ライト級10回戦
リチャード・コミー対ジャクソン・マリネス

  • 2021/03/05

再起戦同士のサバイバルマッチ
コミーに経験とパワーのアドバンテージ

 2019年2月から10ヵ月間、IBF世界ライト級王座に君臨した実績を持つリチャード・コミー(33=ガーナ)が、1年2ヵ月ぶりの再起戦のリングに上がる。81パーセントのKO率を誇るコミーは一昨年12月、売り出し中のテオフィモ・ロペス(アメリカ)に2回TKOで敗れ無冠になった。そのロペスはコミー戦から10ヵ月後、3団体王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)に判定勝ちを収め、4団体統一王者になると同時に一躍、時の人になった。もしもコミーがロペスを下して防衛していたら、いまごろはコミーが眩しいほどのスポットライトを浴びていた可能性もあったわけだ。あらためてボクシングが一瞬でその試合だけでなく、その先の明暗が分かれる格闘競技であることを実感させられる。
 そのコミーが再起戦で拳を交えるのはWBA同級6位の技巧派、ジャクソン・マリネス(30=ドミニカ共和国)だ。昨年8月、WBA暫定王座決定戦でローランド・ロメロ(アメリカ)に惜敗しているマリネスにとっても重要な再出発の試合となる。

 コミーは西アフリカのガーナで生まれ、24歳になる直前にプロデビューした。いきなり17連続KO勝ちを収めて注目を集め、英連邦王座を獲得(2014年7月)した直後にIBFで15傑入りを果たした。この前後からイギリス、デンマーク、南アフリカ共和国、アメリカ、ドイツを転戦して経験値とランキングを上げ、2016年9月にはIBF王座決定戦に出場する機会を得た。結果はロバート・イースター(アメリカ)に僅差の12回判定負けだったが、ダウンを奪いながらの惜敗だけに株を落とすことはなかった。それは3ヵ月後に挑戦者決定戦に出場するチャンスが与えられたことでも分かるだろう。ただ、コミーにとって不運だったのは、この大事な2試合が完全なアウェーでの戦いだったという点である。デニス・シャフィコフ(ロシア)との挑戦者決定戦もイースター戦同様、「コミーが勝っていた」という声もあったほどだが、2対1の判定で地元選手の手が挙がっている。
 再起3連勝後の2019年2月、再びIBF世界ライト級王座決定戦のチャンスが訪れ、今度はイサ・チャニエフ(ロシア)を2回TKOで仕留め、コミーはガーナのボクシング史上9人目の世界王者になった。この試合の勝者は4月にロマチェンコと対戦することが内定していたが、コミーは右拳を痛めたため大一番を棒に振ることになった。4ヵ月後、傷が癒えたコミーは体重オーバーの元王者レイムンド・ベルトラン(メキシコ)から4度のダウンを奪って8回KO勝ち、初防衛を果たした。そしてロペスとのV2戦を迎えることになる。勝者がロマチェンコとの4団体統一戦に向かうという大事な一戦だったが、コミーはロペスの右カウンターを浴びてダウン。
立ったもののダメージは深く、連打をまとめられてレフェリー・ストップを言い渡された。今回はそのロペス以来のリングとなる。32戦29勝(26KO)3敗。
 一方のマリネスは2016年2月にプロデビューした。コミーが世界戦の準備に入ったころだ。以来5年間に20戦して19勝(7KO)1敗の戦績を残している。キャリアはコミーの半分、試合数は6割ほどだ。マリネスは2018年5月にWBA中南米ライト級王座を獲得したのを機にトップ15入りを果たし、無名相手に勝利を重ねながらじわじわとランクを上げていった。一昨年12月には初めてアメリカ進出を果たし、昨年8月にはローランド・ロメロ(アメリカ)とのWBA暫定王座決定戦に出場するチャンスに恵まれた。この試合、マリネスは適度に足をつかいながらロメロの打ち終わりを突くなど巧者ぶりを発揮したが、ジャッジは三者ともメイウェザーの秘蔵っ子を支持した。結果が出た瞬間、解説者が「ワォ!」と叫ぶほどの疑問判定だったが、マリネス自身にももっと積極性が欲しかったところだ。この不本意な判定負けが唯一の黒星で、今回のコミー戦が半年ぶりの再起戦となる。
 身体能力とパンチ力に自信を持つコミーが仕掛け、長身(180センチ)技巧派のマリネスが左右に動きながら迎え撃つ展開になりそうだ。コミーの主武器は右ストレートの長距離砲だが、中距離で振り抜く左フックも強い。これらが炸裂すればマリネスはひとたまりもないだろう。17対6のオッズが出ているように経験とパワーで勝るコミー有利は揺るがない。ただ、ロペス戦では強気な攻めが災いしており、また14ヵ月のブランクもあるため以前のようにコミーが躊躇せずに積極的に打って出ることができるかどうか。攻撃に戸惑いがあるようだと懐深く構えるマリネスのテクニックの前に闘志と強打が空転させられる可能性もある。

ライト級トップ戦線の現状

WBA S
:テオフィモ・ロペス(アメリカ)
WBA
:ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)
WBA 暫定
:ローランド・ロメロ(アメリカ)
WBC F
:テオフィモ・ロペス(アメリカ)
WBC
:デビン・ヘイニー(アメリカ)
WBC 暫定
:ライアン・ガルシア(アメリカ)
IBF
:テオフィモ・ロペス(アメリカ)
WBO
:テオフィモ・ロペス(アメリカ)

 昨年10月の直接対決で競り勝ったテオフィモ・ロペス(23=アメリカ)がワシル・ロマチェンコ(33=ウクライナ)に代わってライト級の主役に躍り出た。16戦全勝(12KO)の4団体王者は若くてエキサイティングな試合をすることから、さらに注目度を上げていきそうな勢いだ。初防衛戦ではIBF1位のジョージ・カンボソス(27=オーストラリア)を迎えることが有力視されている。左腕を下げた独特の構えから左右フックを振って攻めて出るカンボソスはマニー・パッキャオ(フィリピン)のスパーリング・パートナーだったことでも知られており、戦績も19戦全勝(10KO)と綻びはない。ただ、アウェーでの試合だったとはいえ元王者のミッキー・ベイ(37=アメリカ)、リー・セルビー(34=イギリス)戦ではいずれも判定が2対1に割れており、ロペスと比べると格落ちの印象は否めない。
 この階級はロペスをはじめ若い王者が支配している。王者のなかでは26歳のジャーボンテイ・デービス(アメリカ=24戦全勝23KO)が最年長で、ローランド・ロメロ(アメリカ=13戦全勝11KO)が25歳、ロペスが23歳、デビン・ヘイニー(アメリカ=25戦全勝15KO)とライアン・ガルシア(アメリカ=21戦全勝18KO)は22歳だ。ベルト保持者5人全員が全勝のアメリカ人という共通項もある。これだけのタレントが揃っているのだから、ビジネス面の摩擦を超えていくつもの直接対決が実現してほしいものだ。特に、勢いがあって知名度も急上昇しているロペスと、レオ・サンタ・クルス(32=メキシコ)を痛烈なKOで撃退したデービスの一騎打ちは中量級随一の好カードではなかろうか。アマチュア時代に6戦して3勝3敗と星を分けているヘイニーとガルシアの対決も楽しみだ。
 ロマチェンコをはじめ経験値の高い元王者たちも忘れてはなるまい。ホルヘ・リナレス(35=帝拳)、ハビエル・フォルトゥナ(31=ドミニカ共和国)、リチャード・コミー(33=ガーナ)らはどの団体の王座に挑んでも戴冠のチャンスがある。
 このほかフェリックス・ベルデホ(27=プエルトリコ)を劇的な逆転TKOで破った中谷正義(31=帝拳)、IBF2位、WBA4位に急上昇してきた強打のイサック・クルス(22=メキシコ)もいる。

