WBO世界バンタム級タイトルマッチ ジョンリエル・カシメロ対ギジェルモ・リゴンドー

  • 2021/08/06

攻撃型の3階級制覇王者 vs 究極の技巧派
勝者が井上尚弥との統一戦に前進

 WBAスーパー王座とIBF王座を持つ井上尚弥(28=大橋)が主役の座にいるバンタム級でWBO王座に君臨するライバル王者、ジョンリエル・カシメロ(32=フィリピン)が、スピードとスキルに定評のあるサウスポー、ギジェルモ・リゴンドー(40=キューバ)の挑戦を受ける。型破りな攻撃型のカシメロと、アマチュア時代に五輪連覇も果たしているテクニシャンのリゴンドー。戦闘タイプが好対照の両者だけに序盤から目の離せない試合になりそうだ。

強靭なハートと強打で3階級制覇を成し遂げたカシメロ

 カシメロは18歳でプロデビューし、20歳のときにニカラグアに出向いてWBO暫定世界ライト・フライ級王座を獲得。初防衛に失敗後、フライ級でIBF王座に挑んだが、このときはモルティ・ムザラネ(南アフリカ共和国)の左ジャブにコントロールされて5回TKOで完敗。再びライト・フライ級に戻ると今度はアルゼンチンからIBF暫定王座を持ち帰った。正王者に昇格し3度の防衛を果たしたが、V4戦を前に体重超過のため失格、王座を失った。これを機に本格的にフライ級転向を果たし、IBF王者のアムナット・ルエンロエン(タイ)との再戦で4回KO勝ちを収めて2階級制覇を成し遂げた。2016年5月のことだ。その後、さらに体重を上げてスーパー・フライ級でIBFの挑戦者決定戦に臨んだこともあったが、このときは同胞のジョナス・スルタン(フィリピン)に12回判定で敗れた。
 冒険はこれだけでは終わらない。2019年4月、カシメロはクラスをバンタム級に上げてアメリカでWBO暫定王座決定戦に出場し、最終12回TKO勝ち、3階級制覇を成し遂げた。フィリピン出身者としてはマニー・パッキャオ(6階級)、ノニト・ドネア(5階級)、ドニー・ニエテス(4階級)に続き4人目の偉業(3階級制覇)だ。
 身長とリーチが163センチのカシメロはバンタム級では小柄の部類に入るが、そのハンデを強いハートと攻撃力で補っている。技術的には際立ったものがあるわけではないが、躊躇なく打ち込むパンチは左右とも破壊力がある。反面、ムザラネやスルタンにはジャブを突かれて攻撃の糸口を封じられ、持ち味を出させてもらえずに敗れている。サウスポーとはゾラニ・テテ(南アフリカ共和国)など世界戦で対戦したこともあり、特に苦にするタイプではなさそうだ。また、自国を含め10ヵ国で戦ってきた経験値と、劣勢のなか何度もパワーパンチで局面をガラリと変えてきた勝負強さは無視できないものがある。

五輪連覇 プロでは2階級制覇を果たした40歳のジャッカル

 カシメロとは対照的にアマチュア強国キューバ出身のリゴンドーは典型的な技巧派といえる。その礎がアマチュア時代に築かれたものであることは間違いない。リゴンドーは2000年シドニー大会、2004年アテネ大会と五輪連覇を果たし、世界選手権でも2001年と2005年に優勝している。アマチュア戦績については「247戦243勝4敗」「386戦374勝12敗」「400回以上戦い12敗」など複数説あるが、BOXREC.comには「475戦463勝12敗」と記載されている。いずれにしても驚異的な勝率であることに変わりはない。
 まだキューバがプロ競技を認可していない2009年2月にチームメイトのエリスランディ・ララ(現WBAスーパー・ウェルター級、WBAミドル級王者)と亡命を果たしてアメリカに渡り、ドイツのプロモーターのもとでプロに転向した。2010年11月にWBA暫定世界スーパー・バンタム級王座を獲得すると、V2戦で正王者に昇格し、2013年4月にはWBO同級王者のノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)にも勝って統一王者になった。ただ、そうした実績の反面、「試合がエキサイティングではない。観客やテレビの視聴者に対してアピール不足」との評価を下され、トップランク社との契約を解除されたほかWBA、WBOから活動が不活発であるとして王座を剥奪されたこともある(のちにWBAは返還)。2014年12月の天笠尚(山上)戦では2度のダウンを喫し、2017年12月には2階級上の王座を持つワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に挑んだが、7回の開始を前に棄権している。敗北はこの一度だけだが、リング外でのビジネス上の摩擦などを含めれば12年のプロキャリアは必ずしも順風満帆というわけではない。
 リゴンドーの試合が「エキサイティングではない」かどうかはともかくとして、このサウスポーのスキルが卓抜したものであることは誰もが認めている。左構えから右のリードパンチで牽制し、相手を呼び込んで左カウンターに繋げる。あるいはサイドに出て速いワンツーを打ち抜く。もちろん上下の打ち分けも巧みだ。これらを無表情のまま飄々とやってのける。足らないものがあるとしたら耐久力だろう。40歳という年齢を考えれば時間的な余裕もないといえるかもしれない。

