【木村浩嗣コラム】決定力は「有る」か「無い」か。アトレティコ・マドリードはなぜ苦戦中なのか?

  • 2020/2/7

text by 木村浩嗣

第22節マドリード・ダービーの23分、優勢のアトレティコ・マドリード、アンヘル・コレアの放った強烈なシュートは、ポストに当たって外に出た。ポストに好かれる、嫌われるのは運だろうか?

違う。

急に横風が吹いたというのなら運だ。天候は人智を超えたところにあるからだ。しかし、シュートのアングルがあったのに鉄柱の外側にボールを当てたのは、蹴り損ないである。コレア本人の技術――重圧で精度を欠くという精神面も含めた広義の技術――の問題なのだ。別の言い方をすれば、“メッシなら入れていたかもしれないな”ということだ。

シュートがポストに嫌われた。運が悪い?

試合後の会見でディエゴ・シメオネは「運」という言葉を使わなかった。彼らしい潔さだ。

監督は運を変えることはできないが、選手の技術を高めることはできる。コレアの得点力を上げることはシメオネの課題だが、コレアをお祓いして運気を上げるのは、彼の仕事ではない。

シメオネは運の介入についてこんなことを言っている。

「ミスジャッジは不運だが、敵陣で試合を進めることで、不運が致命傷になる可能性を最小限にできる」

勝敗が運のせいなら監督は要らない。運は間違い無く勝敗に介入する。だが、監督というのはケガ人が出れば体調管理の不備を疑い、足を滑らせればスパイクの選択ミスを疑う人種である。天命を待つのは人事を尽くした後だ。

私が少年チームの監督をしていた時は、運を言い訳にしたこともある。

ポストにシュートが嫌われた時など子供や父母に「運が悪かった」と振り返ったものだ。だが、それはあくまで対外的なもの。心の中では“あいつのシュート力、何とか上げないと”と思っていた。

シュートの直前には、練習時の光景がリフレインするものだ。いつも外す子が蹴る時は“外すんじゃないか”と思ってしまう。逆の場合は“あいつなら決める”と思う。

コレアには「無い」。育てるには時間がかかる

これは想像だが、コレアのシュート前にシメオネの頭をよぎったのは、悪い予感の方ではなかったか。観戦者として、惜しい外し方をするコレアを何度も見てきた。監督なら練習で数限り無く見ているはずだ。

断っておくが、コレアは悪い選手ではない。創造性豊かなアシストやドリブルで違いを作れる数少ない選手で私は大好きだ。だが、ゴールを「させる」選手であっても、ゴールを「する」選手ではない。トップ下であってもゴールゲッターではない。あの試合のように右サイドで守備の負担が大きければなおさら、シュートの精度は下がるだろう。

逆に、もしあのシュートをねじ込む技量がコレアにあれば、彼の年俸や移籍金は軽く倍にはなるだろう。

得点力は個人に依存する割合が極めて大きい能力だ。

監督は、適材を適所に配し、戦術を授けて良いプレーをさせ、優勢を保ってゴールチャンスを数多く作るチームを作ることはできる。そこまでは監督の責任だ。だが、その先、最後にネットを揺らしてチームプレーを勝ち点として結晶させるのは、個の力量である。FWに得点力が無ければすべてのチームの努力は無になりかねない。

シメオネのやりくり上手にも限界あり

アトレティコ・マドリードの苦戦も突き詰めれば個の問題ではないのか?

マドリ―ド・ダービーに1-0で敗れ順位を6位にまで落とした。22試合で22得点15失点。昨季は同時期に32得点で2位だったから、低迷の原因が得点力不足にあるのは明らかだ。そしてその得点力不足の原因が、昨季のチーム得点王(15ゴール)グリーズマン(現バルセロナ)の不在にあるのも明らかだ。

代わりに入ったジョアン・フェリックスはグリーズマンに似たタイプだが、ゴールゲッターとして覚醒前のグリーズマン似で、即座に得点力を期待するのは酷というもの。モラタが7ゴールで孤軍奮闘するも、実績あるジエゴ・コスタはケガで欠場中で2トップすら組めない。急きょ、冬の移籍市場でカバーニ(パリ・サンジェルマン)を獲ろうとしたが高値を吹っかけられて断念。やって来たカラスコはサイドのドリブラーでゴールゲッターではない。

チーム得点王を放出しておいて“シメオネマジックでよろしく”と言われても困る。

2011年12月の就任以来、ファルカオ、ビジャ、マンジュキッチ、ジエゴ・コスタ、ジャクソン・マルティネス、グリーズマン、フェルナンド・トーレス、ガメイロ、モラタら名だたるFWがひっきりなしに出たり入ったりしてきた。得点力のあるエースに高値が付き財政の限度を超えて引き抜かれる事態も一度ならずあった。それでもリーグ優勝1度、EL優勝2度を含む7冠を獲得し3強の一角を守り続けた。

どんなチームにも過渡期はある。ネイマールが抜けた直後のバルセロナ、クリスティアーノ・ロナウドが抜けた直後のレアル・マドリードがそうだった。1シーズンの低迷くらいは許されるべきだと思うのだが……。

photo by getty images
text by 木村浩嗣

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