映画

スリ

スリに熱中する孤独な貧乏学生の運命の行く末を、R・ブレッソン監督がじっくりと凝視した感動の人間ドラマ。スリの手口を流麗なカメラワークと編集で見せる映像美は圧巻。

ドストエフスキーの名作「罪と罰」に想を得たブレッソン監督。同作の主人公ラスコーリニコフ青年と同様、優れた人間は法を犯しても許されるという傲岸不遜な人生哲学を持つ1人の貧しい青年の姿を、冷徹な眼差しでじっくりと描写。とりわけ彼が、プロの手ほどきを受けてスリの習練に励んだ末、競馬場や地下鉄内で人々の財布や腕時計などを巧みにスリ盗るさまを、鮮やかなショットの連携で流麗に描き出す場面は圧巻で、誰もが思わず目をみはること間違いなし。彼を待ち受けるラストも感動的で、涙なしには見られない。