、それができれば王座奪回、できなければ敗退という結果が待っている。

資料①

<初戦、再戦の計量時の体重と結果>

フューリー ワイルダー 結果
初戦の体重 116.34キロ
(自身の平均的な体重)
96.38キロ
(デビュー戦に次ぐ軽量)
12回引き分け
再戦の体重 123.83キロ
(キャリア3番目の重さ)
104.78キロ
(キャリアで最重量)
フューリーの7回TKO勝ち
今回の体重

資料②

<初戦、再戦のオッズと結果>

※初戦は11対8でワイルダー有利  ⇒
12回引き分け
(フューリーが2度ダウン)
※再戦は11対10でフューリー有利  ⇒
フューリーの7回TKO勝ち
(ワイルダーが2度ダウン)
※第3戦は11対4でフューリー有利 ⇒


資料③

<TALE OF THE TAPE 両選手の体格比較表>

  • 名前

    <フューリー>

    <ワイルダー>

  • 生年月日/年齢

    1988年8月12日/33歳

    1985年10月22日/35歳

  • 出身地

    マンチェスター(イギリス)

    タスカルーサ(アメリカ アラバマ州)

  • アマチュア実績

    06年世界ジュニア選手権3位

    08年北京五輪ヘビー級銅

  • アマチュア戦績

    35戦31勝(26KO)4敗

    35戦30勝5敗

  • プロデビュー

    08年12月

    08年11月

  • 獲得王座

    WBA、IBF、WBO
    3団体統一世界ヘビー級王座
    WBC世界ヘビー級王座

    WBC世界ヘビー級王座(10度防衛)

  • 戦績

    31戦30勝(21KO)1分

    44戦42勝(41KO)1敗1分

  • KO率

    68%

    93%

  • 身長/リーチ

    206センチ/216センチ

    201センチ/211センチ

  • 初戦の体重

    116.34キロ

    96.38キロ

  • 再戦の体重

    123.83キロ

    104.78キロ

  • 戦闘スタイル

    スイッチヒッター

    右ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    「ジプシー・キング」

    「ブロンズ・ボマー」

  • トレーナー

    シュガー・ヒル(2019年~)

    マリク・スコット(2021年~)

<ヘビー級トップ戦線の現状>

WBA S
:オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)
:トレバー・ブライアン(アメリカ)
休養
:マームド・チャー(レバノン/シリア)
WBC
:タイソン・フューリー(英国)
暫定
:ディリアン・ホワイト(ジャマイカ/英国)
IBF
:オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)
WBO
:オレクサンダー・ウシク(ウクライナ)

 数年前からアンソニー・ジョシュア(31=英国)とタイソン・フューリー(33=英国)、デオンテイ・ワイルダー(35=アメリカ)の3人が抜きん出た存在としてトップグループを形成。そして昨年2月からはWBC王座を失ったワイルダーが一歩後退し、イギリスの2人が並走状態に入った。そのジョシュアとフューリーは今年8月に4団体の王座統一戦を行う計画だったが、一転して先送りになってしまった。フューリーにはワイルダーとの第3戦が優先事項として持ち上がり、ジョシュアにはWBO1位のオレクサンダー・ウシク(34=ウクライナ)との防衛戦が課されたからだ。
 そして、9月25日にはジョシュアがウシクに完敗。ここに来てヘビー級トップ戦線は一転して混乱状態になりつつある。
 こうしたなかで行われるフューリー対ワイルダーの第3戦は、いやがうえにも注目度が上がることになった。近い将来、ウシクとの4団体統一戦に駒を進めるのはフューリーなのか、それともワイルダーなのか。そして、ウシクはクルーザー級に続いて最重量級でも王座を総なめにするのか。風雲急を告げるヘビー級トップ戦線から目が離せない。
 上記の王者たちのほかトレバー・ブライアン(32=アメリカ)、マームド・チャー(36=レバノン/シリア)、ディリアン・ホワイト(33=ジャマイカ/イギリス)がベルトを持ってはいるが、一般的な認知は低いままだ。それでも、さらなる混戦状態が訪れた場合には彼らにも割って入るチャンスは出てきそうだ。
 元王者のジョセフ・パーカー(29=ニュージーランド)、アンディ・ルイス(32=アメリカ)は実績とそこそこの知名度があるだけに、遠からず王座奪回のチャンスが巡ってくる可能性は高い。ただし、パーカーは12月にディレック・チゾラ(37=ジンバブウェ/英国)との再戦が決まっており、これをクリアしなければ前に進めない。両者は今年5月に対戦し、そのときは初回のダウンを挽回したパーカーが2対1の判定で辛勝している。
 新興勢力としては、13戦全勝(12KO)のジョー・ジョイス(36=英国)、15戦全勝(12KO)のエフェ・アジャグバ(27=ナイジェリア)、19戦18勝(13KO)1無効試合のフランク・サンチェス(28=キューバ)に注目したい。特にフューリー対ワイルダーのセミファイナルとして実現するアジャグバ対サンチェスは興味深いカードといえる。

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R15+指定に相当する場面があると思われるもの
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