4団体統一世界ライト級タイトルマッチ デビン・ヘイニー対ワシル・ロマチェンコ

  • 2023/05/12

24歳vs35歳 究極の技巧派対決
オッズは9対4 ヘイニー有利

 4団体統一世界ライト級王者のデビン・ヘイニー(24=アメリカ)が、3階級制覇の実績を持つワシル・ロマチェンコ(35=ウクライナ)の挑戦を受ける。8年前にプロデビューしてから無傷の29連勝(15KO)をマークしているヘイニーが4本のベルトを守るのか、それとも五輪連覇や3戦目の戴冠など華々しい活躍をしてきたサウスポーの「ハイテク(高性能)」が時計の針を巻き戻すのか――世界的な注目を集める技巧派対決だ。オッズは若く勢いのあるヘイニーが9対4で有利と出ている。

元王者たちを退けて通算6度防衛中のヘイニー

 ヘイニーは12歳のときにボクシングを始め、全米ジュニア選手権(2014年)や全米ユース選手権(2015年)で優勝するなどアマチュアで146戦138勝8敗の戦績を残した。シニアでの実績がないのは2015年12月に17歳でプロに転向したからだ。
 地域王座を獲得しながら世界ランクを上げていき、2019年9月にはザウール・アブドゥラエフ(ロシア)との決定戦で4回終了TKO勝ちを収め、20歳でWBC暫定世界ライト級王座を獲得した。ただ、当時はロマチェンコが正王者として認定されていたため暫定王座の設置には懐疑的な見方が多かった。1ヵ月後、WBCはロマチェンコを「フランチャイズ(特権)王者」にスライド。同時にヘイニーを正王者に昇格させて混乱を小さく抑えた。ところが、ヘイニーが11月の初防衛戦で右肩を負傷、手術のために戦線離脱するとWBCは休養王者に格下げしてしまった。これに対しヘイニー陣営は異議を唱え、これが受け入れられて2020年4月に正王者に復帰した。ほとんどはリング外の問題だが、当時のことを指してヘイニーは「2019年にロマチェンコは私の挑戦を受けてくれなかった。今回、やっと対戦が実現する」と闘志を燃やしている。
 リング外の騒動が解決後、ヘイニーはユリオルキス・ガンボア(キューバ)、ホルヘ・リナレス(帝拳)、ジョセフ・ディアス(アメリカ)を判定で退け、昨年6月にはWBCフランチャイズ王座を含め4つの王座を持つジョージ・カンボソス(オーストラリア)と相手国で対戦。技術力の差を見せつけて明白な判定勝ちを収め、文句なしの4団体統一王者になった。4ヵ月の再戦でも前王者を寄せつけず再び大差をつけて撃退した。

15度の世界戦を経験しているロマチェンコ

 ロマチェンコは2008年北京大会フェザー級、2012年ロンドン大会ライト級と五輪で2度金メダルを獲得し、世界選手権でも2009年と2011年の大会で優勝している。アマチュア戦績は397戦396勝1敗と伝えられる。
 2013年10月、25歳でプロ転向を果たし、2戦目の戴冠こそ逃したが3戦目でWBO世界フェザー級王座を獲得。2016年にスーパー・フェザー級、2018年にはライト級でも戴冠を果たし史上最短記録となる12戦目で3階級制覇を成し遂げた。身長170センチ、リーチ166センチと体格に恵まれているわけではないためライト級に馴染むのに時間がかかったことは否めないが、WBA王座に続いてWBO王座、さらにWBC王座も獲得。しかし、2020年10月にテオフィモ・ロペス(アメリカ)に敗れてベルトを失った。その後は中谷正義(帝拳)に9回TKO勝ち、リチャード・コミー(ガーナ)に12回判定勝ち、ジャメイン・オルティス(アメリカ)に12回判定勝ちと3連勝を収めている。戦績は19戦17勝(11KO)2敗。このうち15試合が世界戦だ。
 本来ならばもっと早く王座返り咲きのチャンスが訪れるはずだった。昨年6月、カンボソスが王者だったときに挑戦の機会が与えられたが、ロシアがウクライナに軍事侵攻したためロマチェンコは自国防衛軍に参加し、国内に留まる決断をしたのだ。こうして王座復帰のチャンスを逃したわけだが、その間にベルトの持ち主はカンボソスからヘイニーに移っていた。

カギはヘイニーの左ジャブ ロマチェンコのボディブロー

 2019年以降、両者は何度かのすれ違いをしてきたわけだが、やっと直接対決が実現することになった。この4年近い年月は若いヘイニーにとっては大きな意味を持つ。以前ならば完膚なきまでに叩きのめされていた可能性が高いが、6度の世界戦を経験したことで大きく成長したからだ。一方のロマチェンコは31歳から35歳になり、評価は相変わらず高いとはいえ停滞気味といえる。特に直近の試合では圧勝が予想されながら手を焼く場面があるなど体格と年齢両面で限界説も出始めている。そんな両者の近況がオッズに反映されているといえる。
 ともにスピードがあるが、ヘイニーが左ジャブと足の動きが速いのに対し、ロマチェンコは左右のパンチと一連の動きが飛び抜けて俊敏だ。ただ、身長173センチ、リーチ180センチのヘイニーが中長距離での戦いを得意としているため、体格で劣るロマチェンコは距離を詰める必要が出てくる。そこで邪魔になるのがヘイニーの左ジャブだ。当てては離れる、離れては当てるという戦い方をされた場合、いまのロマチェンコが相手を追い詰め切れるかという疑問が生じる。
 ヘイニーにとってもロマチェンコは戦いやすいタイプとはいえない。ロマチェンコは相手の動きを読んで先手を打って反応するため、ヘイニーの生命線ともいえる左ジャブが封じられてしまう恐れがあるからだ。ロマチェンコはボディ攻撃も巧みで、これもヘイニーは十分に警戒する必要がある。
 テクニシャン同士のカードだけに初回から駆け引きを含めた高度な技術戦が見られそうだ。

<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>

  • 名前

    ヘイニー

    ロマチェンコ

  • 生年月日/年齢

    1998年11月17日/24歳

    1988年2月17日/35歳

  • 出身地

    米国カリフォルニア州サンフランシスコ

    ビルホロドドニストロフスキー(ウクライナ)

  • アマチュア実績

    13年世界ジュニア選手権8強

    08年北京五輪フェザー級金
    12年ロンドン五輪ライト級金

  • アマチュア戦績

    146戦138勝8敗

    397戦396勝1敗

  • プロデビュー

    15年12月

    13年10月

  • 獲得世界王座

    4団体統一ライト級王座

    WBOフェザー級王座
    WBO Sフェザー級王座
    WBA、WBC、WBOライト級王座

  • 身長/リーチ

    173センチ/180センチ

    170センチ/166センチ

  • プロ戦績

    29戦全勝(15KO)

    19戦17勝(11KO)2敗

  • KO率

    52%

    58%

  • 世界戦の戦績

    7戦全勝(1KO)

    15戦13勝(9KO)2敗

  • 直近の試合

    22年10月(12回判定勝ち)

    22年10月(12回判定勝ち)

  • 戦闘スタイル

    右ボクサーファイター型

    左ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    The Dream

    ハイテク

<ライト級トップ戦線の現状>

WBA S
:デビン・ヘイニー(アメリカ)
:ジャーボンテイ・デービス(アメリカ)
WBC
:デビン・ヘイニー(アメリカ)
IBF
:デビン・ヘイニー(アメリカ)
WBO
:デビン・ヘイニー(アメリカ)

 4月22日(日本時間23日)にWBA王者のジャーボンテイ・デービス(28=アメリカ)がライアン・ガルシア(24=アメリカ)に7回KO勝ちを収めて全勝対決を制し、その2週間前にはシャクール・スティーブンソン(25=アメリカ)が吉野修一郎(31=三迫)に6回TKO勝ちをおさめ、WBC王座への挑戦権を手に入れた。これでライト級のトップは4団体王者のデビン・ヘイニー(24=アメリカ)、デービス、スティーブンソン、そしてヘイニーに挑戦するワシル・ロマチェンコ(35=ウクライナ)を加えた4選手に絞られてきた。今回のヘイニー対ロマチェンコの内容と結果によって敗者が脱落する可能性が高いため、試合後には3強になっているはずだ。
 スピードと運動量の多さで勝負するヘイニー、小柄ながら一撃で倒す強打を持つデービス、長い射程と勘の良さで相手を寄せつけないスティーブンソン、実績とスキルに秀でた「ハイテク」ロマチェンコ。ヘイニー以外の3人がサウスポーで、ロマチェンコを除くアメリカ勢3人は全勝の20代だ。タイプは異なるが、いずれも特徴がはっきりした個性派といえる。今回のヘイニー対ロマチェンコをはじめヘイニー対デービス、ヘイニー対スティーブンソン、デービス対ロマチェンコ、デービス対スティーブンソン、スティーブンソン対ロマチェンコと、どの試合も予想が難しい魅力的なカードといえる。1980年代のミドル級のように4強のリーグ戦が見たいものだ。
 デービスに善戦した小柄なファイター、イサック・クルス(24=メキシコ)、前王者のジョージ・カンボソス(29=オーストラリア)、17戦全勝(12KO)のサウスポー、フランク・マーティン(28=アメリカ)、28戦全勝(24KO)のサウスポー、ウィリアム・セペダ(26=メキシコ)などもいるが、4強との差は小さくない。




