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【木村浩嗣コラム】「我われはペテン師集団」。エイバル監督が指摘するリーガの変化の必要性

  • 2021/02/25

【木村浩嗣コラム】「我われはペテン師集団」。エイバル監督が指摘するリーガの変化の必要性

text by 木村浩嗣

「我われはペテン師集団だ」
こういうことをズバッと言うからメンディリバル監督は好きなんだ。

20日のエルチェ戦に敗れたエイバルの監督の言葉が今、話題になっている。
「ちょっとコンタクトがあっただけなのに殺されたみたいだ」
「主審にはペナルティエリア内でダイブをするなと注意された」
ペテンとはつまりダイブのこと。大袈裟に倒れてファウルをもらおうとする自らの選手に、“そんな姑息なことをするな! 倒れず戦い続けろ!”と檄を飛ばしたかったというのが真意だろう。
ホセ・ルイス・メンディリバルはペテンが大嫌いだ。
なにせ、選手が倒れてもプレーを止めない、と宣言しているのだから。

フェアプレーが助長しかねないペテン

接触プレーで誰かが倒れる。普通、こんな時はボールを外に出してプレーを止める。
プレーを続行すると、倒れた選手の味方から“プレーを止めろ!”と血相を変えてアピールされ、険悪な雰囲気になる。プレーを中断することがフェアプレーで、中断しないと相手のケガに乗じる卑怯なチームだと見なされるのだ。
だが、メンディリバルはそれがフェアプレーだろうか、と疑問を抱いている。
サッカーはコンタクトのスポーツだから倒れた度に止めていたらきりがない。それに、カウンターを防ぐために倒れてプレーを切る、というフェアプレー精神を逆手に取った卑劣なペテンである可能性も否定できない。

誰かが倒れたらボールを外に出す、というルールは無い。あくまで慣習であり紳士協定である。ケガの可能性ありと判断してプレーを止めるのは、選手ではなく審判の仕事である。
だから、メンディリバルは誰かが倒れてもエイバルはプレーを止めないことを試合前に相手チームに伝える。エイバルの選手が倒れても止めてくれるな、と付け加えて。
私も少年チームの監督時代には「誰かが倒れたらプレーを切れ」と指導していた。少年サッカーではペテンは無いから止めるのが正解だが、プロレベルではメンディリバルのやり方の方がメリットが大きいと思う。治療が必要なら、いつでも審判が止められるのだから。

コンタクトにはるかに寛容な「欧州の笛」

だが、このペテン師発言はエイバル内部に止まらず、リーガ全体に問題提起をすることになった。
それはその前の週に起こったことと関係がある。UEFAチャンピオンズリーグでバルセロナとセビージャが連敗すると、こんな声が上がった。
「リーガ勢はフィジカルで欧州から遅れを取っている」
審判のジャッジの基準が欧州とスペインでは違う、というのは常識だ。
欧州では少々のコンタクトプレーは流されるが、スペインではいちいちファウルになる。それによってプレーの流れが止まり、試合のリズムが下がる。その低いインテンシティに慣れているスペインのチームは、欧州の一流どころの速いテンポのサッカーについて行けなくなっている、という論である。

もともとスペイン人は体格でドイツ人やイギリス人、フランス人、北欧勢に劣っているから、ショートパスを繋ぐスローテンポのテクニカルなサッカーで対抗し世界と欧州の頂点にまで登り詰めたのだが、ここ数年スペイン代表もバルセロナも勝てなくなった。それによって、この古くて新しい“フィジカル劣勢説”が蘇ってきたのだ。
私は、いずれまたスペイン風のテクニカルなサッカーが席巻する時代がやって来ると思っているが、リーガがフィジカルコンタクトに厳し過ぎる、というのはその通りで、それがマイナスに働いている、というのも正しいと思う。
カニサレスやジェラールら現在リーガを解説する元選手たちも同意見だ。
「メンディリバルの言うことは正しい。サッカーなんだからコンタクトがあって当然。笛が繊細だから大袈裟に倒れてファウルをもらおう、という者が出て来る」(カニサレス)。

ジャッジの基準を変え繊細化に歯止めを!

特に問題となっているのが、手や腕が顔や首に当たった時の処理。これ、今季は一律でファウルになっている。
厳しく罰して危険な頭部を守ろう、という狙いなのだが、これを逆手に取って、手の平がちょっと触れただけでもんどり打って倒れる行為が続出している。ファウルをもらうだけでなく、あわよくばイエローカードを出させようという魂胆だ。
腕を広げ体を入れて背後の敵からボールを守ろうとするのは、サッカーの基本動作の一つなのだが、その腕が前傾した相手の顔に当たればファウルで、彼の痛がる演技がうまければイエローをもらってしまう。
以前の記事にも書いたが、どんどん繊細になりデリケートになっているサッカーに歯止めをかける必要があるのではないか。
PKかどうかを判断するために何度もスロー再生し、手にボールが触れたかどうかを見極めるのは、本当にスポーツだろうか? ハンドというのは、手を使ってプレーするという明確な違反を指すものだったはずだ。少々顔に手が当たったくらいで、足が交錯したくらいで、七転八倒する力学的に不自然な行為は、呼び名は同じ“プレー”でもサッカー選手ではなく演技者としてのそれだ。

スペクタクル向上のためにも、競争力を上げるためにも来季は笛を吹く基準を変えてほしい。コンタクトプレーをどんどん流すようになれば、倒れた者たちは素早く起き上がるようになるし、そもそも倒れなくなる。即効性がありすぐにできる。

関連記事:繊細化でデリケート化するサッカーをあなたは愛せるか?

photo by getty images
text by 木村浩嗣

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