ゴールデンボーイ vs ハイテク
スピードと技巧の競演

  • 2018/05/11

 2002年12月に大阪でプロデビューし、すでにフェザー級、スーパー・フェザー級、ライト級の3階級で世界王座を獲得しているベネズエラ出身のホルヘ・リナレス(32=帝拳)と、五輪連覇のアマチュア実績とプロ7戦で2階級制覇を成し遂げているサウスポーのワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)。ともにスピードを身上とする天才型だけに、駆け引きを含めた高度な技術戦が期待できそうだ。
 リナレスはアマチュアで161戦155勝6敗(本人談)の戦績を残し、16歳で来日。17歳のときに大阪府立体育会館でプロデビューを果たした。以来15年半、47戦44勝(27KO)3敗というレコードを刻んでいる。07年にWBC世界フェザー級王座、翌08年にはWBAスーパー・フェザー級王座を獲得し、リナレスは23歳で2階級制覇を成し遂げた。「天才」という形容詞はこの男のためにあるのかと思われるほどだった。ところが、打たれ脆さをつかれ、09年10月から12年3月までの2年半の間に3度のTKO負けを味わわされた。このころは「天才」の前に「早熟の」という前置きを入れなければならないかと危惧されたものだ。
 しかし、リナレスは挫折から這い上がりライト級でWBC王座を獲得し、デビュー当初にノルマとしていた3階級制覇を達成した。14年12月のことである。敵地に出向いて迎えた初防衛戦ではダウンを喫したうえ採点でも劣勢のなか、逆転の10回TKO勝ちを収めて逞しさをみせた。右拳の負傷のためWBCから休養王者にスライドさせられると、16年9月にはWBA王者のアンソニー・クロラ(イギリス)に挑戦。
これも敵地での試合だったが、接戦を抜け出して判定勝ちを収めた。試合後、WBCダイヤモンド王者の称号を授かっている。クロラとの再戦ではダウンを奪って大差をつけ、V2戦では12年ロンドン五輪金メダリストのルーク・キャンベル(イギリス)からダウンを奪って撃退。今年1月のメルシト・ヘスタ(フィリピン)戦も判定勝負になったが、サウスポーの曲者に付け入るスキを与えなかった。天性の素質に高い経験値が加わったことで、リナレスの総合的な戦力は20代前半よりも確実に上がったといっていえる。
 そんなリナレスだが、今回の相手は過去最強の難敵といっていいだろう。なにしろWBOスーパー・フェザー級王者でもあるロマチェンコは、選手の強さ指数とでも呼ぶべき「パウンド・フォー・パウンド」で現役最強との評価もある実力者なのだ。アマチュア時代の戦績は397戦396勝1敗、プロでは4年半に11戦10勝(8KO)1敗の戦績を残している。体重超過の相手のラフ戦法に戸惑いプロ2戦目での世界制覇こそ逃したが、続く3戦目でフェザー級、7戦目で現在の王座を手に入れている。
身長170センチ、リーチ166センチと体格に恵まれているわけではないが、忙しく立ち位置を変えながら出入りし、左右のストレート、フック、アッパーを顔面、ボディに打ち分けて圧倒してしまうスタイルを確立している。このところ7連続KO(TKO)勝ちを収めているが、直近の4戦は翻弄された相手が途中で棄権するという終わり方になっている。肉体のダメージのみならず心まで折ってしまったわけだ。プロでの試合数は11と少ないが、すでに12ラウンドをフルに3度戦いきっており、スタミナの配分は問題なさそうだ。
 リナレスが世界戦で7連勝(3KO)、4連続判定勝ちなのに対し、ロマチェンコは世界戦で9連勝、7KO中と手がつけられないほどの勢いがある。そうしたデータもあってオッズは6対1で挑戦者有利と出ている。サウスポーのロマチェンコが忙しく動いて的を絞らせず、そのうえで鋭く踏み込んで回転の速い左右を見舞うような展開に持ち込むようだと新王者誕生のムードは高まりそうだ。逆に、体格で勝るリナレスが先手をとって動き、相手を正面に置くことができれば右を生かせるのではないだろうか。「ハイテク(高性能)」というニックネームを持つ天才サウスポーに試されていない点があるとすれば、被弾したときの耐久力だろう。リナレスは自ら思い切りパンチを打ち込むタイプではないが、絶妙のタイミングで放つ右ストレートのカウンターには破壊力がある。その右が当たるかどうか。天才同士の一戦は序盤から速いテンポの技術戦になりそうだ。

