KO率86%の「サソリ」 vs 通算47KOの指名挑戦者
技巧戦か打撃戦か ベルチェルトの選択しだい
「アラクラン(サソリ)」というニックネームを持つ王者のミゲール・ベルチェルト(26=メキシコ)と、3度目の大舞台となる指名挑戦者のミゲール・ローマン(32=メキシコ)。ボクシング王国が誇る勇敢な戦士ふたりだけに、熾烈な戦いが展開されそうだ。
ベルチェルトは10年11月のプロデビュー後、35戦34勝(30KO)1敗と高い勝率(約97%)、高いKO率(約86%)を記録している。唯一の敗北は14年3月、元コロンビアのライト級王者、ルイス・エドゥアルド・フローレス(コロンビア)の左フックを浴びて99秒でTKO負けしたものだ。当時、すでにベルチェルトはWBC5位、IBF3位にランクされていただけに痛い敗北だったが、そこから這い上がったのだから当然のことながら地力があったのだろう。以後は4年半で13連勝、そのうち12KOと倒しまくっている。ちなみに唯一、判定勝負まで持ち込んだのは三浦隆司(帝拳)である。ベルチェルトは16年3月にWBOの暫定王座を獲得し、17年1月にはフランシスコ・バルガス(33=メキシコ)を11回KOで破って現王座についている。初防衛戦では巧妙なアウトボクシングで三浦を退け、そのあとはマクスウェル・アウク(35=ガーナ)、元世界王者のジョナサン・バーロス(34=アルゼンチン)をともに3回TKOで一蹴している。
長いリーチを生かして相手を突き放しながら攻め込む積極的なスタイルだが、バルガス戦ではワンツーのあと速い左をストレートで痛めつけるなどスキルもある。打撃戦を厭わない勇敢さだけでなく、三浦戦で披露したようにリスクを小さく抑えたボクシングもできるのが強みだ。
挑戦者のローマンは、その王者よりも7年半早い03年3月に17歳でプロのリングに初めて上がっている。まだベルチェルトが11歳のときだ。11年3月にはアルゼンチンに赴いてWBA世界フェザー級王座に挑んだが、バーロスに判定で敗れた。1年後、今度はライト級でWBC王座に挑戦したが、サウスポーのアントニオ・デマルコ(32=メキシコ)の強打を浴びて5回KO負けという結果に終わった。
デマルコ戦の7ヵ月後、のちに三浦に挑むダンテ・ハルドン(メキシコ)に12回判定負けを喫したが、そのあとは18連勝(15KO)を収めてスーパー・フェザー級トップ戦線に再浮上。17年1月には三浦と挑戦権を争うまでになったが、このときは「ボンバー・レフト」を浴びて最終12回に力尽きた(KO負け)。それでもローマンは諦めずに再起。昨年12月に元世界2階級制覇王者のオルランド・サリド(メキシコ)を9回TKOで破って今回の指名挑戦権を手に入れた。
身長165センチ、リーチ169センチとローマンは体格には恵まれていないが、頑丈な体を利して前進し、執拗な連打で攻め落とすパターンを確立している。三浦戦では終盤にペースダウンしたが、もともとはスタミナもある。戦績は72戦60勝(47KO)12敗。
ともに好戦的なスタイルだけに真正面からの打撃戦が考えられる一方、スキルで勝るベルチェルトがリスクを小さく抑えるためアウトボクシングを選択する可能性もある。その場合、ローマンは打ち合う前に距離を潰すという難作業を強いられることになる。技を前面に出して戦うのか、それとも男気を見せて勇敢に打ち合うのか、選択権を握っているベルチェルト有利は動かない。
スーパー・フェザー級トップ戦線の現状
WBA SC :ジャーボンテイ・デービス(アメリカ):アルベルト・マチャド(プエルトリコ)
WBC :ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)
IBF :テビン・ファーマー(アメリカ)
WBO :伊藤雅雪(伴流)
WBAスーパー王者のジャーボンテイ・デービス(24=アメリカ)が今年4月、レギュラー王者のアルベルト・マチャド(28=プエルトリコ)が昨年10月、WBC王者のミゲール・ベルチェルト(26=メキシコ)は昨年1月、IBF王者のテビン・ファーマー(28=アメリカ)は今年8月、そしてWBO王者の伊藤雅雪(27=伴流)も今年7月と、5人とも王者歴は比較的浅い。最も在位期間の長いベルチェルトが3度防衛を果たしており、2度のマチャドが続いている。ファーマーは1度、デービスと伊藤はまだ防衛戦を行っていない。潜在能力を含めてデービスが先頭を行き、間をおかずにベルチェルトがつき、それをマチャド、伊藤、ファーマーが追う構図といえそうだ。
デービス、マチャド、ファーマーの3人はサウスポーだが、「タンク(装甲戦車)」と呼ばれる小柄なデービスと、対照的に178センチの長身のマチャドが攻撃型なのに対し、ファーマーはスピードとスキル重視の技巧派というように分かれている。
ランカー陣では、WBCの指名挑戦権を持つミゲール・ローマン(32=メキシコ)、ベルチェルトの前のベルト保持者のフランシスコ・バルガス(33=メキシコ)が実績面で抜きん出ている。
若手ではWBC3位にランクされる27戦全勝(24KO)のエドゥアルド・エルナンデス(20=メキシコ)、WBA5位、WBC12位、WBO4位に名を連ねる16戦全勝(13KO)のライアン・ガルシア(20=アメリカ)に注目したい。
「コロンビアのサソリ」マリアガが登場
伏兵相手に存在感を示せるか
3度の世界挑戦を経験しているミゲール・マリアガ(32=コロンビア)が、WBC世界スーパー・フェザー級タイトルマッチの前座に出場する。強豪との対戦経験豊富なホセ・エストレラ(28=メキシコ)を相手に存在感を示すことができるか。WBCとWBOでフェザー級15位にランクされているマリアガにとっては豪快なKO勝ちがノルマといえよう。
「スコーピオン(サソリ)」というニックネームを持つマリアガはアマチュア時代、08年北京五輪の地域予選で、のちに世界王者になるニコラス・ウォータース(ジャマイカ)にポイント勝ちを収めた実績を持っている。その旧敵とはプロ転向後の15年6月に対戦したが、12回判定で敗れている。この試合後、17年4月にWBO世界フェザー級王者のオスカル・バルデス(27=メキシコ)にも12回判定負けを喫し、3ヵ月半後にはワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)の持つWBO世界スーパー・フェザー級王座にも挑戦。このときは2度のダウンを喫して7回終了時に棄権した。今年5月に4回KO勝ちで戦線復帰しており、これが再起第2戦となる。戦績は29戦26勝(22KO)3敗。KO率は約76パーセントと高い。
35戦20勝(14KO)14敗1分の戦績を残しているエストレラは、勝率は57パーセントと決して高くはない。しかし、敗北のなかには、のちに世界王者になるルイス・ネリ(23=メキシコ)をはじめ、のちに世界挑戦するジェイミー・コンラン(32=イギリス)、カルロス・カールソン(28=メキシコ)、クリストファー・ディアス(24=プエルトリコ)、現WBA、WBO1位のディエゴ・デラ・ホーヤ(24=メキシコ)らに喫したものが含まれている。彼らに勝てなかったところにエストレラの限界をみることもできるが、それでも侮ることは危険だ。
とはいえ、ここは格上のマリアガにとっては自己アピールの場といっていいだろう。どのタイミングで毒針を刺して仕留めるか、それが焦点の試合といえよう。
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