WBO世界スーパー・フライ級王座決定戦 中谷潤人対アンドリュー・マロニー

2階級制覇に自信の中谷
返り咲き狙うマロニー

 昨年10月にWBO世界フライ級王座を返上した中谷潤人(25=MT)が、2階級制覇を狙ってWBO世界スーパー・フライ級王座決定戦に臨む。相手は前WBA同級王者のアンドリュー・マロニー(32=オーストラリア)。24戦全勝(18KO)の戦績を残している長身サウスポーの中谷、正統派ボクサーのマロニー。見応えのある試合になりそうだ。オッズは11対4で中谷有利と出ている。

アメリカで2度目の世界戦に臨む中谷

 中谷は義務教育終了後に単身でアメリカにトレーニングに出かけ、17歳でプロデビュー。全日本新人王、世界ランカー撃破、日本王座獲得、そして2020年11月にWBO世界フライ級王座獲得と王道を歩んできた。アメリカのアリゾナ州カーソンで迎えた初防衛戦では元世界王者のアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)に4回TKO勝ちを収めて評価を上げ、V2戦でも山内涼太(角海老宝石)に8回TKOで圧勝した。この半年後に王座を返上してスーパー・フライ級に転向。11月の初戦で元世界王者のフランシスコ・ロドリゲス(メキシコ)に賢勝してWBOの指名挑戦権を手に入れた。
 このクラスでは172センチと長身で、懐深く構えたサウスポー・スタンスから右ジャブを突いて距離とタイミングを計り、機を見て左を打ち込む。この左は肩から直線で打ち込むものと弧を描くように外側から放たれるもの、さらにアッパー、フックと多彩だ。相手が出てくると足をつかって離れ、仕切り直してから右ジャブで再び攻撃に移る。危機回避能力にも優れているため、相手にとっては実に戦いにくいタイプといえる。

失冠後は強豪相手に4連勝のマロニー

 マロニーは双子の兄ジェイソン・マロニーとともに近年のオーストラリアボクシングブームを牽引してきた立役者といえる。その兄ジェイソンは中谷対アンドリュー・マロニーの1週間前にアメリカのカリフォルニア州ストックトンでWBO世界バンタム級王座決定戦に臨むことになっている。
 約80戦のアマチュア経験後、2014年10月にプロデビュー。英連邦王座、東洋太平洋王座などを獲得したあと元世界王者のルイス・コンセプション(パナマ)に10回TKO勝ち。ミゲール・ゴンサレス(チリ)とのWBA世界スーパー・フライ級挑戦者決定戦で8回TKO勝ちを収めて最上位に躍り出た。その流れのなか2019年11月に同級WBA暫定王座を獲得し、のちに正王者に昇格した。しかし、初防衛戦でジョシュア・フランコ(アメリカ)に12回判定負けして王座から陥落。11回に喫したダウンが致命的な失点となり、在位は7ヵ月で終わった。その後、フランコとは2度戦ったが、負傷による2回無効試合、12回判定負けで返り咲きを阻まれた。無冠に戻ってからは強豪を相手に4連勝(2KO)を収め、通算戦績を28戦25勝(16KO)2敗1無効試合に伸ばしている。
 上体を立てた構えから左ジャブで突破口を開き、右ストレートに繋げる攻撃パターンを確立している。顔面とボディに打ち分ける左フック、右アッパーもある。

リードパンチで探り合い後、中盤には打撃戦突入か

 右と左の違いはあるが、ともにリードパンチで距離とタイミングを計る選手という共通点があるため、ジャブで探り合うスタートになると思われる。どちらが先に好感触をつかむかによって前半のポイントの優劣が決まりそうだが、中盤に入るころには必然的に中間距離でパンチを交換することになるのではないだろうか。中谷の長短と緩急、軌道を変えた左が炸裂するのか、それとも打ち抜くようなマロニーの右ストレートが命中するのか。ラウンドを重ねるごとにパンチの交換が激しくなりそうだ。

<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>

  • 名前

    中谷潤人

    マロニー

  • 生年月日/年齢

    1998年1月2日/25歳

    1991年1月10日/32歳

  • 出身地

    日本(三重県東員町)

    ミッチャム(オーストラリア)

  • アマチュア戦績

    16戦14勝2敗

  • プロデビュー

    15年4月

    14年10月

  • 獲得世界王座

    WBOフライ級王座

    WBAスーパー・フライ級王座

  • 身長/リーチ

    172センチ/170センチ

    165センチ/165センチ

  • プロ戦績

    24戦全勝(18KO)

    28戦25勝(16KO)2敗1無効試合

  • KO率

    75%

    57%

  • 世界戦の戦績

    3戦全勝(3KO)

    4戦1勝(1KO)2敗1無効試合

  • 直近の試合

    22年11月(10回判定勝ち)

    22年10月(10回判定勝ち)

  • 戦闘スタイル

    左ボクサーファイター型

    右ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    「モンスター」

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オンデマンドでの同時配信対象外
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの