WBA、IBF世界バンタム級タイトルマッチ
井上尚弥対ジェイソン・マロニー

  • 2020/10/27

KO率80%超同士の対決
井上圧倒的有利のなか“無観客”がどう影響するか

 バンタム級のWBAスーパー王座とIBF王座を持つ井上尚弥(27=大橋)が10月31日(日本時間11月1日)、アメリカのネバダ州ラスベガスで両王座の防衛戦に臨む。
挑戦者はWBA2位、IBF4位、WBO1位にランクされるジェイソン・マロニー(29=オーストラリア)。19戦全勝(16KO)の井上に対し、マロニーも22戦21勝(18KO)1敗と高いKO率を誇る。下馬評では井上が圧倒的有利とみられているが、 コロナ禍のなかでのイベント開催とあって今回は無観客の試合となるため、そのあたりが不確定要素として残る。
 多くのメディアから「年間最高試合」に推された5階級制覇王者のノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)との激闘から1年。「モンスター」が聖地ラスベガスのリングに上がる。

ドネアとの激闘から1年 3度目の国外試合

 もともと井上は4月25日にラスベガスでWBO王者のジョンリエル・カシメロ(フィリピン)と3団体の王座統一戦を行う予定だったが、コロナ禍のため仕切り直しとなった。それを受けカシメロは9月にデューク・マイカー(ガーナ)との防衛戦を行い(3回TKO勝ち)、井上は今回のマロニー戦に舵を切ったという経緯がある。
 ちなみにマロニーは井上対カシメロの前座でジョシュア・グリーア(アメリカ)とWBO王座への指名挑戦権をかけて対戦する予定だったが、この試合も白紙となった。その後、6月にグリーアは別の選手と対戦して判定負け、マロニーは当時IBF世界スーパー・バンタム級5位だったレオナルド・バエス(メキシコ)に7回終了TKOで快勝している。
 3階級制覇を成し遂げている井上にとっては、国外での試合は3度目のことになる。WBO世界スーパー・フライ級王者時代の2017年9月、アメリカのカリフォルニア州カーソンで行ったV6戦ではアントニオ・ニエベス(アメリカ)を圧倒して6回終了TKO勝ち。2度目は昨年5月、WBA世界バンタム級王者としてイギリスはスコットランドのグラスゴーのリングに上がり、IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を2回TKOで下し、ふたつのベルトを持ち帰った。いずれも井上らしいパフォーマンスのすえの圧倒的な勝利だった。ロドリゲスに勝って階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の決勝に駒を進めた井上は昨年11月、ドネアからダウンを奪って12回判定勝ちを収めている。
 ドネア戦で眼窩底骨折のほか右目上にも裂傷を負うなど肉体面のダメージがあったことを考えると、試合が4月から6ヵ月延びたことはプラスととらえることができる。
その一方、1年ぶりのリングということで試合勘に影響が出ないか若干の不安がないわけではない。もっとも井上自身は「いつ試合が決まってもいいように準備してきたので、ブランクは心配ない」と言い切っている。

4ヵ月までに無観客試合を経験しているマロニー

 挑戦者のマロニーは、前WBA世界スーパー・フライ級王者のアンドリュー・マロニーとともに双子の兄弟ボクサーとして知られる。アマチュアで約80戦を経験後、2014年8月にプロデビュー。このときのマロニーの体重は122ポンド(約55.3キロ)のスーパー・バンタム級だった。参考までに当時、WBC世界ライト・フライ級王者だった井上は108ポンド(約48.9キロ)だから、この時点では4階級差があったことになる。
 しばらくスーパー・バンタム級で戦っていたマロニーは2017年にバンタム級に下げ、WBAオセアニア王座、英連邦王座を獲得。2018年5月には、井上とも対戦経験(6回TKO負け)のある元世界王者の河野公平(ワタナベ)をオーストラリアに招聘、ダウンを奪って6回終了TKOで下した。このあとマロニーもWBSSに参戦したが、初戦でロドリゲスに惜敗した。もしも勝っていれば準決勝で井上と拳を交えていたわけで、因縁めいたものも感じられる。このロドリゲス対マロニーをリングサイドで観戦した井上は「パンチもないわけではなく、タフでスタミナもあって面倒くさいタイプ」とマロニーを評している。
 18戦目で初黒星を喫したマロニーだが、その後は4連続KO勝ちと勢いを取り戻している。特に先のバエス戦は今回の会場となる通称「ザ・バブル」で無観客試合として行われており、現地での調整と異様な雰囲気のなかでの戦いを経験しているという点はマロニーにとって数少ないアドバンテージといえる。前戦から4ヵ月のスパンでリングに上がれる点も好材料であろう。

