WBO世界フライ級王座決定戦 ジェシー・ロドリゲス対クリスチャン・ゴンサレス

  • 2023/05/05

中谷潤人の後継王者を決める戦い
ロドリゲスが体重下げて2階級制覇に挑戦

 中谷潤人(MT)がスーパー・フライ級に転向するために返上して空位になったWBO世界フライ級王座を1位のジェシー・ロドリゲス(23=アメリカ)と2位のクリスチャン・ゴンサレス(23=メキシコ)が争う。前WBC世界スーパー・フライ級王者のロドリゲスは体重を下げて2階級制覇を狙うことになる。ゴンサレスはメキシコを出て初の試合ということもあり、ロドリゲスが圧倒的に有利と見られている。

多くの可能性を秘めたロドリゲス

 アマチュア時代に2015年の世界ジュニア選手権準優勝、全米ジュニア選手権では2015年と2016年に優勝しているロドリゲスは2017年3月に17歳でプロデビュー。当時はミニマム級だったが、のちにフェザー級やスーパー・フライ級の体重で試合に臨んだこともある。2019年あたりから50キロ前後の体重に落ち着き、ライト・ライ級で世界ランキング上位に名を連ねるまでになった。
 2022年2月5日、ロドリゲスはアリゾナ州フェニックスでフェルナンド・ディアス(アメリカ)という選手とフライ級10回戦で拳を交えることになっていた。ところが、その日のメインでWBC世界スーパー・フライ級王座決定戦に臨む予定だったシーサケット・ソールンビサイ(タイ)がコロナ禍の影響で出場不可となり、急遽、ロドリゲスに代役がまわってきた。相手は経験値の高い元王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)。増量して試合に臨んだロドリゲスだったが、3回にはサイドにまわり込んで右アッパーを突き上げて技ありのダウンを奪うなどベテランを圧倒。大差の判定勝ちを収めて戴冠を果たした。初防衛戦ではシーサケットを一方的な8回TKOで退け、さらに評価を上げた。この王座はV2後に返上し、中谷と入れ替わるタイミングでフライ級に戻ってきた。
 サウスポーの技巧派で、巧みな位置どりや多彩なパンチ、手数の多さとスタミナに定評がある。王者経験者だが23歳と若く、可能性と伸びしろを残した選手といえる。

長身を生かしたアウトボクシングが身上のゴンサレス

 ゴンサレスは2017年5月にプロデビューし、6連勝を収めて好スタートを切った。7戦目にアンヘル・アヤラ(メキシコ)にジャッジの見解が割れる6回判定負けを喫したが、これが6年のキャリアで唯一の黒星だ。現在、16戦全勝(7KO)のアヤラはフライ級でWBC1位、WBO7位、IBF12位にランクされており、ゴンサレスが勝ち進めば大舞台での再戦があるかもしれない。
 アヤラ戦後、ゴンサレスは8連勝を収めて世界15傑入りを果たした。2021年12月29日にはゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)対村田諒太(帝拳)のイベントで、中谷の持つWBO世界フライ級王座に挑戦することが決定。しかし、コロナ禍の影響で入国制限措置がとられたため試合が中止になった経緯がある。3ヵ月後、その鬱憤を晴らすかのようにゴンサレスは世界挑戦経験者のファン・アレホ(メキシコ)に1回KO勝ちを収めている。
 172センチの長身と恵まれたリーチを生かしたアウトボクサーで、立ち位置を変えながら左ジャブを多用して相手との距離を保ち、機を見て右ストレートを放つスタイルを持つ。戦績が示すとおりパンチ力はないが、相手にとっては戦いにくいタイプといえる。

苦しみながらもロドリゲスがポイントを重ねる?

 左ジャブを突いてロングレンジを保とうとする挑戦者に対し、サウスポーの王者が積極的に仕掛けて出る展開が予想される。ゴンサレスはバランスのとれた戦力を持っているが、それでも距離が遠く守りの堅いゴンサレスの牙城を崩すのは容易ではないだろう。かといってロドリゲスが単調な攻撃を繰り返してダラダラとポイントを失い続ける姿も想像はできない。挑戦者のスピードと左ジャブに苦しむ可能性はあるが、ロドリゲスが巧みにプレッシャーをかけ続けてジャッジの支持を取り付けていくものと思われる。

<フライ級トップ戦線の現状>

WBA
:アルテム・ダラキアン(ウクライナ)
WBC
:フリオ・セサール・マルチネス(メキシコ)
暫定
:マクウィリアムス・アローヨ(プエルトリコ)
IBF
:サニー・エドワーズ(イギリス)
WBO
:空位

