番組開始20周年を記念し、鉄道発祥の地を全6回にわたって紹介。

イギリス・アイルランド大縦断

番組開始からついに20周年。記念すべき今回は、鉄道発祥国・イギリスとケルト文化が息づくアイルランドを、番組初となる全6回の大型シリーズで巡ります。当地で蒸気機関車が発明されたのは1800年代初頭。それ以来の長い歴史を物語る各地の多彩な保存鉄道を訪ねつつ、美しい田園風景や世界遺産、産業革命を支えた街々の表情を紹介します。

[PART5]中世の古都を巡る ロンドン〜ヨーク〜エディンバラ ロンドン ヨーク エディンバラ エディンバラ

[PART5]中世の古都を巡る

ロンドン 歴史と伝統、進化と最先端が混在する大都市
キングス・クロス駅

ヨークへ向かうイースト・コースト・ラインには、キングス・クロス駅から乗車します。1852年開業の古い駅で、現在、創建当時の美しいファサードを復元するための大規模工事が進行中です。『ハリー・ポッター』ファンには、ホグワーツ特急の始発駅としておなじみ。映画の公開後は9番線と10番線ホームの間に「9と3/4ホーム」を示すプレートが掲げられ、人気の撮影スポットになりました。

キングス・クロス駅
キングス・クロス駅
9と3/4ホーム
9と3/4ホーム
ヨーク イギリスの歴史を見つめてきた古都
ヨーク・ミンスター

イギリス最大のゴシック建築で、13世紀初頭から約250年をかけて1472年に完成。カンタベリーに次ぐ、2番目に格式が高い聖堂です。見どころはなんといってもステンドグラス。天地創造を描いた世界最大級のものや、バラ戦争の終結を記念したもの、ハート型が描かれたものなど、繊細かつ壮大で1日見ていても飽きません。会議室であるチャプターハウスは、壁や天井の装飾も要注目です。

ヨーク・ミンスター
ヨーク・ミンスター
ヨーク・ミンスター内部
ヨーク・ミンスター内部
バラ戦争終結を記念したバラ窓
バラ戦争終結を記念したバラ窓
シャンブルズ

シャンブルズは、中世そのままのような曲がりくねった石畳の小道。語源の「シャメル」は肉を並べる台のことで、1930年代までは肉屋街でした。イギリスらしい木骨造りの建物は、細道を挟んでおでこがくっつきそうです。この、1階より2階、2階より3階がせり出す構造は、軒下に肉をぶら下げて売っていたとか、肉がなるべく傷まないように日陰を作ったからなどといわれています。

シャンブルズ
シャンブルズ
ベティーズ

1919年創業のティールーム。地元の人々に愛され続ける、行列の絶えない有名店です。名物のドライフルーツ入りチーズタルト「ヨークシャー・カード・タルト」も人気ですが、やはり1度はアフタヌーン・ティーを楽しみたいもの。3段の銀器にサンドイッチ、スコーン、ミニケーキが乗せられ、ミルクをたっぷり注いだ紅茶とともにいただきます。宝石のようなスイーツの数々も、目移りしてしまいそう。

ベティーズ
ベティーズ
アフタヌーン・ティー
アフタヌーン・ティー
城壁

ヨークに城壁が最初に築かれたのはローマ時代ですが、現存するのはほとんど中世に造られたもの。周囲約4.5km、壁の上は散歩道で街を一周することができます。城門のミクルゲート・バーは門の歴史、モンク・バーはリチャード3世の博物館。ミクルゲート・バーに晒されたヨーク公の生首を再現したり、実際の独房や処刑室が見られたり、石造りの薄暗い建物の中はおどろおどろしい雰囲気でいっぱいです。

ミクルゲート・バー
ミクルゲート・バー
城壁
城壁
国立鉄道博物館

およそ300両の列車を展示する、世界最大級の鉄道博物館。この規模で入場無料とは驚きです。名車が所狭しと並ぶグレート・ホールには、蒸気機関車の世界最速記録を持つマラード号や、日本の0系新幹線の雄姿も。旧ヨーク駅を再現したステーション・ホールには、女王陛下のお召し列車が鎮座しています。ありとあらゆる鉄道グッズや古い車両の修復作業も間近で見られ、大人も心躍る博物館です。

国立鉄道博物館
国立鉄道博物館
グレート・ホール
グレート・ホール
ヴィクトリア女王のお召し列車
ヴィクトリア女王のお召し列車
ノース・ヨークシャー・ムーアズ鉄道

ヨーク北部の荒野を走る保存鉄道。少々不便な場所にも関わらず客足が絶えないのは、やはり鉄道王国の誇りなのでしょう。車窓の景色は、延々と続く荒野。ヒースに覆われる夏でさえ荒涼として、エミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』そのままのイメージが広がっています。一転、子どもたちの歓声が響くのはゴースランド駅。ハリー・ポッターの魔法学校の最寄り駅、ホグスミードとして映画に登場しました。

ゴースランド駅
ゴースランド駅
旧SR鉄道の825号機
旧SR鉄道の825号機
エディンバラ 世界遺産に登録されるスコットランドの首都
スコット・モニュメント

スコットランドの文豪、サー・ウォルター・スコットの記念碑。彼が結婚後20年住んだプリンスィズ・ストリートにあり、高さ61mは作家の記念碑としては世界最大です。『アイヴァンホー』や、オペラ『ランメルモールのルチア』の原作となった『ランマームーアの花嫁』などで知られるスコットは、国外でも成功したイギリスの作家第1号。スコットランド銀行発行の紙幣すべてに肖像が描かれています。

スコット・モニュメント
スコット・モニュメント
エディンバラ城

街を見下ろすように立つエディンバラ城は、スコットランドとイギリスが1707年に合併するまで戦闘の歴史を刻んできました。切り立った岩山という立地、厳重な落とし格子門や幾重もの城壁など、難攻不落の要塞であったことが伺えます。グレート・ホールには歴史的な武器が多数展示され、砲台には黒光りする大砲がズラリ。王宮はスコットランド女王メアリーの部屋や、三種の宝器が見どころです。

エディンバラ城
エディンバラ城
ワン・オクロック・ガン
ワン・オクロック・ガン
武器類を保管したグレート・ホール
武器類を保管したグレート・ホール
エスプラナード広場

夏になるとエディンバラ城前の広場は、ミリタリー・タトゥーの会場となります。軍楽隊の一大イベントで、スコットランドはもちろん世界各地から招かれた兵士の演奏、歌、スコットランド独特のハイランド・ダンスなどが繰り広げられます。圧巻は、キルトをまとった総勢200名の大行進。ライトアップした城をバックにバグパイプを響かせ、ものすごい迫力。スコットランド文化を十二分に堪能できます。

ミリタリー・タトゥー
ミリタリー・タトゥー
大砲を使った競技
大砲を使った競技
ライトアップされたエディンバラ城
ライトアップされたエディンバラ城
カールトン・ヒル

小高い丘の上は、新旧市街を一望できる絶景スポット。都市計画の傑作といわれる新市街は、同じ色調の建物が直線や弧を描いて整然と並んでいるのが分かります。ギリシャ神殿のようなナショナル・モニュメントは、1822年に建設が始まりましたが、途中で予算が尽きて200年近く放置されているそう。ネルソン・モニュメントは、フランス・スペイン連合艦隊を破ったネルソン提督の望遠鏡の形を模しています。

ナショナル・モニュメント
ナショナル・モニュメント
ネルソン・モニュメント
ネルソン・モニュメント
ホリルードハウス宮殿

バッキンガム、ウインザーと並ぶ、女王の公的な宮殿の1つ。スコットランドにおける御用邸として、女王の在・不在を示す旗が掲揚されています。起源は12世紀の修道院で、かつては戴冠式や王族の結婚式なども行われましたが、現在は廃虚となってしまいました。スコットランド女王メアリーは、要塞のようなエディンバラ城よりこちらの城を好み、陰惨な歴史の舞台となった彼女の私室が今も残っています。

ホリルードハウス宮殿
ホリルードハウス宮殿
廃虚となっている修道院
廃虚となっている修道院