一気にヒートアップか偵察戦か まずは序盤に注目

 大まかな展開を予想するとしたら、攻撃型のカシメロが仕掛け、カウンターパンチャー型のリゴンドーが迎え撃つということになるのだろうが、そう単純で分かりやすい構図にはならないかもしれない。リゴンドーのスピードと立ち位置を確認するためにカシメロが序盤を偵察時間として費やす可能性もあるし、カウンターに繋げたいリゴンドーが意図的に浅い攻撃を仕掛けて餌を蒔くことも考えられる。序盤から一気にヒートアップするかもかもしれないし、微妙な駆け引きが行われる可能性もあるのだ。
 打たれ脆いリゴンドーにとっては常にリスクを背負いながらの戦いになりそうだが、まずは持ち味のスキルを活かして戦えば前半で主導権を握れると予想する。そのままポイントを引き離し、カシメロの集中力が切れたタイミングで仕留めにかかりたいところだ。
 ただ、前半でカシメロがリゴンドーの動きを読み切っていたとなると話は別だ。カシメロはアムナットとの再戦やテテ戦などでは一発で相手にダメージを与えて展開を変え、その流れでけりをつけたことがあるだけにリゴンドーも最大限の注意を払う必要があるだろう。スキルで勝るリゴンドーが6-4で有利とみるが、カシメロの強打がそんな予想と相手を粉砕してしまう可能性も十分にある。

<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>

  • 名前

    カシメロ

    リゴンドー

  • 生年月日/年齢

    1989年2月13日/32歳

    1980年9月30日/40歳

  • 出身地

    フィリピン

    キューバ

  • アマチュア実績

    2000年シドニー五輪金
    2001年世界選手権優勝
    2004年アテネ五輪金
    2005年世界選手権優勝

  • アマチュア戦績

    475戦463勝12敗

  • プロデビュー

    07年6月

    09年5月

  • 獲得世界王座

    WBO(暫定)IBF Lフライ級王座
    IBFフライ級王座
    WBOバンタム級王座

    WBAバンタム級王座
    WBA、WBO Sバンタム級王座

  • 身長/リーチ

    163センチ/163センチ

    161.5センチ/173センチ

  • プロ戦績

    34戦30勝(21KO)4敗

    22戦20勝(13KO)
    1敗1無効試合

  • KO率

    59%

    62%

  • 世界戦の戦績

    15戦12勝(10KO)3敗

    13戦11勝(6KO)
    1敗1無効試合

  • 直近の試合

    20年9月(3回TKO勝ち)

    20年2月(12回判定勝ち)

  • 戦闘スタイル

    右ファイター型

    左ボクサー型

  • ニックネーム

    「Quadro Alas」

    「ジャッカル」「リゴ」

<バンタム級トップ戦線の現状>

WBA S
:井上尚弥(大橋)
:ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)
WBC
:ノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)
暫定
:レイマート・ガバリョ(フィリピン)
IBF
:井上尚弥(大橋)
WBO
:ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)

 個性派が揃っているが、正統派の井上尚弥(28=大橋)を中心に動いているクラスと断言していいだろう。プロキャリア9年、21戦全勝(18KO)という完璧な戦績を残している28歳の井上はピークを迎えつつあるが、まだ伸びしろも十分にある。スピード、パワー、テクニック、スタミナ、耐久力に経験値が加わり、いまは鬼が2本も3本も金棒を持ったような状態といえる。そんな「モンスター」が目指しているのはバンタム級の4団体王座統一だ。
 現時点で井上がターゲットとしているのは2人。WBC王者のノニト・ドネア(38=フィリピン/アメリカ)とWBO王者のジョンリエル・カシメロ(32=フィリピン)だ。ドネアとは2019年11月に対戦してダウンを奪って12回判定勝ちを収めており、一度は決着がついている。しかし、今年5月にドネアがノルディーヌ・ウバーリ(34=フランス)に4回KO勝ちを収めてWBC王座を奪い取ったため、井上には「もう一度戦う理由ができた」というわけだ。一方、WBO王座の方は今回のカシメロ対ギジェルモ・リゴンドー(40=キューバ)の結果を待たなければならない。新型コロナウィルスの収束状況しだいという客観情勢もあるため先は読みにくいが、場合によってはドネアとの再戦が優先される可能性もありそうだ。
 こうしたなか、カシメロ対リゴンドーの前座ではゲイリー・アントニオ・ラッセル(28=アメリカ)対エマヌエル・ロドリゲス(29=プエルトリコ)のWBA暫定王座決定戦が組まれている。18戦全勝(12KO)のラッセル、21戦19勝(12KO)2敗のロドリゲス。なかなか興味深いカードだが、勢いのあるラッセルが初戴冠を果たす可能性が高いとみる。
 昨年12月、ロドリゲスに競り勝ってWBC暫定王者になった24戦全勝(20KO)のレイマート・ガバリョ(24=フィリピン)は、この夏に初防衛戦が計画されていたものの具体化していない様子だ。
 WBA1位にランクされる元王者のラウシー・ウォーレン(34=アメリカ)、WBC1位のナワポーン・カイカニャ(29=タイ)らも無視できないが、井上を脅かす存在とはいえない。

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2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
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