万能型の「ハンター」 vs 2階級制覇狙う「キング」
序盤から緊迫したスピード勝負か

  • 2019/04/12

 階級の壁を越えたボクサーの強さ指数ともいうべき「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」の現役ナンバー1に推されることもあるWBO世界ウェルター級王者のテレンス・クロフォード(31=アメリカ)が、09年から12年にかけてスーパー・ライト級のWBA&IBF王者だったアミール・カーン(32=イギリス)の挑戦を受ける。
34戦全勝(25KO)のクロフォード、37戦33勝(20KO)4敗のカーン。ともにスピードに定評があるだけに、序盤から目の離せない試合になりそうだ。

世界戦で12戦全勝9KOの3階級制覇王者クロフォード

 「ハンター」のニックネームを持つクロフォードはアマチュア時代に70戦58勝12敗という戦績を残しているが、国際大会での華々しい活躍はなく全米大会での準優勝や3位といった実績が最高だった。08年にプロ転向を果たし、11年にはトップランク社とプロモート契約を交わしたが、キャリア前半は比較的慎重なマッチメークが目立った。08年秋にトラブルから頭部に銃弾を受けたこともあり、回復度や耐久力などが不安視されていたのかもしれない。
 しかし、WBO世界ウェルター級王者のティモシー・ブラッドリー(アメリカ)らとスパーリングをこなすなどして地力をつけ、14年3月にはイギリスのグラスゴーで地元の人気者、リッキー・バーンズ(35)を攻略、WBO世界ライト級王座を獲得した。初防衛戦では3階級制覇の実績を持つ当時無敗のユリオルキス・ガンボア(37=キューバ)から4度のダウンを奪って9回TKO勝ち。これで実力をアピールすると同時に一気に知名度を上げた。V2戦では、のちに世界王者になるレイムンド・ベルトラン(37=メキシコ)の強打を封じ、大差の判定勝ちを収めている。このあとスーパー・ライト級に転向し、トーマス・デュロルメ(29=フランス領グアドループ/プエルトリコ)との決定戦を6回TKOで制してWBO王座を獲得。2度防衛後にはWBC王者のビクトル・ポストル(35=ウクライナ)に勝って王座を統一し、さらに17年8月にはWBAとIBF王座を持つジュリアス・インドンゴ(36=ナミビア)に3回KO勝ち、4団体王座のコレクションに成功した。昨年6月にはウェルター級に転じ、ジェフ・ホーン(31=オーストラリア)を9回TKOで下して3階級制覇を成し遂げた。10月には元WBA暫定世界スーパー・ライト級王者のホセ・ベナビデス(26=アメリカ)に12回TKO勝ちを収め、初防衛を果たしている。
 世界戦で12戦全勝(9KO)をマークしているクロフォードはスピードとテクニックに秀でたサウスポーだが、対戦者との相性や機をみて右構えで戦うこともある。パワーヒッターの印象は薄いが、好機には一気に連打を見舞ってダウンに繋げることも多く、このところ世界戦で5連続KO勝ちと充実している。

17歳で五輪銀 22歳で戴冠果たしたカーン

 パキスタンからイギリスに移住した両親のもとに生まれたカーンは11歳でボクシングを始め、17歳8ヵ月で出場した04年アテネ五輪ではライト級で銀メダルを獲得して注目を集めた。アマチュア戦績は99戦89勝(31KO)10敗といわれる(他説あり)。「3年以内に世界王者になる」と宣言してプロに転向し、実際に3年目には世界上位まで進出していたが、ここで不覚の1回KO負けを喫して挫折。しかし、その10ヵ月後、ライト級からスーパー・ライト級にクラスを上げてWBA王座を獲得してみせた。クロフォードが6年かかって26歳で初戴冠を果たしたのに対し、カーンはプロ4年、22歳で王座を手に入れた。
 ドミトリー・サリタ(ウクライナ/アメリカ ※現在は世界挑戦を控えるヘビー級のジャレル・ミラーらのプロモーターを務める)、ポール・マリナッジ(アメリカ)、マルコス・マイダナ(アルゼンチン)らを退けたあとIBF王者のザブ・ジュダー(アメリカ)に5回KO勝ちを収めて2団体の王座を統一。こうしてスターからスーパースターへの階段を上り始めたと思われた矢先、伏兵レイモント・ピーターソン(アメリカ)に足を救われ(12回判定負け)、ダニー・ガルシア(31=アメリカ)には打たれ脆さをつかれて4回TKO負け、無冠に戻ってしまった。これが12年7月のことである。この時期と前後してクロフォードが右肩上がりの成長曲線を描いているのとは対照的といえる。また、列記してきたカーンの対戦相手のうちガルシア以外は活動を終えている点も興味深い事実だ。年齢こそ1歳違いだが、ふたりの旬が異なっていることが分かる。ただし、20日の直接対決によって逆転する可能性があることも忘れてはならない。
 カーンは3年前に155ポンド(約70.3キロ)の契約体重でWBC世界ミドル級王座に挑戦。スピードを駆使してサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)と5回までは互角に渡り合ったが、右を浴びて6回KOで散った。しかし、2年の休養後、ホエル・カサマヨル(キューバ)やディエゴ・コラレス(アメリカ)ら数多くの世界王者を指導してきたジョー・グーセン・トレーナーとコンビを組んで戦線復帰。18年には世界ランカーを下すなど2連勝を収め、今回、再びスポットライトを浴びることになった。「厳しい戦いになると思うが、勝利を確信している。スピード、体格など私はクロフォードに勝つために必要なものを備えている」と自信をみせている。

