【木村浩嗣コラム】6月13日のマジョルカ対バルセロナは、3月14日のそれとどこが違うのか?

  • 2020/06/05

text by 木村浩嗣

この試合は3月中旬に行われるはずだった。この3カ月間で世界は大きく変わった。スペインにしても非常事態宣言、2カ月間の全土封鎖や2万7000人の死亡者……を考えると、来週サッカーが帰って来るというのは信じられない。時代がそうであるようにリーガも「コロナ前」と「コロナ後」に分かれるのだろう。6月13日に行われるマジョルカ対バルセロナは3月14日に行われたはずのそれとまったく異なるはずだ。

今回は中断前と再開後で変わる要素を、この試合を例にしてプレビュー的に解説してみたい。

無声援、良い流れも断ち切られ…

第1に、マジョルカはホームアドバンテージを失う。
満員御礼だったはずのソン・モッシュ・スタジアムは空っぽ。実力的に劣るホームチームがファンの後押しでサプライズを起こすことがなくなる。「ホームだから有利」という常識が通用しないのは、すでに再開したブンデスリーガの結果——4節を終了しホームチームの8勝10分18敗——が証明している。無観客試合では実力通りの差がグラウンドに正直に現れ、順当勝ちが多くなる。よって明らかにマジョルカに不利だ。

もっとも、マジョルカが敵地を訪れる側であれば、逆に有利な材料になっていた。例えばレアル・マドリードは改装工事中のサンティアゴ・ベルナベウではなく練習グラウンドでの開催を決めている。第31節のレアル・マドリード戦では、マジョルカは8万人の威圧感という敵とは戦わずに済む。

第2に、直近の流れに左右されない試合となる。
マジョルカは中断までの5試合で2勝1分2敗、最後の試合で直接のライバル、エイバルを敵地で叩き、残留に望みを繋ぐ貴重な勝ち点3を挙げていた。この勢いで失うものの無いバルセロナ戦を迎えるはずだった。

バルセロナは3勝1分1敗(欧州カップ戦も含む)。2節前のクラシコで敗れ、最後の試合もソシエダ相手にVARで吹かれたPKで辛勝。内容も結果も明らかに下り坂だった。

が、ここで中断が入り、それ以前の勢いだの流れだのは一度ご破算になった。マジョルカにとってはやりたかった試合で、バルセロナは救われた格好だ。最近のインタビューでジョルディ・アルバが「中断した当時よりメンタル面でより良い状態臨める」と、仕切り直しの効果を認めている。

久保の上げ潮、今季絶望のL.スアレスもリセット

流れだのツキだの、というのは個人レベルでもある。入ると思って蹴ったシュートは入る。その逆は入らない。心と体の状態の波がシーズン中上がったり下がったりするものなのだ。

例えば、久保は中断前の3試合で2ゴール、1アシスト。今季一番の出来で自信を持って古巣対決を迎えていたはずなのに、ここで水入り。せっかくの上げ潮が生かせなかった。

もっとも、ビセンテ・モレーノ監督の中にも活躍のイメージが残っているだろうから、ゼロからのスタートというわけではない。メディアの練習取材が許されておらず、本人がどんな調子なのかはわからないが、ケガをしない限り先発させるのではないか。エイバル戦での成功イメージをなぞって、久保がどうやら一番輝ける3バックで、前寄り中寄りのトップ下のポジションが与えられるとしたら、理想的なのだが……。

一方のバルセロナは個人レベルでも得をした。3カ月前ならいなかったはず、本来なら今季絶望だったルイス・スアレスが復帰できたのだから。代役として獲ったブレイスウェイトが逆に余ってしまう豪華な布陣となり、中断前に苦しんだ得点不足は解消されそうだ。

今季絶望の診断後、中断のお陰で復帰できた選手としては、他にレアル・マドリードのアセンシオ、アザールがいる。無観客というサプライズの少ない舞台もそろったし、再開後は“2強の取りこぼしが多いシーズン”——優勝ラインが勝ち点80をやっと超す05-06以来の低いペースだった——という中断前のイメージが一変する可能性もある。

静寂の中、メッシの声に耳を澄ましたい

もう一つ、無観客だからこそ、マジョルカ対バルセロナで注目していることがある。それがメッシがどこまで声を出し、何と言っているか?

メッシはバルセロナの第一キャプテンである。蚊の鳴くような声で話す非常に内気な素顔を少年時代に見たことがある。あれから十数年、今はキャプテンマークを巻くようになった。

メッシのキャプテンシーには疑問がある。ロシアW杯では檄を飛ばすのはマスチェラーノだったりして批判された過去もある。ただ最近は、バルベルデ前監督解任後にも年俸引き下げ交渉後にも、選手を代表してフロントに苦言をする役を買って出るなど自覚も見られる。

この無観客というめったにない機会に、彼が何と言って仲間を鼓舞し、どんな指示を出しているのか聞いてみたい。すでにプレー面での柱であることはわかっている。後は心理面とか戦術面での柱であるかどうかを知りたいのだ。

バルセロナで一番声を出すのはピケだろうと思う。守備の要としてチーム全体を見渡せる者として第二キャプテンとして、性格的にもぴったりだ。マジョルカの方は一番声が大きいのはたぶんライージョではないか? CB、第3キャプテン、カードをもらいがちな闘争心満々の性格もリーダー向き。

実は、この点でも久保に注目している。彼はよくしゃべっている。身振り手振りでコミュニケーションを取っている姿もよく見る。何て言っているのだろう?

空席を録音した声援で埋める案もあるそうだがそんな嘘ではなく、せっかくだから怒鳴り声、歓喜と悲嘆の叫び、ボールを叩く音などリアルな試合の音を楽しみたい。

photo by getty images
text by 木村浩嗣

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