番組開始20周年を記念し、鉄道発祥の地を全6回にわたって紹介。

イギリス・アイルランド大縦断

番組開始からついに20周年。記念すべき今回は、鉄道発祥国・イギリスとケルト文化が息づくアイルランドを、番組初となる全6回の大型シリーズで巡ります。当地で蒸気機関車が発明されたのは1800年代初頭。それ以来の長い歴史を物語る各地の多彩な保存鉄道を訪ねつつ、美しい田園風景や世界遺産、産業革命を支えた街々の表情を紹介します。

[PART1]古代から現代へ・繁栄の時をたどる ロンドン〜ソールズベリ〜イースト・グリンステッド ロンドン ソールズベリ イースト・グリンステッド

ロンドン 歴史と伝統、進化と最先端が混在する大都市
ウェストミンスター宮殿(国会議事堂)

1090年当時は国王の居城として建設。しかし13世紀にヘンリー3世が、隣のウェストミンスター寺院の改修費として重税を課したため、貴族と市民代表、そして国王が話し合いを持ちました。これが二院制議会政治の原型となり、国会議事堂として使われるようになったそう。最近、時計台「ビッグ・ベン」が地盤沈下で傾いたと報じられましたが、ピサの斜塔並みに傾くまで4千年はかかり、心配無用とか。

ウェストミンスター宮殿
ウェストミンスター宮殿
バッキンガム宮殿

1703年にバッキンガム公の私邸として建設。後に王室が買い上げ、ヴィクトリア女王が即位した1837年に宮殿となりました。女王不在時は国旗を、在城時は王室旗を掲揚。女王がスコットランドに滞在する8〜9月は内部が一般公開されます。前庭で行われる衛兵交代式は観光のハイライト。深紅の制服でおなじみですが、冬はグレーの外套でシックな装いになります。フサフサの黒い帽子は熊の毛皮だそう。

バッキンガム宮殿
バッキンガム宮殿
衛兵の交代式 騎馬隊
衛兵の交代式 騎馬隊
ヴィクトリア女王記念碑
ヴィクトリア女王記念碑
ロンドン・アイ

テムズの河畔に建つ大観覧車は、2000年にオープンしたロンドン観光の新名所。高さは135mもあり、近未来的な透明カプセルからロンドンの街並みを360°見渡すことができます。カプセルは従来の釣り下げ式ではなく、ホイールの外側に設置してあるので、鉄骨で視界が妨げられることがありません。1周約30分、料金は大人18.60ポンド、ネット予約割引もあります。

ロンドン・アイ
ロンドン・アイ
定員25人の大きなカプセル
定員25人の大きなカプセル
ウェストミンスター寺院

ロイヤル・ウェディングや戴冠式が行われ、王室の歴史とともにある寺院。1066年のウィリアム1世以来ここで戴冠式が行われ、墓所として歴代国王や多くの著名人が埋葬されています。起源は7〜8世紀といわれていますが、大寺院になったのは1065年。その約200年後にヘンリー3世がゴシック様式へ改築を始め、現在の華麗な姿が完成したのは17世紀のことでした。1987年、世界文化遺産に登録。

ウェストミンスター寺院
ウェストミンスター寺院
トラファルガー広場

円柱の頂上に立っているのは、1805年にナポレオンのフランス・スペイン連合艦隊を、トラファルガー沖で破ったネルソン提督。広場は彼の偉業を称えて造られました。海戦の様子が描かれた台座のレリーフは、敵軍の大砲を溶かして造ったそうです。12月になるとノルウェー政府から贈られる巨大なクリスマスツリーが飾られ、合唱隊のキャロルが響き渡ります。

トラファルガー広場
トラファルガー広場
海軍提督ネルソン像
海軍提督ネルソン像
海戦を描いたレリーフ
海戦を描いたレリーフ
シティ

ロンドン発祥の地。1世紀にローマ人が、城塞都市ロンディニウムを建設したのがその始まりです。イギリス経済の中心地としてあらゆる金融機関が集まり、地下鉄駅名もズバリ「バンク」。駅前広場に立つとコリント式の柱廊が目に入りますが、これが王立取引所。ある商人が私費で1566年に造り、1571年にエリザベス1世の勅許を受けました。現在ではオフィスやショッピングモールとして使われています。

王立取引所
王立取引所
地下鉄バンク駅
地下鉄バンク駅
名門大銀行が立ち並ぶ
名門大銀行が立ち並ぶ
地下鉄

1863年、世界に先駆けて地下鉄を通したロンドン。古くて故障も多いそうですが、郊外線も含めて11本の路線が街中を網羅しています。チューブという愛称の由来は、建設費削減のために狭く丸い管状のトンネルを掘ったから。それに合わせて車両も丸みを帯びています。構内にはストリート・ミュージシャンが多く、本格的な音色を聞かせる強者も。

丸みを帯びた車両
丸みを帯びた車両
チューブ名物のパフォーマー
チューブ名物のパフォーマー
レスター・スクウェア

シェイクスピアを生んだエンターテインメントの本場、イギリスを代表する劇場街。シアターが立ち並び、世界的ヒット作が上演されています。趣きある赤レンガのパレス・シアターは、1891年にオペラハウスとしてオープンした由緒正しい建物。ギルグード・シアターは、シェイクスピアのグローブ座の名前を借りたそう。広場には大道芸人が集い、人気ミュージカルの当日券が格安で買える販売所もあります。

パレス・シアターの『砂漠のプリシラ』
パレス・シアターの『砂漠のプリシラ』
ソールズベリ 中世の面影を残す大聖堂の町
サウス・ウエスト・トレインズ

ロンドンのウォータールー駅から、ローカル線のサウス・ウエスト・トレインズに乗り、ソールズベリまでは約1時間半。この鉄道会社はイギリス南部、ロンドンより南西部をカバーしており、車両には赤、黄、青、オレンジ色などカラフルな塗装が施されています。

サウス・ウエスト・トレインズ
サウス・ウエスト・トレインズ
ソールズベリ大聖堂

1220年から建てられ、身廊と祭壇は1258年、イギリスで最も高い123mの尖塔は1310年に完成。英国ゴシック様式を忠実に表現した外観はもちろん、聖書物語を描いた内壁のレリーフは中世美術の傑作といわれています。初めて国王の権限を制限した大憲章「マグナ・カルタ」が保管されており、これは世界に現存するたった4冊の内の1冊です。

ソールズベリ大聖堂
ソールズベリ大聖堂
大聖堂内部
大聖堂内部
オールド・セーラム

ソールズベリが「ニュー・セーラム」と呼ばれるのは、新市街として発展したため。かつてこの地域の中心地は、今は廃虚となったオールド・セーラムでした。丘の上で水の便が悪く、街も過密状態になった1220年、大聖堂建設に伴って捨て置かれたのだそう。城塞、聖堂、宮殿などの巨大な遺構を見ることができます。

オールド・セーラム
オールド・セーラム
ストーンヘンジ

謎に満ちた巨大な石の遺跡。紀元前3000〜1500年頃に造られたといわれていますが、宗教儀式の神殿か、はたまた天体観測装置か、用途は判然としません。この地方にはない石材も使われており、どのように運び、積み上げたのかも謎。夏至には巨石群の真ん中に太陽が落ちるそうですが、その意図も不明。ナゾ尽くしですが、周囲の雰囲気はいたってのどか。どこまでもなだらかな平原が広がっています。

ストーンヘンジ
ストーンヘンジ
イースト・グリンステッド 世界最大の保存鉄道へ向かう起点駅
サザン・レイルウェイ

ロンドンからイギリス南部を結ぶ鉄道会社。ブライトン、ガトウィック空港、ポーツマス、ヘイスティングズなどへ運行しています。ヴィクトリア駅からイースト・グリンステッドまでは、約1時間。ここからバスで、世界最大の保存鉄道、ブルーベル鉄道へ移動します。

ヴィクトリア駅
ヴィクトリア駅
一等車
一等車
車内
車内
ブルーベル鉄道

標準軌の保存鉄道としてはイギリス初、1960年に開通。鉄道発祥の国に誇りを持つ人々が、ボランティアで運営しています。3駅2区間・30分の旅ですが、見所は満載。40両近い機関車を保有し、1930年代を再現した駅は博物館のよう。豪華なフランス料理が楽しめるゴールデン・アローなどのイベント列車もあり、機関車トーマスに登場する「ステップニー」は子どもたちに大人気です。

キングスコート駅
キングスコート駅
ポイント切り替え室
ポイント切り替え室
特別列車ゴールデン・アロー号
特別列車ゴールデン・アロー号