NABF北米フェザー級タイトルマッチ
アダム・ロペス対ジェイソン・サンチェス

バルデスからダウンを奪ったロペス vs バルデスとフルラウンド戦ったサンチェス

 2月20日にミゲール・ベルチェルト(メキシコ)のV7を阻止してWBC世界スーパー・フェザー級新チャンピオンになったオスカル・バルデス(30=メキシコ)。29戦全勝(23KO)と一点の綻びもないレコードのまま2階級制覇を成し遂げ、評価と注目度をさらに上げたところだ。今回は、そのバルデスとの無冠戦で7回TKO負けを喫したもののダウンを奪ったことのあるアダム・ロペス(24=アメリカ)と、世界戦でバルデスと12ラウンドをフルに戦いきったジェイソン・サンチェス(26=アメリカ)が拳を交える。オッズは7対4でロペス有利と出ているが、総合力に大差はなく接戦が予想される。
 ロペスはデビュー2年目の2017年12月、のちに世界王者になるスティーブン・フルトン(アメリカ)に小差の8回判定負けを喫したが、それ以外は順調に白星を重ねてきたといえる。2019年11月のバルデス戦も敗れはしたものの2回に右ストレートから左フックをフォローして痛烈なダウンを奪っている。臆することなく打ち合い、むしろ株を上げる戦いぶりだった。昨年6月、再起戦でルイス・コリア(アメリカ)に競り勝ち、NABF北米フェザー級王座を獲得、今回のサンチェス戦が初防衛戦となる。左ジャブを効果的に突いて右ストレートに繋げることが多く、気持ちの強さを前面に出して戦うタイプといえる。戦績は16戦14勝(6KO)2敗。
 2012年12月にデビューしたサンチェスは地元のニューメキシコ州アルバカーキを中心に勝利を重ね、2018年10月にWBOユース王座を獲得。これを機に15傑入りを果たすと、2019年6月にはバルデスの持つWBO世界フェザー級王座に挑戦するチャンスに恵まれた。さすがに10回戦を一度経験しただけのサンチェスには荷が重くダウンを喫して大差の判定で敗れた。しかし、右クロスや左フックで応戦してフルラウンドを戦いきり、先々に楽しみを残したともいえる。ただ、再起第2戦で世界挑戦経験者のクリストファー・ディアス(プエルトリコ)に敗れており、必ずしも近況は芳しいとはいえない。「アラクランシト」小さなサソリというニックネームを持つサンチェスもワンツー主体の右ボクサーファイター型で、アッパー系のパンチも多用する。戦績は17戦15勝(8KO)2敗。
 ともに手数が多く勇敢に戦うタイプということもあり、序盤から白熱した展開になる可能性が高い。加えて一定以上の耐久力がある者同士だけに、競った内容のまま勝負は中盤過ぎまで持ち込まれるのではないだろうか。直近の試合で勝っているロペスにわずかに分があると思われるが、サンチェスにも十分に勝機はある。

ヘビー級6回戦
ジャレド・アンダーソン対キングスリー・イベ

7戦全KO勝ちの21歳 アンダーソンに注目
巨漢イベの強打には要注意

 全米選手権連覇など輝かしいアマチュア実績を引っ提げてプロの世界に飛び込んだジャレド・アンダーソン(21=アメリカ)が、体重125キロの巨漢、キングスリー・イベ(27=ナイジェリア/アメリカ)と対戦する。ここまで綺麗に7つのKO勝ちを収めてきたアンダーソンが連続KOを8に伸ばせるか注目される。
 身長193センチ、リーチ199センチ、体重112キロと恵まれた体格のアンダーソンはスピードもあり、観戦者を釘付けにするパワーも備えている。昨年9月の試合では左構えにスイッチした状態で相手を倒してレフェリー・ストップに持ち込んでおり、器用な一面もある。その56日後には井上尚弥対ジェイソン・マロニーの前座に登場、1回TKO勝ちを収めている。それらを含め昨年は6月、7月、9月、10月と4試合連続で通称「ザ・バブル」のリングに上がっており、無観客状態での戦いは慣れたものといえよう。いまはリスクを抑えたマッチメークが施されているが、今後は総合力を上げるためにクセのある相手との試合も組まれていくはずだ。
 そういった意味では今回のイベは要注意の相手といえるかもしれない。西アフリカのナイジェリアで生まれたイベは2019年8月にメキシコでプロデビュー。2戦目に僅差の4回判定負けを喫したが、その後は4連勝をマーク。直近の試合は6回引き分けだったが、相手は2016年リオデジャネイロ五輪に出場したこともある7戦全KO勝ちのグイド・ビアネロ(イタリア)だった。むしろイベが株を上げた試合といっていいだろう。サウスポーのイベは相手が出てこないとみると強引に左右のフックで攻め込むが、出てくると自ら下がって誘い込むなど狡猾なところがある。ビアネロ戦では瞬間的に右構えにチェンジすることもあった。捕まえにくいタイプといえそうだ。こちらも昨年は6月、7月、10月と続けて「ザ・バブル」のリングに上がっており、これが4試合連続となる。
 スピードや潜在的な能力で勝るアンダーソンが圧倒的に有利だが、ビアネロの連勝を止めて意気上がるイベを軽視することは危険だ。まずは慎重に左ジャブで牽制しながら自分のリズムと距離をキープする必要があるだろう。トップランク社が「将来の世界ヘビー級王者候補」として期待を寄せるエリートがどんなパフォーマンスを見せるのか注目したい。

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オンデマンドでの同時配信対象外
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの