3階級制覇の天才 vs 返り咲きを狙う“正義の男”
王者のスピードとスキルに大きなアドバンテージ

  • 2019/04/05

 中量級はもちろんのこと現代のボクシングシーンを牽引しているスター選手のひとり、WBA&WBO世界ライト級王者のワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ)が、2代前のWBA同級王者、アンソニー・クロラ(32=イギリス)を迎えて防衛戦を行う。昨年5月にホルヘ・リナレス(33=帝拳)を10回TKOで破って獲得したWBA王座は2度目、12月にホセ・ペドラサ(29=プエルトリコ)から奪ったWBO王座は初防衛戦となる。根気強く戦うクロラを甘くみることは危険だが、それでもサウスポーのロマチェンコのスピードとスキルに大きなアドバンテージがあることは間違いない。

プロ12戦目で3階級制覇達成の「ハイテク」

 ロマチェンコは五輪(08年北京大会、12年ロンドン大会)と世界選手権(09年大会と11年大会)を連覇するなど、アマチュアで397戦396勝1敗という驚異的なレコードを残して13年10月にプロ転向。2戦目の戴冠こそ逃したものの3戦目でWBO世界フェザー級王座を獲得し、7戦目にはWBO世界スーパー・フェザー級王座についた。この王座は4試合連続で相手をギブアップさせて防衛。そしてリナレスを破ってプロ12戦目で3階級制覇を達成している。
 「ハイテク(高性能)」というニックネームがあるように、ロマチェンコの戦闘スタイルは現代ボクシングの最先端を行くものといっていいかもしれない。身長170センチ、リーチ166センチと体格に恵まれているとはいえないロマチェンコだが、瞬時に立ち位置を変えながらスピードのある多彩なパンチをテンポよく打ち込んでいく。ディフェンスも巧みで、足捌きで距離を外すほか上体の動き、ブロッキングなど幅広い防御技術を身につけている。強打者のイメージは薄いが、リナレスを左のボディブローで倒したようにタイミングのいい巧打も持っている。戦績は13戦12勝(9KO)1敗。デビュー戦以外はすべて世界戦という内容の濃さだ。
 こうして並べてみるとまったく付け入るスキがなさそうに思えるロマチェンコだが、必ずしもそうとはいえない。ライト級に上げてからのロマチェンコはリナレス戦でアマ、プロを通じて初といわれるダウンを喫し、さらに試合中に右肩を負傷。12月のペドラサ戦では2度のダウンを奪って大差の判定勝ちを収めはしたが仕留めきれず、フェザー級、スーパー・フェザー級時代のような圧倒的な強さ、巧さは感じられなかった。かつてのような“特別感”が目減りした印象を残したことは否めない。自身の体が重かったのか、それとも相手との体格差を痛感したのか、最近ではスーパー・フェザー級に戻ることを希望しているとも伝えられる。

巧みなボディブローを軸に我慢強く戦うクロラ

  「ミリオンダラー(100万ドルの男)」と呼ばれる挑戦者のクロラは13年のプロ生活で43戦34勝(13KO)6敗3分のレコードを残している。イギリスのマンチェスターがホームだが、11年9月にはアメリカのネバダ州ラスベガスで行われたフロイド・メイウェザー(アメリカ)対ビクター・オルティス(アメリカ)の前座に出場したこともある(8回判定勝ち)。ロマチェンコとは対照的に長い下積みを経て15年7月にダルレイス・ペレス(コロンビア)の持つWBA世界ライト級王座に初挑戦。このときは12回引き分けに終わったが、4ヵ月後の再挑戦では左ボディブローで5回KO勝ち、念願の世界一になった。16年5月には暫定王者のイスマエル・バロッソ(ベネズエラ)と団体内の統一戦を行い、今度は右のボディブローで7回KO勝ちを収めた。ハイペースで飛ばす相手につき合わずに冷静に戦況を見極めるなど、経験値の高さを感じさせた試合だった。その王座はリナレスに判定で敗れて明け渡し、再戦ではダウンを喫して完敗という結果に終わっている。しかし、無冠に戻ってから元3階級制覇王者のリッキー・バーンズ(イギリス)、挑戦者決定戦でダウド・ヨルダン(インドネシア)にともに中差の12回判定勝ちを収めるなど底力を見せつけている。ガードを固めながら前に出て相手との距離を詰め、中間距離で左右のストレート、フック、さらにアッパーを叩き込む好戦的なスタイルを確立している。我慢強く戦うタイプで、ペレスやバロッソを倒したボディブローは強くてタイムリーだ。また、クロラは14年12月には隣家に押し入った強盗と格闘した際に頭部と足首を負傷。そのため決まっていた世界初挑戦をキャンセルしなければならなかったという逸話の持ち主でもある。

王者が圧倒的有利 大番狂わせの可能性は?

