WBAスーパー、WBCフランチャイズ、IBF、WBO 4団体世界ライト級王座統一戦
ワシル・ロマチェンコ対テオフィモ・ロペス

  • 2020/10/9

天才技巧派 vs 戦慄の倒し屋
経験値で勝るロマチェンコが7対2で有利

 この3年ほど常にパウンド・フォー・パウンドの現役最強のひとりに推されるサウスポーの天才技巧派、ワシル・ロマチェンコ(32=ウクライナ)が、15戦全勝(12KO)の戦績を誇るスラッガー、テオフィモ・ロペス(23=アメリカ)と拳を交える。ロマチェンコはライト級のWBAスーパー王座、WBCフランチャイズ(特権)王座、WBO王座を保持しており、一方のロペスは昨年12月にリチャード・コミー(ガーナ)を2回TKOで屠ってIBF王座を獲得している。勝者が4団体王座をひとまとめにする統一戦でもある。オッズは7対2、経験値で勝るロマチェンコ有利と出ている。

アマとプロで世界一 3階級制覇のロマチェンコ

 ロマチェンコはアマチュア時代に2008年北京五輪フェザー級、2012年ロンドン五輪ライト級で金メダルを獲得し、世界選手権でも2009年大会でフェザー級、2011年大会はライト級で優勝している。ヘッドギアやランニングシャツ未着用のうえ8オンスのグローブで3分×5ラウンドを戦うプロ仕様のWSB(ワールド・シリーズ・ボクシング)での6勝を含めたアマチュア戦績は397戦396勝1敗といわれる。
 プロ転向は2013年10月のことで、トップランク社とプロモート契約を交わす際に「デビュー戦で世界挑戦させてほしい」とリクエストした逸話が残っている。世界15傑に入る必要があったため初陣は世界ランカーが相手だったが、これを4回KOの圧勝で突破。初戦から4ヵ月半後の2戦目でWBO世界フェザー級王座に挑んだが、体重超過のオルランド・サリド(メキシコ)に僅差の判定で敗れた。現時点ではこれがボクシング人生で2度目、プロでは唯一の敗北だ。3戦目でゲイリー・ラッセル(アメリカ=現WBC世界フェザー級王者)を下してWBO世界フェザー級王者になり、3度防衛後に返上した。
 転向したスーパー・フェザー級ではプロの水に慣れたこともあってまさに無敵状態だった。ローマン・マルチネス(プエルトリコ)を鮮やかなコンビネーションで5回KOに斬って落として2階級制覇を成し遂げると、以後、王者経験者のニコラス・ウォータース(ジャマイカ)、ジェイソン・ソーサ(アメリカ)、ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)らを相手に4連続TKO防衛を果たした。いずれも高度なテクニックで翻弄したすえ相手に棄権を選択させる完勝だった。
 そんなロマチェンコだが、ライト級では体格のハンディキャップにやや苦しんでいる印象だ。このクラスのトップ選手の平均身長/リーチは173センチ~175センチほどで、170センチ/166センチのロマチェンコは小柄の部類に入る。2018年5月、ライト級転向初戦でホルヘ・リナレス(帝拳)にボクシング人生で初のダウンを喫したが、10回TKO勝ちを収めてWBAスーパー王座を獲得、3階級制覇を達成した。7ヵ月後にはホセ・ペドラサ(プエルトリコ)に12回判定勝ちを収めてWBO王座を吸収。さらに昨年8月にはルーク・キャンベル(イギリス)を下して空位のWBC王座も手に入れた(のちにフェランチャイズ王者にスライド)。ライト級では4戦全勝(2KO)だが、相手のサイズや体力を持て余すシーンも散見される。このあたりが数少ない不安要素といえようか。トータル戦績は15戦14勝(10KO)1敗。デビュー戦以外はすべて世界戦だ。

