KO率80%のV5王者 vs 14戦全勝のホープ
打撃戦必至 バルデスが圧倒的有利
アマチュア時代に08年北京大会、12年ロンドン大会と2度の五輪出場したほか09年と11年世界選手権にも出場した経験を持ち、プロでは16年7月に獲得したWBO世界フェザー級王座を5度防衛しているオスカル・バルデス(28=メキシコ)が、「サソリ」のニックネームを持つ24歳のホープ、WBO11位のジェイソン・サンチェス(アメリカ)の挑戦を受ける。ともに好戦的なタイプとあって打撃戦が予想されるが、パワーのほか経験値など総合力で勝るバルデスが圧倒的有利といっていいだろう。
バルデスは五輪のほか世界ユース選手権優勝(08年)、パンナム大会で2度準優勝(09年、11年)するなど輝かしいアマチュア実績を誇る。「204戦177勝27敗」がバルデスが自己申告しているアマチュア戦績だ。
トップランク社と契約を交わして12年11月にプロ転向を果たし、順調に出世の階段を上ってきた。3年前、同じトップランク社のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が返上して空位になったWBO世界フェザー級王座決定戦に出場し、マティアス・カルロス・ルエダ(アルゼンチン)に2回TKO勝ちを収めて戴冠を果たした。初防衛戦では大澤宏晋(ロマンサジャパン ⇒ オール)を7回TKOで退け、その後、4度の防衛を重ねている。V3戦では不覚のダウンを喫し、V4戦では体重超過のスコット・クィッグ(イギリス)のパンチでアゴを骨折するというハプニングにも遭遇したが、いずれも判定勝ちを収めている。今年2月のカーミネ・トマソーネ(イタリア)との5度目の防衛戦では計4度のダウンを奪って一蹴(7回TKO)、大澤戦以来のKO勝ちを飾った。戦績は25戦全勝(20KO)。KO率は80パーセントと高い。
身長166センチとフェザー級では小柄な部類に入るが、距離を詰めながら打撃戦を仕掛けパワーでねじ伏せてしまうことが多い。リスクを恐れずに攻める反面、被弾することも少なくないため試合は常にスリリングだ。
今回、もともとバルデスはエリック・イトゥアルテ(メキシコ)との防衛戦を予定していた。しかし、2月までWBO12位だったイトゥアルテが3月のランキングで15傑から外れたため統括団体が世界戦としての認定を見送った経緯がある。バルデスはイトゥアルテと無冠戦を強行するか、あるいは別の相手を探して防衛戦を行うかという選択を迫られなか、1ヵ月前になってサンチェス戦を決めたというわけだ。
このサンチェスは兄弟3人がプロボクサーで、4年前に25歳で亡くなった兄アランがライト級で5戦3勝2KO2敗の戦績を残しており、現役のスーパー・ウェルター級、兄ホセ・ルイス(26歳)はここまで10戦9勝(4KO)1敗と好調だ。ジェイソン・サンチェス自身は12年12月にプロデビューし、6年半のキャリアで14戦全勝(7KO)をマークしている。昨年10月、WBA15位にランクされていたジャン・カルロス・リベラ(プエルトリコ)に勝ってWBOユース王座を獲得したが、これが唯一といっていい強豪との対戦だ。左右のパンチはややチョップ気味でもあるが、思い切りがいいだけにKO率(50パーセント)以上の破壊力が感じられる。
とはいえサンチェスは10ラウンドと8ラウンドをフルに戦いきったことが1度ずつしかなく、経験値という点では王者に遠く及ばない。パワー、テクニックでもバルデスが明らかに上だ。慢心さえなければバルデスが力量差をみせつけて中盤あたりで仕留める可能性が高い。
フェザー級トップ戦線の現状
WBA SC :レオ・サンタ・クルス(メキシコ)WBA :シュー・ツァン(中国)
WBC :ゲイリー・ラッセル(アメリカ)
IBF :ジョシュ・ウォーリントン(イギリス)
WBO :オスカル・バルデス(メキシコ)
