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残留争い、乾と久保、2本のPK、優勝争い……。第28節に見えたこと【リーガコラム】

  • 2021/03/29

残留争い、乾と久保、2本のPK、優勝争い……。第28節に見えたこと【リーガコラム】

text by 木村浩嗣

ラ・リーガは第28節を終えて残り10試合、30ポイント。前回、優勝争いについて書いたので、今回は残留争いから始めたい。
まず残留を争うチームは、17位エルチェ(25ポイント)、18位エイバル(23ポイント)、19位アラベス(23ポイント)、20位ウエスカ(21ポイント)に絞られた。1つの枠を4チームで争う形だ。

はっきり言って、この4チームの戦力は飛び抜けて薄い。
例えば、エルチェとの差はわずか2ポイントだが、セビージャ相手に勝利寸前までいった16位バジャドリードは降格するような戦力ではない。ロケ・メサ、アルカラス、オスカル・プラーノ、オレジャナの中盤はリーガでも有数だ。クリアで蹴り出すことをためらい、後半アディショナルタイムにGKにゴールを決められる、という悲劇がなければ、残留争いはもっと明確に4チームに絞られていたはず(逆に勝ち点1を拾ったセビージャは、5位レアル・ソシエダとの差を10ポイント差に広げてCL出場権を手中にした、と言っていい)。
15位カディスは降格圏のエイバルに6差を付けており、残り10試合でこれが逆転するのは難しいとみる。

乾が加わるしかエイバル残留の目はない

4チームが飛び抜けて悪いため、通常40ポイントが目安の残留ラインは、今季は下がるだろう。
試合前、「アスレティックには引き分けでも良い」という、全試合に必勝を期すべきチームの監督としては驚くべき発言をしたエイバルのホセ・ルイス・メンディリバル監督は、もう1カ月以上前から「4勝すれば残留」と言い続けている。ここから4勝しても35ポイントにしかならない。多分、残留ポイントを37前後と読んでいるだろう。

監督の思惑通り、アスレティックに引き分けたエイバルだが、ここは得点源キケ・ガルシアと代表初招集を果たしたドリブラー、ブライアン・ヒルに加えてもう1人出て来ないと、苦しい。その1人は乾貴士しかいない。トラップすらまともにできない散々の出来だった先々週に比べ、先週末の乾は見違えるようだった。圧力に押されたチームメイトからの中途半端の高さの強いパスをピタッと足下に収めて、サイドで陣地を回復しファウルをもらって時間を使うという、求められたプレーが完璧にできていた。
守備力では4チーム中で最低なので、左にブライアン、右に乾でキケにボールを供給し続ける形しか、エイバル残留の目は見えない。

勝ち点1が貴重。なら保守的な戦法が有利

エルチェはヘタフェと引き分け、アラベスはアトレティコ・マドリードに敗れた。
降格候補の中でもエルチェとアラベスは、エイバルとウエスカに比べて勝ち点1を狙って取る渋い戦い方ができる。5人、6人で守ってロングボールで時々カウンターをしセットプレーで得点を狙う、という弱小を自覚したものだ。
この点、最終ラインを極限まで上げるエイバル、後ろから繋いで攻撃を組み立てるウエスカとは違う。この「大胆さ」はエイバルとウエスカの魅力だが、降格回避という意味では「渋さ」の方が有利ではないか。

ウエスカはオサスナ相手に優勢に進めながらまたもや勝ち点3を取れなかった。4弱の中では最も攻撃力がありタレントもいる。が、「内容は良い」と言われ続けて、第10節に最下位に落ちてから一度も上がれないまま残り10試合にまで来てしまった事実も、また重い。
面白いサッカーをしており、その志の高さと心中する形で降格するチームが出るのもリーガゆえ。ロマンよりも残留が大事なのは当事者にとっては当たり前だが、ファンとしては温かく最後を見守りたいと思う。

ボルダラスを激怒させたPK時の作法

エルチェはPKを決められていればヘタフェに敗れ、アラベスはPKを決めていればアトレティコ・マドリードと引き分けていた。
来季はルール改正のはずでおそらく今季が最後だろう、VARで見ないと判別不能の怪しげなハンド——手でプレーする意志がなく手にかすかにボールが触れた——でPKというのは、エルチェには明らかに可哀想だった。
試合開始早々、久保建英が背中を押されて倒されたプレーの方がよっぽどPKらしかった。なぜ笛が吹かれなかったのか不思議である。

ともかく、このPKはアンヘルが外した。
“不公平なPKはサッカーの神が外させて公平さを回復する”なんて個人的には思っている。本来は5本蹴って成功率100%のウナルが蹴るはずだった。ホセ・ボルダラス監督が、交代されて下がるエネス・ウナルに激怒していたのはキッカーを譲ったからだ。
これ、ボルダラスの怒りはよくわかる。
アンヘルが決めていても怒っていたはずだ。何事も譲り合いは美しいが、PKの譲り合いはプロに限っては美しくない。勝利のために最善を尽くすためにキッカーをあらかじめ決めておく。それがプロ。キッカーの選択に気紛れや友情が介入するのはアマである。

久保の最適ポジションとチームの最適布陣

ヘタフェの1点はもうご存知の通り、久保のアシストによるものだ。
1対1でDFと向き合い加速。抜き切らないうちの速いセンタリングなら、普通はゴールライン、ギリギリに飛んで来る。よって、エルチェのDFはスライディングしてコースを切りに行った。が、ここが久保の素晴らしいところで、余裕を持って抜いて相手DFを飛ばしてから後方へ強く短くボールを叩いた。DF2枚の背中越しに滑り込むようなセンタリングがエネス・ウナルへ届いた。
あのセンタリングのコース選びとボールの質は、久保の才能の賜物だ。

が、この「個」としての素晴らしさに、このシーンでの「チーム」としての素晴らしさも付け加えておきたい。
あのゴールは、アレニャーがハイボールを反転しながら胸で落してそのままパスを出し、受けたククレーリャが下がって来たエネス・ウナルへ速いパスを送り込み、彼の落しを拾ったアンヘルがサイドの久保へ展開——という一連の好プレーの集大成として生まれたものだった。
アレニャーとアランバリの2ボランチ、左サイドがククレーリャ、右が久保、アンヘルとウナルの2トップの[4-4-2]だったからこその連係である。この並び、この顔ぶれ(2トップの一角はウナルよりもハイメ・マタの方がベター)がヘタフェの最強布陣だと思うがどうか。
ボルダラスは、マクシモヴィッチ、ニョムが抜けると守備の強度が下がると心配しているのかもしれないが、それを補って余りあるほど攻撃の強度が上がる、と思うのだが。

久保個人のポジションとしては、[4-2-3-1]の右またはトップ下として、アレニャーとポジションを入れ替える形でプレーしたが、「右アレニャーでトップ下久保」という形の方が、その逆よりもチームにとってプラスが大きかった、と思う。久保はトップ下ならさほどポジションを下げなくて良いし、サイドを上下動させるなら馬力のあるアレニャーの方が向いている。

天井が見えないバルセロナの強さ

話をアトレティコ・マドリード対アラベスのPKの方へ戻す。
サヴィッチが肘打ちをして犯したPKは正当なものだった。GKへのバックパスの機会があったのに、それをしなかったサヴィッチの明らかな、そして痛恨のミスである。
時間は87分、スコアはアトレティコが1-0でリード。決められて引き分ければ、この後勝利した2位バルセロナに2ポイント差に迫られていた。4差ならこちらが敗れて向こうが勝ってもまだ1差あり、逆のことが起これば7差とたちまち逆転不能の差となる。
このオブラクのPKストップは、アトレティコが優勝すれば間違いなくハイライトとして振り返られるだろう。
それにしても、最後の15分間でどうしてディエゴ・シメオネ監督はいつもポジションを下げてしまうのか? 保守的と言えばその通りだが、このところずっと相手の攻撃を招待する形になっていて効果が出ていない。

レアル・マドリードは完全に昨季の逆転優勝時の形に戻った。
右サイドに4人目のMFバルベルデを入れて中へ動かし守備を負担させ、右インサイドMFモドリッチを外に張り出させて守備を軽減、ゴールに直結する仕事をさせる。左SBマンディにセカンドトップの位置まで上がる自由を与える代わりに、右SBルカス・バスケスに上がりを自重させる、などなど。爆発力はないが堅守。ただ、3位で首位と6差からの逆転を目指すには、やや物足りないが。
レアル・ソシエダを1-6で蹴散らしたバルセロナは、文句なく今が今季最強。メッシ、デンベレ、デ・ヨング、デスト、ジョルディ・アルバ、セルヒオ・ブスケツの個としての充実度も今が最高。で、次の試合ではさらに上のレベルを見せてくれるかもしれない。
4月10日開催に決まった、挑戦者決定戦になるはずのレアル・マドリード対バルセロナがただただ楽しみだ。

photo by Getty Images
text by 木村浩嗣

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