強打に加え若さと勢いのあるロペス

 ロマチェンコほどではないが、ロペスも輝かしいアマチュア実績を誇る。17歳のときから全米ゴールデングローブ大会に出場し、2015年には同大会で優勝。翌2016年には両親の故国ホンジュラスの代表としてリオデジャネイロ五輪に出場した(ライト級初戦敗退)。アマチュア戦績は170戦150勝20敗と伝えられる。
 プロ転向に際してトップランク社とプロモート契約を交わし、トレーナーは父親のテオフィモ・ロペス・シニアが務めている。この点はロマチェンコ親子と同じだ。デビューから5連続KO勝ちを収めるなど順調なスタートを切ったロペスは、2018年5月にはロマチェンコ対リナレスの前座に出場、64秒でKO勝ちを収めている。さらに7ヵ月後にはロマチェンコ対ペドラサの前座にも起用され、ここでも元世界ランカーのメイソン・メナード(アメリカ)を44秒KOで屠った。「年間最高ノックアウト」の声が出るほどの鮮やかで戦慄を感じさせるKOだった。その後も世界挑戦経験者のディエゴ・マグダレノ(アメリカ)とエディス・タトリ(コソボ/フィンランド)を7回KO、5回KOで連破。昨年7月の中谷正義(井岡)戦は12回判定勝ちに終わったが、IBF王座への挑戦権をゲットした。そして12月にコミーから右一発でダウンを奪い、再開後にストップに持ち込んで2回TKO勝ち、戴冠を果たしている。80パーセントのKO率が示すとおりの強打者で、特に絶妙のタイミングで放つ右のショート・ストレートは破壊力がある。細かなテクニックや経験値では3団体王者に及ばないが、ロマチェンコにはない若さと怖いもの知らずの勢いがある。体格でも身長173センチ、リーチ174センチとそれぞれ3センチ、8センチ、対抗王者を上回っている。

ロマチェンコ有利は不動 前半に仕掛けたいロペス

 もともとこの試合は5月30日に計画されていたが、コロナ禍の影響で延期になり、9月から10月17日へと延びた経緯がある。さらに対戦契約寸前でロペスが報酬の上乗せを要求したと伝えられ、それならばとロマチェンコが自身の取り分から25万ドル(約2625万円)を削って対抗王者に差し出したのだとか。ロマチェンコの試合渇望度と自信がうかがえるエピソードといえよう。ちなみにロマチェンコに保証された報酬は350万ドル(約3億6750万円)、ロペスは150万ドル(約1億5750万円)と報じられている。
 こうして実現する4団体の王座統一戦だが、常識的に考えればロマチェンコ有利は揺るがない。強打者として知られたウォータースやミゲール・マリアガ(コロンビア)がロマチェンコの自在な動きにまったくついていけずに子供扱いされたすえギブアップしたように、ロペスが間合いやタイミングをつかめずに後手にまわってズルズルと失点を重ねるシーンを想像することは難しくない。劣勢が続いて体力を消耗したうえ戦意も削がれて途中棄権、あるいは連打にさらされて抵抗できずにストップ負けも考えられる。
 その一方、ロペスの爆発力を考えると番狂わせが起こる可能性も決して低くはないとみる。そのためにはロマチェンコがパンチの角度やタイミングを読み切る前、つまり前半でロペスはライバル王者に大きなダメージを与えておきたいところだ。あるいはチャンスが訪れたら仮に初回であっても一気呵成に勝負をかける必要があるだろう。
 ロマチェンコの判定勝ち、あるいは中盤以降のストップ勝ちという妥当な線に落ち着くのか、それともロペスの強打が炸裂して新しいヒーローが誕生するのか。戦闘開始のゴングから一瞬たりとも目の離せない試合になりそうだ。

TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表

  • 名前

    ワシル・ロマチェンコ

    テオフィモ・ロペス

  • 生年月日/年齢

    1988年2月17日/32歳

    1997年7月30日/23歳

  • 出身地

    ビルホロドドニストロフシキー(ウクライナ)

    ブルックリン(米国ニューヨーク州)

