WBO世界スーパー・ウェルター級暫定王座決定戦 ティム・チュー対トニー・ハリソン

  • 2023/03/24

7例目の親子世界王者誕生か
ハリソンは返り咲き狙う

 1990年代から2000年代にかけてスーパー・ライト級を席巻した元世界王者、コンスタンチン・チュー(ロシア/オーストラリア)を父に持つティム・チュー(28=オーストラリア)が、WBO世界スーパー・ウェルター級暫定王座をかけて前WBC同級王者のトニー・ハリソン(32=アメリカ)と対戦する。史上7組目の親子世界王者が誕生するのか、それとも祖父、父と3代にわたってボクサーというハリソンが団体を変えて王座返り咲きを果たすのか。KO決着濃厚の注目カードだ。

地元ファンの前で初の世界戦に臨むチュー

 もともとチューは1月28日にアメリカのネバダ州ラスベガスで4団体統一王者のジャーメル・チャーロ(アメリカ)に挑む予定だったが、試合の約1ヵ月前にチャーロが左手を負傷、試合はキャンセルになった。その後、チャーロの回復が長引くことが判明したことを受けWBOが暫定王座の設置を決めたという経緯がある。
 チューは、元WBA、WBC、IBF世界スーパー・ライト級王者、コンスタンチン・チューの息子で、アマチュアを経て2016年12月に22歳でプロデビューした。地域王座を獲得するなどして世界ランキング入りを果たし、2020年8月には元世界王者のジェフ・ホーン(オーストラリア)を8回TKOで破り実力を証明。その後、デニス・ホーガン(アイルランド)、井上岳志(ワールドスポーツ)、テレル・ゲシェイ(アメリカ)と世界挑戦経験者3人を下して勢いを増している。戦績は21戦全勝(15KO)。
 比較的広めのスタンスから硬質感のある左ジャブを飛ばし、クロス気味に右を叩きつける戦い方は父親を彷彿とさせるものがある。チャンスに繰り出す左フック、左ボディブロー、右アッパーなどパンチは多彩で強い。やや体が硬いのか全体的にスムーズさに欠ける印象だが、それも父親と共通するものといえる。
 チャーロ戦はアメリカで行われる予定だったが、今回の暫定王座決定戦は地元のシドニー(オーストラリア)開催となった。あとはハリソンに勝ってベルトを腰に巻くだけだ。

祖父、父親と3代にわたるボクサー家系のハリソン

 ハリソンは3代にわたるボクサーとして知られる。祖父のヘンリー・ハンク(本名はジョセフ・ハリソン)は1950年代~1970年代初頭にかけてライト・ヘビー級で活躍した元世界ランカーで、父親のアリ・サラーム(本名は同じくジョセフ・ハリソン)は1980年代にウェルター級で18戦した経験を持つ。ちなみにサラームは2012年から息子であるハリソンのトレーナーを務めたが、3年前に新型コロナウィルス感染症に罹患、59歳の若さで亡くなっている。
 ボクサーの家系に育ったハリソンはアマチュア時代に全米ゴールデングローブ大会3位(2011年)、全米選手権ベスト8(2010年)といった実績を残し、2011年7月にプロデビュー。4年間に21連勝(17KO)を収めて世界15傑入りを果たしたが、2015年7月に元世界ランカーのウィリー・ネルソン(アメリカ)に逆転の9回TKOで初黒星を喫した。1年半後、IBF世界スーパー・ウェルター級王座決定戦に出場するチャンスを得たが、ジャレット・ハード(アメリカ)に9回TKOで敗れた。互角に近い内容だったが、最後は耐久力の差が出た一戦だった。
 2018年12月、デビューから31連勝中のWBC王者、チャーロに挑戦。オッズは8対1でチャーロ有利と出ていたが、ハリソンはブーイングの出る微妙な採点ながら判定勝ちを収めて3代にわたる悲願の世界王座獲得を果たした。再戦で11回KO負けを喫して在位は1年に終わったが、昨年4月にはセルヒオ・ガルシア(スペイン)とのWBC挑戦者決定戦で10回判定勝ちを収め、あらためて地力のあるところを見せつけた。戦績は33戦29勝(21KO)3敗1分。

攻めるチュー 迎え撃つハリソンという構図か

 攻撃型のチューが地元の声援を背に積極的に仕掛けて出るものと思われる。ハリソンは主武器の左ジャブと右ストレートのカウンターで応戦することになりそうだ。身長174センチ/リーチ183センチのチューに対し、ハリソンは185センチ/194センチと体格で大きく勝っており、そのアドバンテージを存分に生かしたいところだ。チューを勢いづかせないために序盤で叩いておくことができるかどうかがカギといえる。
 チューが圧力をかけながら中近距離の戦いに持ち込むようだと親子世界王者誕生の期待は膨らむ。相手の可動範囲を狭めておいて左ボディブローや左フック、右アッパーなどでダメージを植えつけていくものと思われる。そうなると耐久力に課題を抱えるハリソンは苦しい。17対7のオッズが出ているように、チューが地元で戴冠を果たす可能性が高い。

<親子世界王者>

エスパダス父子
(メキシコ)
グティ・エスパダス&グティ・エスパダスJr
スピンクス父子
(アメリカ)
レオン・スピンクス&コーリー・スピンクス
バスケス父子
(プエルトリコ)
ウィルフレド・バスケス&ウィルフレド・バスケスJr
アリ父娘
(アメリカ)
モハメド・アリ&レイラ・アリ
チャベス父子
(メキシコ)
フリオ・セサール・チャベス&フリオ・セサール・チャベスJr
ユーバンク父子
(イギリス)
クリス・ユーバンク&クリス・ユーバンクJr
  • ※このほかフロイド・パターソン&養子のトレーシー・ハリス・パターソン(アメリカ)の例もある

<スーパー・ウェルター級トップ戦線の現状>

WBA
:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBC
:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
暫定
:セバスチャン・フンドラ(アメリカ)
IBF
:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)
WBO
:ジャーメル・チャーロ(アメリカ)

 昨年5月にジャーメル・チャーロ(32=アメリカ)がブライアン・カスターニョ(33=アルゼンチン)に10回KO勝ちを収めて4団体の王座を統一。誰もが認めるスーパー・ウェルター級の絶対王者になった。ただ、1月28日に予定していたティム・チュー(28=オーストラリア)との防衛戦を前に左手を負傷した点は気になる。コロナ禍ということもあって2020年、2021年、2022年と直近の3年間は年間1試合のペースになっている。全盛期に入ったと思われるなか時間が無為に流れていくのは避けたいところだ。
 そんなチャーロにとって新たな脅威として台頭してきたのがチューだ。しばらくは元世界王者2世として話題が先行していたチューだが、最近は確実に実力を増してきている。今回のトニー・ハリソン(32=アメリカ)戦に勝つことが前提となるが、休養中のチャーロを脅かす存在になりそうだ。
 WBC暫定王者のセバスチャン・フンドラ(25=アメリカ)は身長197センチのサウスポーで、相手にとっては戦いにくいタイプといえる。こちらも話題性に実力が追いついてきた印象だ。ブライアン・メンドサ(29=アメリカ)とのV2戦を控えている。
 WBC1位にランクされるリアム・スミス(34=イギリス)は元WBO王者だが、ここ2戦はミドル級で戦っている。スーパー・ライト級とウェルター級の元王者、ダニー・ガルシア(34=アメリカ)は昨年夏にスーパー・ウェルター級に転向。3階級制覇に照準を合わせている。
 新興勢力としては19戦全勝(15KO)のヘスス・ラモス(22=アメリカ)、15戦全勝(10KO)のザンダー・ザヤス(20=プエルトリコ)がいる。このままの勢いを持続していけば2年後ぐらいには世界王座に絡んできそうだ。




IBFインターコンチネンタル、WBOオリエンタル スーパー・バンタム級タイトルマッチ サム・グッドマン対TJ・ドヘニー

24歳のホープ vs 36歳の元王者
新旧交代の可能性大

 スーパー・バンタム級でIBF、WBO6位にランクされる13戦全勝(7KO)のホープ、サム・グッドマン(24=オーストラリア)と、2018年から2019年にかけて同級IBF王座に君臨した実績を持つTJ(テレンス・ジョン)・ドヘニー(36=アイルランド)が拳を交える。グッドマンが保持するIBFインターコンチネンタル王座とWBOオリエンタル王座がかかった試合だが、世界ランカー同士のサバイバルマッチでもある。
 グッドマンはアマチュアを経て5年前にプロ転向を果たし、2021年に国内王座とWBOオリエンタル王座、2022年にIBFインターコンチネンタル王座を獲得。世界挑戦経験者のリッチー・メプラナム(フィリピン)、ファン・ミゲール・エロルデ(フィリピン)らに勝った星が光る。アップライト気味の構えから力まずにモーションなしで打ち込む右ストレートを主武器としている。
 ドヘニーもアマチュア経験後の2012年4月にプロデビュー。2018年8月に岩佐亮佑(セレス)を12回判定で破ってIBF世界スーパー・バンタム級王者になり、初防衛戦では高橋竜平(横浜光)を11回TKOで退けている。2019年4月、WBAスーパー王者のダニエル・ローマン(アメリカ)との統一戦で12回判定負けを喫して失冠。再起第2戦で無名のイオヌット・バルタ(ルーマニア)、次戦のWBA世界フェザー級暫定王座決定戦でマイケル・コンラン(イギリス/アイルランド)にも敗れた。昨年3月、世界挑戦経験者のセサール・フアレス(メキシコ)に勝って戦線復帰を果たした。出たり引いたりしながら揺さぶって的を絞らせないサウスポーの技巧派だ。戦績は26戦23勝(17KO)3敗。
 直近の5戦で地域王座を獲得、防衛しながら着実に実力と実績を重ねているグッドマンと、ローマン戦を含めて2勝3敗のドヘニー。オッズが7対2で24歳のホープに傾くのは当然といえよう。地元の声援を背にグッドマンが圧勝しそうだ。

もっと見る

閉じる

番組で使用されているアイコンについて

初回放送
新番組
最終回
生放送
アップコンバートではない4K番組
4K-HDR番組
二カ国語版放送
吹替版放送
字幕版放送
字幕放送
ノンスクランブル(無料放送)
  
5.1chサラウンド放送
5.1chサラウンド放送(副音声含む)
オンデマンドでの同時配信
オンデマンドでの同時配信対象外
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの