統一150周年に沸くイタリアを、北から南まで周遊。

統一イタリアの大地を行く

これまで番組が3度訪れたイタリアですが、今回は北部の定番コースだけでなく、初めて南イタリアやシチリア島、アドリア海沿岸まで、全土をじっくりと巡ります。2009年に専用路線が完成した高速鉄道アルタ・ヴェロチタや、列車ごと運べるフェリーなど、鉄道ファンの見どころ満載。統一の足跡をたどりながら、各地方の特色ある文化とその魅力をお届けします。

PART4 ヴェネツィアを目指して アンコーナ〜フェッラーラ〜パドヴァ〜ヴェネツィア アンコーナ フェッラーラ パドヴァ ヴェネツィア

PART4 ヴェネツィアを目指して アンコーナ〜フェッラーラ〜パドヴァ〜ヴェネツィア

アンコーナ 古代ギリシャ人が築いた海運の町
サン・チリアーコ大聖堂

町の守護聖人チリアーコに捧げられた聖堂で、11〜13世紀に建立・改築されました。ロマネスク様式でギリシャ十字型の構造ですが、ファサードはゴシック様式。しかも装飾には東方の影響もあり、マルケ州でも貴重な中世の建築物です。ローマ時代に神殿があった丘の頂上にあり、埋葬されている聖チリアーコ、聖マルチェッリーノら聖人たちが静かに町を見守っています。

サン・チリアーコ大聖堂
サン・チリアーコ大聖堂
グアスコの丘の上に建つサン・チリアーコ大聖堂
グアスコの丘の上に建つサン・チリアーコ大聖堂
凱旋門

アンコーナは紀元前4世紀頃、シラクーサのギリシャ人が建設した町ですが、ローマ皇帝トラヤヌス支配時に最も栄えました。この凱旋門は115年頃、建築家アポロドーロスにより、港を築いたトラヤヌス帝を讃えて造られたもの。高さ18mの大理石製で、マルケ州の古代ローマ遺跡の中で保存状態が良いものの1つです。

凱旋門
凱旋門
パセット

パセットは、海辺に整備された市民のくつろぎの場。白亜のモニュメントは戦没者慰霊塔で、眼下に美しいアドリア海が一望できます。公園のはずれには展望台があり、エレベーターを降りればそこは海水浴場。白いビーチとどこまでも青い海が、旅の疲れを癒してくれます。

パセット
パセット
公園から望むアドリア海
公園から望むアドリア海
ヴァンヴィテッリの検疫所

建築家ルイージ・ヴァンヴィテッリが、ローマ教皇クレメンス12世に命じられて1732年に考案。港に入る船舶が持ち込む伝染病を防ぐために建設されました。面積は2万平方メートル以上もあり、いわゆるペンタゴン(5角形)構造。軍事病院や兵舎などへの転用を経て、今は展示ホールやイベント会場として用いられています。

ヴァンヴィテッリの検疫所
ヴァンヴィテッリの検疫所
フェッラーラ 北イタリアにおけるルネッサンスの華
エステンセ城

イザベッラ・デステが生まれたエステ家の居城です。芸術を愛するエステ家により、ルネッサンスの中心都市の1つとして栄えたフェッラーラ。この城も、フレスコ画の部屋、ヴェネツィアングラスのシャンデリアのあるサンルーム、小さいながらも大理石の象嵌装飾が見事な礼拝堂など、貴重な芸術品が満載です。赤レンガ造り、外堀に渡した跳ね橋、四つの塔など、いかにも西洋の城らしい外観も魅力。

エステンセ城
エステンセ城
内部のフレスコ画
内部のフレスコ画
4隅の塔をつなぐ回廊
4隅の塔をつなぐ回廊
カテドラーレ

町の守護聖人サン・ジョルジョを祀る、12〜14世紀の聖堂。着工時は飾り気のないロマネスク様式でしたが、徐々にエレガントなゴシックがミックスされ、混合様式となりました。回廊が何層も重なるように設計された、3尖塔式のファサードが特徴。内部には大聖堂美術館が併設され、コスメ・トゥーラの絵や「12ヶ月の扉の彫刻」と呼ばれる12枚のレリーフなど、聖堂を飾っていた調度品が展示されています。

カテドラーレ
カテドラーレ
コルプス・ドミニ修道院

町の統治者エステ家の菩提寺。ローマ教皇アレクサンドル6世の娘であり、政略結婚に翻弄されたヒロインとして知られる、ルクレツィア・ボルジアも埋葬されています。生前のルクレツィアは、悲しいことがあるたびにここを訪れたそう。レンガ造りの質素な修道院で、インターフォンで訪問の理由を告げると、修道女が静かに迎え入れて中を案内してくれます。

コルプス・ドミニ修道院
コルプス・ドミニ修道院
アリオステア広場

15世紀末、エステ家お抱えの建築家ビアージョ・ロセッティは、エルコレ1世の命により都市拡張計画を推進。1492年より、町の北側の城壁を掘削して新市街を拡張し、バランスよく新しい建物、広場、庭園を配置していきました。そのとき造られたのが、ディアマンティ宮殿やアリオステア広場です。緑豊かな広場は楕円形の通路で囲まれ、中心にはルネサンス期の宮廷詩人アリオストの像が置かれています。

アリオステア広場
アリオステア広場
ディアマンティ宮殿

15世紀に完成した、エステ家の宮殿です。四角錐にカットされた大理石で、外壁が埋め尽くされているのが特徴。これが日の光にキラキラ光るさまをダイヤモンドになぞらえ、この名称で呼ばれています。新市街に造られたこの館は、赤レンガの建築物ばかりだった町の中でひときわ異彩を放ったことでしょう。現在は国立絵画館で、コスメ・トゥーラをはじめとするフェッラーラ派の作品を所蔵しています。

ディアマンティ宮殿
ディアマンティ宮殿
壁を埋め尽くす四角錐の大理石
壁を埋め尽くす四角錐の大理石
ヴォルテ通り

この町がルネッサンスの面影を強く残しているのは、エステ家がこの地を去った後、19世紀まであまり発展しなかったおかげともいわれています。中でもヴォルテ通りは、最も中世的な場所の1つ。両脇に家が立て込んだ石畳の道は、車が1台通るのがやっと。建物と建物の間に架けられた陸橋=ヴォルテをいくつもくぐりぬけて歩いていると、まるでタイムスリップしたような気分です。

ヴォルテ通り
ヴォルテ通り
パドヴァ ローマに次ぐ富を誇った、学識と文化の町
サンタントニオ聖堂

8つの丸いクーポラが印象的な聖堂は、街の守護聖人・聖アントニオに捧げられたロマネスク・ゴシック様式の教会。聖アントニオはポルトガル生まれの僧で、多くの奇跡を起こしたといわれ、1231年にパドヴァ郊外で生涯を終えました。内部はドナテッロ作のブロンズ像や絵画が見どころ。1年を通じて各地から熱心な巡礼者が訪れる、町で最も重要な聖地です。

サンタントニオ聖堂
サンタントニオ聖堂
パドヴァ大学

1222年創立の、イタリアで2番目に古い大学。地動説のコペルニクスが学び、詩人ダンテや天文学の父ガリレオが教鞭をとっていました。ガリレオが講義した教壇のある大ホール「アウラ・マーニャ」と、1594年に造られた世界最古の解剖学教室「テアトロ・アナトミコ」はガイド付きで見学できます。この大学の歴史と名声に敬意を表して、イタリア人はパドヴァの人のことを「グラン・ドットーレ(偉大なる学士)」と呼ぶそうです。

パドヴァ大学
パドヴァ大学
ガリレオが立った教壇
ガリレオが立った教壇
大ホール「アウラ・マーニャ」
大ホール「アウラ・マーニャ」
植物園

1545年開園のパドヴァ大学附属植物園。研究目的の植物園としてはヨーロッパ最古で、1997年に世界文化遺産に登録されています。治療用ハーブなどを育てる他、ヨーロッパで初めてヒマワリの開花に成功したり、国内初のジャガイモ栽培といった実績が。園内最古の植物は、1585年に植えられたシュロの木。ゲーテがこの木をきっかけに『植物変形論』を著したといわれ、「ゲーテのシュロ」と呼ばれています。

植物園
植物園
右端がゲーテのシュロがある温室
右端がゲーテのシュロがある温室
プラート・デッラ・ヴァッレ

面積が約9万平方キロメートルもある、イタリア最大の広場。プラートは芝生、ヴァッレは平野という意味の通り、緑あふれる公園です。全体が楕円形で、中央にメンミーナ島という小島が運河に囲まれている、ちょっと珍しい構造。18世紀にこの地域の貴族の伝統的な庭園に着想を得て造られたといわれています。運河沿いには彫像が何十体も並び、当時の市民生活を垣間見ることができます。

プラート・デッラ・ヴァッレ
プラート・デッラ・ヴァッレ
優雅な雰囲気を醸し出す彫像
優雅な雰囲気を醸し出す彫像
エルベ広場

エルベ=野菜の意味。日曜を除く毎朝、生鮮食品のメルカート(市場)が立つ、まさにパドヴァの台所です。すべて量り売りなので、旅行者も不足しがちなフルーツや野菜を気軽に買うことができます。中央にあるラジョーネ宮は1306年完成の裁判所でしたが、今は1階のアーケードは商店街。パン、肉、魚、ハム、チーズ、菓子など食卓のすべてのものが揃います。2階の大広間はジョットのフレスコ画が必見。

エルベ広場
エルベ広場
シニョーリ広場

エルベ広場と同様、午前中は衣類や雑貨の市場が立つシニョーリ広場。イタリア最古の天文時計を掲げた時計台が有名で、1437年に建てられました。建物全体はかつてのヴェネツィア共和国総督官邸で、現在は市役所として使われています。夕方になると広場に面したバールが外にテーブルを出し、遅くまで食事やおしゃべりを楽しむ人々で賑わいます。

シニョーリ広場
シニョーリ広場
イタリア最古の天文時計
イタリア最古の天文時計
ヴェネツィア 「アドリア海の女王」と称えられた水の都
サン・マルコ広場

ヴェネツィアの中心であり、世界で最も有名な広場。守護聖人・聖マルコを祀るサン・マルコ寺院、ヴェネツィア共和国総督の政庁として建てられたドゥカーレ宮殿、コッレール博物館などに囲まれています。寺院に燦然と輝いているのは、翼のあるライオン。ヴェネツィアと聖マルコのシンボルであり、ヴェネツィア国際映画祭最高賞のトロフィーにもなっています。また、十字軍の戦利品など歴史上貴重な品々も必見。

サン・マルコ広場
サン・マルコ広場
サン・マルコ寺院
サン・マルコ寺院
ドゥカーレ宮殿
ドゥカーレ宮殿
リアルト橋

大運河、カナル・グランデに架かる橋の1つ。このエリアは海抜が高めで、洪水の被害も少なかったため、古くから商業の中心地。木製の跳ね橋だったリアルト橋も「富の橋」と呼ばれていたそうです。しかし度々の崩壊や火災を経て、16世紀末に大理石で再建。下を船が航行できるように太鼓橋として甦りました。フィレンツェのベッキオ橋のように橋の上にアーケードがあり、宝石店や土産物屋が並んでいます。

リアルト橋
リアルト橋
フェニーチェ劇場

ミラノのスカラ座、ローマのオペラ座と並ぶ、イタリアの代表的オペラハウス。焼失した別の劇場の後継として1792年に開場して以来、1836年、1996年に火災に遭いながら2度とも再建され、フェニーチェ=不死鳥の名に違わぬ歴史を持っています。17世紀に16の歌劇場があったほどヴェネツィアのオペラは隆盛を極め、フェニーチェ劇場の設計コンペは28もの設計案が競合するほど白熱したそうです。

フェニーチェ劇場
フェニーチェ劇場
ガラス工房

特産品のガラスは、ヴェネツィア本島の北東にあるムラーノ島で集中的に製造されてきました。製法の秘密を守るために、13世紀から職人が島に集められたからです。ヴェネツィアングラスは15世紀には高級工芸品としてヨーロッパ貴族の憧れの的となり、貴重な輸出品として共和国に富をもたらしました。現在も熟練の技は工房ごとに伝承され、手作りでしか生み出せない美しさで世界を魅了しています。

ガラス工房
ガラス工房
色も製法も多彩なヴェネツィアングラス
色も製法も多彩なヴェネツィアングラス