スーパー・ライト級、スーパー・ウェルター級、ミドル級、スーパー・ミドル級のように目まぐるしく王座が移動している階級があるなか、このフェザー級は安定しているクラスといっていいかもしれない。IBF王者のジョシュ・ウォーリントン(28=イギリス)は昨年5月、WBAレギュラー王者のシュー・ツァン(25=中国)は今年1月と王座獲得時期は比較的最近だが、ほかの3王者は在位が長い。WBAスーパー・王者のレオ・サンタ・クルス(30=メキシコ)は17年1月の戴冠で防衛が3度、WBC王者のゲイリー・ラッセル(31=アメリカ)は15年3月の戴冠で防衛が4度、WBO王者のオスカル・バルデス(28=メキシコ)は16年7月の戴冠で防衛が5度と、いずれも2年半以上の長期政権を築いている。
それだけに統一戦が期待されるところだが、それぞれがライバル王者を牽制はするものの実現に向けた具体的な交渉が進んでいるという情報はない。せめてアマチュア時代に対戦経験があるラッセルとサンタ・クルス(06年にラッセルが13対6でポイント勝ち)の因縁の対決ぐらいは実現してほしいものだが……。
王者たちが安定政権を築いている一方、下からの突き上げも始まっている。16年リオデジャネイロ五輪バンタム級銀メダリストのシャクール・スティーブンソン(22=アメリカ)、12年ロンドン五輪フライ級銀メダリストのトゥグッソト・ニャンバヤル(27=モンゴル)が猛スピードで台頭してきているのだ。すでにニャンバヤルはWBCの指名挑戦権を手にしており、スティーブンソンもWBAとIBFで3位、WBOでは1位にランクされている。ふたりとも1年以内には大きな勝負に出るものと思われる。また、このところやや足踏み状態とはいえ2度の五輪出場経験(12年ロンドン五輪フライ級銅、16年リオデジャネイロ五輪バンタム級8強)を持つマイケル・コンラン(27=アイルランド)も世界挑戦圏内に入ってきており、来年は一転して賑やかなクラスになりそうだ。
13戦全勝の20歳 vs 24歳の元中米王者
アメリカ西海岸の人気者フローレスに注目
現時点では世界ランキングに入ってはいないが、いまから「ガブリエル・フローレス」というライト級ホープの名前は覚えておいた方がいいかもしれない。近い将来、センセーションを巻き起こす可能性があるからだ。
2000年5月生まれのフローレスは、ボクシングジムのオーナーでトレーナーを務めている父親のもとで7歳のときにこの格闘技を始めた。17歳でプロに転向するまでジュニアで98戦91勝7敗のアマチュア戦績を収めている。全米シルバー選手権優勝(14年、16年)のほか15年世界ジュニア選手権では準優勝している。私生活では、母親がパーティー会場で射殺されるという悲劇に遭ったことが広く知られている(13年)。トップランク社と契約してプロ転向を果たしたのは17年5月のこと。生まれ育ったストックトンがあるカリフォルニア州ではプロライセンスは18歳以上と定められているため、フローレスは8戦目までネバダ州やテキサス州で戦うことになった。12連勝のあと今年5月にはストックトンで行われたダブル世界戦の際にセミファイナル扱いでリングに登場。1万人以上の地元ファンから熱狂的な声援を受けるなか鮮やかな左フックで3回KO勝ち、凱旋試合に花を添えた。その試合まで6試合続けてKOを逃していただけに、この快勝でひと皮むけているかもしれない。
相手のサルバドール・ブリセノ(24=メキシコ)は13年5月にプロデビューした6年選手で、ここまで18戦15勝(9KO)3敗の戦績を残している。こちらも世界的には無名だが、3年前にはWBC中米スーパー・フェザー級王座を獲得した実績を持っている。17年10月にはWBO中南米ライト級王座に挑んで2回KO負けを喫したが、再起して2連続KO勝ちと復調している。
13戦全勝(6KO)の20歳のホープ、フローレスが元中米王者のブリセノを相手にどんなリング・パフォーマンスを披露するのか要注目だ。
-
2019/12/06
3階級を制覇した絶対王者のV3戦挑戦者は五輪2度出…
-
2019/11/29
大番狂わせから半年で迎える直接再戦オッズは9対4で…
-
2019/11/22
「サソリ」の異名持つ王者のV6戦挑戦者は31歳の元…
-
2019/11/22
2019年総集編 ベストマッチランキング&有識者が…
-
2019/11/15
激闘から1年8ヵ月 因縁のリマッチ序盤からスリルに…