<資料1>TALE OF THE TAPE 両選手の体格比較

  • 名前

    リナレス

    ロマチェンコ

  • 生年月日/年齢

    1985年8月22日/32歳

    1988年2月17日/30歳

  • 出身地

    バリナス(ベネズエラ)

    ビルホロドドニストロフスキー(ウクライナ)

  • アマチュア実績

    ベネズエラのジュニア選手権で3度優勝

    08年北京五輪フェザー級金
    12年ロンドン五輪ライト級金

  • アマチュア戦績

    161戦155勝6敗(本人談)

    397戦396勝1敗

  • プロデビュー

    02年12月

    13年10月

  • 獲得王座

    WBC フェザー級
    WBA Sフェザー級
    WBC&WBA ライト級

    WBO フェザー級
    WBO Sフェザー級

  • プロ戦績

    47戦44勝(27KO)3敗

    11戦10勝(8KO)1敗

  • KO率

    57%

    73%

  • 世界戦の戦績

    13戦11勝(7KO)2敗

    10戦9勝(7KO)1敗

  • 身長/リーチ

    173センチ/175センチ

    170センチ/166センチ

  • 戦闘タイプ

    右ボクサー型

    左ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    「ゴールデンボーイ」

    「ハイテク」

ライト級トップ戦線の現状

WBA   :ホルヘ・リナレス(帝拳)
WBC   :マイキー・ガルシア(アメリカ)
IBF   :ロバート・イースター(アメリカ)
WBO   :レイムンド・ベルトラン(メキシコ)

 WBC王者のマイキー・ガルシア(30=アメリカ)は3月にセルゲイ・リピネッツ(28=カザフスタン/ロシア)に12回判定勝ちを収めてIBFスーパー・ライト級王座を獲得し、一時は同時にふたつの王座を保持することになった。しかし、結局はライト級に留まる決断を下している。WBCはガルシアに同団体のダイヤモンド王座も持つWBA王者のホルヘ・リナレス(32=帝拳)との対戦を課していたが、リナレスがワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)の挑戦を受けることになったため、王者対決は先延ばしになった。代わりに浮上しているのがIBF王者のロバート・イースター(27=アメリカ)との対戦だ。もともとガルシアはイースターとの統一戦を計画しており、一時は1月に対戦かというところまでいった経緯がある。条件が合えば夏から秋にかけて実現しそうな雰囲気だ。38戦全勝(30KO)のガルシアに対し、21戦全勝(14KO)のイースターは経験値では及ばないが、身長180センチ、リーチ193センチという体格の利がある。ガルシアにとっては楽観視できないカードといえる。
 WBO王者のレイムンド・ベルトラン(36=メキシコ)は2月の決定戦で元WBA王者のパウルス・モーゼス(39=ナミビア)に12回判定勝ちを収めて戴冠を果たした。左フックの強打に定評のあるタフで攻撃型の選手だけに、誰と組み合わせても好試合が期待できる。
 無冠組ではIBF2位のリチャード・コーメイ(31=ガーナ)の存在が不気味だ。28戦26勝(23KO)2敗のコーメイは、イースターとのIBF王座決定戦とデニス・シャフィコフ(32=ロシア)との挑戦者決定戦で2対1に割れる判定を落としたが、その後は強豪相手に2連勝を収めている。
 また、WBCは1位のイバン・メンディ(32=フランス)と2位のルーク・キャンベル(30=イギリス)に挑戦者決定戦を命じている。この両者は15年12月に拳を交えており、メンディが12年ロンドン五輪金メダリストに初黒星を与えている。その試合を含めて10連勝(4KO)のメンディと、昨年9月のリナレス戦でダウンを喫して12回判定負けのキャンベル。近況はメンディが勝るが、今度は初戦とは逆の結果が出る可能性が高そうだ。このほか3階級制覇を狙うハビエル・フォルトゥナ(28=ドミニカ共和国)、返り咲きを目指すアンソニー・クロラ(31=イギリス)らにも注目したい。

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