世界バンタム級4団体王座統一戦 井上尚弥対ポール・バトラー

  • 2023/02/03

「モンスター」 vs 「童顔の暗殺者」

 バンタム級のWBAスーパー王座、WBC王座、IBF王座を持つ井上尚弥(29=大橋)が、4団体王座統一をかけてWBO王者のポール・バトラー(34=イギリス)と対戦する。井上はアジア初、軽量級初の快挙に向けてどんな戦いを見せるのか。

世界戦だけで18戦全勝16KOを記録している井上

 井上は2012年10月に19歳でプロデビューし、10年間に23戦全勝(20KO)という驚異的な戦績を収めてきた。ライト・フライ級に始まりスーパー・フライ級、バンタム級の階級で世界王座を獲得しており、世界戦だけで18試合(全勝16KO)を経験している。デビュー時からジムは「怪物」として売り出していたが、いまでは「モンスター」として世界的に知られる存在になった。
 特に2018年5月にバンタム級に転向してからの活躍は特筆ものだ。長期政権を誇ったジェイミー・マクドネル(イギリス)を112秒で粉砕してWBA王座を獲得すると、次戦では元王者のファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を芸術的な右ストレートで瞬殺(70秒KO勝ち)。イギリスで行われたIBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)戦では2回に3度のダウンを奪って力の差を見せつけた。「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」決勝となったノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)戦では5階級制覇王者にプロで初といえる苦戦を強いられたが、11回にボディブローでKOに相当するダウンを奪って12回判定勝ち。以後、ジェイソン・マロニー(オーストラリア)、マイケル・ダスマリナス(フィリピン)、アラン・ディパエン(タイ)を7回KO、3回KO、8回TKOで退けた。2022年6月にはWBC王者になっていたドネアとの再戦で2回TKO勝ちを収め3団体の王座統一を果たした。ここに至りバンタム級で残された仕事はWBO王座の吸収だけとなったのである。

体重を増減しながらバンタム級で2度の戴冠を果たしたバトラー

 バトラーはアマチュアを経て2010年12月にプロデビュー。最初の10戦は適正階級を見極めるためか51キロ~56キロと幅広い体重でリングに上がった。英連邦王座を獲得するなどスーパー・フライ級に落ち着いたかと思われたが、2014年6月にはIBF世界バンタム級王座挑戦のチャンスが到来。この試合でスチュアート・ホール(イギリス)に競り勝ったバトラーは25歳の若さで世界の頂点に立った。しかし、1ヵ月経たないうちに「適正階級のスーパー・フライ級に戻る」という理由で王座を返上してしまった。
 9ヵ月後には望みどおりスーパー・フライ級でIBF王座に挑んだが、ゾラニ・テテ(南アフリカ共和国)の左アッパーを浴びてダウン、8回TKO負けを喫した。その後、再び52キロ~58キロで活動していたが、2018年5月にIBF世界バンタム級王座決定戦のチャンスが訪れた。ところが、そのエマヌエル・ロドリゲス戦を前にバトラーは計量で体重超過のため失格。試合でも初回に2度のダウンを喫して12回判定で完敗を喫した。井上が48.9キロから53.5キロまで順調にウェートを上げてきたのとは対照的に、バトラーは体重の増減に苦労している印象が付きまとう。
 30歳を前に限界を見せたかと思われたバトラーだが、ここから這い上がる。井上の王座に挑んだ経験を持つヨアン・ボワイヨ(フランス)に勝って再起を果たすと、2021年6月にはWBOインターナショナル王座を獲得し、ジョンリエル・カシメロ(フィリピン)への挑戦を確定させた。その後、カシメロの再三にわたる不始末もありバトラーは2022年4月にWBO暫定王座を獲得し、カシメロの王座剥奪にともない正王者に昇格したという経緯がある。戦績は36戦34勝(15KO)2敗。

20対1のオッズ 井上のバンタム級“卒業ファイト”

 戦力チャートをつくるとしたら井上がスピード、パワー、テクニック、スタミナ、耐久力、ボクシングIQ、経験値などで10点満点に近いのに対し、バトラーは7点平均といったところだろう。パワーや耐久力は5点か6点かもしれない。4団体の王座統一戦ながら20対1で井上有利というオッズが出ているのも当然といえよう。それほど両王者間には力量差が見てとれるのだ。加えて井上には地の利もある。悲観的要素は皆無といっていいだろう。
 この試合を最後に井上はバンタム級を卒業し、スーパー・バンタム級への転向が確実視されている。その先にある“挑戦”に向けて井上がどんなパフォーマンスを見せるのか楽しみだ。

<TALE OF THE TAPE 両選手のデータ比較表>

  • 名前

    井上尚弥

    バトラー

  • 生年月日/年齢

    1993年4月10日/29歳

    1988年11月11日/34歳

  • 出身地

    神奈川県座間市

    チェスター(イギリス)

  • アマチュア実績

    11年世界選手権出場(3回戦敗退)

    10年イギリス選手権優勝

  • アマチュア戦績

    81戦75勝(48KO)6敗

  • プロデビュー

    2012年10月

    2010年12月

  • 獲得世界王座

    WBC L・フライ級
    WBO S・フライ級
    WBA、WBC、IBFバンタム級

    IBF、WBOバンタム級

  • 戦績

    23戦全勝(20KO)

    36戦34勝(15KO)2敗

  • KO率

    87%

    42%

  • 世界戦の戦績

    18戦全勝(16KO)

    4戦2勝2敗

  • 身長/リーチ

    165センチ/171センチ

    168センチ/165センチ

  • 戦闘スタイル

    右ボクサーファイター型

    右ボクサーファイター型

  • ニックネーム

    「モンスター」

    「ベビーフェイス・アサシン」

  • トレーナー

    井上真吾(父親)

    ジョー・ギャラガー

<バンタム級トップ戦線の現状>

WBA S
:井上尚弥(大橋)
WBC
:井上尚弥(大橋)
IBF
:井上尚弥(大橋)
WBO
:ポール・バトラー(イギリス)

 井上尚弥(29=大橋)は2018年5月にWBA王座、2019年5月にIBF王座、2022年6月にWBC王座と、4年半以上をかけて3本のベルトを収集してきた。今回のポール・バトラー(34=イギリス)戦がバンタム級で最後の仕事となる。そのバトラーは危険度の低い選手で、井上を脅かすほどの戦力は備えていないと見ていい。
 ランキングを見渡すと、5階級制覇の実績を持つノニト・ドネア(40=フィリピン/アメリカ)、前IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス(30=プエルトリコ)、ジェイソン・マロニー(32=オーストラリア)が各団体の上位を占めている。井上はこの3人にKO(TKO)勝ちを収めているのだから、実力が抜きん出ていることが分かる。
 新顔としてはIBF1位に躍り出てきたビンセント・アストロラビオ(25=フィリピン)がいる。21戦18勝(13KO)3敗のファイターで、2022年2月にギジェルモ・リゴンドー(42=キューバ)からダウンを奪って10回判定勝ち、スポットライトを浴びた。12月には上位ランカーのニコライ・ポタポフ(32=ロシア)に6回KOで圧勝、IBFの指名挑戦権を手に入れている。
 井上が抜けたあと、ドネア、ロドリゲス、マロニー、アストロラビオ、そして井上拓真(27=大橋)らが空位の王座決定戦に臨む可能性が高い。
 ロドリゲスに完敗したゲイリー・アントニオ・ラッセル(29=アメリカ)、ドネアに4回KO負けを喫した元WBC暫定王者のレイマート・ガバリョ(26=フィリピン)も巻き返しのチャンスを狙っている。

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