距離をとりたい挑戦者を井上がどう追い込むか

 ともに右のボクサーファイター型のカテゴリーに入る選手だが、パワー、攻撃技術、防御技術、戦術、経験値など個々の戦力を単純比較した場合、多くの面で井上が上を行く。残るスピード、スタミナ、耐久力などに関してはリング上で互いがテストされることになりそうだ。
 10月中旬の時点で10対1というオッズが出ているように井上有利は絶対的なものといえる。早い段階で近い距離でパンチのやりとりが行われるようならば王者の序盤KO防衛もありそうだ。もちろんマロニーの打ち下ろすように放つ右ストレートや右アッパー、返しの左フックの上下打ちには注意が必要だが……。
 ただ、マロニーが早々から危険な打ち合いを挑んでくることは考えにくい。まずは距離をキープしつつ足をつかって角度を変えながら攻防のリズムをつくりにいくものと思われる。自信のあるスタミナ勝負に持ち込むためにも挑戦者は中盤まではリスクを小さく抑える戦い方を選択する可能性が高い。これに対し、手数の多いマロニーに前半で主導権を渡したくない井上は、どう距離を潰し、どのパンチを打ち込んでいくのか。相手の右の打ち終わりに合わせる左フック、左ジャブに被せる右ストレート、至近距離で抉る左ボディブロー――はたして、「モンスター」はどのパンチで倒すのだろうか。

TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表

  • 名前

    井上尚弥

    ジェイソン・マロニー

  • 生年月日/年齢

    1993年4月10日/27歳

    1991年1月10日/29歳

  • 出身地

    神奈川県座間市

    オーストラリア ビクトリア州ミッチャム

  • アマチュア実績

    11年プレジデント杯優勝
    11年世界選手権出場

    英連邦大会などに出場

  • アマチュア戦績

    81戦75勝(48KO)6敗

    80戦以上(戦績は不明)

  • プロデビュー

    12年10月

    14年8月

  • 獲得世界王座

    WBC世界Lフライ級王座
    WBO世界Sフライ級王座
    WBA、IBF世界バンタム級王座

  • 身長/リーチ

    165センチ/171センチ

    165センチ/165センチ

  • プロ戦績

    19戦全勝(16KO)

    22戦21勝(18KO)1敗

  • KO率

    84%

    82%

  • 世界戦の戦績

    14戦全勝(12KO)

    1戦1敗

  • 直近の試合

    19年11月(12回判定勝ち)

    20年6月(7回終了TKO勝ち)

  • 戦闘スタイル

    右ボクサーファイター型

    右ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    モンスター

    Mayhem メイヘム(暴力、混乱)

  • 兄弟

    弟・拓真
    (前WBCバンタム級暫定王者)

    双子の弟・アンドリュー
    (前WBA S・バンタム級王者)

世界戦における日本対オーストラリア

試合日 場所 王者 挑戦者 結果 階級
(1)68年2/27 東京 ●ファイティング原田 〇ライオネル・ローズ 15回判定 バンタム級
(2)68年7/2 東京 〇ライオネル・ローズ ●桜井孝雄 15回判定 バンタム級
(3)69年7/28 シドニー 〇ジョニー・ファメション ●ファイティング原田 15回判定 フェザー級
(4)70年1/6 東京 〇ジョニー・ファメション ●ファイティング原田 14回KO フェザー級
(5)71年5/30 広島 〇沼田義明 ●ライオネル・ローズ 15回判定 Sフェザー級
(6)04年1/19 ウロンゴン 〇アンソニー・ムンディン ●西澤ヨシノリ 5回TKO Sミドル級
(7)15年5/1 東京 〇三浦隆司 ●ビリー・ディブ 3回TKO Sフェザー級

※このほかJBC非認可時代の85年4/26日にシドニーでIBFバンタム級王者の新垣諭(奈良池田)がジェフ・フェネックに9回TKO負け。シドニーで行われた8月の再戦もフェネックが4回TKO勝ち
※12年4/6に東京で山中慎介(帝拳)に挑んだビック・ダルチニャンはオーストラリアを活動拠点にしていたが、出身国と国籍はアルメニア
※ムンディン対西澤が行われたウロンゴンはシドニー南に100キロの都市

