【木村浩嗣コラム】繊細化でデリケート化するサッカーをあなたは愛せるか?

  • 2020/10/23

【木村浩嗣コラム】繊細化でデリケート化するサッカーをあなたは愛せるか?

text by 木村浩嗣

みなさんは最近の試合を見ていて何か感じないだろうか。

プレーがよく止まる? その通り。
給水タイムが設けられ、交代枠が3人から5人になり、VARが導入されて、試合はしょっちゅう止まるようになった。その結果、以前長くて4分ほどだったアディショナルタイムが、今は前半で3分とか後半で6分とか取られるようになった。

とはいえ、給水タイムは熱中症予防、5人交代制はコロナ禍による特別措置で、選手の健康が第一であるから受け入れるしかない。頻繁なVARの介入の方は、公正なジャッジのために仕方がないと、と諦めるしかないのだろう。

微に入り細に入るハンドの判定

サッカーはどんどん繊細になっている。
昔は少々腕が首に入ろうと顔に当たろうとただのファウルで済んでいた。「それがサッカーだ(=フィジカルコンタクトがあって当然だ)」で済んでいた。が、今や最低でもイエローが出る。選手もそれがわかっているから、もの凄く大袈裟に倒れる。

振り上げた腕にボールが当たっても、前は「ジャンプした反動だから」とか「顔を守ろうと本能的に上げた手だから」の理由でファウルではなかった。が、今は「肩よりも上の位置にあるから」ファウルになる。

CKでハイボールを競ろうとジャンプしたDFの腕や手にボールが当たってPK、というのは毎週のように起こっている。

例えばバジャドリード対エイバルでのエイバルの先制点はこのパターンで生まれたものだった。バジャドリードのDFエル・ヤミクがジャンプしボレーでクリアしようとして体勢を崩し、バランスを取ろうと振り上げた手にボールが「当たった」。手でボールを扱おうとしたのではないから故意でなく、手を上げたのもバランスを取ろうとしてだから意図的ではない。

だが、この故意でも意図的でもないアクションがPKという失点相当の罰を受ける。
今はそういう時代である。

見えないアクションが裁かれる時代

この時も両手を広げてハンドをアピールしたのは武藤だけだったが、なぜプレーが止まっているのか、どのアクションで審判が耳に手を当てVARからのアドバイスを仰いでいるのかわからないことも増えた。

ベティス対レアル・マドリードの81分にプレーが止まった時もテージョとカルバハルの接触プレーの判定に関することかと思ったら、問題はその数十秒前のバルトラのプレーだった。スローモーションで見ると、マジョラルに背中を押される格好で倒れたバルトラの二の腕にボールが当たっている。ハンドでPK。これをセルヒオ・ラモスが決めてレアル・マドリードが決勝点を挙げた。

この時マジョラルを含めレアル・マドリードの選手でハンドをアピールした者は皆無だった。誰も見ていない、誰にも見えていないプレーだったのだ。

だがVARは見ていた。
VARは肉眼では認識不可能な、スローモーションや多角度のカメラでないと捉えられないアクションをチェックしている。

その最たるものが、オフサイドのチェックだろう。肉眼ならストップモーションでも区別がつかない数センチの差を見極めて、オンとオフの区別を付けている。
素晴らしく公正なジャッジである。が、テクノロジーに人間が置いて行かれている感が否めず、ちょっと悲しい。

今季から腕と肩の区別が正式決定

今と昔のサッカーを象徴するルール変更が今季あった。
それは体の部位のどこまでがハンドでどこからがハンドではないかが、正式に規定されたのである。今までは“二の腕はハンドで肩はハンドではない”などと常識に応じて判断していたのだが、これではテクノロジーの時代にあまりに曖昧、ということで「腕は脇の下の範囲の一番奥の場所まで」という統一基準ができた。噛み砕いていうと、脇の下から平行線を引いた交差点から上が肩、下が腕となる(日本サッカー協会のホームページに、今回のルール変更について大変わかり易い図解やビデオがあるので参考に)。

オフサイドの判定にはボールをプレーできる体の部位が使われる。よって、数センチ単位でチェックするなら、どこからが肩なのかを正確に定義する必要があった。
逆に言えば、今までは“そこは腕だろう”とかいい加減に判断されていたわけで、何やら牧歌的で愉快である。

もちろん、このルール改正で問題が解決するわけではない。次は、ボールの3分の2が脇の下のラインより下に当たったとか当たらなかったかとかが議論になるのだろう。ボールが当たった瞬間の画像が拡大されて、球体の接地部分が腕なのか肩なのかが数学的に解析されるようになる——。

テクノロジーの発達=公正さのあくなき追求は、サッカーを繊細で微妙でセンシティブなものにする。いつか“ボールを蹴り合うなんて野蛮なことやってられるか”なんて思ったりして。

photo by getty images
text by 木村浩嗣

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