-
2019/11/08
スコットランドの竜巻 vs ニューオーリンズ出身の…
-
2019/11/01
最強決定トーナメント「WBSS」決勝戦モンスター …
-
2019/10/25
旧ソ連出身者同士の全勝王者対決グボジークのスキルか…
-
2019/10/18
「パッキャオに勝った男」のミドル級転向第2戦ゼラフ…
-
2019/10/11
紆余曲折を経ての決定戦元V7王者ララがスピードと技…
-
2019/10/04
ロシアの破壊者 VS KO率94%の指名挑戦者オッ…
-
2019/09/27
元3団体王者の“再起”第2戦相手は21戦無敗のサウ…
-
2019/09/20
25戦全勝のスペンスに死角なし?長丁場の乱戦に持ち…
-
2019/09/13
12年ロンドン五輪戦士 vs 04年アテネ五輪戦士…
-
2019/09/06
24歳の「装甲戦車」 vs パナマの「科学者」V2…
-
2019/08/30
1回無効試合から69日井岡一翔への挑戦切符を賭け直…
-
2019/08/23
五輪以来7年ぶりロンドン登場の「ハイテク」キャンベ…
-
2019/08/16
KO率75%の「ヒットマン」 vs 「CANNON…
-
2019/08/09
ガーナ出身のスラッガー vs 38歳の元王者勢いの…
-
2019/08/02
実力拮抗の欧州ダービーオッズは地元ブリーディスが2…
-
2019/07/26
元3団体王者 引き分け後の“再起戦”相手は24戦全…
-
2019/07/19
返り咲き目指すチャーロ弟の再起戦相手はKO率81%…
-
2019/07/12
サーマン有利 ⇒ ほぼイーブンのオッズ序盤の攻防に…
-
2019/06/28
KO率80%のV5王者 vs 14戦全勝のホープ打…
-
2019/06/21
統一王者ハード 通算4度目の防衛戦オッズは6対1で…
-
2019/06/14
立場を変えて2年4ヵ月ぶりに再戦V4中の現王者に死…
-
2019/06/14
08年北京五輪銅メダリスト vs 12年ロンドン五…
-
2019/05/24
2階級制覇狙う久保
自国で初防衛戦に臨むツァン -
2019/05/17
思い出の地 キシミーでV2戦に臨む伊藤挑戦者は長身…
-
2019/05/13
和製モンスター vs カリブの至宝最強決定トーナメ…
-
2019/05/10
正王者に昇格した「ザ・ネイル(仕留める男)」アフリ…
-
2019/04/26
33歳の雑草派・船井が「パッキャオの後継者」に挑戦…
-
2019/04/24
【JBC監修】WOWOWボクシング検定2019 公…
-
2019/04/12
万能型の「ハンター」 vs 2階級制覇狙う「キング…
-
2019/04/05
3階級制覇の天才 vs 返り咲きを狙う“正義の男”…
-
2019/03/29
3階級制覇王者にとって16度目の世界戦挑戦者は前半…
-
2019/03/22
「村田に勝った男」の凱旋初防衛戦挑戦者は17戦全勝…
-
2019/03/15
連打型ファイター vs KO率78%のサウスポー攻…
-
2019/03/08
昇竜のサウスポー王者 vs 正統派パンチャー体格で…
-
2019/03/01
アブネル・マレスが戦線離脱ルイスが3階級制覇狙って…
-
2019/02/22
「7回逆転KO」の結果を受けた直接再戦オッズは3対…
-
2019/02/18
22ヵ月ぶりにリング登場のサーマン好戦派のロペスを…
-
2019/02/08
王者のパワーか 挑戦者のスキルかオッズは11対8で…
-
2019/02/01
世界王座挑戦権をかけた因縁リマッチオッズは11対4…
-
2019/01/25
V9の“スーパーマン” vs 15戦全勝の暫定王者…
-
2019/01/21
「ミドル級最強」説もあるチャーロの初防衛戦挑戦者は…
-
2019/01/18
6階級制覇 vs 4階級制覇「KOを狙う」とパッキ…
-
2018/12/21
27戦無敗の王者 vs 28戦全勝の24歳13対8…
-
2018/12/07
27歳の万能型 vs 経験豊富な36歳存在感増すビ…
