
沈黙で伝えたショットの凄さ
「わあ、勝った!錦織が勝った!!」
2014年全米オープン準決勝、錦織選手が当時世界1位・ジョコビッチ選手を破り、日本人初のグランドスラムシングルス決勝進出を決めた時の実況席での私の言葉(叫び)です。
普段だったら、発する言葉を瞬時に頭の中で文章化して精査しコメントしているのですが、「あの時」は、抑えていた感情が一気に溢れてしまいました。
錦織選手のショットやラリーは、いつも素人の私の想像の斜め上です(笑)。創造性豊かなんです。だからこそ実況中、形容する言葉がすぐに見つからず、何年も使っていなかった言葉を記憶の中から引っ張り出したり、日常生活において読書や音楽鑑賞で気になるフレーズや歌詞を見つけると、「あ、これは彼の試合で、こういう場面に使ってみよう」と、メモを残したりして、常にアンテナを張っていました。
また、錦織選手のウィナーが決まったあと、モニターに観客席が映ると、お客さんの「笑顔」の印象が、他の選手より大きいことに気づいてからは、自分の言葉で余韻を消してはいけない、あえて沈黙で、そのショットの凄さを伝えようと工夫したりもしました。
私にとって、錦織選手の試合は実況アナとしての向上心を刺激する「特別なもの」だったのです。
錦織選手には、今、心から感謝の気持ちを伝えたいです。 彼のような稀代の名アスリートが世界を舞台に戦った時代、実況アナでいたことは、幸運でしたし、誇りに思っています。
最後に、あのジョコビッチ戦の終盤、もうひとつ、感情そのままに発した言葉があります。
「世界一のリターンです」


