
ソビエト連邦にアメリカ人ロックミュージシャンとして初めて乗り込んだビリー・ジョエル。ロックの扉を開いた彼の偉業の全貌を追ったワールドツアーのドキュメンタリー。
1991年まで存在したソビエト連邦は社会主義国ゆえに、英米の文化に触れることを厳しく制限していた。そんな状況下のソ連で、ビリー・ジョエルがアメリカのロックアーティストとして初めて単独公演を行なったのは1987年。モスクワとレニングラード(現:サンクトペテルブルク)で3公演ずつ計6公演に及んだツアーは「音楽を通じて西側と東側を結ぶ大きな架け橋」と話題になった。番組はその舞台裏を追う。ビリー本人と両国の関係者たちによる新たな証言や、最初は慣れない西側のロックンロールショーに戸惑っていた観客が徐々に熱狂していくモスクワ公演の様子は実に興味深い。また、家族とともにソ連の人々と触れ合うビリーの姿や友情を結んだ青年と心を通わせる様子などからはビリーの誠実な人間性も伝わってくる。歴史的なソ連ツアーの意味を知るうえで欠かせないドキュメンタリーである。