【木村浩嗣コラム】新監督のエフェクト:レアル・マドリードの場合

  • 2018/11/25

text by 木村浩嗣

スペインのサッカー界には「新監督なら勝利は間違いなし」という言葉がある。監督交代にはポジティブな効果がある、と考えられているのだ。とはいえ、統計的に証明されたものではなく経験則から導き出されたもので、新監督の下で上向きになったチームが下向きになったチームよりも多い(ようだ)という曖昧なもの。他方この言葉が、辛抱の効かないフロントの監督クビ切りの口実として利用されている面もある。

今季はこの文章を書いている時点(第12節終了時)で3度の監督交代があった。ウエスカではレオ・フランコからフランシスコ・ロドリゲスに、レアル・マドリードではジュレン・ロペテギからサンティアゴ・ソラーリに、セルタではアントニオ・モアメッドからミゲル・カルドソカルドーゾへと代わった。このうち新監督デビュー前のセルタを除くウエスカとR・マドリードに新監督のエフェクトはあったのか?

◆監督交代後、劇的な変化を見せたのはソラーリ体制のR・マドリード

ウエスカは前監督の下1勝2分5敗だったのが新監督の下1分3敗と成績上の改善は見られない。だが、内容的には接戦に持ち込めるようになっているので、今後に期待は持てる。一方、劇的に変わったのがR・マドリードだ。前監督のリーガでの成績4勝2分4敗14得点14失点が物語る通り、ロペテギ時代は勝ったり負けたり点を取ったり取られたりのチームだった。それがソラーリ新監督になって公式戦(リーガ、CL、コパ・デル・レイ)4連勝15得点2失点と大変身した。ソラーリは何を変えたのか?

戦術面では前監督下でメインだった[4-3-3]に[4-2-3-1]のバリエーションを加えた。メリージャ戦ではアセンシオのトップ下を試し、バジャドリード戦では後半早々にカゼミーロを下げてイスコを入れ[4-3-3]から[4-2-3-1]に変更しいずれも結果を出した。ただ、直近のセルタ戦ではカゼミーロが負傷し[4-2-3-1]にするチャンスがあったものの、代役のダニ・セバージョスをトップ下に入れずアンカーを務めさせて[4-3-3]を維持した。これまで指揮していたBチームのレアル・マドリード・カスティージャでは[4-2-3-1]一辺倒だったが、トップチームでは柔軟に使い分ける方針のようだ。

最も変わったのが、選手起用である。
Bチーム出身のレギロン(左SB)、ハビ・サンチェス(CB)、ヴィニシウス(左サイド)を抜擢し、前監督時代に出番の少なかったオドリオソラを右SBに固定、右サイドにはルカス・バスケスを積極的に使っている。ルカス・バスケスの起用でベイルが左サイドに移り、ベンゼマとともに3トップを組む形になると、アセンシオとイスコが使えない。[4-3-3]なのか[4-2-3-1]なのかという議論と平行して、ルカス・バスケス、アセンシオ、イスコのポジション争いも続いていくのだろう。
もう1つ、GKはクルトワ固定となってCLでもケイラー・ナバスはベンチを温めることになった。他のポジションでは選手の選択の幅を広げたソラーリだが、GKだけは逆に絞った。ケイラー・ナバスの状態が悪かったわけではないのだが、GKはローテーションしないというのはどうやらソラーリの方針らしい。

さらに、フィジカルトレーナーにもジダン監督時代のピントゥスが復帰した。こちらの交代の効果はまだわからないが、“ジダンの夢をもう一度”という願いが込められた人事にも見える。

◆新監督のエフェクトは短期間に終わることがほとんど

今回のロペテギからソラーリへのバトンタッチと、2年前のベニテスからジダンへのバトンタッチへの共通点は少なくない。厳格な戦術家の後任としてロッカールームの内情を知る元名選手&Bチーム監督が内部昇格するというパターンはそっくりだ。途中就任したシーズンにCL優勝(その後3連覇を達成)、翌シーズンにはリーグ優勝をもたらしたジダンの夢は再現可能だろうか?

この問いは、ソラーリ効果は一時的なものなのか、それとも長期的なものなのか?と言い換えることができる。

ジンクスが「新監督なら勝利は間違いなし」であって、“新監督なら成功は間違いなし”でないことに注目してほしい。当たり前だ。新監督が成功の使者なら監督を交代すればするほど栄光に近づくことになるが、現実は逆で、監督交代を繰り返した末に待っているのは「降格」の二文字である。

新監督のエフェクトは短期間に終わることがほとんどだ。行き詰っていたチームに新監督が新システムや新采配や新選手起用、新練習方法などの新風を吹き込む。これによって、気持ちがリフレッシュし、新指揮官に認めてもらいたいという意欲とモチベーションが上がり、チームが活性化する――。だが、新風はいずれいつもの空気となって澱む危険性がある。チームの抜本的な改革を望めないシーズン途中での監督交代は、カンフル剤にはなり得ても治療薬にはなり得ないのが普通であり、ジダンのケースが奇跡でありマジックだったのだ。

ベンチでのソラーリの落ち着いたたたずまいはジダンを思わせ、前任者の眉間のしわが象徴していた陰鬱な雰囲気を変えたのは間違いない。ベンゼマのシュートはいきなり枠を捉え始め4ゴールで4連勝を牽引している。だが、このチームは開幕3連勝10得点2失点でベンゼマは4ゴールと爆発的なスタートを切ったことを忘れてはいけない。

モドリッチが復調し若手も使える目途が立った反面、負傷者続出(マルセロ、カルバハル、ナチョ・フェルナンデスにカゼミーロが加わった)とクリスティアーノ・ロナウド不在という現実は変わらない。ヴィニシウスとベイルの大爆発という奇跡のシナリオもないわけではないが、新監督効果で何とかクリスマスを乗り切り、冬の移籍市場で補強というのが最も確実な巻き返し策に思える。

文:木村浩嗣

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