【木村浩嗣コラム】2部総括と、全試合見るべき!逆転連発のプレーオフ、今季の一味違う見どころ

  • 2020/08/12

【木村浩嗣コラム】2部総括と、全試合見るべき!逆転連発のプレーオフ、今季の一味違う見どころ

text by 木村浩嗣

8月7日、2部リーグがやっと全試合終了した。フエンラブラーダの集団感染によって予定より18日遅れ。開幕から実に1年近い、長い長いシーズンだった。

プレーオフ出場圏の6位から降格圏の19位までわずか10ポイント差(ちなみに1部は20ポイント差)。最終節まで、優勝争い、プレーオフ出場権争い、残留争いに関わったチームは13チームで、消化試合になったのは11試合中1試合だけと、「激戦の2部」に相応しい終わり方だった。

2部らしいカディス、野心でウエスカ

優勝したウエスカは、2部では野心的なポゼッションスタイル+可変性の高さ(ロングボールを前線へ送り込むオプション有、MFのFW化有)で昇格に値するチームだった。それを機能させるのに岡崎慎司の“ベンゼマ的”な活躍は決定的だった。

カディスは最後にアクセルを緩めたものの、第8節から第41節まで首位に立ち最も安定していた。プレースタイルは残留目標のチームがサプライズを起こす際に典型的なもの:堅守速攻。昨季のグラナダを彷彿とさせる好チームだった。

昇格プレーオフに参戦するチームは後述するとして、中位勢で目を引いたのは、最終節の終了間際の微妙なPKで涙を呑んだフエンラブラーダ。2部Bからの昇格組だったのに加えて、感染の後遺症でプロ選手は7人だけ・ベンチは2人だけで、戦い抜いたのは見事だった。コパ・デル・レイで準決勝まで進んだミランデスのハイライン&ハイプレスのサッカーは、1部勢(セルタ、セビージャ、ビジャレアルを破る)にも通用した。ヘタフェ、エイバルに代表されるこのスタイルはブームとなりつつある。岡崎の最初の移籍先で財政的に苦しかったマラガは、14位で立派に残留を勝ち取った。このチームの特徴は「団結」に尽きる。リーガ最少得点35を、5バックでとにかく守り切りリーガ最少失点33でしぶとくポイントを得る。タレント流出後、給料の未払いや遅配にめげず残った選手が意地を見せてくれた。

このマラガと逆だったのが降格したデポルティーボ。元1部や1部からのレンタルがずらっと並ぶ顔ぶれの豪華さは2部でもアルメリアと並ぶほど。最初のボタンの掛け違いは、監督(アンケーラ)の目指すカウンタースタイルと選手の特徴が合わなかったことだったと思うが、新監督(フェルナンド・バスケス)になって一度は盛り返したものの最後に再び失速。結局は、チームが一つになれなかったせいかもしれない。最終節直前チーム内部の会話が何者かの手によってマスコミに流される事件があった。タレント同士の軋轢? 嫉妬? 柴崎岳は悪くなかった。目まぐるしくかわるシステム&スタイルの中で、中盤のどこで使われても求められる働きをしていた。ただ、レッドカード2枚は「らしく」なかった。雰囲気の悪さが伝染した?

プレーオフはなぜ面白いのか?

私は94-95シーズンにフアンマ・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)が率いるサラマンカが、後半ロスタイムに追い着き延長戦に突き放して逆転昇格し、町中が大騒ぎになる夜を過ごして以来のプレーオフ(当時は入れ替え戦)ファンである。

とにかくプレーオフには信じられない逆転劇が付き物だ。例えば、昨季プレーオフ決勝では第1レグのデポルティーボの2-0を第2レグでマジョルカが3-0と引っくり返して昇格を決めた。この試合を含め、現在のフォーマットになって以来9回のプレーオフ決勝で、第1レグの劣勢を第2レグで逆転した例が3度もある。

さらに、上位で参戦したからといって昇格できるとは限らない。昨季は3位マラガと4位アルバセーテが準決勝で敗退し、5位と6位の争いで5位が昇格した。過去9回の優勝者を見ると、3位が3回、4位が2回、5位が2回、6位が2回。つまり、レギュラーシーズンの順位はほぼ関係無い。1位と2位がダイレクト昇格することを考えると、3位が順当に昇格できないのは可哀想だし、コンペティション的には公正だとは言えない。

だが、そんなことはどうでも良いのだ。夢の1部昇格を、“1シーズンの計”をわずか6試合に懸け、4つのクラブのある4つの都市が大騒ぎになる、という非日常ぶりに比べれば。“完全にローカルなファン同士の、街と街の決戦”というのは、グローバル化した1部リーグでは決して見られない。

第2レグ、ホームは逆に不利か?

試合終了と同時にファンがグラウンドに流れ込む光景が付き物になっている。明らかに止めた方が良い。が、ファンと選手が肩を組んで涙を流しているのを見ると1年に1度くらいいいか、と思う。勝っても涙、負けても涙。そんな試合はファンのお行儀が良くなり、選手がビジネスライクになった最近はめったにない。要は、古き良きスペインサッカーの香りが漂っているのだ。

とはいえ、今季は新型コロナのせいで少々事情が異なる。試合中の異様な雰囲気という、逆転劇を可能にしてきたものが無くなる。アウェイの劣勢をホームで引っくり返す、というシナリオが描きにくくなる。 となると、延長戦のある第2レグがホームであることは、例年ほど有利ではないかも。逆に、アウェイゴールに2倍の価値があることを考えれば、第2レグはアウェイの方が有利ではないか? 上位のチームが第2レグでホームになる、という規定は今季はマイナスに働くかもしれない。
以上の前提で2つのカードのプレビューをしてみたい。

ジローナ(5位)対アルメリア(4位)

29ゴールの絶対的なゴールゲッター、ストゥアーニのいるジローナは、彼の力を最大限に出すよう設計されている。グラネイからのスペースへのボールに飛び出し、ポストプレーで間を作る。あるいは一気にシュートする。サイドを広く使うSBと快速ウインガーが送り込んだセンタリングに合わせる。以上はすべてストゥアーニの仕事。中盤はボールの中継点に過ぎず、ポゼッションにはこだわらない。

“2部のドリームチーム”と呼ばれるアルメリアはタレントの宝庫。リーグ最多の62得点を誇り、点取り屋のダルウィン・ヌニェス、サイドのアッピアー、トップ下のフアン・ムニョス、快速のコルパスとラソ、セントラルMFのペトロヴィッチと、中盤から前の顔ぶれは豪華そのもの。が、それを束ねる者がいない。プレーオフ直前に5人目の新監督が就任する迷走ぶりだ。

短期決戦ではゴールゲッターの当たり外れが決定的な要因になる。プレースタイルが確立しているジローナが有利で、ストゥアーニが当たれば昇格最有力候補だろう。いずれにせよ、こちらの山から昇格チームが出そうだ。

エルチェ(6位)対サラゴサ(3位)

エルチェは2年前2部Bにおり残留が目標だったが、驚きの躍進。“最も良いサッカーをしたチーム”と呼ばれる。ポゼッションへのこだわりが強く、ボールに触りながら人数を掛けて攻め上がって来る。サイドのフィデルとエスクリチェ、セカンドトップのニノも足技があり、自由にポジションを移動してコンビネーションに加わる。トップのジョナタスはゴールゲットとポストプレーに専念する。変幻自在でどこからでも点が取れるが、絶対的な得点屋が不在なのが不安だ。

サラゴサは何と言っても、日程延期による契約切れでルイス・スアレスを失ったのが痛い。19ゴール+4アシストの穴は簡単に埋められるものではない。香川、ソロ、グティ、エグアラスらMFのテクニシャンはボールが持てるしコンビでもある程度崩せるが、肝心のフィニッシュは任せっ切りだった。しかも、そのルイス・スアレスがいた時でさえ、最終節までの6試合で1分5敗とすでに機能していなかった。ビクトル・フェルナンデス監督の采配が見ものだが、ラッキーボーイ的なサプライズが出て来ない限り苦しい。

ただ、日本人としては香川の在籍するサラゴサを応援したい気持ちもあるだろう。前述した通り、何が起こるかわらからないのがプレーオフ。どこが昇格するにせよ、最後まで見ごたえたっぷりの好ゲームを期待したい。

photo by getty images
text by 木村浩嗣

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