バンタム級トップ戦線の現状

WBA S
:井上尚弥(大橋)
WBA
:ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)
WBC
:ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)
IBF
:井上尚弥(大橋)
WBO
:ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)

 3階級制覇を成し遂げている2冠王者の井上尚弥(27=大橋)がこの階級の主役といっていいだろう。その群を抜く強さは2018年秋から1年かけて行われた「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」で世界に証明済みだ。決勝のノニト・ドネア(37=フィリピン/アメリカ)でわずかな隙を突かれはしたが、それ以上に対応力の高さを見せている。経験値を大きく上げたことで総合的な戦力もひとまわりアップしたといえよう。将来的にはスーパー・バンタム級進出も視野に入れている井上だが、あと数戦はバンタム級に留まる意向を示している。しばらくは「モンスター」の天下が続きそうだ。
 その井上との統一戦が一度は決まりながらコロナ禍の影響で仕切り直しとなったWBO王者のジョンリエル・カシメロ(31=フィリピン)も、井上と同じ3階級制覇王者だ。3回TKOで圧勝した9月のデューク・マイカー(29=ガーナ)戦を含め、このところ6連続KO勝ちと好調を維持している。しっかりジャブを突いて丹念に試合を組み立ててくる相手を不得手としており長期安定政権を築くタイプではないが、瞬間的な爆発力は井上に匹敵するものがあるだけに怖い存在といえる。
 カシメロと対照的なタイプがWBAのレギュラー王座に君臨するギジェルモ・リゴンドー(40=キューバ)だ。アマチュア時代には五輪連覇を果たし、プロでも2階級制覇を達成している究極の技巧派サウスポーで、パウンド・フォー・パウンドの上位にランクされていたこともある。しかし、「戦いぶりがエキサイティングではない」としてテレビ局に見切りをつけられたうえ対戦相手からも敬遠される傾向が強く、活動は不活発なまま40歳を迎えた。ただ、スピードとカウンターの技術には見るべきものがあり、いまだ危険な選手であることは間違いない。
 WBC王者のノルディーヌ・ウバーリ(34=フランス)もアマチュア時代に2008年北京大会、2012年ロンドン大会と2度の五輪出場を果たしている。161センチと小柄なサウスポーだが、発達した上体は鋼のようで、攻撃力もある。ラウシー・ウォーレン(33=アメリカ)との決定戦を制して戴冠を果たし、暫定王者の井上拓真(24=大橋)を下すなど2度の防衛を果たしている。12月13日(日本時間14日)にはドネアの挑戦を受けることになっている。
 そのドネアは足掛け20年のキャリアで46戦40勝(26KO)6敗の戦績を残しているベテランで、5階級制覇の実績を持つ。11月16日に38歳になるが、井上尚弥戦のようなコンディションとモチベーションを維持することができれば返り咲きも十分に考えられる。
 この5王者に続くのがジェイソン・マロニー(29=オーストラリア)、前WBC暫定王者の井上拓真、前IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(28=プエルトリコ)、IBF1位のマイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)といったメンバーだ。

バンタム級トップ戦線 4選手のデータ比較

カシメロ リゴンドー ウバーリ ドネア
生年月日 1989年2/13 1980年9/30 1986年8/4 1982年11/16
年齢 31歳 40歳 34歳 37歳
出身地 フィリピン キューバ フランス フィリピン
アマ実績 00年シドニー五輪金
04年アテネ五輪金
08年北京五輪出場
12年ロンドン五輪出場
アマ戦績 475戦463勝12敗
プロデビュー 07年6月 09年5月 14年3月 01年2月
獲得王座 Lフライ級
フライ級
バンタム級
バンタム級
Sバンタム級
バンタム級 フライ級
Sフライ級
バンタム級
Sバンタム級
フェザー級
プロ戦績 34戦30勝
(21KO)4敗
22戦20勝(13KO)
1敗1無効試合
17戦全勝
(12KO)
46戦40勝
(26KO)6敗
KO率 62% 59% 71% 57%
身長/リーチ 163/163 163/171 161/170 170/174
タイプ 右ファイター 左ボクサー 左ボクサーファイター 右ボクサーファイター
ニックネーム ジャッカル フィリピーノ・フラッシュ

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オンデマンドでの同時配信対象外
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの