映画

月と雷

置き去りにされた時間が私の中で動き出す。人気女性作家・角田光代の同名小説を、「海を感じる時」の安藤尋監督が繊細なタッチで映画化した、不思議な味わいの秀作ドラマ。

まるでヤドカリのように、他人の家庭にフラリと転がり込んではそこに居候し、しばらく時がたつと、不意にそこを去ってまた別の家庭に転がり込む、奇妙な1組の母子。結婚を目前に控えたヒロインの前に、そんな自堕落だが妙に憎めない母子がフラリと現われたことから、彼女の人生が大きく揺さぶられていくさまを、角田光代の同名小説をもとに、安藤監督が繊細かつ痛切なタッチで活写。ヒロインの人生を揺るがす風変わりなダメ母子を、草刈民代と高良健吾がひょうひょうとした味わいで好演するのが、何よりの見もの。