3階級制覇の「ハイテク」 vs 2階級制覇の「スナイパー」
右肩手術のロマチェンコに不安も

  • 2018/11/30

 今年5月、ホルヘ・リナレス(33=帝拳)を10回TKOで下してWBA世界ライト級王座を獲得、同時に史上最速の12戦目で3階級制覇を成し遂げたワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)と、その3ヵ月後の8月に強打のレイムンド・ベルトラン(37=メキシコ)を破ってWBO世界ライト級王座を奪取、2階級制覇を達成したホセ・ペドラサ(29=プエルトリコ)。この両王者が王座統一をかけて拳を交える。

アマ、プロで輝かしい実績を残しているロマチェンコ

 ふたりともオリンピックと世界選手権に出場するなどアマチュアで活躍したが、実績ではロマチェンコが上を行く。ウクライナ南部の黒海に面した街で生まれ育ったロマチェンコは07年の世界選手権こそフェザー級準優勝だったが、08年北京五輪と09年世界選手権ではフェザー級で優勝、11年世界選手権と12年ロンドン五輪ではライト級で最も高い表彰台に乗った。アマチュア戦績は397戦396勝1敗が通説となっている。五輪連覇後、8オンスのグローブを着用して3分×5ラウンド制で戦うWSB(ワールド・シリーズ・ボクシング)で6戦してすべてポイント勝ちを収めたあと、13年10月にプロに転向。よほど自信があったのだろう、トップランク社との契約の際、ロマチェンコは「デビュー戦で世界王座に挑戦させてほしい」とリクエストした逸話が残っている。
 デビュー戦で世界ランカーに快勝したあと2戦目でWBO世界フェザー級王座に挑んだが、前半の過度なセーブが響いて体重オーバーのオルランド・サリド(メキシコ)に12回判定負け。しかし、その3ヵ月後にゲイリー・ラッセル(30=アメリカ 現WBC王者)に判定勝ちを収め、空位になっていたWBO王座についた。これを3度防衛後、16年6月にはローマン・マルチネス(プエルトリコ)を豪快な5回KOで屠って2階級制覇を達成。このWBO世界スーパー・フェザー級王座はニコラス・ウォータース(32=ジャマイカ)、ジェイソン・ソーサ(30=アメリカ)、ミゲール・マリアガ(32=コロンビア)、ギジェルモ・リゴンドー(38=キューバ)を相手に4度防衛した。特筆すべきはすべて相手をスピードとスキルでギブアップさせたTKO勝ちである点だ。そして今年5月、リナレスを破って3階級制覇を成し遂げている。
 プロでもスピードと技で輝かしい実績を残しているロマチェンコは、多くのメディアや識者から「パウンド・フォー・パウンド」の現役最強との評価を受けているが、今回の試合を前に不安がないわけではない。そのひとつとして、リナレス戦で痛めた右肩の手術をしたことが挙げられる。8月に計画していたWBO王者との統一戦を先延ばしにしたのはそれが理由だ。今回の試合で肉体的、心理的に影響があるのかどうか注目される。また、ロマチェンコはリナレス戦では6回に右ストレートを直撃されてアマ、プロ通じて初めてのダウンを喫している。リナレスのパンチに特別のスピードがあるからという見方ができる一方、ライト級で戦っていくうえで耐久力に課題を残したという解釈もできる。戦績は12戦11勝(9KO)1敗。このところ8連続KO勝ちと絶好調だ。

