元日本代表キャプテン宮元恒靖が世界最高峰のサッカーを分析!
2度のワールドカップを経験し、海外でもプレーした宮元恒靖が、世界トップレベルでの経験を元に独自の視点からリーガ・エスパニョーラを掘り下げる。
“堅い守りを崩さなかったレアル”
セスク、ペドロ、アレクシス・サンチェスを外し、テージョとチアゴ・アルカンタラ、ふたりの若手を先発させ3‐4‐3の布陣でクラシコに臨んだバルセロナ。先制点は意外な形で訪れる。前半17分、R・マドリードはCKのチャンスにぺぺがヘッド。GKがキャッチしそこねたボールをDFプジョルがカバーしたが、そのボールにケディラが触ってゴール。R・マドリードは先制すると同時に、リーガ新記録となるシーズン108得点記録した。
CLから中3日のR・マドリードに対し、中2日のバルセロナ。そのコンディションが影響したのか、後半もバルセロナのプレーは重い。しかし後半68分、シャビに代えてA・サンチェスを投入すると、その直後、テージョのシュートからゴール前の混戦に。最後はA・サンチェスが押し込み、バルセロナが同点に追いつく。しかし、これを沈黙させたのはクリスティアーノ・ロナウドだった。バルセロナの同点ゴールから3分後、右サイドのエジルからのスルーパスをゴール前で受け、そのままゴールに流し込んだ。その後、バルセロナはペドロ、セスクと投入するが、相手の堅い守りを崩せない。試合はそのまま1‐2で終わり、首位R・マドリードが2位バルセロナとの勝ち点差を7に広げ、4年ぶりの覇権奪還に大きく前進した。
―― 前回お話を伺った際に、レアル・マドリードには積極的に攻めてほしいと仰っていましたが、クラシコを終えて、試合を振り返ってください
両チーム共にチャンピオンズリーグの遠征直後でしたので、コンディションを戻す難しさはあったと思います。それでもR・マドリードは、シャビ・アロンソら中盤の選手が前に行こうとしていましたし、ラインを押し下げられた時も、もう一度上げようとする意識が最後まで見られました。
特にエジルはとても良かった。ディフェンスでチームに貢献していて、長い距離も走っていたと思います。そして最後は、決勝点のアシストという決定的なプレーも見せました。クラシコのような大舞台で結果を出せるエジルは、既にモウリーニョ監督のサッカーにとって欠くことのできない存在ですし、これからもっと重要な存在になっていくでしょう。
―― バルセロナの選手たちのモチベーションはいかがでしたか?
前半からメッシの動きが少なくて、トップの位置に人を置けなかったですよね。R・マドリードの守備が非常にコンパクトで、前線の選手も戻ってがんばっていました。バルセロナでも攻め崩すことは難しかったと思いますし、その修正が遅くなった分だけ、反撃に出る時間も少なくなったと思います。
それに終盤ですが、連戦の疲れもあったのか、何が何でも勝ってやるという気迫の部分が足りていなかったと感じました。その原因の一端には、クリスティアーノ・ロナウドの勝ち越しゴールで、スタジアム全体にお客さんの落胆が表れてしまったこともあると思います。声援は本当にチームの力に影響しますし、スタジアムの雰囲気で相手が受けるプレッシャーも変わるものです。バルセロナ同点の3分後に、R・マドリードの2点目が入ってしまったことは誤算でしたね。

