映画

江戸川乱歩の陰獣

江戸川乱歩の代表作の一つ「陰獣」を、名匠・加藤泰監督がメガホンを取って映画化したミステリー。昭和初期、ある若い推理作家が連続殺人事件の解明を目指すのだが……。

乱歩の世界観を映像化したミステリーロマン。ショッキングな殺人やトリック解明の面白さ、官能的な場面という具合に見どころ盛り沢山だが、単なる推理ものにとどまらない本格派の趣向も見どころだ。「緋牡丹博徒」シリーズなど、多くの傑作で独自の美意識を持った作品を放ち続けた加藤監督らしく、その堂々たる映画的ロマンが日本映画ファンにはたまらない。特に、幻想に取り付かれた人間だけが陥る悲劇を描いて、ミステリーの緊迫感をいっそう高めた点は出色。実力派キャストたちも好演で期待に応えた。