 2018年2月にアメリカでWBA王座を獲得したアルテム・ダラキアン(35=ウクライナ)がこの階級の主といえるが、5度目の防衛戦を自国ウクライナで行ってきたことに加え試合間隔が空いたことで地味な存在に甘んじてきた。やっとV6戦でイギリスに出向いてダビド・ヒメネス(31=コスタリカ)に小差の判定勝ちを収めたが、評価を高めるほどの内容ではなかった。WBAの1位はユーリ阿久井政悟(27=倉敷守安)だが、阿久井はWBCで3位、IBFとWBOでも4位にランクされており、どの団体の王座を狙うのか注目される。
 WBC王者のフリオ・セサール・マルチネス(28=メキシコ)で、2019年12月に獲得した王座を5度防衛中だ。構えを左右にチェンジしながら相手に迫りパンチを顔面、ボディに散らすファイター型だが防御面の不安が付きまとっている。
 IBF王者のサニー・エドワーズ(27=イギリス)もスイッチヒッターだが、こちらはマルチネスとは対照的な技巧派だ。直近の8連続判定勝ちを含め19戦全勝(4KO)の戦績が示すとおりパワーには欠ける。
 中谷潤人(MT)が返上して空位になったWBO王座はジェシー・ロドリゲス(23=アメリカ)対クリスチャン・ゴンサレス(23=メキシコ)の勝者が引き継ぐことになる。ロドリゲスが新王者になった場合は他団体王者に統一戦を呼びかける流れになるかもしれない。
 ランカー陣ではWBC1位、IBF12位、WBO7位につける16戦全勝(7KO)のアンヘル・アヤラ(22=メキシコ)、WBA15位、WBC13位、IBF11位、WBO10位のガラル・ヤファイ(30=イギリス)に注目したい。特に東京五輪フライ級金メダリストのヤファイはプロデビュー戦でWBCインターナショナル王座を獲得するなど4戦全勝(3KO)をマーク。年齢から考えて早い時期に勝負に出ることが予想される。
 3階級制覇に照準を合わせてきた京口紘人(29=ワタナベ)、東洋太平洋王者の桑原拓(28=大橋)、WBO1位の加納陸(25=大成)らも挑戦のチャンスを狙っている。




WBAスーパー、IBF世界スーパー・バンタム級タイトルマッチ ムロジョン・アフマダリエフ対マーロン・タパレス

V4狙う全勝王者 vs フィリピンの悪夢
オッズは4対1でアフマダリエフ有利

 3年間に3度の防衛を重ねているスーパー・バンタム級の2団体王者、MJことムロジョン・アフマダリエフ(28=ウズベキスタン)のV4戦。IBF1位にランクされる指名挑戦者のマーロン・タパレス(31=フィリピン)は元WBO世界スーパー・フライ級王者で、2階級制覇を狙ってリングに上がる。オッズは4対1、アフマダリエフ有利と出ている。スーパー・バンタム級には井上尚弥(大橋)が参入してくるだけに、この試合の勝者も近い将来に対戦する可能性が出てくる。迎え撃つ立場になるのはアフマダリエフか、それともタパレスか。

五輪銅からプロ転向 8戦目で2団体王座獲得したMJ

 アフマダリエフは2016年リオデジャネイロ五輪バンタム級で銅メダルを獲得したほか世界選手権にも2度出場し、2015年にはバンタム級で準優勝を果たしている。320戦300勝(80KO)20敗のアマチュア戦績を残し、2018年3月にプロデビュー。4戦目にWBAインターコンチネンタル王座を獲得すると8戦目にはダニエル・ローマン(アメリカ)の持つWBAスーパー、IBF王座に挑戦し、僅少差の12回判定勝ちを収めて戴冠を果たした。コロナ禍の影響もあり次戦まで1年以上の空白が生じたが、自国開催の初防衛戦でIBF暫定王者の岩佐亮祐(セレス)に5回TKO勝ちを収めた。V2戦ではホセ・ベラスケス(チリ)に大差の12回判定勝ち、V3戦ではWBA1位のロニー・リオス(アメリカ)に12回TKOで快勝した。ただ、この試合で左手首を痛めたため今回の試合までブランクをつくることになってしまった。
 戦績は11戦全勝(8KO)。以前は左構えから圧力をかけ、中間距離で強打を打ち込んでねじ伏せる戦い方が目立ったが、最近は適度に足をつかいながら間合いを保って戦うなど攻防の幅を広げている。まだ自分のV4戦も、さらにスティーブン・フルトン(アメリカ)対井上の試合(7月25日)も終わっていないが、すでにアフマダリエフは井上との4団体統一戦に「いつでも、どこでもOK」と意欲をみせている。

岩佐戦の敗北から立ち直ってIBF1位に浮上したタパレス

 タパレスは出身地であるフィリピンのミンダナオ島の生地名をとって「マランディンの悪夢」と呼ばれる。アマチュアを経て2008年7月に16歳4ヵ月でプロデビュー。地域王座を獲得してランキングを上げ、2016年7月にプンルアン・ソーシンユー(タイ)に11回KO勝ちを収めてWBO世界バンタム級王者になった。
 このあと井上拓真(大橋)と初防衛戦を行う予定だったが、井上が拳を骨折したためにキャンセルに。翌2017年4月、タパレスは来日して大森将平(ウォズ)の挑戦を受けたが、前日計量で規定体重がつくれず、試合では11回TKO勝ちを収めたものの王座を失った。これを機にスーパー・バンタム級に転向。2019年12月にIBF暫定王座決定戦に出場する機会を得たが、岩佐亮祐(セレス)に11回TKOで敗れた。2年後の一昨年12月、勅使河原弘晶(三迫)との挑戦者決定戦で2回KO勝ちを収め、晴れてIBF最上位に上がってきた。アフマダリエフと同じサウスポーで、巧みな位置どりから左ストレートや右フックなどで攻め込むスタイルを持つ。試合や相手によってムラがあるが、総合的には高い戦力を備えている。

中近距離の戦いに持ち込みたいMJ 焦らしたいタパレス

 サウスポー同士のカードだが、距離をとりつつ出入りして戦いたいタパレスに対し、アフマダリエフは踏み込んで中近距離での戦いに持ち込みたいところ。序盤からアフマダリエフが簡単に自分の間合いをつかむことができれば中盤から終盤にかけてKO防衛が見えてくる。逆にタパレスが巧みに動いて的を絞らせず、王者を焦らすような展開に持ち込めれば接戦になりそうだ。ただし、タパレスがそんなパターンに王者を引きずり込むためには心身ともにベストの状態をつくることが大前提となる。

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