【木村浩嗣コラム】レアル・ソシエダ、コロナ禍にも耐えうる成功モデル

  • 2020/11/06

【木村浩嗣コラム】レアル・ソシエダ、コロナ禍にも耐えうる成功モデル

text by 木村浩嗣

第8節を終えてレアル・ソシエダが首位に立っている。2位レアル・マドリードの消化試合が1つ少ない、という事情はあるが、18得点4失点というのはリーガをリードするのに相応しい数字だ。

とはいえ、ソシエダが優勝できるか?なんて話をしたいのではない。シーズンは長い。浮き沈みは必ずある。ソシエダだって昨季のリーグ中断からの再開後に低迷した経験がある。

そうではなく、クラブとしての成功を祝福したいのだ。シーズンによってチームの順位は上がったり下がったりするだろうが、クラブとしての繁栄は約束されているように思える。

カンテラ中心の若いチームが首位に

第8節セルタ戦(1-4)に出場した16人のうち11人がカンテラ(下部組織)出身者だった。こんなチームはアスレティック・ビルバオ以外にはない。アスレティックはバスク出身・育成者だけでチームを作るという極端なポリシーで苦しんでいるが、ソシエダは戦術的な要所をカンテラ出身者で固め、足りない部分を外部補強に頼る、というやり方で、競争力アップに成功している。タレント(特に攻撃タレント)の育成は難しい。よって、そこはウィリアン・ジョゼ、イーサック、シルバ、ポルトゥ、ヤヌザイらの力を借りる。

あの11人の平均年齢はなんと22歳だった。彼らの成長によってチームのベースが固まっていくはずだ。特にチームを動かすMFに人材が尽きないことが、今の魅力的なスタイル——後ろから繋ぎ、パスで崩し、プレスでボールを奪い、ポゼッションすなわち攻撃の時間を長くする——の継続を約束している。

ソシエダのMFと言えば、レアル・マドリードでもプレー経験があるイジャラメンディ(30歳)なのだが、昨季彼が再びケガで離脱すると、その間にゲバーラ(23歳)、スベルディア(23歳)が次々と現れ、今は最後にデビューしたスビメンディ(21歳)がレギュラーとなった。いずれも、ボール出しとボールキープ、サイドチェンジのエキスパートで、プレーを作る心臓部に当たるセントラルMFである。

その以外のポジションでも、インサイドMFではグリディ(25歳)、DFでは右SBゴロサベル(24歳)と左SBアイエン・ムニョス(23歳)、FWではバレネチェア(18歳)が台頭。彼らをカンテラ出身のリーガ最年少キャプテンで代表の常連オヤルサバル(23歳)が率いている。

財政破たんで方向転換、好循環に

もっとも、ソシエダがカンテラを重視するようになったのは最近のことだ。

2000年代の初めまでは外国人の大量補強に頼る“バブルクラブ”の一つに過ぎなかった。オールドファンならコヴァチェヴィッチやニハトの名を覚えている人もいるだろう。成功した彼らの陰には大量の失敗補強があり、それが財政を圧迫。07年に2部転落し08年には会社更生法の適用を受けた。補強費が底を突きカンテラしか頼るものがなかった。
つまり、育成重視は窮余の策だったわけだが、これが奏功した。

2部での最後のシーズン、09-10にBチームからグリーズマン(現バルセロナ)が昇格したのを皮切りに、10-11にはイジャラメンディ、11-12にはイニゴ・マルティネス(現アスレティック)、15-16にはオヤルサバルとアリッツ・エルストンド、16-17にはオドリオソラ(現レアル・マドリード)と続々と実力者を輩出。17-18にはスベルディア、18-19にはゴロサベル、19-20にはアイエン・ムニョス、ゲバーラ、ル・ノルマン、バレネチェア、そして今季はスビメンディが上がって来て現チームを肉付けしていった。

とはいえ、昇格しただけでは若手は育たない。監督に彼らを使う度胸があるかどうか?
例えばバルセロナは優秀なカンテラを持ちながらリキ・プッチやアレニャーはベンチを温めるだけになっている。クーマン監督にとってはタイトル獲得が最優先で、リスクを負ってカンテラ出身者を使う理由がない。この点、ソシエダの場合は残留が目標でハードルが低く、しかも監督もBチーム出身のイマノル・アルグアシルだからカンテラへの愛情の濃さが違う。

仲間や先輩がトップで次々と活躍する姿を見て、Bチーム以下に所属する青少年たちのモラルも上がっているだろう。トップ入りが夢でないからこそ頑張れるし、頑張るからこそ成長できるし、個が成長するからこそチーム力が上がる——そういう好循環、ポジティブなダイナミズムがチームとクラブに生まれているように見える。

コロナ禍でも黒字。地元ライバルをしのぐ

カンテラ出身者の貢献はグラウンド内だけではない。彼らの活躍によってクラブの財政は劇的に好転した。
育成費は補強費に比べれば微々たるもの。売りに出せばほぼ全額が利益になる。09-10以来の選手の売買による収支は1億ユーロ近い黒字になっている。

13年には会社更生法から抜け出すことに成功し、18年には滞納額2000万ユーロに達していた税金をすべて払い終えた。昨年9月には陸上競技との兼用スタジアムが4万人収容のモダンな専用スタジアムとしてオープン。コロナ禍によって無観客になる不幸はあったが、それでも19-20の決算は300万ユーロの黒字と、地元のライバル、ビルバオが2000万ユーロの赤字を出したのと対照的な結果となった。

無観客による売上減は20%から30%に及ぶが、他クラブなら財政を圧迫する選手の年俸が、カンテラ出身でしかも若手中心ゆえに低く抑えられているため、悪影響は最小限になる見込み。今季の予算は昨季並みの1億1000万ユーロを維持し、ダウンしたアスレティックのそれを史上初めて上回りそうだ。

スペインでは2度目の非常事態宣言が出され、今季中にスタジアムへ観客が戻って来る可能性はさらに低くなった。
そんな中でも、レアル・ソシエダの快進撃は止まりそうにない。

photo by getty images
text by 木村浩嗣

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