-
2018/11/30
3階級制覇の「ハイテク」 vs 2階級制覇の「スナ…
-
2018/11/26
40戦全勝39KOの王者 vs 27戦全勝19KO…
-
2018/11/23
2018年総集編 ベストマッチランキング&有識者が…
-
2018/11/16
KO率86%の「サソリ」 vs 通算47KOの指名…
-
2018/11/9
「ミラクルマン」 vs 「テクニシャン」同門対決は…
-
2018/11/2
充実の3階級制覇王者の初防衛戦33戦全勝(24KO…
-
2018/10/26
「WBSS」シーズン1の決勝オッズは11対8でグロ…
-
2018/10/19
スター候補の王者 仕切り直しの初防衛戦22戦全勝1…
-
2018/10/09
WBC1位と7位の「雄鶏」対決万能型のエストラーダ…
-
2018/10/05
勝者が戴冠 敗者はトップ戦線脱落
非情な元王者対決 -
2018/10/05
37歳の雑草派王者 vs 五輪出場のエリート挑戦者…
-
2018/09/21
元3階級制覇王者リナレスの再起戦 元世界ランカーを…
-
2018/09/14
ロシアの破壊者 vs コロンビア出身の嵐 攻撃力の…
-
2018/09/07
物議醸すドローから1年 因縁の再戦が実現 オッズは…
-
2018/08/31
38戦全勝の4階級制覇王者 vs 180センチの長…
-
2018/08/31
21歳のライジングスターが初防衛戦挑戦者は4代前の…
-
2018/08/17
長身サウスポー王者のV4戦挑戦者はKO率87%のス…
-
2018/08/10
「メイウェザーの後継者」スペンスのV2戦挑戦者は2…
-
2018/08/03
オーストラリアのスズメバチ vs 3階級制覇狙うハ…
-
2018/08/03
スーパー王者とレギュラー王者が団体内統一戦サンタ・…
-
2018/07/27
「カギは距離」。世界初挑戦となる伊藤雅雪に“ゴッド…
-
2018/07/27
「不利は承知のうえ。でも後半KOで勝つ」。世界初挑…
-
2018/07/18
中盤以降のKOを狙う伊藤 23戦全勝ディアスの勢い…
-
2018/07/18
コットを破った王者 vs 21歳の大型ホープオッズ…
-
2018/07/06
KO決着濃厚のベテラン対決パッキャオのスピードにア…
-
2018/06/22
左強打でV9狙う「スーパーマン」基本に忠実な元2階…
-
2018/06/18
25戦全勝の正規王者 vs 18戦全勝の暫定王者ス…
-
2018/06/08
元王者同士のサバイバルマッチ
実力は伯仲 終盤勝負か -
2018/06/01
イギリスのジャッカル vs フィリピンの閃光 フラ…
-
2018/06/01
技巧派サウスポー vs 大柄な昇竜経験のララ 馬力…
-
2018/05/18
初の大舞台を迎えた五輪戦士ラミレスイマムはスピード…
-
2018/05/11
ゴールデンボーイ vs ハイテクスピードと技巧の競…
-
2018/04/27
紆余曲折のすえ決定したV20戦ゴロフキンの強打が炸…
-
2018/04/20
KO率83%の王者 vs 元スーパー・バンタム級王…
-
2018/04/13
返り咲き後の初防衛戦 「破壊者」コバレフの強打に注…
-
2018/04/13
賞金トーナメントWBSSの準決勝 ウシクのスキル …
-
2018/04/06
二転三転した凱旋V2戦 サウスポーのアウクに白羽の…
-
2018/04/01
パワーで勝るジョシュア スピードで勝負のパーカー …
-
2018/03/30
パワーのジョシュアか スピードのパーカーか 3.3…
-
2018/03/26
指名挑戦者相手に真価問われる王者 オッズは4対3で…
-
2018/03/19
再起戦のガルシアに若干の不安も乱戦に持ち込んで勝機…
-
2018/03/12
賞金トーナメント準決勝 3対2でユーバンク・ジュニ…
-
2018/03/08
<新 世界のトップ・ボクサー>在位7年半 19度の…
-
2018/03/04
3階級制覇王者 vs スイッチ・ヒッター リナレス…