番組開始20周年を記念し、鉄道発祥の地を全6回にわたって紹介。

イギリス・アイルランド大縦断

番組開始からついに20周年。記念すべき今回は、鉄道発祥国・イギリスとケルト文化が息づくアイルランドを、番組初となる全6回の大型シリーズで巡ります。当地で蒸気機関車が発明されたのは1800年代初頭。それ以来の長い歴史を物語る各地の多彩な保存鉄道を訪ねつつ、美しい田園風景や世界遺産、産業革命を支えた街々の表情を紹介します。

[PART3]鉄道の歴史が詰まった宝の島へ リヴァプール〜マン島〜ベルファスト リヴァプール マン島 マン島 ベルファスト

[PART3]鉄道の歴史が詰まった宝の島へ リヴァプール〜マン島〜ベルファスト

リヴァプール 三角貿易を担った港とビートルズの街
リヴァプール ライム・ストリート駅

近代的な鉄骨の駅舎は、1984年に新装オープンしたもの。リヴァプールのターミナル駅で、長距離路線も数多く発着します。ここからリヴァプール港のフェリー乗り場へ向かい、マン島のダグラス港へと出航します。アイリッシュ海のほぼ真ん中に浮かぶマン島までは、高速船で約2時間半の旅です。

リヴァプール ライム・ストリート駅
リヴァプール ライム・ストリート駅
構内のユニークな彫像
構内のユニークな彫像

マン島 アイリッシュ海に浮かぶ保存鉄道の宝庫
ダグラス馬車鉄道

マン島は日本でいうと淡路島くらいの大きさ。有名な保存鉄道がいくつもあり、鉄道ファンのパラダイスです。まずは、首都ダグラスの海岸通り「プロムナード」を走る馬車鉄道。重い車両をたった1頭で牽引するスタイルで、1876年から130年以上も走り続けてきました。終点ダービー・キャッスル駅まで約3kmを北上。海を望む気持ちの良い道のりを、蹄の音も軽やかに進みます。

ダグラス馬車鉄道
ダグラス馬車鉄道
マンクス電気鉄道

ダービー・キャッスルで、1893年開業のマンクス電気鉄道に乗り換え。この鉄道は北部のラムジー駅まで、約28kmを運行しています。保有する24両のうち2両は、開業時から走る世界一古い現役電車。最新車両でさえ1906年製で、床も天井も座席も木造。車内は電球の明かりがほんわかと灯り、レトロなムードいっぱいです。それでも坂の多い道を軽快に走る雄姿は、100年超えの長寿を感じさせません。

マンクス電気鉄道
マンクス電気鉄道
オープンデッキ車も連結
オープンデッキ車も連結
スネーフェル登山鉄道

マンクス電気鉄道の中間地点、ラクシーから内陸へ向かうのが、1895年開通の登山鉄道。おもちゃのようにかわいい車両が、最大勾配83パーミルという急勾配をぐんぐん走っていきます。現存する唯一のフェル式鉄道でもあり、レールの中央には3本目のレールが。30分かけて標高約620mの山頂に着くと、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドと、イギリス全土を見渡せます。

スネーフェル登山鉄道
スネーフェル登山鉄道
マン島蒸気鉄道

島内最古の1874年開業。自治権を持つマン島の、国鉄ともいうべき鉄道です。始発のダグラス駅は立派なレンガ造り。ピカピカに磨き抜かれたベイヤー・ピーコック製の車体も誇らしげです。汽笛とともに出発すると、南部のポート・エリン駅まで約1時間、車窓には牧草地が広がり、馬が駆け、羊が遊び、彼方に海が霞んでいます。ポート・エリンには鉄道博物館があり、女王のお召し列車も保存されているそう。

マン島蒸気鉄道
マン島蒸気鉄道
牧草地を走る列車
牧草地を走る列車
ポート・エリン駅
ポート・エリン駅
ベルファスト 北アイルランドの中心都市
シティ・ホール(市庁舎)

ネオルネッサンスル様式の壮麗なホールは、街のシンボル的存在。ヴィクトリア女王の命により、1898年から8年を費やして建てられました。夏の間のみ、普段は公開されていない部屋も見学できるガイドツアーがあり、大理石をふんだんに使った豪華な内装は注目に値します。広場では、コンチネンタル・マーケット、クリスマスライトの点灯式、コンサートなどの催しが、季節ごとに行われています。

シティ・ホール(市庁舎)
シティ・ホール(市庁舎)
前庭のヴィクトリア女王像
前庭のヴィクトリア女王像
タイタニックツアー(造船所、市庁舎)

ヴィクトリア朝時代、造船と紡績で栄えたベルファスト。あのタイタニック号を造ったハーランド&ウルフ社のドックがあります。「H&W」と書かれた巨大クレーンは街のシンボル。2011年は進水100周年を迎え、5月の記念式典を皮切りに、写真展、演劇や映画、ゆかりの地を回るツアーなどさまざまなイベントが行われています。沈没から100年を迎える2012年には、タイタニック博物館も完成する予定。

タイタニック号を造ったH&W社のドック
タイタニック号を造ったH&W社のドック
街のシンボル「H&W」の巨大クレーン
街のシンボル「H&W」の巨大クレーン
シティ・ホールにあるタイタニック号の追悼碑
シティ・ホールにあるタイタニック号の追悼碑
ウェスト・ベルファスト地区

街の西部は、プロテスタント系住民とカトリック系住民の対立が続いていた地域。互いの居住区は今も、ピース・ラインという高い鉄の壁で分断されています。政治的主張を込めた壁画は100年ほど前からあり、名所をバスやタクシーで巡るツアーも。独特の緊張感に包まれた地域ですが、現在はテロの脅威も薄れつつあり、壁画も、差別や貧困を訴えるもの、サッカー関連のものなど多様化しているようです。

ピース・ラインの壁画
ピース・ラインの壁画
シャンキル・ロード地区(プロテスタント)
シャンキル・ロード地区(プロテスタント)
フォールズ・ロード地区(カトリック)
フォールズ・ロード地区(カトリック)
ベルファスト城

街の中心部から北へ6km、ケープ・ヒルという丘に建つ城。12世紀にノルマン人が建て、1611年にベルファストの領主が再建。火事により焼失しましたが、1870年に再再建されました。美しい庭園とベルファスト湾まで見渡せる眺望が素晴らしいのですが、人気の秘密は「猫」。T.S.エリオットの散文詩「猫」のプレートの他、置物、レリーフ、猫型にカットしたトピアリーなど、なぜか猫尽くしの城です。

ベルファスト城
ベルファスト城
ネコのモザイク・タイル
ネコのモザイク・タイル
ジャイアンツ・コーズウェイ

ベルファストからバスで約3時間半。海岸に六角形の石柱が無数に生えているような奇観は、北アイルランド唯一の世界遺産に登録されています。「巨人の石道」という意味で、伝説によるとフィン・マックールという巨人が造ったので、「巨人のオルガン」「巨人の靴」という名前の石もあります。実際は、約6100年前の地殻変動で流れ出した溶岩が、冷える過程でひび割れ、この不思議な形になったそう。

ジャイアンツ・コーズウェイ
ジャイアンツ・コーズウェイ
石柱「巨人のオルガン」
石柱「巨人のオルガン」
「巨人の靴」
「巨人の靴」