あのPKは、レアル・マドリードを優勝させない陰謀? ハンドの基準の真実【リーガコラム】

  • 2021/05/12

あのPKは、レアル・マドリードを優勝させない陰謀? ハンドの基準の真実【リーガコラム】

第35節が終わった。
冷たい目で見ると、アトレティコ・マドリードもレアル・マドリードもバルセロナもセビージャも勝ち点3に値するような内容ではなかった。よって、バルセロナ対アトレティコ・マドリードの0-0、レアル・マドリード対セビージャの2-2の2つの引き分けは妥当だった。順位も勝ち点差も変わらないまま残り試合が1つ減って、首位のアトレティコ・マドリードが優勝に向かって一歩前進した、となる。

が、これが当地スペインでは違うのだ。そんな悠長なことは言っていられない。 “あのPKのせいでレアル・マドリードがリーグ優勝を失った!”と血相を変える者が一定数いて、それに反論する者もいるから、一夜明けても大騒ぎが続いている。

怒りを煽る“ジャーナリスト兼ファン”

メディアやジャーナリストは本来中立であるべきだが、サッカーに関しては違う。 特定のクラブのファンを自認する記者やコメンテーターがいて、身贔屓に満ちた、偏見に凝り固まった主張をして一定の人気を博している。彼らは敵チームのファンからは毛嫌いされるが、味方のファンからは絶対的に支持される、いわば熱狂的ファンの代弁者である。今回怒っているのはレアル・マドリードファン(の記者やコメンテーター)だが、次回はバルセロナやアトレティコ・マドリードのそれかもしれない。ファン(の記者やコメンテーター)同士の、上品に言えば「議論」、下品に言えば「怒鳴り合い」が試合後のエンターテイメントとして成立しているのだ。

スペインのサッカーには真似した方がいいものもたくさんあるが、この“贔屓の引き倒し合戦”は見習うべきではない、と思っている。というのも、ファンをミスリードしてしまいかねないからだ。
例えば、“あのPKのせいで優勝できない”なんて物言いである。特定の一つのプレーやジャッジに、90分間×38試合におよぶシーズンの結果が集約される、凝縮されるなんてことはあり得ない。もしレアル・マドリードが優勝を逃すとすれば、それはやっぱりホームでアラベスとカディスに敗れたせいだろう。

ミスリードの際たるものが、陰謀論である。
レアル・マドリードの成功を阻む陰謀がある、と本気で信じている人が一定数いる。チェルシー対レアル・マドリードの前には、“スーパーリーグ構想に怒るUEFAによってレアル・マドリードに不利なジャッジをなされるだろう”という荒唐無稽な噂がまことしやかに流されていた。そんなわけがない! そんなことをしたらUEFAが求めるスポーツとしての公正さが台無しじゃないか!という常識をよそに……。
以上、ここからは肝心のPKジャッジを分析してみたい。

ジダンもクーマンもルールを知らない?

問題のシーンは、レアル・マドリード対セビージャの78分に起きた。セビージャのCKからレアル・マドリードのカウンター。独走するベンゼマがGKに倒された。明らかなPK。決定的なゴールチャンスを意図的なファウルで防いだ、ということでGKへのレッドカードも間違いないシーンだった。
が、VARが介入。その前のレアル・マドリード陣内でハンドらしきアクションがあったのが理由だった。
映像を見ると、エデル・ミリトンの振り上げた腕にボールが当たっている。これがハンドと判定されセビージャにPKが与えられ、レアル・マドリードへのPKは取り消された。数十秒の間にPKのジャッジが両チームを行き来したと言う点ではドラマチックだったが、この判定は今季のハンドのお手本のような、疑問を挟む余地のないものだった。
にもかかわらず、ジネディーヌ・ジダン監督もロナルド・クーマン監督も「ハンドか否かもう判断できない」と嘆いていたから、おさらいしておきたい。

今季の笛の基準では、手でボールを触る意図がなくても、「不自然な場所にある手や腕にボールを当たっただけ」でハンドとされている。よって、ミリトンが背中を向けていた、ボールに触るつもりはなかった、という反論は成立しない。さらに、「不自然な場所にある」とする目安の一つとして「肩のラインより上がっている」ことがある。ミリトンの腕は肩よりも上にあった。よって、不自然な場所にあったからハンドの笛が吹かれた——これ以上でもこれ以下でもない。

広過ぎるハンドの解釈。来季は改正も

こんなルールはおかしい、という批判はあってもいい。私も来季は見直すべきだと思う。
前にも書いたが(コラム「繊細化でデリケート化するサッカーをあなたは愛せるか?」)、ハンドがとられ過ぎていて、ボールが手に当たっただけなのに失点相当のPKとなって勝敗が決まる、という現状には不公平感がある。とはいえその一方で、ボールを手で扱う意図があった時にのみ罰していた以前のルールに戻すのも、わざと腕を広げてシュートを防ぐ行為を罰せなくなるので、やはり不公平だろう。誰もが納得できるハンドの基準についての議論は、今後も続けていくしかない。
しかし、今回のジャッジがミスだとか、正しくルールを適用しなかった、という意見は的外れだ。

PKで得をしたセビージャ、レアル・マドリードの引き分けで首位を守ったアトレティコ・マドリードの関係者の意見は、「疑いなくハンド」ということで一致している。彼らの方がルールに通じている……わけではもちろんない。逆の立場であればブーイング一色だったろうし、陰謀論も飛び交っていたに違いない。

エイバルへのPKは神のご褒美

ヘタフェ対エイバルのハンドの方は、文句のつけようがないものだった。
犯したマクシモヴィッチは本能的にだろうが、肘でボールを弾き出そうとした。故意は間違いなく、PKも疑いがない。これをレシオが決めて、エイバルが今季初の連勝。残留ラインまで2ポイントまで迫った。最下位のチームが勝ってエルチェもウエスカもバジャドリードも敗れて残留争いも予断を許さなくなった。
ヘタフェ監督ホセ・ボルダラスの引き分け狙いもわからないではない。勝ち点1でエイバルを実質的に降格させ、残り2つの降格枠のライバルとの差を5ポイントに広げる、という計算は間違っていない。だが今回は、生き残るためには勝つしかないのに点が取れそうもなかったエイバルに、サッカーの神がプレゼントを与えた。

今シーズンも残り3節。ファンにはストレスが溜まる展開だが、幸い中立の私はどっちが勝っても負けても楽しめる。ドキドキしながらも冷静に見守っていきたいと思う。

photo by Getty Images
text by 木村浩嗣


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