 スピードやスキルをはじめ総合的な戦力で勝るロマチェンコが有利であることは誰もが認めるところといえよう。いつものように瞬時にポジションを変えて翻弄、テンポのいい左ストレート、右フック、アッパーなどを繰り出して圧倒するシーンが目に浮かぶ。中盤あたりでレフェリー・ストップに持ち込むか、挑戦者の棄権を呼び込む可能性が極めて高いとみる。大番狂わせが起こるとしたら、クロラが体ごと押し込んで王者の動きを止め、ボディブローで体力と戦力を削いでいった場合か。クロラは決して頑丈なタイプとはいえないが、身長はロマチェンコよりも4センチ大きい174センチで、ナチュラルなライト級といえる。その体を利してロマチェンコを下がらせる展開に持ち込めれば勝機は広がりそうだ。

TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表

  • 名前

    ロマチェンコ

    クロラ

  • 生年月日/年齢

    1988年2月17日/31歳

    1986年11月16日/32歳

  • 出身地

    ビルホロドドニストロフスキー(ウクライナ)

    マンチェスター(英)

  • アマチュア実績

    08年北京五輪フェザー級金
    12年ロンドン五輪ライト級金
    09年世界選手権優勝
    11年世界選手権優勝

  • アマチュア戦績

    397戦396勝1敗

    不明

  • プロデビュー

    13年10月

    06年10月

  • 獲得王座

    WBO世界フェザー級
    WBO世界S・フェザー級
    WBA世界ライト級

    WBA世界ライト級

  • プロ戦績

    13戦12勝(9KO)1敗

    43戦34勝(13KO)6敗3分

  • KO率

    69%

    30%

  • 世界戦の戦績

    12戦11勝(8KO)1敗

    5戦2勝(2KO)2敗1分

  • 身長/リーチ

    170センチ/166センチ

    174センチ/170センチ

  • 戦闘タイプ

    左ボクサーファイター型

    右ボクサーファイター型

  • トレーナー

    アナトリー・ロマチェンコ(父)

    ジョー・ギャラガー

  • ニックネーム

    「ハイテク(高性能)」

    「ミリオン・ダラー」

ライト級トップ戦線の現状

WBA   :ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
WBC   :マイキー・ガルシア(アメリカ)
IBF   :リチャード・コミー(ガーナ)
WBO   :ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)

 WBAのスーパー王座とWBO王座を持つ3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(31=ウクライナ 13戦12勝9KO1敗)がトップを走り、4階級制覇を成し遂げているWBC王者のマイキー・ガルシア(31=アメリカ 40戦39勝30KO1敗)が追うかたちとなっている。ただし、ガルシアは3月にウェルター級でIBF王者のエロール・スペンス(29=アメリカ)に挑んで12回判定で完敗しており、再びライト級に戻るのか今後はウェルター級、あるいはスーパー・ライト級で活動していくのか様子をみる必要がありそうだ。ライト級に戻る場合はロマチェンコとの統一戦が期待されるが、2団体王者を擁するトップランク社とガルシアの間には過去に大きな摩擦が生じた経緯があり、3団体統一戦は簡単には実現しそうにない。
 より現実的なのはロマチェンコとIBF王者のリチャード・コミー(32=ガーナ 30戦28勝25KO2敗)の統一戦だ。2月に決定戦を制して戴冠を果たしたコミーは4月にロマチェンコと対戦するプランもあったが、右拳を痛めたため見送っている。ロマチェンコがアンソニー・クロラ(32=イギリス 43戦34勝13KO6敗3分)を負傷などのトラブルなく退けた場合、コミーとの3団体統一戦が再浮上してくるものと思われる。このコミーは身長175センチ、リーチ180センチと大柄で、11年2月のプロデビュー時から8年以上もライト級で戦っている強打者だ。ロマチェンコが有利であることは間違いないが、大きなリスクをともなうカードでもある。
 このクラスには次世代のスター候補が続々と台頭してきている。その一番手はテオフィモ・ロペス(21=アメリカ)だ。ここまで12戦全勝(10KO)を収めており、その勢いがどこまで続くのか注目したい。ロペス同様、主要4団体すべてで10傑入りを果たしている21戦全勝(13KO)のデビン・ヘイニー(20=アメリカ)も近い将来、王者たちを脅かす存在になるはずだ。そのヘイニーにアマチュア時代に勝っているライアン・ガルシア(20=アメリカ ※19年3月28日時点の戦績は17戦全勝14KO)にも要注目だ。ガルシアはWBOではスーパー・フェザー級1位にランクされているが、最近はライト級で戦っており、ふたつの階級でチャンスを待つことになりそうだ。
 このほか12年ロンドン五輪金メダリストでWBC1位のルーク・キャンベル(31=イギリス 22戦20勝16KO2敗)、前WBO王者のホセ・ペドラサ(29=プエルトリコ 27戦25勝12KO2敗)、前IBF王者のロバート・イースター(28=アメリカ 22戦21勝14KO1敗)らも巻き返しを狙っている。

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