―― 両チームの戦いを見て、どのようなことを感じましたか?
お互いのチームの意地を見ることができました。それに加えて主力選手の年齢面で、今のバルセロナのサイクルが終わるような印象を受けました。まだ若い選手にとってクラシコ1試合戦うことは荷が重かったと思います。例えばテージョも、この試合以外のレベルであればもう少し活躍できたはずです。テージョは早めにセスクに替える選択肢もあったのに、あえて選手交代をしなかった意図は、グアルディオラ監督本人でないとわからないですね。
何を考えていたのかわからないと言えば、スリーバックで臨んだこともそうです。“今年のスタートからやってきたシステムでR・マドリードを上回るんだ”という気概を見ることはできました。しかし、うまく機能したかと言えば、そうではないと思います。ダニエウ・アウヴェスを例にとれば、彼には後ろから前線へと上がっていく良さがありますが、今日の試合ではそれを見ることができませんでした。誤算とまでは言いませんが、試合の入り方が良くなかった原因の1つだと思います。
―― 一方、R・マドリードの戦いぶりはいかがでしたか?また、選手目線から見て、モウリーニョ監督がどのチームでも成功を収めている理由とはなんでしょう?
今までのR・マドリードは、個々の能力が高くてそれぞれにがんばるけれど、チームとしてはリンクしていないシーンが見受けられました。しかし今はチームのプレーにまとまりが出ていますし、プレーの幅も広くなっていると感じます。モウリーニョには直接指導を受けた経験はないので確かなことは言えませんが、采配や指示で選手を納得させ、それによってリスペクトを集める素質を持っていると思います。
加えて、彼は短期のスパンで考えず、長期的なタームで考えながら選手との信頼関係を築き、モチベーションを起こさせ、計算しながらチーム作りをしていると感じます。そして何よりも、結果を出すためのサッカーを、理想のサッカーに向けて少しずつ変化をさせていく部分で、絶妙なバランスを取れる監督だと思います。
―― 現実と理想というテーマに関して、両指揮官に対する見解を聞かせてください
今年、R・マドリードはドルトムントからシャヒンを獲得しましたよね。ケガもありましたが、実際には彼を起用しない状況となっています。ポゼッションを高めたサッカーを理想とする考えが見てとれる一方で、現在、最も良いバランスで試合運びができているのも事実です。理想のサッカーがあって、そこに近づけていこうとしますが、それでも現実をしっかりと見ながら、サッカーをうまく組み立てている。
それに対してグアルディオラは理想へのこだわりを強く感じますし、スリーバックは彼の理想の形なのだと思います。3‐4‐3のフォーメーションで、R・マドリードを上回りたいという思いがあったのでしょう。理想を追い求められることは強みでもありますし、選手もファンも、その姿勢に魅せられてきた部分もあります。しかし今回は、理想を追うがゆえに、入り方を間違えていたと思います。

―― 本日の試合を観ても、UEFA EURO 2012TMではスペインとドイツに注目が集まりそうですね。前回ドイツのお話をお聞きしたので、スペインについて見解を教えてください
スペインは前回2008年のユーロ、そして南アフリカのワールドカップと大きな大会で優勝しており、チームとしての自信を持っています。それが最後まで続くかが、鍵ですね。今日のクラシコを観ていると、ビジャがケガをしていて試合に出られないのは、バルセロナにとって大きなマイナスだったと思いますし、それがスペイン代表にもあてはまると思います。それにフェルナンド・トーレスがドログバにポジションを奪われていて、このままプレーする機会が少ないままユーロに入ると、難しいところがあるでしょう。
スペインと同じグループに入った対戦相手では、イタリアはセンターバックはいいですが、サイドに不安があり、スペイン相手に守っても守り切れないと思います。アイルランドはトラパットーニ監督なので、個人的にどんなサッカーをやるのか楽しみです。ザルツブルグで1年間、一緒にやっていたので。クロアチアはビリッチ監督のサイクルがそろそろ終わるのかなと思っていますが、ビリッチ監督のチームマネージメントが面白いので注目しています。
―― バルセロナがサイクルの終焉を迎えつつあると仰いましたが、それはスペイン代表にも当てはまりますか?
代表にはバルセロナの選手が多いですし、関係してくると思います。シャビやプジョルも年齢が高くなっていますし、それに比べると、ドイツの方がこれからという、若くて伸びしろを残す選手がたくさんいると思います。
―― 宮本さんの優勝候補はドイツとスペイン、過去にユーロを連覇した国はありませんが、決勝は前回の再現となるでしょうか?
連覇の例がないのは、ヨーロッパで4年間頂点をキープする難しさの表れだと思います。2008年と同じように、スペイン対ドイツの決勝になれば楽しみです。

1977年2月7日生まれ 大阪府出身 同志社大学経済学部卒ガンバ大阪ユースから1995年にトップデビュー。
2000年に日本代表初選出を果たすと、2002年FIFAワールドカップではbest16進出、2006年FIFAワールドカップではキャプテンを務めた。2007年にはオーストリアのザルツブルクへ移籍。UEFAチャンピオンズリーグ予備予選にも3試合出場している。2011年12月、惜しまれつつ34歳でピッチを後にした。
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