体格で勝るペドラサは混戦に持ち込んで勝機を広げたい

 WBO王者のペドラサはアマチュア時代に08年北京五輪に出場したが、ライト級2回戦で敗退している。世界選手権は2度出場したことがあり、07年の大会はライト級初戦でサダム・アリ(アメリカ=前WBOスーパー・ウェルター級王者)に敗れたが、09年の大会ではライト級で準優勝している。ちなみに、このとき準決勝で下したアルベルト・セリモフ(ロシア)は、アマチュア時代にロマチェンコを破った唯一の選手として知られる。
 プロ転向は11年2月で、いくつかの地域王座を手にしたあと15年6月にIBF世界スーパー・フェザー級王座を獲得した。このベルトは2度防衛したが、ジャーボンテイ・デービス(24=アメリカ 現WBAフェザー級スーパー王者)に7回TKOで敗れて失った。在位は7ヵ月と短かった。プロモート契約を交わしていたディベラ・エンタテインメント社とのビジネス上の摩擦もあり無冠に戻ってから1年以上の空白ができたが、今春にトップランク社に移籍。3月に8回判定勝ち、6月に10回判定勝ちで錆を落とし、8月のベルトラン戦に繋げた。その戴冠試合も判定勝負だったが、11回には左アッパーで鮮やかなダウンを奪って勝利を決定づけている。この勝利を含む戦績は26戦25勝(12KO)1敗。
 「スナイパー(狙撃手)」というニックネームを持つペドラサは、身長はリナレスと同じ173センチで、リーチは5センチ長い180センチある。ライト級では平均的なサイズだが、ロマチェンコと比べると身長で3センチ、リーチで14センチ上回っている。基本的には右構えだが、頻繁に左構えに変えるスイッチ・ヒッターで、中長距離でも近距離でも戦えるのが強みだ。12ラウンドをフルに6度戦いきった経験を持っており、スタミナも問題ない。階級を上げて減量苦から解放されたとも伝えられ、事実、強打で知られるベルトランと正面から渡り合っても心身ともに折れなかった。
 ただ、だからといってロマチェンコを相手にその上を行くことができるかというと、そう甘くはないだろう。やはり予想となると3階級制覇王者が圧倒的に有利といえる。細かく動いて相手のサイドに回り込み、タイミングと角度のいい左ストレート、右フックで主導権を握る、というのが常識的な見方といえる。こうしたなかペドラサが左右どちらの構えで戦い、またどの距離を選択するのか、それが自分の意思で選択できる展開になるのかどうか。そのあたりにも注目したい。
 ロマチェンコがスピードとスキルで翻弄する可能性が高いが、ペドラサが混戦に持ち込んでWBA王者の体力を消耗させるような展開に持ち込めば番狂わせの確率があがりそうだ。

<資料1>TALE OF THE TAPE 両選手の体格比較

  • 名前

    ロマチェンコ

    ペドラサ

  • 生年月日/年齢

    1988年2月17日/30歳

    1989年5月8日/29歳

  • 出身地

    ビルホロドドニストロフスキー(ウクライナ)

    カグアス(プエルトリコ)

  • アマチュア実績

    08年北京五輪フェザー級金
    12年ロンドン五輪ライト級金
    09年世界選手権優勝
    11年世界選手権優勝

    08年北京五輪ライト級出場(2回戦敗退)
    07年世界選手権出場
    09年世界選手権ライト級準優勝

  • アマチュア戦績

    397戦396勝1敗

    不明

  • プロデビュー

    13年10月

    11年2月

  • 獲得王座

    WBO世界フェザー級
    WBO世界S・フェザー級
    WBA世界ライト級

    IBF世界S・フェザー級
    WBO世界ライト級

  • プロ戦績

    12戦11勝(9KO)1敗

    26戦25勝(12KO)1敗

  • KO率

    75%

    46%

  • 世界戦の戦績

    11戦10勝(8KO)1敗

    5戦4勝1敗

  • 身長/リーチ

    170センチ/166センチ

    173センチ/180センチ

  • 戦闘タイプ

    左ボクサーファイター型

    右ボクサーファイター型(スイッチ)

  • ニックネーム

    ハイテク(高性能)

    スナイパー(狙撃手)

ライト級トップ戦線の現状

WBA SC :ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)
WBC   :マイキー・ガルシア(アメリカ)
IBF   :空位
WBO   :ホセ・ペドラサ(プエルトリコ)

 ヘビー級、ミドル級、ウェルター級などと並んで注目度の高いクラスといえる。主役は5月にホルヘ・リナレス(33=帝拳)を10回TKOで破って3階級制覇を成し遂げたWBA王者のワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ)だ。「ハイテク(高性能)」というニックネームどおり、スピードと技術力はずば抜けたものがある。ただ、身長170センチ、リーチ166センチという体格はライト級ではサイズ面で優位性がないだけに、相手に与える脅威はフェザー級時よりも目減りしているものと思われる。
 そのロマチェンコと肩を並べるのがWBC王者のマイキー・ガルシア(30=アメリカ)だ。ライト級のほかフェザー級、スーパー・フェザー級、スーパー・ライト級でも王座を獲得しており、すでに4階級制覇を成し遂げている。さらにライト級ではWBC王座に加えIBF王座も手に入れたが、これは返上している。ロマチェンコとの対戦も期待されているが、その前に来年3月16日にIBF世界ウェルター級王者のエロール・スペンス(28=アメリカ)との対戦が決まっている。勝てば5階級制覇となるが、厳しい予想が大勢を占めている。
 WBAでは元王者のアンソニー・クロラ(32=イギリス)がダウド・ヨルダン(31=インドネシア)に勝って指名挑戦権を獲得。同様にWBCではルーク・キャンベル(31=イギリス)がイバン・メンディ(33=フランス)に3年前の借りを返して最優先挑戦権を手にしている。この両者に勝っているWBA1位のリナレスも返り咲きの機会をうかがっている。また、ガルシアが返上して空位のIBF王座は、指名挑戦権を持つ1位のリチャード・コメイ(31=ガーナ)が決定戦への出場を待っている状態だ。

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