【木村浩嗣コラム】“監督のクラシコ”の前後、バルベルデとロペテギに何が起こるのか?

  • 2018/10/25

text by 木村浩嗣

メッシもクリスティアーノ・ロナウドもいない11年ぶりのクラシコを、私は“監督のクラシコ”だと思って楽しみにしている。
監督目線で見ると、相手にメッシとC・ロナウドがいるとゲームにならない。特に単独で2人抜いてフィニッシュまでいってしまうメッシがいると、どんな事前プランも意味をなさなくなる。メッシには本来常時2人くらい貼り付けてマークさせたいくらいなのだが、彼に2人付けると残りのルイス・スアレスやコウチーニョ、デンベレといったアタッカーが1対1になり、それはそれで大変だ。よって、ほとんどの監督がメッシに1.5人くらい付ける感覚で試合に臨む(マンツーマンだとあまりに危険だからゾーンで)。2人くらい抜けるメッシ対策としては不十分なのだが、これ以上彼に手をかけると他に手が回らなくなる。C・ロナウドの場合は影響するゾーンがゴール前に限定されるので、インパクトはより小さいがそれでも1.5人は付けておきたい。
サッカーで「守備が機能している」とは、1人抜かれても2人目が対応できる状態にあること。1対1でやられても大丈夫なように守備を組織できるのが良い監督で、その2人目も抜かれることは想定できない。

現ヴィッセル神戸監督のフアン・マヌエル・リージョがうまいことを言っている。「サッカーは短い毛布みたいなもの。足に被せると頭が出て、頭に被ると足が出てしまう」。リージョはこういうたとえ話でサッカーの本質を突くのが本当にうまい! 要は「あっちを立てればこっちが立たず」であって、守備時のマークの付け方だけでなく攻守のバランスも、この「短い毛布」という限界を抱えている。攻撃に人数を懸け過ぎると守備に手が回らない。あるいはその逆――。私も少年チームの監督として、あっちを立てればこっちが立たずという歯がゆさを感じ続けてきた。メッシやC・ロナウドは敵にとっては短い毛布をさらに短くする存在で、味方にとっては手持ちの毛布を長くしてくれる存在となる。
そんな2人がいないことはエルネスト・バルベルデ、ジュレン・ロペテギの監督力を裸にする。今回のクラシコでは、どんなシステム、並びで誰を先発させ、どんなゲームプランをするのかというプランニング力と組織力。状況への対応力、モチベーションも含めた人心掌握力が、いつも以上に勝敗に対して決定的な意味を持つわけだ。

メッシがいなくなったバルベルデは、一見好みのシステム[4-4-2]を使う理由が増えたように見えるが、ルイス・スアレスと組むFWの人選と中盤のセルヒオ・ブスケツ、ラキティッチ、アルトゥールと組む4人目のMFの人選と配置が難題。[4-3-3]で3トップをコウチーニョ、ルイス・スアレス、デンベレと組ませた方が並び的にはオーソドックスで混乱が少ないようにも見える。
前節クロース、ベンゼマを外して痛い目にあったロペテギの方は、彼らを戻したオーソドックスな[4-3-3]、中盤カゼミーロ、クロース、モドリッチ、3トップがベイル、ベンゼマ、アセンシオという顔ぶれを選びそうではある。が、精彩を欠くモドリッチに代えイスコという手はあるし、あるいは両者を併用した[4-4-2]でベンゼマとベイルの2トップでスタートするという手もある。
実は今回、面白い要素がもう1つあって、それは今季バルセロナ、レアル・マドリードともポゼッションが安定せず、カウンターを喰いやすい状態にあること。
バルセロナの方はアルトゥールの適応待ちとデンベレ、コウチーニョがポゼッション向きではないという問題を抱えており、レアル・マドリードの方はロペテギの好みでポゼッション志向を高めたものの、ジダン時代のカウンターへの郷愁を選手が捨てられず、ハイライン&ハイプレスにチーム全体が適応し切れていない。結果的にボールロストから単純なロングボールでゴールを割られるというシーンが両チームとも頻発している。
「ポゼッション対カウンター」という明確な構図があったクラシコが、今回は「不完全なポゼッション対決」となっており、その点でも試合前、試合中のバルベルデ、ロペテギの対策と対応力が注目されるわけだ。

そうして、さらに面白い――と言うのは気の毒ではあるが――のが試合後である。
両監督の監督力が露わになるクラシコで、監督対決に敗れたどちらかが解任、あるいは解任に近づくということは大いにあり得る。解任の噂が噴出しているのはロペテギの方だが、そんなロペテギにホームで敗れるとしたらバルベルデの方も危ない。
忘れてはいけないのは、今回のクラシコは両チームとも混戦から抜け出せず直近のリーガ5試合でバルベルデは1勝3分1敗、ロペテギは1勝1分3敗という超低空飛行での顔合わせ、だということ。例年なら監督解任に踏み切っていてもおかしくない成績なのだが、宿敵も低空飛行だからインパクトが少なかった、という背景がある。言わば、お互いの悪成績のおかげでお互いが救われてきたわけだが、この直接対決ではついにリアルで残酷な現実と直面することになる。
個人的には、クラシコがどう終わろうと監督解任なんてあり得ない、と思っている。しかし、スペイン人は気が短い。前節ベティス対バジャドリード(0-1)の試合後の大ブーイングを耳にしたばかり。信じられないことだが、1カ月ほど前までセビージャ・ダービーの勝者、EL参戦の恩人としてもてはやされていた、監督キケ・セティエンのポゼッションサッカーが「退屈だ」と非難され、解任を望む声が一部に出ているのである。そういえば、前節まで首位だった(今は)名将セビージャのパブロ・マチン監督は、やはり1カ月ほど前に解任寸前までいっていたのだった。混戦リーガのジェットコースターで最も速く危険なコースターを与えられたバルベルデとロペテギのスリル満点の操縦ぶりを見届けたい。

文:木村浩嗣

閉じる

My番組登録とは?

My番組登録で見逃し防止!

見たい番組、気になる番組をあらかじめ登録。
放送時間前のリマインドメールで番組をうっかり見逃すことがありません。

利用するには?

WEB会員IDをご登録のうえ、ログインしてご利用ください。

WEB会員IDをお持ちでない方
WEB会員IDを登録する
WEB会員IDをお持ちの方
ログインする
閉じる

番組で使用されているアイコンについて

初回放送
新番組
最終回
生放送
5.1chサラウンド放送
二カ国語版放送
吹替版放送
字幕版放送
字幕放送
ノンスクランブル(無料放送)
オンデマンドでの同時配信
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、PG-12指定(12歳未満は保護者同伴が望ましい)されたもの
劇場公開時、PG12指定(小学生以下は助言・指導が必要)されたもの
2009年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R-15指定(15歳未満鑑賞不可)されたもの
R-15指定に相当する場面があると思われるもの
劇場公開時、R15+指定(15歳以上鑑賞可)されたもの
R15+指定に相当する場面があると思われるもの
1998年4月以前に映倫審査を受けた作品で、R指定(一般映画制限付き)とされたもの