  • アマチュア実績

    08年北京五輪フェザー級金
    09年世界選手権フェザー級優勝
    11年世界選手権フェザー級優勝
    12年ロンドン五輪ライト級金

    15年全米GG大会ライト級優勝
    16年リオ五輪出場

  • アマチュア戦績

    397戦396勝1敗

    170戦150勝20敗

  • プロデビュー

    13年10月

    16年11月

  • 獲得世界王座

    WBO世界フェザー級王座
    WBO世界S・フェザー級王座
    WBA世界ライト級王座

    IBF世界ライト級王座

  • 戦績

    15戦14勝(10KO)1敗

    15戦全勝(12KO)

  • KO率

    67%

    80%

  • 世界戦の戦績

    14戦13勝(9KO)1敗

    1戦1KO勝ち

  • 身長/リーチ

    170センチ/166センチ

    173センチ/174センチ

  • 戦闘スタイル

    左ボクサーファイター型

    右ボクサーファイター型

  • トレーナー

    アナトリー・ロマチェンコ(父)

    テオフィモ・ロペス・シニア(父)

  • ニックネーム

    「ハイテク(高性能)」

    「エル・ブルックリン」

主要4団体の世界王座を自力で統一した選手

選手 達成年 階級
(1)バーナード・ホプキンス(アメリカ) 2004年9月 ミドル級
(2)テレンス・クロフォード(アメリカ) 2017年8月 スーパー・ライト級
(3)オレクサンデル・ウシク(ウクライナ) 2018年7月 クルーザー級

※ジャーメイン・テイラー(アメリカ)はホプキンスに勝って4団体王座を継承



ライト級トップ戦線の現状

WBA S
:ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
WBA
:ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)
WBA 暫定
:ローランド・ロメロ(アメリカ)
WBC F
:ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
WBC
:デビン・ヘイニー(アメリカ)
IBF
:テオフィモ・ロペス(アメリカ)
WBO
:ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)

 1年前はWBAスーパー王座とWBO王座を持つワシル・ロマチェンコ(32=ウクライナ)が無人の野を行く印象だったが、その後、一気に若手が台頭してきて高レベルで混戦になりそうな様相を呈している。現時点でロマチェンコの最大のライバルといえるのはIBF王者のテオフィモ・ロペス(23=アメリカ)であろう。今回の直接対決で勝てば一気に大ブレークとなるはずだ。
 「TANK(装甲戦車)」のニックネームを持つWBA王者のジャーボンテイ・デービス(25=アメリカ)は、昨年12月にユリオルキス・ガンボア(38=キューバ)を12回TKOで下して空位の王座を獲得した。身長166センチ、リーチ171センチと小柄だが、飛び込んで回転の速いコンビネーションで仕留める攻撃型だ。ロペス同様、若くて怖いもの知らずで、加えてサウスポーというアドバンテージもある。23戦全勝(22KO)というレコードもアピール度は十分だ。ロマチェンコとはビジネスの系列が異なるため対戦には乗り越えなくてはならない壁があるが、ともに勝利を重ねていけば対戦の機運は盛り上がっていくはずだ。
 WBC王者のデビン・ヘイニー(21=アメリカ)は、ロペスやデービスよりも若い逸材で、ここまで24戦全勝(15KO)のレコードを残している。スピードや距離感に優れているが、ロペスやデービスのような爆発力はない。しばらくは慎重に対戦相手を選びながら地力を上げていくことになりそうだ。大きな勝負は2年後、3年後ぐらいか。
 現時点では無冠だが、20戦全勝(17KO)のライアン・ガルシア(22=アメリカ)はアメリカ西海岸を中心に高い注目を集めている。178センチの長身から繰り出す右ストレートや左フックでKOの山を築いており、スター候補のひとりに数えられる。
ルーク・キャンベル(33=イギリス)との対戦が計画されているが、まだ日程が確定していない。
 このほか3階級制覇を成し遂げている前WBA王者のホルヘ・リナレス(帝拳)、そのリナレスとの対戦が組まれていたハビエル・フォルトゥナ(31=ドミニカ共和国)も挑戦、戴冠の機会をうかがっている。

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