クロフォードが圧倒するか カーンが右ストレートを打ち抜くか

 ともにスピードに定評があるだけに、初回からピリピリした試合になりそうだ。クロフォードが左右どちらの構えでスタートするのかという点にも注目したい。厳しい戦いが予想されるカーンとしては左ジャブで煽り、相手を下がらせながら切り札の右ストレートを狙うパターンに持ち込みたいところだ。そのうえで腰の入った右を打ち抜くことができればイギリスのファンが歓喜する場面を作り出すことも可能だろう。ただし、巧みな位置どりをしながら圧力をかけ、ときには俊敏にいなすクロフォードの戦術に戸惑いをみせるようだと苦しい状況に追い込まれそうだ。
 8対1というオッズが出ているように、いまが旬のクロフォードが有利であることは誰もが認めるところだ。耐久力に課題を抱える挑戦者に何もさせずに一蹴してしまったとしても驚きには値しないかもしれない。しかし、過去の綻びから過小評価されている印象もあるカーンの右ストレートが王者のアゴを打ち抜く可能性があることも頭の隅に置いておきたい。いずれにしても観戦する側も集中力を求められる試合であることは間違いない。

<資料1>TALE OF THE TAPE 両選手の体格比較

  • 名前

    クロフォード

    カーン

  • 生年月日/年齢

    1987年9月28日/31歳

    1986年12月8日/32歳

  • 出身地

    オマハ(アメリカ ネブラスカ州)

    ボルトン(イギリス)

  • アマチュア実績

    06年全米GG大会ライト級準優勝
    06年全米選手権ライト級3位

    04年世界ジュニア選手権ライト級優勝
    04年アテネ五輪ライト級銀

  • アマチュア戦績

    70戦58勝12敗

    99戦89勝(31KO)10敗

  • プロデビュー

    08年3月

    05年7月

  • 獲得世界王座

    WBOライト級
    4団体統一 Sライト級
    WBOウェルター級

    WBA&IBF Sライト級

  • 世界戦の戦績

    12戦全勝(9KO)

    9戦6勝(2KO)3敗

  • 通算戦績

    34戦全勝(25KO)

    37戦33勝(20KO)4敗

  • KO率

    74%

    54%

  • 身長/リーチ

    173センチ/188センチ

    174センチ/180センチ

  • 戦闘タイプ

    左ボクサーファイター型
    (スイッチ・ヒッター)

    右ボクサーファイター型

  • トレーナー

    ブライアン・マッキンタイア
    イサウ・ディエゲス

    ジョー・グーセン(18年~)

  • ニックネーム

    「ハンター」

    「キング」

ウェルター級トップ戦線の現状

WBA SC :キース・サーマン(アメリカ)
WBA   :マニー・パッキャオ(フィリピン)
WBC   :ショーン・ポーター(アメリカ)
IBF   :エロール・スペンス(アメリカ)
WBO   :テレンス・クロフォード(アメリカ)

 足跡も戦闘スタイルも異なる個性的な実力が王座に君臨しており、17階級のなかで最も充実したクラスといってもいいだろう。そのなかでもIBF王者のエロール・スペンス(29=アメリカ)とWBO王者のテレンス・クロフォード(31=アメリカ)が双璧といえる。12年ロンドン五輪ベスト8のスペンスは攻撃型のサウスポーで、25戦全勝(21KO)の戦績を誇る。3月には4階級制覇王者のマイキー・ガルシア(31=アメリカ)の挑戦を大差の判定で退けたばかりだ。WBO王者のクロフォードは万能型のスイッチ・ヒッターだが、最近は世界戦で5連続KO勝ちと勢いを増している感がある。今回、アミール・カーン(32=イギリス)の挑戦を退ければ、スペンスとの頂上決戦が再び話題になりそうだ。
 WBAスーパー王者のキース・サーマン(30=アメリカ)、6階級制覇の実績を持つWBA王者のマニー・パッキャオ(40=フィリピン)、元IBF王者で現WBC王者のショーン・ポーター(31=アメリカ)は横一線といったところだが、ビジネス展開を考える場合はパッキャオが中心になる。昨年40歳になったパッキャオの次戦は7月に計画されていると伝えられ、相手候補としてサーマンや元2階級制覇王者で現WBC1位のダニー・ガルシア(31=アメリカ)らの名前が挙がっている。今年1月に戦線復帰を果たしたサーマンは2年間のブランクの錆をどれだけ取り除けるかが今後の課題といえよう。
 無冠組ではWBO1位のエギディユス・カバラウスカス(30=リトアニア)、ポーターを苦しめたWBC6位のヨルデニス・ウガス(32=キューバ)らに注目したい。

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2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの