【木村浩嗣コラム】自分にとって、選手にとって、好きなサッカー、嫌いなサッカー

  • 2019/03/15

text by 木村浩嗣

ファンのみなさんには好きなサッカー、嫌いなサッカーというのはありますよね?
私の場合は、繋ぐサッカーが好きだった。「だった」と過去形で言うのは、今は身の丈に沿ってできることを少し背伸びするくらいのスタンスでやっているチームが好きだからだ。昔は繋げば何でも良かったが、今はベティスの方がバルセロナよりも好き。というのも、ベティスはあの規模のクラブでポゼッションという難しいチャレンジをしているからより好感が持てるのであって、予算が潤沢で世界有数の選手を連れて来られるバルセロナには、前ほど胸が高鳴らなくなったのだ。

チャレンジの度合い、ということで言えば、エイバルの“ストーミング”スタイルもホームタウンの人口が2万7000人のミニクラブが、あのリヴァプールと同じサッカーをやっている、というところが凄く憧れる。スリリングでスピーディでアグレッシブなところも魅力だし。

昔は好きではなかった堅守速攻もアラベスやレガネス、ヘタフェがやるのは許す。だって、彼らスモールクラブが結果を出すにはそれが最短距離なんだから。対照的に、前は2強に対抗する“庶民の味方”として好感を抱いていたアトレティコ・マドリードには、ビッグクラブに成長した今ではもう少しイニシアチブを握れないか、オフェンシブに行けないか、と注文を付けたくなるし、ジダン元監督(2019年3月11日にレアル・マドリードの監督に再任)のレアル・マドリードも強くて勝てるサッカーではあったが、スタイル的にはカウンターがベース、という保守的な部分に物足りさを感じていた。

つまり、私の場合はプレースタイルだけでなく、経営規模に応じたスタイルという点で、好感を抱いたりそうでなかったりしているわけだ。

これが指導者としての私なら、そういう見方をしない。
少年サッカーの監督としては今も昔もポゼッション一筋。最も難しいスタイルに挑戦することが、技術的にも戦術的にも子供を最も成長させる、という確信は揺るがない。なかなか勝てないが、それは監督が責任を負うしかない。

では、選手の側から見て好き嫌いはあるのだろうか?
子供は間違いなくボールが好き。教えていたのは小学生なので、ポゼッションうんぬんというコンセプトなんて彼らにはどうでも良かったろうが、練習では必ずボールを使い、ボールを自分たちのものにするサッカーをさせていた。それで彼らは笑顔。成績不振に不満顔なのは一部の親だけだった。

プロはどうだろう? やって面白い好きなサッカーというのはあるのだろうか?
「選手はボールを持つのが大好きですか?」という私の質問に「当たり前だよ。ボールが好きだから彼らは選手になったのだから。ボールの後ろを追いかけるためにサッカーを始めた者はいない」と断言したのは、ベティスのキケ・セティエン監督だった。彼は選手時代のボール好きが高じてポゼッションサッカーをしている。

ラージョ・バジェカーノなどで高望みのポゼッションサッカーをし、私に勇気をもたらしたパコ・へメス元監督も似た様なことを言っていた。もっとも彼はハードでフィジカルなDF出身で本人の言葉によると「太鼓叩きだったが、実はピアニストに憧れていた」という変わり種だったが……。

元ボール大好き少年が成長して、プロ選手になった今もやっぱりボールが好き、というのはあるんだろうな、と思う。プロだってボールをいじって遊んでいる姿は子供みたいだと、何度も感じたことがある。選手からボールを取り上げず、ボールを渡す監督はやはり人気があるのではないか、と思っている。

現ヴィッセル神戸監督のフアンマ・リージョはスペインでの監督時代なかなか勝てなかったが、選手の人気は抜群だった。私が20年以上前に語学留学したサラマンカで、地元チームを1部リーグに昇格させた彼は英雄だった。1部ではあっという間に解任されてしまったが、私が通っていた監督学校では、リージョの練習の面白さは語り草だった。楽しかったから選手に支持されたのだ、と言われていた。

とはいえ、プロであれば楽しさだけでは好き嫌いを決められないこともあるに違いない。
タイトル、勝利はキャリアの成功と直結する。「勝てるから好きだ」と「選手として成長するから好きだ」いう考え方もプロならあって当然だ。

アトレティコ・マドリードのグリーズマンは最近のインタビューでこんなことを言っている。
「ここのサッカーはレアル・ソシエダで慣れていたものと違う。守備戦術に多くの時間を割く」「最後はボールを奪うのも、スライディングするのも、競り合いに勝つのもだんだん好きになっていく」と。
要は、最初は好きではなかったものの、守備(=ボールを持たないプレー)を学ぶにつれプロとして成長する喜びを感じるようになったということだ。

エイバル時代の乾も同じ様なことを言っていた。
「戦術も楽しいですよ、わかれば。守備をやっていても『ああ、こういうふうにやるんや』と理解していけば凄く楽しいです」と。メンディリバル監督に心酔していた彼は「監督やりたいと思うようになりました」と笑っていた。 まとめると、本能的なレベルでは、子供も大人もボールが好き。ただし、プロとしてボールが無いプレーの楽しさを発見していき、好みが変わる場合もある、ということだろうか。

第24節大敗(対レバンテ、1-4)後のセルタのミゲル・カルドーゾ監督がクビを切られなかったのは、選手の圧倒的な支持があったからとされる。偶然なのかどうか、彼のスタイルもポゼッションサッカーである。(※2019年3月3日にセルタはミゲル・カルドーゾ氏を解任し、フラン・エスクリバ氏が新監督に就任した) 自分にとっての、選手にとっての好き嫌いとは――。そんなことに思いめぐらせながら観戦できる試合がリーガにはたくさんある。

写真:Getty Images
文:木村浩嗣

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